西加奈子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
身体や性についてのエッセイ集。この中で柴崎友香さんが呈示していた疑問「なぜ書き手の性別を限っているのか」、私もこれと同じことを思った。もう、このフェーズは終わっていないか。いま、同じテーマで、男性やその他の性の人の語ることも聞きたいし、それらが同じひとつの場所に並べられているところを見たい。
どのエッセイもそれぞれ興味深かったし、色んな方向に心動かされたが、上記の意味で、柴崎さんが「このような疑問を私が持っていることを編集者と共有できたので、書くと返答した」という経緯を書いてくれていたことが、いちばん嬉しかった。もちろん、疑問の詳細は私が書いたこととは違ったけれど。 -
Posted by ブクログ
◼️ 西加奈子「サムのこと 猿に会う」
初期の3作を収録、関西風味の、西加奈子の筆が冴えている。
「サムのこと」「猿に会う」「泣く女」の短編3つ。大阪、大阪、和歌山ですべて関西弁。うにゅっとした、形のはっきりしない成り行きと感情を描く。
関西出身の同僚の女性がかつて、いまなら西加奈子がええよ、大阪が舞台のが多いし、と言い、仕事で組んでいた後輩も好きで2つ3つ貸してもらった。こんなところに惹かれるんちゃうかな、という筆がこれらの作品にあるような。
サムが突然、死んだ。レコード屋アルバイトのスミ、洋食屋のアルバイトのハスと在日朝鮮人のキムのカップル、男を取っ替え引っ替えしているモモに僕、つるんでいた仲間はふつうの喪服もないまま通夜に行き、サムの兄の前で、とつとつとサムのことを思い出しては語るー。
(サムのこと)
物語の流れはあるが何かしら結論めいたことがあるわけではない。関西弁と独特のノリ。2話めの「猿に会う」は20代幼なじみ女3人組のいかにもリアルにありそうな会話やエピソードを描いている。そこへ脇のところで事件が挟まれる。これはこれでふむ、関西シスターフッド、なんて思う。
表題にない「泣く女」は高校野球で県の決勝まで行ったこれも幼なじみの2人が引退して旅行をする。片方が太宰にはまっていて、荒天の中青森の、何もないゆかりの地を訪ねるという話。突然来たオチにスカッとしたものが残った。なるほど。
「人間失格」には確かに、これって自分のことを言い当てている、と直覚するところがある。私はあまりに暗いからもう読みたくない、と思った、太宰はそれ以外の作品を読むうちに好感が醸成された感じだ。そう言ったら文芸の師匠に、ふつうは「人間失格」を読んですごい、とハマるもんですよ、と半ば呆れられた記憶がある。そうか、そうなんだなと笑
話を戻して、これを描きたい、というちょっと反射角の鋭い狙いと、ボケツッコミの会話を維持しつつ、おもろくて、どこかたゆたうような関西の人間関係、個人の雰囲気が活きている気がする。
最近は少し筆致の幅が広がったのかもしれないけれど、いままたこのテイストで書いた作品を読んでみたい気もする。 -
Posted by ブクログ
Xで、『ASDの女性が人との関わりを通して、日常に当たり前にあるものに対して、新鮮に気づきを得たり、感情を得ていく話』といったようなポストを見て、「私はASD傾向があるかもしれない...」とちょうど気に病んでいた私の興味をひき、読んでみた。
ASDのために、人に対しての見方が平面的だったというより、この主人公の育った環境が、人への共感力を育むことに関して異常に欠落していたが為にこうなっただけだよなあ、と感じた。そしてそれは私の心の救いにもなった。
昔から、自分が経験していないことで悩んでいる人の気持ちが分からず、無神経なアドバイスをしてしまったり、共感できないけど表面上共感しているフリをすることに息苦しさを感じていたけど、それも、自分が形成される中で感じていないものは理解できないよなあ、当たり前だよなあ、と思わせてくれた。
守口廃尊がとても魅力的な登場人物で、彼が出てくる場面はつい息を飲んで物語の中にのめり込んでしまった。人間味に溢れてて可愛い人です( › ·̮ ‹ ) -
Posted by ブクログ
ネタバレ2014年発表の西加奈子氏作品。
あらすじについては、巻末数ページにある広告(他作品紹介ページ?)にあるのが簡潔でよかったので引用したいと思います。
旅の初日に盗難で無一文に! 自意識過剰な青年の馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ。
・・・
読後感は複雑でした。
周囲へあわせるとか、空気を読むとか、発言しない相手をおもんぱかるというのは一種の日本の文化でしょうが、それが行き過ぎて苦しむ人がいるのも事実でしょう。
主人公の葉太は、気にしい、というか、自意識過剰の最大級みたいな感じの人。
