あらすじ
ロングセラー「さくら」作者のデビュー作。
27才スナック勤務の「あたし」と、おなかにへたくそな地図を彫っている3才年下のダメ学生・カザマくんは同棲して4か月。ゆったりとしたリズムにどっぷりと浸かった生活をしていた「あたし」は、ある日、妊娠していることに気づく。そして、気がつけば、長野のペンションへの短期バイトを決め、そのバイト先からも逃げ出し、深夜、山のなかで大の字になって寝っころがってしまう。そのとき、「あたし」の視野に、あるものが飛び込んでくる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
直木賞作家 西加奈子のデビュー作。
彼女はその授賞式でこう語った。
「とにかくプロレスからはむちゃくちゃ勇気をいただいてます!」
猪木、藤波、長州、闘魂三銃士。
新日本プロレスファンという彼女は、その後の低迷期にも会場に足を運んでいた。
全盛期に比べ寂しくなった東京ドーム。
そこでは棚橋弘至が奮闘していた。
「チャラい」と言われ、ベビーフェイスなのにブーイングを浴び続けた彼の活躍により、リングに熱とファンが戻ってくる。
彼女は、その姿に自身を重ね合わせるのだという。
『太宰で終わった』『最近の作家なんか読めへん』
こんな悪口を目の前で言われても、彼女は小説を書き続けた。
27歳・スナック勤務の「あたし」は、友達の雪ちゃんから恋人を奪ってしまう。
「『悪いのはあたしです。』
そういう言い訳をしては、開き直ってひどいことをする、あたしは本当にずるい人間だった。
そのときだって、雪ちゃんは何も悪くない、悪いのはあたし。そう思う自分に、また吐きそうになるくらい嫌気がさして、同時に、『あなたが悪い』と思った男の子はカザマ君が初めてだということに気付いた」
スナックのママ。
そのお客さんの森さん。
お店近くの書店員のみいちゃん。
傍目から見れば「変わった人」。
でも、みんな自分に誠実でありたいと願っているだけだ。
物語から見えてくる、作者の情熱と誠実さがまぶしく、心地よい。
他に、友達の葬式に参列した仲間たちが初めて知るかれのニックネームの由来「サムのこと」。
明日大阪を出て東京に向かう「うち」。恋人と過ごす最後の夜のラーメン屋「空心町深夜2時」の2短編が収録。
Posted by ブクログ
オチがダークなダークな小説が好きですが、西加奈子だけは、、、本当に読んでいて、「本読むってタノシイな」と思えます。たとえダークでグロじゃなくても!
癒やされる・・・
Posted by ブクログ
出てくるキャラクター一人一人、みんな素直に生きているところが共通していると思った。
ただ、どんなに気が合っても、いざ一緒に生きるとなるとお互い似通いすぎるので関係を保つのが難しく感じることがあるかもしれない。
その上素直に真剣に生きてるから、どちらかが先に辛くなるのかなとも思った。
Posted by ブクログ
物凄く思春期というか、その年代がすごく詰まった小説。言葉や文章の表現がとても面白くて、話の内容よりもそっちに驚かされた印象。P7の「ハチミツみたいにとろりとした木陰」から掴まされて、今読み返してもよく分からないというか想像出来ない。でもその中でも自分が理解出来る文章を見つけると、自分にはない表現を貰えるのでとても面白かった。
飾らない素直な主人公さっちゃんは魅力的で、色々と気付いたり本音を言うシーンが好き。最初はちょっとよく分からない子だと思ったけど、読んでいくうちに徐々に気になる子になっていった。自分が10代の時に出会いたかった1冊。
Posted by ブクログ
個人的な、内容に関する好き嫌いは置いておいて、この人の書く文章と自分の相性がいい、と思った。そう思わされてしまう、上手さ。さらっと読んでしまいました。だからといって、中身ペラペラなのでは無くて、様々な比喩を用いた描写に、心を揺さぶられまくり。
Posted by ブクログ
読み始めたときは、独特の文章に馴染めなかったけど、
読み進めるとすぐに、どっぷり世界観にハマってしまいました。めちゃくちゃ好きだ。
レトロな緑や紫のフィルターのかかったような色彩の
世界で、同世代の私は、ちょっと古着が流行った学生時代を思い出して懐かしかった。
なんだかとてもリアルで息をしているような小説でした。とにかく好きです。
Posted by ブクログ
