米澤穂信のレビュー一覧
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小市民シリーズ三作目で初の長編。夏期で描かれた小鳩と小佐内の互恵関係の変化。それが二人に何をもたらし、どう展開したのかが描かれる。
相変わらず光るのは心理描写で、細かな心情説明があるわけではないのに、読み終える頃には登場人物たちの抱える悩みや、倫理とエゴの衝突、人間関係の複雑さについて考えさせられる。それらは多くが青春特有のもので、大人になれば大したことではなくなるのかもしれないが、青春の痛みは形を変えて残り続けるのだと思う。
主人公たちだけでなく、登場人物それぞれが等身大の役割を持っていて、それがたった二人の限られた視点だけで描かれていく点も興味深い。
物語を駆動するのは放火事件で、ミス -
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恋人を東尋坊での事故で失った過去をもつ機能不全家庭で育った主人公が、再びその地を訪れたとき、パラレルワールドへと飛ばされてしまう。そこにあるのは産まれる運命にはなかった姉の存在、そしてその友人として存命の恋人の存在であった。
元の世界と迷い込んだ世界における「異なる点」や「同じ点」などが明らかになっていく中で、明るみになっていく恋人がなぜ主人公に惹かれたのか、そして恋人の事故はどうして起きてしまったのかが伏線回収とともに丁寧にかつ若々しく描かれていた。
タイトルにもある「ボトルネック」、元の世界において機能不全の両親、失ったどうしようもない兄、失った恋人と失うことが多かった主人公が迷い込ん -
Posted by ブクログ
普段ファンタジー読まないし、中世ヨーロッパ?の話も読まないのでそんなに興味無かったのですが、米澤穂信の黒牢城がとても良かったので(普段戦国小説とか歴史小説全然読まないけど、丁寧にわかり易く、かと言って自然な感じで凄く良かった)、折れた竜骨も読んでみようと思いました。
予想通り、普段読まない私でもとても読みやすかったです。中世ヨーロッパのファンタジーでミステリが成立するのか…!?って感じですけど、今のところすーっと違和感なく読めてます!!
タイトルの意味がまだ?????って感じなのですが、これから回収されるんでしょうか?ワクワク!
とても良いところで終わったので早く下巻も読みたいです! -
Posted by ブクログ
甘美で陰惨なミステリ小説。
読書サークル「バベルの会」に集う名家のお嬢様を軸に繋がりを見せる5つの短編集。
現実逃避したい、読書モチベを上げたい、そんな方におすすめです。最高に浸れます。
それぞれの話は独立しているものの、ひっそりと繋がりを見せて、どの話も救いはなく残忍で恐ろしい。甘美な世界観に読者を惹き込む力強さ。目を背けたい内容ではあるが、ページを捲る手が止まらない魅力の詰まった作品でした。
悔しいのは自分にもっと教養があれば、作品全体を更に吸収して楽しめたと思う。どの話も魅力的で飽きさせない展開が待っているため、時間を置いて再読したいと思います。
自分が好きな話は「北の館の罪人」