あらすじ
「あなたは悪くないんです。」(「燃やす」)「私たちは、この世界で役割を与えられた係なんだ。」(「孫係」)「弱いことってそんないけないんですか?」(「マタニティ」)――さまざまな人生の転機に、まじめさゆえに孤独に思い悩んでしまう女性たちの背中をそっと押して、新しい世界に踏み出す勇気をくれる魔法のひとこと。珠玉の八編、ついに文庫化!巻末に長濱ねるとの特別対談を収録。
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Posted by ブクログ
1番心にのこったのは、孫係かなあ
自分の感情に真っ直ぐに生きられずに相手の期待に応えようとするけどそれって中々難しい
そして相手に対してマイナスな感情が出始めるとそう思うことすらいけないんじゃないかと考えてしまう
けど、係だと思えば、よくできたら係の仕事だと思えば全て楽になる
マタニティも心に残った
周りからどう思われるかなとか弱いままって良くないと思いつう上手く生きていけない
今日会社の帰り道に、車椅子のおばさんを引いて駅まで送った。
その時、周りから偽善と思われるかなとか、私は車椅子を引いてる自分にいい事したって満足してるんじゃないかとか考えすぎちゃった。
けどよくよく考えてみると偽善でも弱くてもそれをみ止めてどうするか考えればいいんだと思った
あと、あねごもよかった
夜やってたからトイレでおしぼりの時のあの感情すごくよく分かったし、共感できた。
周りと一緒に人を馬鹿にする人間になりたくない
Posted by ブクログ
外面だけは良くても内面では自分でも信じられないほど汚い言葉で思考が巡っていて、自分の性格が悪いことに対して落ち込むことがよくあるのですが、「孫係」に本当に救われました。
こういう人間がいてもいいんだって思わせてくれるだけじゃなくって、そこに繋がる考え方とかマインドの持ち方みたいなところから支えてくれるような物語でものすごくよかった。
「素敵ではないです。全然素敵ではない。でも私は大好きでした。」
でボロボロ泣きました。
誰かを傷つけているわけではないのであれば、どれだけ自分の本心と乖離した態度であっても、それを演じることが思いやりであることだってあるし、その努力を誰が悪く言えようか。
その他の短編も、少し心が陰った時に、それでも私は私でいいんだと思わせてくれるような物語ばかりだった。
「マタニティ」が得に印象深い。
今ちょっと無理をしてるかも、とか、自分のこと好きになれないな、とか思っている人に読んで欲しい。
おまじないでありお守りになる一冊でした。
Posted by ブクログ
8個の短編集。どの話も「おまじない」の言葉をもたらす人たちがいわゆる「おじさん」と呼ばれる人たちであるのがとても面白かった。
孫係の内面まで理想形にしようとするから苦しくなる。妻でなく「妻係」、良き隣人ではなく「隣人係」。当番だと思えばいいのだ。立派な人間になろうとしなくていい。肩の力を抜いて、表面だけ、「係の者」として生きて行こうと思うというのがとても心に刺さった。
さらっと読めるのに考えるポイントが多くすごく深い本。個人的には孫係の他にあねごも好きだった。
Posted by ブクログ
西加奈子さんの短編集。フェミニズム的なものをはじめとした社会構造による生きづらさに切り込みつつも、緩やかで現実的な折り合い、落としどころ、救いがあって良い読後感だった。
各話、周りが変わったかというとそうでもないんだけど、でも周りを見る自分自身の眼差しが変わることで、世界の見え方や自分自身への認識が変わってくるような終わり方でよかったです。
長濱ねるさんとの対談もすごく素敵だったなあ。
長濱さん(20代)の「未来のことをすごく考えるんです。いまはまだ生きづらいけど、未来はきっと素晴らしいはずだって。」という言葉に40代の西さんが「ぜっったい素晴らしいよ、わたしが保証するし、保証したからにはそういう未来を作っていかないといけないね。」って返したところを読んで少し泣くかと思った。
こういう……、先に年齢を重ねている大人が、年齢を重ねることで良い方向に向かっていくこと(上記引用とは別の部分で話している)、素晴らしい未来が来ることを伝えていくの、祝福とか言祝ぎという言葉を思い出す、とても好きなコミュニケーションでした。
Posted by ブクログ
「孫係」
いい子でいようとするとしんどいし疲れる。
共感しかなかった。