西加奈子さんの本は、惹きつける力がすごい
読み始めて直ぐ、捲る手が止まらなくなる。妙にリアルで、真っ直ぐで少し生々しい
キャラクターを表す時の比喩が面白いなぁと思った
表題作含む3作全て、もう終わりか…となんだか寂しい思いにさせる
もっとこの人たちの人生を読みたいって思う
Posted by ブクログ
大胆なのか、臆病なのかわからない主人公だな、と思って読み進めてたけど、どっちかじゃなくてどっちもなんだって後半でわかった。
いつも人の顔色をうかがって、心の動きにとても敏感で、ちっちゃいネズミくらい臆病なくせして、時々、一瞬の感情の波に、すべてを任せきってしまうことがある。
窮鼠猫を噛む、違う。面倒くさいというのも違う。
ただ流れに捨て鉢に身を任せるのではなくて、なんてゆうか、一度起こった感情の波を、より大きな波へ変化されるのだ。
Posted by ブクログ
西加奈子さんの作品との出会いは漁港の肉子ちゃんでした。次にサラバを読みその世界観に引き込まれて他の作品も読みたくなりデビュー作であるあおいを読みました。淡々とした普段の生活の中でスローテンポで流れていくストーリーは一歩間違えばつまらなくなってしまいがちですが、西さんの独特で時にストレートな表現力に心をつかまれて気がついたら読みおわっていました。西加奈子さんの本を5冊まとめて買ったので続けて読んでいこうと思います。
Posted by ブクログ
人物にたいする巧みな比喩(Metaphor)表現と、現れるストーリーを多彩にブリコラージュさせ、具象と抽象のバランスが良い、元気な絵画のようなお話し。
Posted by ブクログ
あおいも良かったけど、サムの方が好き。社会からはぐれかけた、属することができない人たちの集まりなので、そのコミュニティでさえ曖昧な形だけど、似た者同士特有の居心地の良さで成り立っている。なんでここにいるんだろう?とみんなから思われていたサムが、実は一番そのコミュニティに自分の居場所を求めていた。仲間内では誰より、社会的に、また精神的に自立しているように見えていたサムも、結局は社会から孤立した存在だったということが最後にわかる。そして、そのことに彼が孤独や劣等感を感じていたということも。だからこそサムは、馴染めない世の中も、そこに加われない自分自身をも肯定も否定もしない友達たちに憧れ、仲間になりたかったんだね。でも仲間という概念自体ないグループなのでサムは結局満たされることはないまましんでしまったっていう切ない話だった。
Posted by ブクログ
西加奈子さんの作品を読むのはこれが初めて。時を経てデビュー作から手にした。選ばれている言葉がとても素直で、饒舌。そんなこと話す?!というような読んでいてハラハラするというかドキドキするというかそんな感覚に陥った。きっと私の中にある隠したい何かを通りすがりで撫でていかれてような感覚だったように思う。それでいて文章は不思議と優しくて、それを許されているように思えて読後感はスッキリ。性描写もなかなか強烈だったけど、いやらし過ぎなく面白みがあってクスッと笑えて面白い。西加奈子ブームが来そうである。そして、誰かと恋の話をしたくなる(笑)
Posted by ブクログ
西さんのデビュー作。
主人公の「あたし」は理由が明確な場合だけでなく自分でもよく分からない場合でも、とにかくその時の感情のままに行動する。その表現の素直さは読者の共感など関係なく鮮烈なインパクトがあります。
もし周りにこんな人達がいたら自分には扱いきれないだろうけど。
Posted by ブクログ
とくになにか物語的に面白いとかはなく、主人公の心情を事細かに描写されていた。心理的描写はとてもすごいと思ったがいまいち自分にはよく分からなかった。これは自分がまだまだ青二才だからかもしれない。30歳ぐらいになってもう一度読み直したら違う感想を持つかもしれない。
Posted by ブクログ
あおい
あたし
二十七歳。さっちゃん。映画配給会社でアルバイトをしている。夜はスナックでアルバイトをしている。
カザマ
二十四歳。一浪して大学に入り、二回留年している。
雪
小さな映画会社で広報をしている。カザマを紹介した。二十九歳。
ママ
スナックのママ。
ミキ
スナックでアルバイトをしている。三十歳。
森
スナックの客。一ヶ月に一度か二度、ふらりとやってくる三十すぎくらいの男。
