米澤穂信のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
自分が生まれた世界と自分の代わりに誰かが生まれた世界を比べて後者の世界の方が良かった時、、私なら生き直すことができるか。
この物語は主人公リョウと何らかのきっかけで別次元に生きる姉サキと出会い、姉が生まれた世界を3日間体験する。
読み終わってターニングポイントとなった部分をいくつか読み直したら、作者が伝えたかったことがクリアになってきた。
リョウは何事も受け入れるが性格は卑屈。
対してサキはお節介で想像力が高い。
サキに関わる人達は本人の意思に関わらずサキから何らかの影響を受けてその後の人生が変わっていく。サキと3日間過ごしたリョウはサキから受け取った何かで人生を好転していくことができるか。
ボトルネックが示すものを自分なりに解釈した時作者の意図が腑に落ちた。
ただのパラレルワールドではない。今の自分は自分が作り上げた世界で生きてるとしたら諦めずやれることはいくらでもあるではないか。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ私はアニメ化した小山内さんの像を追いかけるために、原作を追っているところがあるのだが、なんと「秋季」と「冬季」の間は、15年も!
そりゃ半生かけて追っている人も多いだろう。
筋はもうわかっているので、確かに叙述トリックなところがあるなとか、小鳩くんの内面とか、楽しみはいろいろ。
「おわあ、こんばんは」(萩原朔太郎「猫」)を引用しちゃう小山内さんとか。
個人的には、各章の題が、きっとミステリのパロディなんだろうな、でもロマンチックだな、と。
特に「黄金だと思っていた時代の終わり」の後に「報い」って、すごい。
今読む読者なので、すぐに「倫敦スコーンの謎」に手を伸ばせるのだ。
【目次】
序章 小市民空を飛ぶ
第一部 狐の深き眠り
第一章 置き手紙によると小山内さんは
第二章 わが中学時代の罪
第三章 わたしたち本当に出会うべきだったのかな
第四章 小鳩くんと小山内さん
第五章 秘密さがしにうってつけの日
第二部 狼は忘れない
第六章 痛くもない腹
第七章 乾いた花に、どうぞお水を
第八章 幸運のお星さま
第九章 好ましくない人物
第十章 黄金だと思っていた時代の終わり
第十一章 報い
終章 小市民は空を飛ばない -
Posted by ブクログ
伏線の張り方が秀逸で、ミステリーとしての巧妙さと、ジャーナリズムの倫理や責任を問う重層的なテーマが絶妙に融合した、読後に深い余韻が残る一冊。
些細な描写や何気ない会話の中に、さりげなく伏線が散りばめられており、気づきにくいのに、後になって回収された瞬間に「あぁ、なるほど」と納得する。
そんな心地よい驚きが何度も訪れる。
加えて、舞台となるネパールの情景描写が非常に緻密で、異国情緒が鮮やかに立ち上がってくる。
カトマンズの喧騒や、埃っぽい空気、独特の色彩までが目に浮かぶようで、そこにいるような没入感があった。
また、単なるミステリーとして完成度が高いだけでなく、深いテーマを内包しており、主人公のライターをフィルターに、「ジャーナリストは何のために情報を発信するのか」「ジャーナリズムとは何なのか」という問いが投げかけられる。
良かれと思って書いた児童労働の記事が、結果として工場労働者たちの生活を奪ってしまう皮肉。
そこに込められた「自分に降りかかることのない惨劇はこの上もなく刺激的な娯楽」という一文は、非常に鋭く印象的だった。 -
Posted by ブクログ
古本屋にて購入。米澤穂信を読むのは2冊目。淡々と話は進んでいき、いつの間にか話の渦に巻き込まれている。そんな印象。後半になり、前半の淡々とした情景の中に多くの伏線が散りばめられていたことに気付く。1文字たりとも流し読みできない。読み終えてしまってから「あっ」と思う。ネパールの国王一家殺害事件は史実なので、途中でその史実をWikipediaで調べた。調べてから再び本書に戻っても、やはり事件関係者の名前がこんがらがってイマイチ頭に入らない。しかしまぁ、それでも『王とサーカス』の面白さには影響しない。最後のどんでん返しも、どうだ!どんでん返しだ!と言った印象ではなく、これも淡々と明かされる。そう、このお話はずーっと淡々と進んでいく。主人公である女性の性格が、何か感情の起伏があっても顔にはでないと言う設定なので、あえて文章もそのように作られているのかもしれない。書きながらそう思えてきた。でも、面白いよ。この本は。また米澤穂信の他の本も読んでみよう。
-
Posted by ブクログ
裏切りの捜査線
警察ミステリーをテーマにしたアンソロジー。
お見通し 米澤穂信
