柚月裕子のレビュー一覧
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柚月裕子『ふたつの時間、ふたりの自分』文春文庫。
2008年のデビューから2023年現在までの15年間の軌跡を辿る著者初となるエッセイ集。
作家と主婦の『ふたりの自分』という自身のことを綴ったエッセイと東日本大震災で父親と祖母を失ったことを切っ掛けに東日本大震災前後の『ふたつの時間』を綴った二部構成のエッセイ集となっている。
年代的に近いこと、同じ岩手出身ということもあってか、妙に納得するところが多い。自分も2年間、父親の仕事の関係で釜石に暮らしていたことがある。夜の町に光る新日鉄の工場、いつもゴーっというかワーンというような工場の操業する音が聞こえたものだ。
最初のエッセイ『記憶の中 -
Posted by ブクログ
読後は決して爽やかではない。しかしイヤミスではない。読むだけで胸が苦しくなるような悲劇の実態を描いた作品だ。
タイトルになっている「蟻の菜園」は共依存を表現したものだが、この作品の悲劇の根幹はそれではなく、胸糞が悪くなるような児童虐待だ。最近、巷間を賑わせているJ事務所の問題も児童虐待だが、この手の話は被害者が名乗り出ないと表沙汰にならないにも関わらず、被害者からの告発がないケースが多いようだ(J事務所の件はずっと以前から声をあげた人々がいたがマスコミが無視をしたという最悪のケースだが)。被害者が名乗り出ずに忍耐を続けているが故に虐待がエスカレートしていく。事案は違えど共通の構図だ。
世の -
購入済み
コミカライズ版もなかなか
柚月裕子の原作に感銘を受けたので、このコミカライズ版を読んでみた。なかなか手際よくコミカライズしているが、原作の持つ、蒸し暑いベトベトした天気や、タバコ臭い雰囲気があまり感じられないところが残念である。絵柄がちょっと爽やかすぎるのかも知れない。しかしストーリー展開を追うのには大変に手頃である。
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Posted by ブクログ
最初は主人公由美のマスコミっぷりに、人のプライベートに自分の好奇心だけを引っさげて踏み込む厚かましさに、読んでいて疲れるところがあった。
だけど2章から姉妹の回想パートに突入し、一気に惹き込まれる。
その後、話が過去と現在の交互で展開し、先に過去で本人たちの思惑を知った上で現在パートで由美たちが謎を解いていくので、非常に読みやすかった。自分で、時折ページを繰る手を止めながら、散りばめられた伏線について思索するのもとても楽しい。
姉目線での話があまりないのと、妹があまりにも他人本意なので、終盤で少しイラッとしてしまったが、その偏見は私が恵まれているからなのかもと思ったりした。自分の軸を持ち他人に