「ドラゴン スープレックス」
まじないや縁起なんてな、自分で決めるもんやねん。→自分の幸せになるためのものやろ?それに囚われるのはおかしいやんか。
これもそうだよなってはっとした。
良かった。
Posted by ブクログ
女性が感じる空虚や孤独、言いようのない不安を少し軽くしてくれるようなお話でした。
世の中の理不尽さは1人では立ち向かえない。
理解してもらう程の力がない。
そんな悲しみや恐怖を感じた時に読んで欲しい。
自分の苦しみは誰のものでもなく自分だけのもの。でも、似た苦しみを感じたことのある人が世の中にはいる。
理解し合えるはずだから、孤独ではないと思えたなら、もう少し呼吸が出来る気がした。タイトル通りおまじないのような本でした。
Posted by ブクログ
私はかなり歳をとっているけれど、こんな感覚、こんな思いしたことあったな。ってちょっと後ろを振り返りました。電車や街の中で私よりお若い女性の方々をみて、心のなかで、がんばれ大丈夫だよ。そんなこと呟きたくなる小説でした
Posted by ブクログ
女性が主人公の短編が8作品。どれも読んでいてつらいテーマだと感じたが、現実的だった。どの主人公にも共感できる部分がある。同じ経験をしたわけでもないのに「わかる」と思わせる力があるのは、人間のよくある心の動きを描いているということなのかもしれない。
心にグッと爪痕を残したのは『あねご』だった。女性の親族の間で受け継がれる呪いのようなものが、最後の『ドラゴン・スープレックス』で祝福に代わっていた。しがらみも少しだけ愛せるような、不思議な気持ちで本を閉じた。
Posted by ブクログ
生きていく上で数多に散りばめられた決断には、悩みがつきもので。最後に決めるのは自分自身と分かりつつも、うまく筋道を立てられないのが人間というもの。
過去が、家族が、プライドが、時間が、その思考を邪魔してくる。赴くままに委ねる勇気さえない。
不安で堪らない、こうあるべきという常識、踏み外せない道筋。いつまでもそこに佇んでいる自分。
正解なんてない人生の一コマを、どう進んでいくか、その答えはもちろん誰にも分からないし、邪魔なんてされたくない。
このモヤモヤから脱却するには、自分を納得させるしかない。その材料として、過去や家族やプライドや時間を思いっきり使えばいい。
世界でたったひとり取り残されているだなんてただの盲信で、皆孤独を抱えながらも、そう見えないように演じて生きているのが上手なだけ。感性豊かな女性たちの生き様に触れながら、改めてそう気づかせてくれた作品だった。
可愛らしい女の子でも、目線は鋭く彼女なりの空虚な世界を生きる描写がお見事です、西先生。
Posted by ブクログ
燃やす、いちご、孫係、あねご、ドラゴン・スープレックスが好き
対談で気づいたけど、確かにおじさんとかおじいさんに救われる話が多いな
本人を傷つけないことが前提だけど仲間内で悪口を言って笑う時間が必要って、すごくわかるなあと思った。そんな綺麗でいられないからね。
私も気にくわないものを腐す時間がないと生きていけない。
対談の、子供を砂場で裸足でいさせるか靴を履かせるかのくだりがすごく自分の人生観に合ってて読んでて気持ちよかった。
裸足を貫く勇気はないけど正直に自分の気持ちを話したうえで靴を履かせるって子供に対してすごく誠実な感じがした。
素直に自分のダメなところとか弱いところを出して生きる方が楽だよな。わかるわかる。
私もそういう生き方をしてるつもりだけど、これでいいんだなと思えてよかった。
そういうのが顕著に出てるのが孫係とマタニティなのかな。
一番好きなのはドラゴン・スープレックスで、じんわりした温かさとかお茶目な文体が最高だった。
Posted by ブクログ
女性主人公の8つからなる短編集。
個人的には孫係が刺さった。遠方に住む祖父が1ヶ月だけ引っ越してくることになり孫のすみれは自分の家でありながら息が詰まるような感覚を覚える。でも、迎え入れた父母にも、もちろんお世話になる祖父にも誰1人として悪意はないからこそ、そういう感情に後ろめたさが生まれる…といった話。そこで出てきた「役割的にそうせざるを得ない」という考え方はドライだが、生き抜く上で大切な思考だと感じた。
大切なのはその行為が騙して得をしようとしているわけではなく傷つけないように思いやりからくる行動であること。
なるほど、と思いました。
Posted by ブクログ
孫係