みいちゃん
風見瑞穂。スナックの近くの本屋で働いていた。辞書担当。
サムのこと
スミ
角。僕らの一つ年上。
モモ
桃子。
キム
金。
ハス
蓮見。キムと恋人同士。
僕
有本。アリ。
サム
伊藤剛。ウェブデザイナー。トラックにはねられて死んだ。
サムの兄
治。
空心町深夜2時
やっちゃん
うち
Posted by ブクログ
傷を負ったが故に、自分が傷付くようなことばかりしてしまう女性の物語。主人公への嫌悪感が強くなりすぎて客観的に読むことができませんでした。逆に、それくらいのリアルさを感じたということかもしれません。
Posted by ブクログ
西加奈子さんの本を初めて読んだのが『通天閣』だった。そんな泥臭い、あまりにも人間的な、作品だった。表題作の「あおい」は最初読み終わったいまいち、印象に残らなかったので、もう一度最初から読み直した。やっぱり印象には残らないのだが、感覚的なものは残っている。西加奈子さんの作品って、言葉で説得して伝えるというより、感覚で気持ちを伝えるような魅力があって、そこが好きだなあ。自分にもこの感覚があるなあと思えたりする。そこから自分の傷とか、欲求とかに気付かされる。だから西加奈子さんの本を読むのをやめられないんだろうな。
Posted by ブクログ
どの物語も短いのに、むき出しのまんまで迫ってくるもんだから、まるでどろどろのゾンビに追いかけられるような感覚になった。悪い意味ではない。
これが芸術なんだろうなという文体で、すぐには飲み込めなかったから、読み終わるのになかなか時間がかかってしまった。「あおい」は特に続きを読みたいのになかなか読み進められなかった。暗い気持ちになるわけではなく、かといって読み終わって清々しい気持ちにもなれない。(私だけ…?)なんとも形容しがたい感情が巡ってくる。読み終えたあとはすこぅしほっとしてひと息つくことができる。
一人称の感じ方だけで物語が展開していく部分があるのを見て、西加奈子さんはかなり自分の世界観を中心にプライベートでも動く人なのかな?と作者のことを知りもしないのに考える。
大体、小説というものは一人称の場合、その人の視覚的な視点で物事が動いているように見せていると私は認識している。けれどそれとは違う展開を活字に興すことができているのが、「これが凡人には成せない技なのか…!」と読んでいて驚愕してしまう。なのに独りよがりの文体にはなっていなくて、ちゃんと読者を引っ張っていってくれるので「あれ?この場面はどうなっているんだ?」とならないのがすごい。
最後の山崎ナオコーラさんの解説。私と同じ考えの部分がある!と大興奮(笑)
物語の締めくくりに相応しい、西加奈子さんを知る作家さんの視点での解説は是非読んでほしい!
Posted by ブクログ
サムのこと が怒涛の展開だった。読み始めは情景が浮かばなすぎて読み飛ばそうと思ったけど、読み進めるうちにサムのことが気になり出した。周りに影響を与えていないようで与えている人間。いいな。
Posted by ブクログ
西加奈子さんのデビュー作。つたないけれど一番透明な作品です、西加奈子。と帯に書いてあったとおり、危うい位なつたなさが伝わってきたが、それがいいのか、シンプルに心に伝わった。ほんとに素直な作品。
Posted by ブクログ
まっすぐで全力で一生懸命
全身で感じて100%でたたかう
みたいな作品だった
登場人物が全員個性的で興味深いおもしろい
絶対に変なのに全員が全員を受け入れている感じ
私は圧倒的経験不足で、何かしてあげたいけど何もしてあげられない。
本を読んでいろんな人の追体験はできるかもしれないけど、実際に経験してみないとわからないことってたくさんある。
そんなときはどうやってその人を支えることができるんだろう。
なんて、どうしようもないことを考えさせられた作品でした。
Posted by ブクログ
西加奈子さん初読みです。
淡々とした日常を描いてるんだけど感情表現が生々しくて率直でこのギャップが、おぉこれが西加奈子か…と思わされました。感想としては共感はできないし、主人公にはもっと上手く生きて欲しいと思ってモヤモヤするけど、読み進める内にそうもいかない背景もあったのだと分かり、最後は希望の見えるカタチだったのがまぁよかったなぁ。
ちなみに西加奈子さんのデビュー作。次は話題作を読んでみようかな?