有名な芸能人のコンサートに殺害予告が届く。警察はコンサート会場付近の公園で過去に逮捕歴のある男を見つけ取調べをする。そして公園からは男が以前に持っていたものと同じナイフが発見される。
警察官の葛と丸山の酒の席での会話だが、警察官同士受け持っている事件の共有は出来ないが、偶然という形で丸山は葛に今回の事件の不満点を相談する。ある意味後味の良い作品であるが、米澤穂信独特の短編描写が見受けられとても面白い作品だ。
何故、「ナイフがその場所から見つかったのか」という一つの疑問から衝撃の理由に連なっていく。
メゾン・イニシェの怪 方丈貴恵
怪異、オカルトに執着する警官生駒と事件を受け持つ八条とのやり取りを通して、過去に殺人事件が起きたマンションで発生した事件を解決していく
生駒は時々鋭い指摘をするが、目線がオカルトに流れてしまい推理は的を得ない。八条は生駒の指摘を受けながら正しい道筋を組み立てていく。
最後、怪異についてもっと取り上げて少しオカルトチックに終幕した方が物語としてはオチを作れたのかと思う。警察ミステリーとは少し違った印象。
プライドの隙間 荒木あかね
警察署内で警察官の拳銃自殺が発生。そして死体の腰からは拳銃が盗まれている。警察官として日々の生活、特に拳銃の訓練に対して嫌な印象を持っている糸瀬は、余り表情は豊かではないが徐々に打ち解けてきた女性警官の高比良と共に無くなった拳銃の捜査を通して警察内部の陰険な部分と向き合いながら真相に近づく。
前日に荒木あかねの短編集を読んだばかりであり、今作のペアについても負けず劣らずの良いチームである。結末はシンプルだが人間関係を通じて面白さがあり、満足する作品だった。
家につく猫 松嶋智左
犯罪の匂い、雰囲気を嗅ぎ分けることの出来る刑事が些細な事でコンビニで買い物をしている老人の行動に疑問をもち、色々理由を付けながら老人の家を尋ねる。警察官の瞳と隼太かのペアがいきなり閉じ込められている所から始まり、謎の四人家族とのやりとりを取り上げる。
珍しい作風だと思うし、登場人物も面白いが、動機の部分が少し違和感があり犯人への恐怖感、緊迫感が物足りなかった。こういった作品はシリーズかされていると魅力がますので、後日調べてみたい。
コールバック 芹沢央
いじめ捜査を依頼された探偵。該当の学生を見張っていると同じように学生を尾行している男性を発見する。学生のいじめは行われているのか、そして、学生を尾行する謎の人物は何者か。
物語としては対象の学生が隠している真実を紐解いていく様な流れだが、ミッシングリンクがわかるとかなり深い話になる。子供は余りにも残酷であり、些細な事で人生を破壊された人間が、最後に驚きの行動をする。
警察を定年退職した正太郎が主人公であり、老年にある落ち着いた探偵である。若いバディ役ではなく、作風として終始重厚な形になっており今作にぴったりの探偵だ。
今作は、短編でありながらかなり骨太な作品。長編だったら何日間かはシリアスな作品を読みたくなくなる良作。定期的に摂取したくなる作風だし、もっと陰鬱な結末でもよかった。
-
Posted by ブクログ
舞台設定や、それぞれに配られる固有の凶器といったデスゲームとしてのワクワク感があり、エンターテインメント小説としては結構面白かった。
ただ、デスゲームのルールがガチガチに固まっているのが裏目に出ているように感じる。謎解きが「複雑なパズルのピースを手探りで探していく」ようなスリルに乏しく、どこか消去法的にピースを埋めていくだけの作業になってしまっており、トリックに対する驚きなどは全くない。
このようにミステリー要素が物足りなかった分、人が殺されても、犯人が分かっても、心の底から引き込まれるような衝撃はなく「へーそうなんだ」くらいの感想しかなかった。そのため、解決編に差し掛かってからの失速感は否めない。
トータルで見れば、本格ミステリーというよりも、人狼ゲームを傍から見るエンターテインメント。
-
Posted by ブクログ
ミステリーのアンソロジー。色んな作家をお試しで読めるな、と思って古本屋で買った。たまに思い出したように行く小さな店。今回は、店主のマダムがしばらく留守にしていて、代わりにお客さんが「ちょっとそこまで出かけてらっしゃいます」と店番代わり。どうしよう買おうかなぁ、今日はやめようかなぁと思いながら、いつもは店主の背中側にあってなかなか手が出せない棚をじっくり見たりしていると、掘り出し物を見つけたり。やっぱ待つことに。おかげで買い過ぎず、少な過ぎず、良い本を買えた。