おじいちゃまから、役割を演じることを教えられる孫。相手を思い遣って求められる役割を演じる。本当に信じられる人にだけ、悪態をつく。正直なことと優しいことは別。(本人が見るかもしれないネットなんてもってのほか。)
あねご
酒を飲み明るく振る舞っているように見えて、ブスでも相手にしてもらえるよう無理矢理頑張ってきた。酒を飲んで暴れる父は家を出た。キャバクラで芸人で電話すればどこでも酒を飲みに行く見窄らしい父と再会した。お父さんも酒が無いと生きていけない人だった。「あなたがいてくれてよかった。」
オーロラ
恋人が「心の無い場所」へ休暇に行きたいと言い、オーロラの見えるアラスカに来た。オーロラは見えなかった。恋人からは冷められていると分かっている。「戻って来るのはあんただよ。」
マタニティ
子供が出来て不安になる主人公。何でも不安だった。「計画的に妊娠したと思われたらどうしよう」と最初に思うまでに。
「弱い人間でも生きていけるのが社会なんじゃないですか?」
Posted by ブクログ
燃やす、孫係、あねごが特に良かった。その他の話も面白くて、すごく沁みた。
決して壮大ではない痛みや傷に寄り添ってくれるような作品。これはまた読み返したい。
Posted by ブクログ
8つの短編集。登場人物の性格もおかれた状況も様々で、どれも楽しく読んだ。
個人的に一番好きだったのは『孫係』
長野に住むおじいちゃまが仕事の都合で、すみれの家に1ヶ月住むことになった。両親は喜んでいる(特に母親)が、すみれは何だか息苦しさを感じていた。
それは祖父も同じで、二人はお互いに良き祖父、良き孫を演じ、二人でいる時だけ悪態をつくことにする。という話。
確かにこういう風に振る舞っておくべきだなという場面はあるし、自分はこの役割だなと思って動く時もあるから、すごく納得。それが実際の家族間であるというのには少し寂しさも感じるけど。
Posted by ブクログ
孫係と燃やすが刺さった。
「」の中に入れられちゃうってところすごくよくわかるわ。自分を自分として見てくれる人ってそうそう見つかるもんじゃないよね。
Posted by ブクログ
8つの話それぞれに、人の心に突き刺さる言葉がでてくる。これこそがおまじないなんだなぁと思った。
だけど私はそのどれもが、今の自分には刺さらなかった。1番刺さったのは対談で筆者が語っていた自身の人生観そのものだった。これを見てからまた小説を読めば、きっと感じ方はまた変わるのかもと思った。
個人的には孫係で登場するおじいちゃんが大好きです。
Posted by ブクログ
◼️ 西加奈子「おまじない」
ううん、唸らせる短編集。伝えたい何かが心に落ちる。さすがだ。
西加奈子さんは、職場の後輩が好きで、よく貸してもらった。自分でも買って結構読んでいる。ここしばらく、久しぶりにいくつも読んだ。今回は短編集。
「燃やす」「いちご」「孫係」「あねご」「オーロラ」「マタニティ」「ドブロニク」「ドラゴン・スープレックス」の7篇。少女、女の子は女の子であるだけでふつうにしんどい、今回は女の子を描きたかったと巻末の対談で述べている通り、すべて女性が主人公。
コンサバなおばあちゃん、はすっぱなお母さんのもとで育った主人公が可愛さに目覚め、変質者に遭う「燃やす」、2話めはタイトルのごとく何より大事ないちごを育てる年配の男、モデルとして成功した娘は30歳を前にして、幼少の頃親しんだ彼に会いに祖父の田舎へ帰る。
そして、最も反響が大きかったという「孫係」。芯の言葉は伏せるが、仮面は悪いことではない、と改めての定義づけのようなものが響く。そうだよね、と思う。
酒好き、はっちゃけたキャラの女がキャバ嬢を天職と思う。しかし人間ぽいところも、という「あねご」、「オーロラ」はどこかテイストが違い不思議めな話。争奪戦に勝ち付き合った彼氏との間に子どもができ、悩みすぎる女の「マタニティ」。ここまでターニングポイントには厚く薄く男性が関わる。ふむ。
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督が大好きな私は「ドブロニク」の主人公が羨ましかった。子ども、少年の頃プロレスの藤波辰巳をテレビで観ていた私は、タイトルの決め技をどうやってどこで絡ませるんだろうと期待して読み進めた最終話にも関西弁で、印象的な言葉が出てくる。