Posted by ブクログ
西加奈子のデビュー作。表題作「あおい」の他、「サムのこと」「空心町深夜2時」の短編を収録。
・・・
西さんの恋愛ものは難しい。自分の常識に合わない女の子が大概主人公。
裏表紙を見ると、27歳、スナック勤務、三歳年下の駄目学生・カザマ君と四カ月前から同棲し、彼の子供を身ごもる、とあります。
友達ならば面白いんだろうなあとか感じます。でも、私の読み方は自分だったり近しい人を投影して読むタイプ。こういうのが自分の嫁だったり娘だったりしたら・・・それは困りますわ笑。
・・・
散々ウームと(やや否定めに)唸りつつ、でそれでも読んでしまう、西さんの作品。
ふと考えるのは、自分は一体何に惹かれるのか、ということ。
山崎ナオコーラさんが書いている解説にその答えが。
「率直」「みたまんま」。
これです。
「あおい」にせよ「サムのこと」にせよ、登場人物がどうにも憎めない。でそれはやっぱりどの人物も「率直」なんです。私はこういう、思ったことをそのまま伝える人に親近感を感じるみたいです。
もちろん、伝えることには非常な技術が必要であり、その言語力だけは西加奈子レベルでありますからね笑 この言葉のセンス、これが私にとっての西さんの一番の魅力なのかもしれません。
・・・
ということで西さんのデビュー作でした。
恋愛小説が好きな方、純文学が好きな方、西さんが好きな方にはお勧めできる作品です。
因みに私は「サムのこと」が面白いなあと思いました。友人の葬式で初めてその友人の素顔を知るという話です。
Posted by ブクログ
最初はメンヘラ女子のダラダラしたストーリーだけの小説かと思っていた、終盤に向かうにつれて主人公を形成する過去を生々しく描けていると思った。関西弁口調のリズムやユニークな表現で飽きずに読み終えることができた。
Posted by ブクログ
著者のデビュー作「あおい」に「サムのこと」「空心町深夜2時」を収録した短編集。
決して明るくはない恋愛に対して真摯に向き合う主人公の姿が印象に残る作品。真面目に向き合えば向き合うほど、突拍子もない発言をしてみたり、行動をしてみたりするのだろうなと思う。
Posted by ブクログ
独特な世界観。こん風に世界が見えてたら、素敵だと思う。
どんな本なの?って人に聞かれてもうまく説明できるような本ではない。ふわっと、抽象的な本。
Posted by ブクログ
西さんのデビュー作。
収録三編サクッと読み進められ、それでいて、しっかりと読後の余韻が感じられる。表現の仕方にユーモアと可愛さがあって良かった。
Posted by ブクログ
西加奈子さんのデビュー作あおいと、あと2つの短編。西加奈子さんの文章と登場人物の描写が好きで一気に読む。だらしないけど憎めない人を魅力的に書くのが上手だなぁ。さくっと1日で読めた。でも、読み終わるとストーリーは覚えてないな。
Posted by ブクログ
今を見て生きる27歳の女性のお話。こんな感じの人がたくさんいるんだろうなぁ..
★本の概要・感想
西加奈子の処女作である本作。27歳、スナック勤務の24歳の女性が主人公。物語を駆動する何かがあるわけではない。ただ、主人公目線で起きる出来事、主に恋愛事情や変わった友人について語られていく。なので、ものすごい面白いとか、感動した!という類の本ではない。ある女性の気持ちや心理を丁寧に追っていく。ちょっとどうしようもない、だらしないと思われがちのような若い女性って、こんな風なんだろうなぁ。主人公の家に転がりこんでいる彼氏がどうしようもない奴で、頼りないのも良い。そんなダメ彼氏をすごく好き、っていうのがすごくリアル。このものすごいどうでもいい感が、他人の人間関係模様という気がする。どうしようもない人間たちの交流模様を味わってみたいときに読むと良いかも。すごく主観的に物語が綴られるので、感情移入しづらいと、読むに結構エネルギーがいる。共感できないことをガンガン語られるので、そことうまく精神的な距離を取りながら読む必要がある。