柚月裕子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者の作品は世界観とテーマが好きなのでよく読みます。
本作も期待して手に取りましたが期待以上の素晴らしさでした。
とても良かった...本当に良い作品でした。
真面目で堅実な1人の刑事が定年退職し、妻と共にお遍路さんとして四国を旅しながら過去の過ちを振り返り罪と向き合う物語です。
その罪とは決して許されることはない冤罪疑惑事件でした。
ただの警察小説ではなく、警察の体質や冤罪事件という社会問題もしっかりと描かれた社会派小説でした。
著者の作品はテーマが明確なので焦点を何処に当てるべきかわかりやすく、物語に没頭しやすいです。
そして人の心について深く考えさせられます。
とても切ないお話でした -
Posted by ブクログ
ネタバレ下巻
東大に入り、アルバイトをしながら勉強に励む桂介は、部活に入る余裕もなかったが、あるとき運命に導かれるように入った将棋道場で東明重慶と出逢う。
この2人の出会いがまた、桂介の運命を大きく変えていく。
東大を出て、外資系企業に就職し、退職してソフトウェア会社を立ち上げた桂介。年商30億を超え、地位と名声と金を手に入れた桂介だったが、その幸せは長くは続かない。
有名になり雑誌に載った息子を訪ねて、金をせびりに来る父親。
かたや真剣師と呼ばれ、旅打ちに出る東明についていく桂介。
私は将棋には詳しくないが、(駒の進め方くらいしか)将棋の勝負場面のなんとも言えない緊張感は凄いと思った。
生命を賭 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりに物語の世界にのめり込んでしまった。
ネタバレあります。
上巻冒頭
将棋界の最高峰「竜昇戦」七番勝負の第七戦、最終戦
現竜昇のエリート棋士、壬生6冠に挑むのは、東大出で「炎の棋士」の異名を持つ異端児、上条桂介。
壬生6冠がタイトルを守り、残る7冠めに王手をかけるか
奨励会に入ることなくプロ棋士になった異端児、初タイトルに挑む上条が勝つのか
そこに、天木山山中から見つかった身元不明の白骨体が抱えていたと思われる、初代菊水月作の名駒、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒。
世界に7組しか存在しない、価値は600万とも言われる銘駒を抱えて眠る、この白骨死体は誰なのか?
なぜ、高額の名駒を抱えていたのか -
Posted by ブクログ
運がいいとか、運が悪いとか、
人はその都度、喜んだり、悔しがったり・・・
まして、どんな家庭に産まれ育つかは、本人の選びようがない。
両親が離婚してどちらの親も頼れない子供も現実にいる。
亡くなってから顔も知らない実の親を知ることも。
家族も色々な形がある。
真柴亮の人生を知るほど、胸が痛くなる。
やること全て裏目に出てしまう、まさに運が悪い。
東日本大震災で、家族を亡くした人の辛さ、無事だった人の辛さ、津波での、定規を引いたようにくっきりと分かれた被災の区分。
読んでいて、当時のニュースや映像が浮かんできて、胸が締め付けられる。
真柴をなぜか慕う直人には、子供の清らかな目で真柴の心のう -
Posted by ブクログ
良、良、良〜〜〜〜〜!!!!!!映画がとてもすきなのに、なぜか原作は今までずっと後回しにして読んでいなかった。もうばか、ほんとうにばか、もっと早く読めよわたし。映画を観てるから物語は知っていたけれど、それでも圧倒的に面白い。構成もすばらしいというか、ただでさえ面白い物語を最高に面白いものにしている感じがする。あまりにも強烈で激しい、ヤクザあるいは警察小説。柚月裕子大先生、この作品を書いてくれてありがとう…天才…神…。
読んでいるあいだ、数えきれないくらい映画のシーンを思い出した。原作に対してかなり忠実につくられた映画だったんだなあ、とそのたびに感じて胸が熱くなる。映画もまた観たくなっちゃった。 -
Posted by ブクログ
一度読み始めたものの、作品にのれず積読してた作品。ホラー作品3作読み終えて、気分転換兼ねて読んだら止まらず一気読み。なんでこんないい本を読まずに寝かせておいたのか後悔するくらいの作品。
作品自体も良かったし、解説もよかった。
「子供のときから心を支配されて、自分をなくしちゃったんだ」っていうママの言葉に「そうだよね」と思う部分もあるし、「そもそも自分があったことがないんだよ」と思ったりもした。
小さなムラの生きづらさとか、その中で軽視される尊厳とか、愛された経験がない故の判断の誤りとか…
響子と愛理があの世で出会えて、安らかに眠れますよう願わずにはいられない。 -
Posted by ブクログ
教誨
久しぶりに心の底から悲しい気持ちになった。
終盤からは響子の人生があまりにも不憫で、本を読み進める事さえ辛くなる。
主人公の香澄の行動や考え方に共感出来ない部分があり、大人達とのやりとりにおいては人間の本質的な醜さを知らない青臭さ、まだまだ”子供な”一面を見せる。一方で対比となる響子の人生は、彼女の両親、一族から不幸であり、学校でも家庭でも、そして社会でも居場所がないそんな人生だった。彼女の死刑執行の際に残した言葉、「約束を守ったよ、ほめて」の理由がわかってからは年甲斐もなく泣きじゃくりながらページを捲った。
今回、響子を取り巻く環境は異質に見えるが、田舎の閉鎖感を見事に表現している。私