【感想・ネタバレ】王とサーカスのレビュー

あらすじ

2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは? 『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生を左右する大事件に遭遇する。/解説=末國善己

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Posted by ブクログ

本作も教養溢れる米澤穂信作品。「ミステリ」として捉えると中盤まで何も起こらず少々地味であるが、終盤全てを理解した時の衝撃はとてつもなかった。この作品は永遠に心の片隅に存在すると思う。真実は1つの側面からだけではわからない。情報を発信する側に立つ時も、受け手側にいる時も、情報の真偽や、その情報が与える影響を主体的に考えて行動したい。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

初めは、人との触れ合い的な感じで、淡々と進んでいったのですが、主人公に降りかかった事件の真相が、明かされていく過程がワクワクスリルで面白かった。種明かしは、悲しかった。でも、やはり、日本にいるとなかなかわからない「貧しい」の基準が違うよね。先進国が、良かれと思ってやっていることって、本当にその国のためになるのかとか、考えさせられた。そんな中でも、少年と主人公の中に愛のような思いやりのような、友情だとか信じるものとか、そんなものが、ほんの少しあったのかな。憎しみや悲しみがあったとしても、人と関わるってことはそこに、何かがあるのかな。ネパール王族の殺害事件が、物語の下地にあり、それを取材するときに主人公にふりかかってきたことの謎解きでした。ネパールのこと、あまり知らなかったので、そのあたりも興味深く読みました。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

ミステリーの中の人間ドラマでした。
ジャーナリズムとは何か、中堅記者の主人公が身の回りで起こる事件に巻き込まれながらも、ひたすら考え抜く姿勢がとても好きだなと思った。
この時代は、まだ1人一台携帯電話を持っていない時代。情報はテレビ、新聞、ラジオ、雑誌に頼るしかなく、今より拡散もされにくい。
そんな主人公がまさに国際的な大事件の最前線にいる。冷静も持ち合わせながら、行動力もすごい。そのモチベーションは、記者としての使命感なのか、出世欲も垣間見えるのが人間らしくていい。
自分が報道する意味を問われ、悩みながらも、最終的に答えを見出す。
ミステリーとしてももちろん、こういう人間ドラマも熱いところが米澤穂信らしい。

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2025年11月15日

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全く予備知識を持たないまま読んだが、まさか実際に起きたネパール王族殺害事件から始まる小説だとは思わなかった。
ネパールという国につき国名と位置関係くらいしか知識を持ち合わせていないため、地図を見ながら、知らない風俗を確認しながら、なるべく想像しながら読んでみた。
いろいろなテーマが並行している中、壮大かつダイナミックなミステリに引き込まれた。
米澤穂信さんの作品については、重苦しい内容なのだが読み進めずにはいられない、という印象だが本作も同様に期待通りの内容だった。
特に印象に残ったのは以下の2点だった。
・ラジェスワル准尉の考え方=自分に似た考え方
・主人公の近況にて「疑い、調べ、書き続けている」
解説では「真実の10m手前」が時系列的に続きにあたるとのことなので、是非読みたい。

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2025年09月18日

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本当に面白い本は冒頭からページを捲る指が止まらなくなり、気が付いたらその世界に没頭してしまう。こんな体感はかなり稀で、本当に価値のある作品は数年に一度しか出会わない。
 僕が米澤穂信を好きになったのは「満願」と「王とサーカス」を読んだからで、その後、過去作も含めて読み漁り、「氷菓シリーズ」や「小市民シリーズ」等ののライトな作品や、「折れた竜骨」や「追想五断章」等数々の傑作と出会うきっかけになった。今回、再読になるが、改めてこの作品の面白さに取り憑かれ、二度目の余韻を感じている。

 大刀洗万智が初登場した「さよなら妖精」は未読の作品でまだ読めていない。
 今回は彼女が主人公であるが、一人の記者の葛藤や成長が見事に描かれており、万智が一連のネパール王族事件をきっかけにカトマンズでの自身と向き合う姿勢や取材を通して新たに関わる軍人の殺人事件など、かなり濃密な作品である。
 ネパール王族事件は2001年に実際に起きた事件であり、一部ノンフィクション的な要素も含まれている。ネパール王族事件の真相は明らかになっておらず、その中でネパールに滞在しているフリーライターの大刀洗万智が事件に巻き込まれていく。
 単純な歴史ミステリー、サスペンスというだけではなく、真相が分かった時の薄気味悪さは一級品だ。これ程までに純粋に、ストレートに表現される作品は少ないと思うし、万智が成長し、物事の本質を見抜く力の上達していく一連を、一緒に感じとる、読者自身も成長している様に思える程濃密である。

