柚月裕子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読後は決して爽やかではない。しかしイヤミスではない。読むだけで胸が苦しくなるような悲劇の実態を描いた作品だ。
タイトルになっている「蟻の菜園」は共依存を表現したものだが、この作品の悲劇の根幹はそれではなく、胸糞が悪くなるような児童虐待だ。最近、巷間を賑わせているJ事務所の問題も児童虐待だが、この手の話は被害者が名乗り出ないと表沙汰にならないにも関わらず、被害者からの告発がないケースが多いようだ(J事務所の件はずっと以前から声をあげた人々がいたがマスコミが無視をしたという最悪のケースだが)。被害者が名乗り出ずに忍耐を続けているが故に虐待がエスカレートしていく。事案は違えど共通の構図だ。
世の -
Posted by ブクログ
平成30年購入の積読本でした。苦笑
結末や内容が少し重たいミステリーも読めるようになってきたので(年月かかりすぎですね。苦笑)、満を持して読みました。
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こんな私に
したのは誰?
主婦が堕ちた甘美な罠——。
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途中までは嘘みたいに文絵(本書で登場する主婦)が
会員制の化粧品販売するビジネスを
加奈子(文絵の同級生と名乗る女)に紹介されて、
とんとんと進んでいきます。
それはそれで読んでいて気持ちが悪いんですが、
どう崩れていくのか。
気になって読み進める手が止まりませんでした。
文絵もなん -
購入済み
コミカライズ版もなかなか
柚月裕子の原作に感銘を受けたので、このコミカライズ版を読んでみた。なかなか手際よくコミカライズしているが、原作の持つ、蒸し暑いベトベトした天気や、タバコ臭い雰囲気があまり感じられないところが残念である。絵柄がちょっと爽やかすぎるのかも知れない。しかしストーリー展開を追うのには大変に手頃である。
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Posted by ブクログ
最初は主人公由美のマスコミっぷりに、人のプライベートに自分の好奇心だけを引っさげて踏み込む厚かましさに、読んでいて疲れるところがあった。
だけど2章から姉妹の回想パートに突入し、一気に惹き込まれる。
その後、話が過去と現在の交互で展開し、先に過去で本人たちの思惑を知った上で現在パートで由美たちが謎を解いていくので、非常に読みやすかった。自分で、時折ページを繰る手を止めながら、散りばめられた伏線について思索するのもとても楽しい。
姉目線での話があまりないのと、妹があまりにも他人本意なので、終盤で少しイラッとしてしまったが、その偏見は私が恵まれているからなのかもと思ったりした。自分の軸を持ち他人に -
Posted by ブクログ
「弧狼の血」シリーズの3作目。
本書では、1作目で惜しくも死んでしまったガミさん(大上刑事)が登場する昭和57年と、ガミさんの薫陶を受けた日岡が活躍する平成16年との2部構成になっており、「一粒で二度美味しい」の小説版(笑)。
昭和57年の章では、少年たちが山の中へ死体を埋めに行くという何やら剣呑なプロローグで始まる。
彼らは、本書の主役ともいえる獣みたいな沖を頭とする3人組。暴力団をも恐れないこの連中の前に、あのガミ三が立ちはだかる。
無軌道で暴力に突き進むが堅気には手を出さないという沖に、大上はその背景を探る。
読者は、ガミさんの一挙手一投足にたちまち虜になってしまうとともに、その後の彼の