さて、いきなり1話目からどんでん返し。これはやられた。短いこともあり、読み終わってすぐにまた冒頭から読み直した。乾くるみ『夫の余命』。2話目は凶器が何なのかがずっと分からない、と話が進んでいく。えー、絶対あれでしょー簡単簡単、と思ってたら、全然違った。米澤穂信『崖の下』。3話目、コロナ絡みの将棋の話。将棋の投了の時の作法のようなもの、初めて知った。この本は2021年発行。まだコロナ禍だなぁ。芹沢央『投了図』。4話目は詐欺と殺人。これがいちばん純粋に推理小説だ。大山誠一郎『孤独な容疑者』。5話目、あぁぁ私パズルとかクイズとか苦手なんよー。だからなかなか理解できなくて何度も読み直した。苦手だった数学の文章問題なんて思い出してしまった。けど、ただのパズル問題に奥深いストーリーをくっつけるの、けっこう好き。有栖川有栖『推理研VSパズル研』。トリは辻村深月『2020年のロマンス詐欺』。振り込め詐欺に巻き込まれていく大学生(田舎からでてきたばっかり)のシーンはちょっと読んでてイヤだった。絶対ダメなやつだ、と読者としては分かりきってる深みに落ちていく主人公を見てられないというか、そう言うシーンは嫌いなのだ。でも意外とラストは爽やかな、後味の良い、読後感の良い話です。こんなオチもあるのね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作から一年後。
アニメ「小市民シリーズ」でいえば、第1期後半、第6話から第10話まで。
確かアニメを見たときは、え、10話で終わりなの!? こんなヤベェ女子教えてくれたのに!? 半年も待たせるなんて! と悶えていた。
以下セルフ引用。
@
テレビで全10話視聴。
米澤穂信でアニメといえば京都アニメーションの「氷菓」だが、本作は比較されてもしかたない状況を頭抜ける試みをいくつもしている。
・シネスコサイズ。
・会話シーンにおける、背景の移り変わり(イメージ映像ふう)。
・声優の芝居。
・設定や時間的前後関係の説明を排した、あえて不親切な作劇(互恵関係云々)。
そのどれもが好み。
そしてえるたそが天使とするなら、小市民だって? いや大悪魔じゃん、といいたくなる小佐内ゆきの凄みよ!
結局キャラ萌えかと思わないでもないが(自分に対して)、台詞も美術も演出も、すべては小山内さんのデモーニッシュを際立たせるための要素なんじゃないかと思うくらい、凄い。
各話ごと数話ごとに落ちがつくのに、小山内さんの内面や企み「だけ」が見えない……ゾクゾク。
ミステリは晴れても小山内さんの闇だけは深みを増していく……ゾクゾク。
来年春には2期が始まるらしい。
それまでに原作を読むべきか……悩ましい。
ちなみに小山内さんを演じる羊宮妃那さん、ちょうど同じクールの「真夜中ぱんチ」で譜風を。
未見だが、「僕の心のヤバイやつ」で山田杏奈を。
なんていい声なんだ……。
監督の神戸守さん、宮崎駿「風の谷のナウシカ」制作進行で業界入りしている大ベテランだし、たぶん職人的な人だと思うが、
自分が知る中では「エルフェンリート」、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」、「すべてがFになる」、「約束のネバーランド」といったスタイリッシュな作品を監督している。
作家性云々を超えて、いいものをよりいい形でアウトプットしなおす人、と見たい。
@
あ。キモいな……。
小説ではさすがに落ちついて読み終えたが、そのぶんビターな感情に。
いわゆる互恵関係の解消の顛末が、この一冊を通じて描かれる。
それを経て逆に、今までの関係のある意味での良さが照射されるのだ。
また、あるブログで教えられたのだが、一見して日常の謎から始まった話が、非日常性を隠し持っていた、という展開を経る、と。
確かに犯罪よねハッキリと、という事件や、え、それってもっとヤバくね、という企みが露わになり、もう日常性からは大きく逸脱している。
また同時に、名探偵ふたりの構図では決してなく、むしろ「名探偵対"怪人"の物語」の構図になる、と。
確かに……それこそ「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士も思い出せるくらいに。
思えば遠くへきたもんだ……、そしてアニメ2期も見たから知っているが、もっともっと遠くへいくんだ……。 -
Posted by ブクログ
お恥ずかしながら日本史には疎いもので、荒木村重なる武将も初めて聞いたくらいです。なので、史実からの結末がわからなかったのが返って〝ミステリを読む〟としては良かったのかもしれません(さすがに黒田官兵衛は知ってました)。
連作ミステリのようでしたが所々なんだかモヤモヤするところがあって(悪い意味ではなく)、読んでるうちに自然と村重の視点に立たされてる感じがし、最後にはモヤモヤが繋がっていきます。
読み終わったら映画を観るつもりでしたが、血や色々なモノが飛びそうなので私には映像は無理と悟りました。
ストーリーには関係ないですが、私にはわからない漢字や言葉が多くて、最初は調べてましたが途中で断念してとばしました。漢検受けようかな、と思いました。