米澤穂信のレビュー一覧
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6つの話が入ったミステリー短編集。1つ1つの話は短いのに非常に読み応えがあった。
何か悪いことが起こりそうだけど、先の展開が全く読めない。人の悪意に気付いた瞬間はホラー作品よりよっぽどゾッとする。
6つの話の共通点は「他人には理解できない信念」ではないかと思う。1番大事ものを守るためには罪すら犯すが、その大事なものは他人には到底理解できない。
特に好きだったのは以下の2話。
殉職した警察官の行動を振り返る「夜警」
親権をめぐって娘達が画策する「柘榴」
この2作の登場人物が1番共感できないから恐ろしく感じ好きだった。
「万灯」は6話の中で1番長く書かれているので、その分主人公に感情移 -
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ネタバレ「夏期限定トロピカルパフェ事件」のラストを経た小鳩くんと小山内さんがどうなったのか気になっていたが、それぞれの人間関係に変化が訪れていた。しかしながら、互恵関係は解消されたはずなのに、多分に小山内さんの策略(?)によって、ふたりは間接的に関わり始めていく。その背後では、連続放火事件が次第にエスカレートしていて不穏だ。
頑張って小市民に「擬態」しようとするけれど、魅力的な謎が彼らを離さないみたいである。小鳩くんがデート中に思わず謎解きをしてしまうのには呆れるし、小山内さんは相変わらず読めなさ過ぎて怖いし⋯
新キャラの瓜野くんも推理力(を補強する取材力)が高くてすごいが、気負い過ぎて暴走して -
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『栞と嘘の季節』
美しくも猛毒を秘めた、青春の忘れもの
刹那的な犯行動機
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
神聖な図書室で生まれた事件
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
青春の忘れ物。大切なこと
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
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1.始まり
高校の図書室。静寂と紙の匂いに包まれたその場所で、物語は静かに、しかし不穏に幕を開けました。
物語の発端は、返却された本に挟まれていた一枚の栞でした。
図書委員の男子生徒2人が見つけたその栞。
押し花のように挟まれていたのは、なんと「トリカブト」。そう、致死性の毒を持つ植物です。
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2.動きだす物語
「誰が、何のために?」
2人は持ち主 -
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ネタバレ古典部シリーズや小市民シリーズのような、米澤作品とは違った毛色の作品。でもめちゃめちゃ面白かったです!
ちょっと、ホラーというか、意味が分かると怖いというか、ゾクゾクするというか。本当に同じ著者なのかな?と思ってしまうほど作風が異なります。ですが、通常では思いつかない言い回しだったり、作り込みだったり、あぁやっぱり私は米澤作品が大好きなんだなと再認識させられる素晴らしい作品でした。『玉野五十鈴の誉れ』の最後の一文とか、特にヤバすぎてゾクゾクです!!
タイトルが秀逸ですよね。タイトルがコンパスであり核心であり、そしてクールで的確。楽しませていただきました。 -
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面白かったです。
歴史を舞台にしており、そこでのミステリーとはどのようなものか知りたくて読み始めました。
正直、読みはじめてから暫くは文体や時代に慣れていないのか全然ないページが進みませんでした。全く面白くなくて何故人気なのか分かりませんでした。
でも諦めずに読み進めて良かったです。途中からとても面白かったです。それこそ終盤はページをめくる手が止まりませんでした。
変な視点かもしれませんが、歴史上の人物もこういうチームリーダーや管理職のような悩みを抱え手いたのかもしれないなと感じました。
終盤に様々な話が結びついていったり、主人公の生き様というかドラマが読んでいてとても面白かったです。
ミステ -
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日常の中で起きる殺人や企みに関する短編集。
探偵役みたいなものは存在しないことが多く、主人公が密かに気付くスタイルがほとんどを占めていた。それぞれ、立場や職業は違うが淡々と綴られていてすっきりとした印象を受けた。あまり短編同士に共通点はなく、大きなテーマ性のようなものも感じなかった。
「柘榴」や「万灯」はあまり好きではなかったが、「死人宿」、「関守」、「満願」は好きだった。「死人宿」は人のできることの限界を思い知らされるような最後が好きで、「関守」は伏線回収が過去の逸話も絡めてなされる鮮やかさが好きで、「満願」は下宿先の奥さんの心遣いや風景描写が好きだった。 -
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小市民シリーズ三作目で初の長編。夏期で描かれた小鳩と小佐内の互恵関係の変化。それが二人に何をもたらし、どう展開したのかが描かれる。
相変わらず光るのは心理描写で、細かな心情説明があるわけではないのに、読み終える頃には登場人物たちの抱える悩みや、倫理とエゴの衝突、人間関係の複雑さについて考えさせられる。それらは多くが青春特有のもので、大人になれば大したことではなくなるのかもしれないが、青春の痛みは形を変えて残り続けるのだと思う。
主人公たちだけでなく、登場人物それぞれが等身大の役割を持っていて、それがたった二人の限られた視点だけで描かれていく点も興味深い。
物語を駆動するのは放火事件で、ミス -
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恋人を東尋坊での事故で失った過去をもつ機能不全家庭で育った主人公が、再びその地を訪れたとき、パラレルワールドへと飛ばされてしまう。そこにあるのは産まれる運命にはなかった姉の存在、そしてその友人として存命の恋人の存在であった。
元の世界と迷い込んだ世界における「異なる点」や「同じ点」などが明らかになっていく中で、明るみになっていく恋人がなぜ主人公に惹かれたのか、そして恋人の事故はどうして起きてしまったのかが伏線回収とともに丁寧にかつ若々しく描かれていた。
タイトルにもある「ボトルネック」、元の世界において機能不全の両親、失ったどうしようもない兄、失った恋人と失うことが多かった主人公が迷い込ん