 現地の少年であるサガルは屈託のない純粋な少年に写りながら、どことなく大人びた雰囲気を時折見せる。彼と万智とのやりとりはどこか微笑ましくどことなくよそよそしいイメージがある。また、カトマンズでであうロブというアメリカの学生やシュクマルという商人、トウキョウロッジのチャメリや日本からやってきて数年来住み着いている坊主の八津田等多くはないが深く物語に関わる登場人物達も魅力ある役割をこなしている。

 本当に最後まで目が離せない作品だった。面白い事は当然だが恐怖心も相まって読み終えてもまだ彼女達の世界から抜け出せない。
 再読で2025年に読んだが、現在はネットがインフラとして整備され、当時とは違った環境下になる。
改めて「ネパール王族事件」の情報を得ながら余韻に浸る。

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2025年08月31日

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ネタバレ

米澤穂信さんの作品は、まずタイトルが好きです。この内容を、「王とサーカス」というタイトルで表現される感性が素晴らしい。
「さよなら妖精」のシリーズとして読みましたが、まさか主人公が万智だとは!
日本が舞台の「さよなら妖精」から、今度はネパールへ。
描写が丁寧なので、本当にネパールに行った気分にもなりました。
事件を調べていく上でバラバラだったものが、記事をまとめるようにどんどん明らかになっていって、
犯人が誰だったのかの先にある真実……
報道しない選択、ジャーナリズムの在り方について問うような、そんな物語でした。

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2025年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

米澤穂信作品のなかで、いや、これまでに読んだ小説の中でも私にとって一、二を争うレベルの作品。時間を空けて読み直すたび、そう実感する。

偶然ネパールに居合わせたにすぎない太刀洗万智が、王族殺害事件の記事を書くことになる。取材していく中で、彼女は「なぜ書くのか」「なにをしたいのか」ということに向き合っていく。現実と地続きでありながらも異国情緒あふれるストーリーは、私たち読者にもある種の傲慢さを突きつけてくる。本格ミステリとして謎を解き明かした先にある真実には、いろんな意味で認識を反転させられる。
万智を見下ろす多数の子どもの目と、INFORMERの写真を見つめるラストシーンがとても心に残っている。

読む前には戻れない。これぞまさに至高の作品だと思う。

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2025年07月21日

Posted by ブクログ

海外旅行の特集のためにネパールに訪問した大刀洗万智。描写が良くてゆっくりと進むかと思ったが、国王殺害事件と、身近に起こる事件から一気に進んでいく。取材から得られた情報をどう記事にまとめるのか報道倫理を追求するだけでなく、ミステリとしても完成されていて引き込まれやすい。面白かった。

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2025年07月06日

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 米澤穂信作品では個人的に最も推せる一冊です。フリージャーナリストの太刀洗万智が登場するシリーズで、直木賞候補に挙がった連作短編『真実の一〇メートル手前』とは姉妹編とでも謂う可き作品。

 何と言っても異国情緒が素晴らしく、行間から尼婆羅の熱風が匂い立つようです。

 勿論ミステリとしても格別です。米澤穂信一流の"苦味"がエッセンスとして能く効いています。

 自分が尼婆羅と云う国に憧憬を抱く切っ掛けになった小説。

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2025年06月13日

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第28回このミステリーがすごい!第1位

なかなかおもしろい!
人がうっすら自覚しているけど考えないようにしている問題に切り込んでミステリーに仕上た唸る作品。
フリーのジャーナリストとして訪れたネパールで、大刀洗万智が報道することの意義を問われる。

改めて、世の中に報道されるニュースについて、自分が知ることの意味はあるのかを考えた。
他人の不幸について、当事者とその近しい人達に不快な思いをさせてまでそれは世間に発表される必要はあるのか。
「娯楽として悲しみを消費するだけ」というフレーズに衝撃を喰らった。
疑問に感じたことは何度もあるのに、結局「へー!」とか「うわ〜」とか言いながらなんとなくそれが日常の刺激になっていたことが否めない。
自分に関係のないことだから痛みを伴わずに同情だけして見えていない真実もあるのだと思った。

『王とサーカス』というタイトルは秀逸。
知る方にも色んなニュース媒体から情報を正しく受け取り真実にに近づける意識を持ちたい。

ネパールの文化を知れたこともおもしろかった。

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2025年05月14日

Posted by ブクログ

ネパール王族殺害事件をベースに、ジャーナリズムとは何か。
ミステリーを融合させて読みやすさがありながら、読後の抉られた胸の痛みが収まらない。

情報は娯楽なのだろうか。
受け取る側として『知る』ということはこんなに重いものだったとは。
私は知らずに多くの事件や歴史をサーカスとしてみていたかもしれない
今、この社会では情報に重みはなく、知ることは簡単過ぎる。
恥じない選択をするしかない。

