西加奈子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
地味だけどジワジワと心が穏やかになるというか安心する感情が広がってくるような作品。
他人の目が気になってしょうがない、ネガティブな思考の女性が主人公。仕事を辞めて四国の島に1人で旅行に出掛けてそこで出会った不思議な2人の男性と繰り広げられる平凡でちょっと不思議な日々。その何の特徴も刺激もないような日々を過ごすにつれて、主人公の過去のトラウマ的な感情や凝り固まった心がほぐされていく。読み進めていくうちに自分の心もなんだがほぐされるような感情になる。
人は誰でも過去の嫌な思い出や、長年凝り固まったネガティブな感情があると思う。そんな感情を昇華させてくれるような作品だった。著者の文章はすごく表現が綺 -
Posted by ブクログ
読み進めるのがすごくしんどい小説だった。
語り手である俺が学生の頃から物語が始まって、家庭が急に貧しくなっていく様子とか、自分がそうなるまでは貧しいということがどういうことなのかに気づかない(気づけない)でいる様子の描写がなんともリアルで、本当にこういうことが起こり得るんだろうなと思った。
アキの劇団の人達が誰も『男たちの朝』を見ていないとわかった時の描写が、むごくて心が痛かった。ずっと一緒にいたのに、本当はいなかったみたいな感じがした。
あと、「苦しかったら、助けを求めろ。」について、それはそうだと思うんだけど、俺はあの時あの環境で、誰にどう助けを求めることができたんだろうか。上司と先輩 -
Posted by ブクログ
主人公の圷歩の両親が離婚して、主人公と姉、母が今橋の姓に代わるところから中巻が始まる。
主人公の歩はサッカー部の高身長イケメンに成長し、友達も多く女の子にモテまくり、順風満帆な毎日を過ごす。一方で、姉はエジプトから帰国後日本の学校に馴染めず不登校になり、サトラコウモンサマというエセ宗教のようなものにハマっていく。
1995年の阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件を経て、サトラコウモンサマが崩壊するとともに、姉の貴子の精神も崩壊し、日本から離れて暮らすために姉は父の新たな赴任先のドバイへ赴くことになる。一方で歩は、大学に入学し映画サークルで活動しながらも彼女を作って学生生活を謳歌する。
文章は -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ美男で運動神経の良い暖かい雰囲気の長男、普通な感じの次男、美しくて雰囲気のある次女、痩せてきれいだった母、落ち着きがあってイケメンの父、家族の支えの賢い犬サクラの話。長男は恋人と文通してたが、恋愛感情的に長男のことが好きな次女が手紙をかくし、兄のふりして彼女に別れ話の手紙を送り破局、その後事故にあって見た目が酷くなり、周りからの視線などに耐えきれなくなり自殺。母はショックから暴飲暴食で太って醜くなり、父は小さく痩せていき逃げた。最後は体調不良のサクラを中心に家族が再度集まり、わだかまりもなくなり、サクラを中心に笑顔が戻ったってはなし。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ2004年デビューの西加奈子さん。彼女の2016年の作品。
米国男性と日本人女性の家庭に養子となったシリア人アイの物語。彼女のガラスのような繊細な心、それを取り巻く周囲と彼女の自身への嫌悪感や罪悪感をざらりと描く作品。
なお、珍しく関西弁が出てこなかった、と思います。
・・・
ということで、本作はアイというシリアが出自の女の子のお話。お父さん(米国白人)、お母さん(日本人)と血のつながらないという設定。
彼女は、雰囲気の読み取りが巧みで、かつ両親の気持ち・周囲の期待も理解する。でも、裕福な家庭で育つことへの罪悪感、シッターを雇うくらいの家庭でのシッターとの身分の違いにとことん悩む、そう -
-
Posted by ブクログ
あなたは、自分の『存在を認識した』瞬間を覚えているでしょうか?
う〜ん、なんとも難しい質問ですね。あまり深く考えると哲学的な質問にもなってしまいそうです。私たちは、この世に生まれ、自分以外の人間との関わりの中に、やがて、自分という『存在を認識』しはじめます。それは、大人への階段を上っていく中では必然とも言える瞬間です。
そんな瞬間の起点はもちろん人それぞれに異なります。何かしらインパクトある出来事がそこに起点を与えてもいきます。それは人の数だけあるとも言えると思います。
さてここに、『5歳の時』に『わたし』の『存在を認識』したと語る主人公の物語があります。まさかの『ドッペルゲンガー』が登
表示されていない作品があります
セーフサーチが「中・強」になっているため、一部の作品が表示されていません。お探しの作品がない場合は、セーフサーチをOFFに変更してください。