米澤穂信のレビュー一覧
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ネタバレ村重が官兵衛を殺さなかったために人質を殺すと考えなかったように、官兵衛も子の恨みで村重の名を貶めることで城内の多くの者を殺すと考えなかった。
間違いなく頭の回る村重やそれを超える官兵衛でさえも見落としはっとする。
執着は恐ろしい。
因果が巡り波のように大きくなって、挙げ句多くの者を殺すことになった有岡城。
官兵衛が彼らを殺したのが自分だと気づいたとき肝を冷やす一方で村重に松壽丸を殺されたのだからとバランスをとっていた。
落城後、松壽丸と再会したときの描写は歓喜と安堵であったが殺した者たちを振り返らない官兵衛ではないだろう。松壽丸は生きていた、バランスは崩壊した、逃げ道がなくなった。後に -
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小市民シリーズ第2弾。
前作以上にたくさんの甘味が登場し、どれもこれも美味しそうでとてもお腹が空いてしまった。
小市民であるために互恵関係を結ぶ小鳩と小山内だが、きっかけさえあれば内に封印している狼と狐がすぐに顔を出し愉悦する。
己に潜む獣を飼い慣らせていない2人の衝突を描く終章は、小山内さんの淡々とした言葉の中に激しい憤りややるせなさを感じて悲しくなった。
やられたら倍返し精神は大好きなので個人的には小山内さんにはそのままでいて欲しい...
2人の目指す小市民像を見失った次作の展開に期待。
以下余談。
小山内=狼があまり腑に落ちなかったのだが(狼はガサツで凶暴なイメージだったので.. -
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冒頭から小鳩君と小山内さんが堤防道路を歩くところからスタート
そしていきなり小鳩君がひき逃げされてしまい入手してしまう!
そこから物語が始まっていくが、小鳩君の3年前の
中3の頃のエピソードも回想されながら進展する
中3の頃に小鳩君と小山内さんが出会い、そこで今の高校の互恵関係になっていくという、小市民シリーズの肝が丁寧に描かれている。
中3の頃に起きたクラスメートの日坂君が巻き込まれた事件を小鳩、小山内ペアで解決しようとするが
意外な点まで掘り下げてしまい、これが、小鳩君と
小山内さんが小市民になろーと誓うきっかけだったのかと納得できた。
小山内さんの探偵っぷりも素晴らしい -
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一度無人になった集落を蘇らせるべく、移住促進のプロジェクトのお話
以下、公式のあらすじ
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一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。
山あいの小さな集落、簑石。
六年前に滅びたこの場所に人を呼び戻すため、
Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。
業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。
人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香(かんざん・ゆか)。
出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和(まんがんじ・くにかず)。
とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣(にしの・ひでつぐ)。
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ネタバレ図書委員の堀川と松倉は、ある時本に挟まっていた高そうな栞を見つける。
その栞は押し花で作られていたが、使われている花は毒性のあるトリカブトだった。
さらにその栞を狙う美少女、瀬野が現れて……。
中盤まではちょっと退屈かも、と思っていたのですが、後半になるにつれて徐々に全貌が見えて楽しくなってきました。
終わりは若干のビターエンド。スッキリ爽快ではないけど、謎はきちんと明かされますし、その後は瀬野さんの物語として二人の手は離れるという感じなのでしょうね。
シリーズものの2作目ということで、最初の方も読みたくなりました。面白かったです。 -
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4年前に読んだ「本と鍵の季節」の続編。前作は短編集だったが、今回はがっつりと長編。
高校2年の図書委員、堀川次郎と松倉詩門が、返却本に挟まっていた押し花-猛毒を持つトリカブト-の栞に気が付いたところから進むお話。
堀川と松倉に加え、「栞は自分のものだ」と近づいてきた同学年の女子・瀬野の三人がそれぞれの事情から一緒になって栞の出どころを追う。
同じ目的を持つ三人だが、それぞれの思惑からどこかに“嘘”を塗しての行動に、互いにそれを暴き合いながらあるいは自ら胸の内を晒しながら、それでも協力して真相を手繰り寄せていくお話の展開が楽しめた。
長編なのでそれぞれに絡みが多く、堀川と松倉の掛け合いの息も合 -
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ネタバレふたつの可能世界、「自分が存在している世界」と「自分が存在していない世界」。
自分がいないほうが、世界が良い方向に向かっていくという事実をいくつも突き付けられていくのがとても残酷。
自分が、ボトルネック(=阻害するもの。排除されるべきもの。)だと理解するところなんて痛ましすぎる。
⋯なんだけど。
起きたことは仕方がない、受け入れるしかない、と全てに対して投げやりだった彼が「自分が存在していない世界」で数日過ごしたことで、結果として自分自身とあれだけ向き合うことになった。
もう生きていたくないと思ったとしても、
母からあんな衝撃的なメールが届いたとしても、
きっと彼は今までと違う生き方