伝えないことも選択していると思うと恐ろしいものもあるが、『俺達はもう絶対に、タクシーの運転手まで巻き込んではいけない』
そして悲しみをサーカスにしない。
これは記者の方々に忘れないで欲しいところですね。

『だが私は、この国をサーカスにするつもりはないのだ。
もう二度と』




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2025年05月12日

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ネタバレ

2001年に実際に起きた「ネパール王族殺害事件」をベースにしたストーリー。
読み終わるまでそんな事件が実際にあったとも知らなくて、その事実も含めて改めて気付かされ、考えさせられる作品だった。今までに感じたことのない角度で心が揺らされて鳥肌が立った。

ジャーナリストに限らず、何かを誰かに伝えるとき、表現するときに誰も傷つけないなんていう保証はできないから、「気をつける」しかなくて。
正義と信じた時、その先に何があるかまで考えたか?
飢えに苦しんでいる人を助けたとして、その人たちが生きてその先を一緒に歩んでいく社会まで見据えたか?
知らなかった、気づかなかったですまされないことがたくさんある。これまでに増してスピードを求められる社会の中でどこまで考えて発信できるのか。やれるとこまでやることしかできないけど、そこで妥協しない人間でいたいと思った。

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2025年04月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

満願』に続いて2015年にミステリー三冠を達成したのが、本作『王とサーカス』だ。主役の大刀洗万智が『さよなら妖精』に登場していたということもあり、一応「ブルーフ」シリーズと銘打たれているが、ストーリーは全く繋がっていないので、本作単体でも問題なく読んでいける作品に仕上がっている。その彼女も一応キャラクター設定は継続しているものの、立ち位置が違ってしまったせいか、同じキャラクターとは感じられない描写が多々あり、むしろ前作を続けて読むと戸惑ってしまうかもしれない。

その前作『さよなら妖精』では、本作の主人公でもある大刀洗たちが高校生の時に出会ったユーゴスラビアから来た少女マーヤとの交流と、彼女がふと漏らす日常の謎に対する謎解きが描かれた。今は亡くなってしまったユーゴスラビアをテーマとして、しかも内戦が起こった時期の物語ということで、苦い終わり方をするこの作品は、形式としては、著者が得意とする短編集というカテゴリーに収まる作品だった。

しかし本作の場合は、同じように社会的なテーマを描いているとはいえ、長編である。考えてみれば、自分が彼の作品を読み始めてから、本作は初めて出会った本格的な長編だった。『黒牢城』のように全体としては緩やかに流れがあるが、一つ一つの事件は別立てになっているような作品はあったものの、本作のように全体が一つの物語となるような作品はなかったのだ。

その著者にしては珍しい長編作品の舞台となるのは、まだ王政が続いていた頃のネパール。今ではマオイストによって治められるようになってしまったこの国の王政の最後で、実際に起こった王族間の殺人事件が背景となっている。

そのネパールという異国の地を舞台にして本作の主人公となるのは、先ほど書いたように『さよなら妖精』では探偵役の一人であった大刀洗万智。前作では、最後に大学生になった彼女は、それから10年が経ち新聞記者となっていた。しかし、とあることをきっかけに新聞社を退職した彼女は、フリーの記者となる。その最初の仕事として雑誌社の旅行記事を書くためにネパールに来た彼女が出会う一つの殺人事件が、本作で解かれる大きな謎となる。

ここで、わざわざ「一つの」と書いたのは、この長編小説で描かれる事件は、本当にたった一つの殺人事件だからだ。通常ミステリーでは、複数の事件が事系列に沿って発生し、物語は少しずつテンションを高めていく。本格ミステリのような閉鎖空間ではもちろんそうだし、社会派と呼ばれるような作品であっても、複数の事件が描かれることは決して珍しくない。

ところが本作の場合は、事件が起こるまでに、全体の3分の1が費やされ、実際に殺人事件が起こった後も追加で事件が起こることは無い。その代わりに本作が時間をかけて書くのは、王政がまさに揺らごうとしていたネパールの国の有り様であり、そこに住む人々の姿だ。

そして、「なるほど、本作が『さよなら妖精』の続編であるならば、ユーゴスラビアと同じように体制が揺らいでいたネパールを舞台にすることは道理にかなっている……」ともし考えた人がいたなら、既にその段階で著者が仕掛けた罠にはまっていると言えるだろう。実のところ、自分も著者がネパールを舞台に選んだのは、単に事件性のある国にしたかったからだとばかり思っていたのだ。最後の一章を読むまでは。


