柚月裕子のレビュー一覧
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ネタバレ犯罪を犯した子どものために「補導委託」なる制度があるとは知りませんでした。
盛岡の南部鉄器工房を舞台にした16歳の万引き少年を預かります。
構図としては弁護士の父親が子どもの将来を考えて、勉強を強い、子どものことを見ていなかったことが原因というちょっと底浅な設定に、鉄器工房内の人たちは人のいい人ばかりで、居そうだけど、ホントにいる?という人たちばかり。
現代版人情噺というカテゴリーなんだろうけど、非行少年の救済が、工房内の親子関係の救済にもなるという二重構造になっています。
柚月さんの文章はどこまでもなめらかで、感情の流れに不自然なところがない。軽口を叩き合う会話が洒落ています。
平 -
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下巻になってやっとこの本のタイトルの意味が腑に落ちた。ここで佳介と、東明とゴッホの生き様が重なる。3人とも周囲の誰からも理解されないし、本人も救われない。どれだけ頭が良くても、東大卒で起業家になって成功しても、絵画や将棋で天才であっても、一般の常識内では生きている感じがしない。燃え続ける情熱と闘いの人生の中で、自分が向きたい方角を向かないと生きていけない。一般の人が理解できない才能を持つ人の人生は孤独で切ない。
最後はオープンエンドだけど、余白に希望がある終わり方でとてもよかった。佳介のプロ棋士としての人生はまだ続く、次の一手がある、って感じがする。この先どうなるのか読書による想像次第だけど -
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ネタバレ「孤狼の血」の続編
前作でガミさんを失い、郡部の駐在所に
左遷された日岡秀一(脳内:松坂桃李)の物語
山々に囲まれた田舎の駐在さんとなった日岡に、
こんな怒涛の面白い展開が待っているとは!!
正直「孤狼の血」より好きでした。
前作からの登場人物に、
一ノ瀬や晶子の存在にホッとし
味方(と言っていいのか?)のはずの
瀧井の不穏な動きに目をみはり
監察官 嵯峨の左遷に「ざまぁw」と嘲笑する。
脳内で映画でのキャストが縦横無尽に動き回り
小説を読んでいるのに映画を観ているような
変な感覚で、ページをめくる手は止まらない。
すっかり「孤狼の血level2」が映画完全オリジナルだと失念していたので -
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裕月裕子さん著「慈雨」
自分にとって約一年振りに読む著者の作品。積読本だらけの本棚の中から長年眠っていた本作にようやく手を伸ばした。
物語は刑事物のミステリーであるのだが、それ以上にヒューマンドラマの要素が重厚な物語だった。
主人公神場の愚直な刑事らしさと人間臭さとが混在して描かれている。
特に妻の香代子、娘の幸知との神場の家族愛の物語展開がお見事。素晴らしかった。
神場が退職してお遍路巡礼していく最中という背景も素晴らしかった。
16年前に起きた事件に対しての後悔からきている物なのは最初から解っていたが、結願に向けて妻に対しても娘に対しても神場の本心が読み取れていく。
事件と共に本心を妻 -
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上巻では、白骨死体の遺留品捜査を担当する刑事の視点と、幼くして高い棋力を示す佳介、そしてあるきっかけで佳介と出会い、世話役を担うことになった唐沢夫妻と佳介が過ごす時間とが交互に描かれる。時代は昭和で、聞き込み捜査はアナログそのもの。なかなか進展しない捜査の過程が、かえって味わい深い。
唐沢夫妻と佳介が過ごす時間の描写は、読みながら涙が止まらなかった。子に恵まれなかったが子ども思いの老夫婦と、自分の子どもの面倒も見ない実の親。最低な親であっても、唯一の親からの愛を求めてしまう幼い子どもの姿が胸に迫る。
また、かつて奨励会に入会しながらもプロ棋士になれず、退会後に警部となった佐野が、遺留品の駒 -
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すべて東北被災地の現実がリアルに描かれているのは、作家さんが岩手県の出身地であり、山形県在住だからなんでしょうか。
遺体が多すぎて二十四時間稼働している火葬場。
遺体安置所で身元確認により感情的になった人がいても、野次馬で人垣ができないくらいみんなも同じ状況。
毎日悪夢を繰り返す後遺症など。
それだけでもドキドキしながら読む中で、サスペンス的要素がフックで入り、だんだんと迫ってくる中、最後の落とし込み。参りました。
刑事、陣内の家族に対する愛。
その妻、理代子の家族愛。
殺人犯、真柴の足りない愛。
その父、日沼が息子に伝えたい愛。
津波によって失われた圭佑の家族愛。
その子ども直人の別な