西加奈子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
7年くらい前にこの作品は一度読んだことがあったけど、今回再読。
他人を傷つけないように生きようと必死で、そのことに対して卑怯だという自意識がある主人公の人物像や、「今」という奇跡はもう次の瞬間には失われているというメッセージは、他の西作品にも通じるテーマだった。
この作品は他の西作品に比べて掴みどころが分かりづらい?というか、ふわふわしている作品であることは否めない。実際西さんも、あとがきでこの作品は書き始めから他の作品と違ったと明かしているし、「書く、というより描くことに近かった」と表現している。
他の方の感想で、新田人生とはこれまで自分の人生に関わりを持ちつつも強く記憶には残らない人々の総称のようなものではないか、という考察があって、自分が言語化できなかったものをズバリ言い当ててもらえた感覚だった。
自分の生き方に疑問を抱いていた花しすだけど、クライマックスでの不思議な体験を通じてそれまで抱えていた悩みから開放されたようで良かった。 -
Posted by ブクログ
「サムのこと」「猿に会う」「泣く女」の3作が収録された短編集。「サムのこと」は『あおい』で読んでいたので残りの2作のみ読みました。
どちらも嫌な人が出てこなくて、同性間の友情関係を主軸にした作品。
「猿に会う」のまこ、さつきちゃん、きよちゃんの3人はそれぞれキャラが立っていて、ゆるーい内容の会話がほっこりする。終盤の日光旅行前日にまこの妹の妊娠が発覚するという事件が起きたり、旅行中にテレビをつけたらデタラメ占い師が殺人容疑で逮捕されてたりとインパクトが大きい出来事が起こるけど、3人の関係や世界はどこに行っても何が起こってもいつも通りで、周囲から壊されることはない。
太宰治が大好きな堀田とその親友ノリオが太宰治の地元青森を旅行する様子が描かれた「泣く女」。太宰に全く興味がないのに竜飛岬まで文句を言いながら旅路を共にしてくれるノリオも、ノリオが失恋したことを知りつつそのことには触れずにいた堀田も優しいなあと思った。 -
Posted by ブクログ
絶対に忘れたくない、心に留めたい、脳裏に焼きつけておきたい瞬間が、今までたくさんあった。
誰かを意図せず傷付けたこと、わかっていたけど頭で思い描いていたより相手に傷ついた顔をさせたこと、どん底にいるような気分の、どうしようもない私を誰かが救い出そうとしてくれたこと、寄り添ってくれたこと。
絶対に忘れない、と思うのに、記憶はするすると抜けていく。薄情な自分。
この本は難しくてわからなかったけど、上述した私の経験と少しだけ交わるところがあったような気がする。
主人公の花しすにだけ見える、白くてふわふわで全員にくっついている丸っこいものは、ふわふわしたこの小説そのものだし、ふわふわしてガッと核心に迫れなかった、迫りたくなかった執筆当時の西さんの心情なのかな、とか思った。
わからないけど。
わからないけど、去年の5月くらいから私自身もずっとふわふわしていて、毎日ぼんやりと生きている。
何もわからない、自分のこともわからない、この小説のこともわかるようで全然わからない。
でもそれでいい気がしている。
また来年本作を読んだら、また違う解釈をして、またわからなくなるんだと思う。
それでいいと思った。 -
Posted by ブクログ
西さんの初期の方の作品。
今まで読んできた西加奈子作品のなかでもかなりコテコテの大阪弁だったにも関わらず、さくさく読めた。
主人公が女系家族で複雑だったり、友達との恋愛をめぐるちょっとした確執だったり、叔父さんが殺されていたり、殺人犯の妻として生きる葛藤だったり、色んな要素を散りばめているのに、読者に本作をさくさく読ませるとはなんたるや…!
なんでかわからないけど、さくさく読めてしまった。
緑の目に映る活字が、括弧書きで何の脈略もなく登場するのが、緑の視線そのものを想像出来て面白い。発想が天才。
中学生の恋愛なんて興味ないのに、私までコジマケンの動向が気になって仕方なかった。
上沼恵美子は好きだけど、コテコテの大阪のお笑いよりは東京のお笑いが好きで、それは「大阪」と「それ以外」みたいな感じで疎外感を感じてなんだか寂しいから。(海原やすよともこさんなんかは、まさにそう。だからこそ大阪人には深く愛されるのかもしれないけど)
そういうわけて、巻末の西原理恵子さんとの対談には少し不貞腐れたくなるような、軽いヤキモチを妬いてしまったり。
「こうふく みどりの」と「こうふく あかの」と並行して執筆・出版された作品なので、「こうふく あかの」も早く読みたいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
『今まであなたは、いろんな人と関わって、
いろんな人に影響を受けて、与えて、
生きてきて、そしてそのことを忘れてしまって、
でも尚、生きている』
『誰かを愛してるって、強い気持ちがあったら、
その人を傷つけることは、怖くなくなるはず
なんだ』
花しすの考え方や生き方共感できる部分もあった。
忘れてほしくない、けど深く関わって傷つくのも怖い。一方で知らぬ間に自分は誰かを忘れてしまっているし、きっと傷つけてもきたのに。
だからこそ時に相手の望む自分であることや、場の空気を察知して適した言葉や行動をとったり。
現代青年の対人関係の特徴である「ヤマアラシのジレンマ」に通ずるなと感じたし、きっと花しすのような子は沢山いると思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前半は自分には合わなく読むのに時間がかかったが後半から「ふる」の世界に引き込まれ一気に読破した。
姿、性別、年齢、
それらを変えながらもなんども花しすの前に現れる人物。新田人生
人にとって、「人生」とはそんなものなのかな。と思った。
遠くから自分を見つめていて、その存在に時には気づき、時には忘れて、でも忘れたくなくて必死にしがみついている。きっと人生ってそういうもんなんだろうな。と、生きるとはそういうことなんだろうな。と。
P240
愛があれば、誰かを愛してるって、強い気持ちがあったら、その人を傷つけることは、怖くなくなるはずなんだ。
P179
自分たちがなんらかの奇跡の最中にいるような気がして、ならなかった。
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