柚月裕子のレビュー一覧
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とても癒されました。
毎日の暮らしの中に共存している
猫という生き物が、たくさんの
作家の方々の憩いであり
生きがいであり、無くては
ならない存在でした。
家の猫も保護してから3年
猫を飼った事もない家族の中で
その存在感の大きな事、
角田光代さんの文章の中に
(以前は、自分は自分はという
感じで暮らしで辛かったところに
猫がきて自分以外の事に心を
持っていけるようになった事で
楽になった)とありました。
まさにそれです。疲れたけど
とりあえず猫に餌をあげようと
声をかける事で気持ちが良い
方向に切り替えていける。
猫って不思議な生き物です。 -
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ネタバレ犯罪を犯した子どものために「補導委託」なる制度があるとは知りませんでした。
盛岡の南部鉄器工房を舞台にした16歳の万引き少年を預かります。
構図としては弁護士の父親が子どもの将来を考えて、勉強を強い、子どものことを見ていなかったことが原因というちょっと底浅な設定に、鉄器工房内の人たちは人のいい人ばかりで、居そうだけど、ホントにいる?という人たちばかり。
現代版人情噺というカテゴリーなんだろうけど、非行少年の救済が、工房内の親子関係の救済にもなるという二重構造になっています。
柚月さんの文章はどこまでもなめらかで、感情の流れに不自然なところがない。軽口を叩き合う会話が洒落ています。
平易な言葉で、二重の救済というテーマをソツなくこなして、小説の持つ小確幸とは思うけど、うまく乗せられて気分よく読み終えられます。
世の中あらゆるところに悪意が満ちているけど、それを少しウソッぽい善意が押しかえすあたりなかなかの力技ではないかと思います。
工房のベテラン職人・林健司はでんでんさんしか考えられいキャラ。映画化の時はキャスティングしてもらいたい。
柚月裕子にしては珍しくミステリではないけど、父親に過去があるとか、不似合いな「銀河鉄道の夜」を持っているといった謎の手口はミステリ自体ですね。 -
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下巻になってやっとこの本のタイトルの意味が腑に落ちた。ここで佳介と、東明とゴッホの生き様が重なる。3人とも周囲の誰からも理解されないし、本人も救われない。どれだけ頭が良くても、東大卒で起業家になって成功しても、絵画や将棋で天才であっても、一般の常識内では生きている感じがしない。燃え続ける情熱と闘いの人生の中で、自分が向きたい方角を向かないと生きていけない。一般の人が理解できない才能を持つ人の人生は孤独で切ない。
最後はオープンエンドだけど、余白に希望がある終わり方でとてもよかった。佳介のプロ棋士としての人生はまだ続く、次の一手がある、って感じがする。この先どうなるのか読書による想像次第だけど、佳介は死を望む情熱から解放されて、やっとこれからちゃんと前を向いて、光のあるほうへ向く向日葵の様に生きていく様な希望がみえる。 とても良かった。クセの強い石破警部も良かった。 -
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ネタバレ「孤狼の血」の続編
前作でガミさんを失い、郡部の駐在所に
左遷された日岡秀一(脳内:松坂桃李)の物語
山々に囲まれた田舎の駐在さんとなった日岡に、
こんな怒涛の面白い展開が待っているとは!!
正直「孤狼の血」より好きでした。
前作からの登場人物に、
一ノ瀬や晶子の存在にホッとし
味方(と言っていいのか?)のはずの
瀧井の不穏な動きに目をみはり
監察官 嵯峨の左遷に「ざまぁw」と嘲笑する。
脳内で映画でのキャストが縦横無尽に動き回り
小説を読んでいるのに映画を観ているような
変な感覚で、ページをめくる手は止まらない。
すっかり「孤狼の血level2」が映画完全オリジナルだと失念していたので
いつ上林は出てくるのか?と先を急いだのもあるかもしれない(笑)
でも、そんな上林に負けない魅力的な「国光」の
登場にあっさり気持ちは持っていかれる。←ちょろいw
実写化される際には(ぜひしてほしいのだが)
国光を誰に演じてもらおうかと考えるのも楽しい。
いよいよシリーズ完結「暴虎の牙(上下)」に
突入します。
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裕月裕子さん著「慈雨」
自分にとって約一年振りに読む著者の作品。積読本だらけの本棚の中から長年眠っていた本作にようやく手を伸ばした。
物語は刑事物のミステリーであるのだが、それ以上にヒューマンドラマの要素が重厚な物語だった。
主人公神場の愚直な刑事らしさと人間臭さとが混在して描かれている。
特に妻の香代子、娘の幸知との神場の家族愛の物語展開がお見事。素晴らしかった。
神場が退職してお遍路巡礼していく最中という背景も素晴らしかった。
16年前に起きた事件に対しての後悔からきている物なのは最初から解っていたが、結願に向けて妻に対しても娘に対しても神場の本心が読み取れていく。
事件と共に本心を妻に吐露した後に最期の結願寺の道中で降りだした「慈雨」。
慰めのようでも、赦しのようでも、励ましのようでもあるその雨は二人を優しく包んで背負ってきた重責を洗い流してくれているように感じてしまった。
まるでこの巡礼の旅が二人の結婚人生を喩えているようであり、更に結願した先に見える二人の未来も読み取れていく。その祝福の「慈雨」。本当に素晴らしかった。
柚木裕子作品、ここ近年の物はあまり読んでいない。今後は「逃亡者は北に向かう」「教誨」「風に立つ」等を読んでいきたい。 -
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上巻では、白骨死体の遺留品捜査を担当する刑事の視点と、幼くして高い棋力を示す佳介、そしてあるきっかけで佳介と出会い、世話役を担うことになった唐沢夫妻と佳介が過ごす時間とが交互に描かれる。時代は昭和で、聞き込み捜査はアナログそのもの。なかなか進展しない捜査の過程が、かえって味わい深い。
唐沢夫妻と佳介が過ごす時間の描写は、読みながら涙が止まらなかった。子に恵まれなかったが子ども思いの老夫婦と、自分の子どもの面倒も見ない実の親。最低な親であっても、唯一の親からの愛を求めてしまう幼い子どもの姿が胸に迫る。
また、かつて奨励会に入会しながらもプロ棋士になれず、退会後に警部となった佐野が、遺留品の駒を手がかりに捜査を進める中で、将棋にまつわる苦い記憶を次々と蘇らせていく描写も印象に残った。