悪い言葉かもしれないが、腹黒い、というのは社会人なら持っていて当然の資質だと思える。誰だって計算はするし、それでも多くは正直に過ごしてると思う。自分らしさ、は意識しないでも出てくるものであまりこだわったことはない。ふと立ち止まる、けったくその悪いこともついてくる、不安になることもある、微妙な感情を、時には散らしたり、焦点を当てたり、女の子といいつつ、普遍性のある言葉が軸になっている気がする。
設定も突飛だったり、ふつうに裕福で才があったり、離婚が絡んだりと、常にどこかざわざわしたところがあって、親子から3世代、ついには4世代となかなか変化に富んでいて楽しい。日常であるような非日常という面白みもある。年配の女性にたしなめられてるような読み心地。
充実した短編集。さすが上手いなと。他の短編集あれば読みたいな、また。
Posted by ブクログ
寄り添ってくれるお話、というのが本当にそうだと思った。
共感できるというか、してくれるというか。
「燃やす」「孫係」「あねご」「マタニティ」「ドラゴン・スープレックス」割とどの話も好きだし、共感性を感じました。
Posted by ブクログ
どれも自分のアイデンティティーや尊厳に関わるお話。物語を通して何か大きな変化があるわけではないのですが、ほんのちょっとのきっかけ(例えば、テレビの街頭インタビュー中の言葉、とか)で、人生のネガティブ気味だったスイッチが少しプラスに動く…そんな展開が多かったように思います。
派手な起承転結よりも妙にリアルで、「孫係」の話にはすごく共感できました
Posted by ブクログ
燃やす
けいちゃん
お兄ちゃんのお下がりのジーンズ、ジャージがお気に入りで、女の子らしいずぼんは嫌だった。
上のお兄ちゃん
下のお兄ちゃん
お母さん
「はすっぱ」であることを、ほとんど使命にしているみたい。
おばあちゃん
いつもおしゃれをしていた。
お父さん
けいがハイハイをいていた頃に家を出て行った。
背が高く頭が禿げていて髭がぼうぼうの男
裏のおじさん
花壇を手入れしたりウサギの世話をする人のはずだけど、大抵焼却炉にいた。
いちご
浮ちゃん
浮太郎。いちごを育てている。九州の祖父の家の後ろに住んでいた。
私
浮ちゃんとは父方の「遠い親戚」と教えられていた。
弟
孫係
おじいちゃま
長野県で大学の教授をしている。私のママのパパ。
おばあちゃま
私が小学三年生の時に死んでしまった。
私
すみれ。
ママ
パパ
ラブ
コッカースパニエル。
さくら
あねご
私
「イベントサークル」とは名ばかりの、お酒ばかりを飲んでいるサークルに入った。大学一年生なのに「あねご」というあだ名をつけられた。卒業後、食品会社の事務で派遣社員をした。キャバクラで働く。
マイ
園田
キャバクラの常連。
姫香
園田がいつも指名してたキャバ嬢。
お母さん
お父さん
Aさん
俳優。
モリ
芸人。
オーロラ
トーラ
ダンサー。
私
ケイ。会社員。外資系のコスメティックブランドのPRをしている。
メアリ
宿のオーナー。五十代半ばの大柄な白人女性。
マタニティ
私
子どもが出来た。
徳永亮平
田端の大学の同級生。バツイチ。医療系の出版社に勤めている。
田端
徳永を飲み会に連れてきた。
モイ
私が飼っている猫。キジトラ。
ドブロブニク
私
ゆき。大学卒業後に劇団を立ち上げた。
梨木陽平
劇団の主宰。
吉岡
劇団の初期メンバー。
ドラゴン・スープレックス
おばあちゃん
信心深い。本当はひいばあちゃん。
私
樹絵瑠。おばあちゃんには喜恵と呼ばれている。
おっさん
元大学教授だったとか研究者だったとか。
ママ
ダミアン
ママの彼氏。ジャマイカ人。
裕子
ママのママ。
Posted by ブクログ
いつも読んでる本は男が主人公なことがほとんどだったてことに気づいた。孫係の優しさの話は確かになーて感じ。普段読まないような系統の本読むのもありだなと。
Posted by ブクログ
この人の描く女性の弱さと強さ、一人で抱えてぐるぐるまわる思考のなかから、おそるおそる前に進んでいく、正解とかわかんないけど、なんとか腹をくくろうとする、そんな悶々としてる思考がとても自分に重なり近い感覚。
特に子供から大人になる頃の、周りの目線とか溜息とかにすごい敏感で、なんか自分がいるだけで悪いことしてるような、自己肯定感の低さ。わかるわ〜。
Posted by ブクログ
西さんの本は初めて読んだ。
はじめの方、生々しい感じで重たい内容かと思いしばらく読むのを休憩していた。
読み進めていくうちに面白くてスラスラ読めた。