初の海外旅行にニューヨークを選び、調子にのり、盗難にあう。英語も喋れず、恥もかきたくない、だから白昼堂々盗難にあったけど、そ知らぬふりをして、仕方ないよ、と困り笑いを周囲に振りまく。そしてきっと調子に乗り過ぎた罰だと自らを戒める。
その後も、すぐに大使館に行ったら調子に乗ったアホと思われるのがイヤで日一日とホテルの自室で空腹に耐えつつ、事態を悪化させるみたいな男の子。
ま、最後は助かるんだけど。
読中は、一部はわかるけど、一部はやりすぎだろう、総論賛成・各論反対、気持ち的に乗るに乗れない、みたいな感覚を覚えました。
・・・
巻末に早川真理恵さんという方と筆者の西さんの対談が掲載されていました。
そこで、早川さんは「葉太の気持ちがめっちゃわかる」みたいなことを書いていらっしゃったんですね。メチャクチャ感情移入した、みたいな。
でも私は、逆に「え?あの意識過剰感はむしろ世間の普通なの?」と逆に心配になりました。自分がズレていたのか、と。
まあ私は確かにこらえ性がなくって、若き日は家出もしてしまいましたし、日本での就業時もやはりどん詰まりに詰まって、こうして海外に出て、何とかいま生活ができるようになったポンコツであります。人や周囲に合わせるのは得意ではないです。
葉太のように日本だけにしか住めないという縛りがあったら発狂していたかもしれません。
主人公の葉太のキャラに、気にしいにも程度があるし、なんというか、相談する友人とかいなかったのとか、ちょっと思ってしまいました。もちろん、気にしいに「気にすんなよ」とか言ってもしょうもないことも分かるのですが。
自分の若かりし頃と令和とでは、世情も異なるというのも分かります。が、辛い時は辛いと声を出せばよいし、本当にキツイ時は我慢しても得られることはなかろう、なんなら逃げちゃってもOK、というのが50代のオッサンの感想です。
キツイ時にキツイまんまで耐えてしまう若い子が増えているのでしょうか。
・・・
ということで半年ぶりくらいの西作品でした。
居たたまれないほどの気にしい青年のお話でしたが、自分とはちょっと違い過ぎて、近くに居たら避けちゃうかもとかって思いました。思いもよらない反応をされそうで怖いかも。
世の管理職はこういう若者もリードしなければならない、と思うと、私は窓際で相応だ、そんな人間力これっぽっちもないわ、と納得してしまいました。 -
Posted by ブクログ
【三浦しをん、西加奈子、中江有里、美村里江、宇垣美里、清水由美、山田ルイ53世、塩谷舞、稲垣えみ子、道尾秀介、ジェーン・スー、岡崎琢磨、バービー、朝井リョウ、瀬尾まいこ、佐藤雫、清水ミチコ、あさのますみ、畠中恵、はるな檸檬、小川糸、久住昌之、川内有緒、澤村伊智、朱野帰子、最相葉月、藤岡陽子、森見登美彦】
という顔ぶれの方々が、それぞれ"自身が名店だと思うお店"を紹介している一冊。その店はもちろん実在する店。(現在、閉店してる可能性はある)
いやー、なんか人が好きなお店っていいやんね。好きって必ずしも「ここのこれが絶品!」っていうだけじゃなくって、別に特別美味しくなくても好きってこともあると思うし、そういう好きになったエピソードも沢山書かれてあって「なんかええなぁー」ってなったし「俺ならどこの何を紹介するかなー?」とか考えながら読んでた。
ただ、残念…と言ったらちょっと言葉が重いかもしれないけど、どうしてもみなさんお住まいの関係で東京のお店が多かったように思うから大阪の店もあったらなーとは思った。だって実際行ってみたいやん。
だから、各都道府県版のわたしの名店を出版するってどう?いや、そうしたら北海道とか広すぎて行けない店多数になっちゃうから、各市町村のわたしの名店を出しましょ! -
Posted by ブクログ
どんなことをどんな風に語るかは自由なはずなのに、不思議と受ける印象が近い方も多い。圧倒されたのは、自身の自慰について複数名の方が赤裸々に書かれていたこと。もちろん秘めておくべきかどうかは個人の自由だが、同じことを目の前の男性に言われたらきっと眉間にシワを寄せてしまうと思うので、(こんな性差を感じてどうかとも思うが)そうならないのを織り込み済みの、女性性を逆手に取った表現ような気もする。私のお気に入りはセブンルールで見たことのある藤原麻里菜さん。「もし、技術が発達して、アバターを作って仮想空間で生きれるとしたら、私は女の身体を選ばず、カービィみたいなピンク色の球体を選ぶだろうと思うのだ。そうしたら、女であることの不安や恐怖から解放される。ピンク色でかわいいし。丸くてかわいいし。そういった願望があるけれど、身体からは解放されない。生殖器があるからだろうか。生殖器が私の身体にばっちり組み込まれてるからかな。テトリスだったらセックスしたときに消えそうだけど、そうもいかない。私の身体は消えない。だから、愛するしかないのだ」。
表示されていない作品があります
セーフサーチが「中・強」になっているため、一部の作品が表示されていません。お探しの作品がない場合は、セーフサーチをOFFに変更してください。