そう、まさに本作は小説世界の全てを再構成することになる、最後の一章を読むためにこそある作品だと言える。米澤穂信はデビュー当時は日常の謎を描くような作品だったが、キャリアを積むにつれて、よりサプライズを最後の一瞬に提供するような切れ味鋭い作品を提供するようになっていった。本作は、その米澤穂信の特徴が、存分に味わえる作品と言っていい。

なぜなら、自分もそうであったように、ミステリーを読み慣れた人であれば、劇中で描かれた殺人事件の犯人を推理するのはそれほど難しくないからだ。あえてわかりやすく貼られている伏線を追えば、出てくる犯人は論理的にすぐに1人に絞り込める。読んでいる最中は、こんなに簡単な事件を描いた作品がミステリー三冠を達成したなんて本当だろうかと思っていたのだった。


ところが、最後の一章でそういったわかりやすい構図はがらりと変わって、著者が明確に宣言しても、それが伏線だと思えなかったような一行が、鮮やかな伏線として浮かび上がってくるようになっている。主人公の大刀洗はその事実と、事件の背景にある意図を知って驚愕し、やがて苦い思いを抱くことになるのだが、その大刀洗が持つ視線は読者が持つ視線と重なると言っていい。

このようにして最後まで読み終えれば、正しくその年のミステリーを代表するにふさわしい作品だということがよくわかる。できればちまちまと読まずに一気に読み切ってしまって、その苦い味わいをゆっくりと咀嚼してほしい。そんな素晴らしい作品が、この『王とサーカス』という作品だった。

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2025年04月20日

Posted by ブクログ

娯楽に変えてるのは読者か...考えさせられる(この言葉こそただ目の前の文を消費してるだけの空っぽなヤツかもしれないが)
殺人事件に関して一直線という、想像するようなミステリではないが、ジャーナリズムとミステリがかけ合わさりながらカトマンズの情景や人物の心情が描かれた、素敵に不思議な物語だった

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2025年03月21日

購入済み

面白い!

ミステリーだけでなく、報道をする意味も考えさせられたと思う。確かに、当事者にとっては悲しい事でも他の人にとっては娯楽だな

#ドキドキハラハラ #深い #タメになる

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2024年02月15日

K

ネタバレ 購入済み

歴史に疎く、物語中、ネパールの王宮で事件が起きたとき、フィクションにしては妙にリアリティがあると思い調べてみると史実だった。それから万智はジャーナリストとして、これを好機とし、記事にするため事件について調べていくが、その途中、万智が王宮事件を調べていたせいで殺されたとしか思えないような死体が現れる。そうして万智は職業としてのジャーナリズムの正しさについて考える。その中で、事件の謎は明かされていく。坊主が麻薬を密輸していることには気づけたが、サガルについては思いもよらず、驚いた。純粋に面白かった。いい小説。

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2023年02月13日

Posted by ブクログ

やはり米澤穂信は文章が抜群に巧い。
前半はスローペースだが後半は加速。
ロジカルな犯人当てとしての本格ミステリをベースとしつつ、有名なピューリッツァー賞の『ハゲワシと少女』の事例を交え、ジャーナリズムの是非を問う社会派要素もある。
ラストにはどんでん返しも。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

サガルがとっても切なかった。
事件も複数で犯人も複数で複雑だった。単純なミステリじゃなくておもしろい。

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

途中まで実話かと思っていたけど、完全なるサスペンスだった。カトマンズの情景や問題とリンクして勉強にもなりながら、ゾクゾクする場面もあり、読み進めるのが楽しかった。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

悲劇を報じることは、他所で起こっている者たちに、娯楽を提供していることに他ならないのではないか。
それ以外の意味は一体何なのか。
国内外問わず、起こる悲劇を知り、心を痛めることが良くあるが、それを私が知って一体何になるのだろう。
私のような人々に知らせるために、取材するジャーナリストは何がしたいだろう。
そんなジャーナリズムの本質をストーリーを通じて問う。

この物語の舞台はネパールのカトマンズ。
経済的に裕福でない国の子どもたち(本当は国ではないかも)の逞しさと強かさにゾッとした。
常識では思いもつかない、計り知れないようなことを軽々とやってのける。
だから日本は平和ボケと言われるのかも。

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2025年09月03日

Posted by ブクログ

一冊目よりも深い話だった。
仕事が無いのに人だけ増えても豊にはなれないとか、人体に有害でも生きることの方が重要であるとか、なんだか予期せず社会問題的内容だった。

我々が娯楽として悲劇を消費することしか出来ないならば、いっそ知らないままでいたい。

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2025年08月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ネパールカレー屋でよく見たチヤやらモモやらが出てくるたびにちょっとうれしくなる。作中最大の事件が実在の出来事だったとは驚きだが、仮に創作だとしたらネパールに大層失礼な話だとも思ったので納得。
作品としてはミステリー小説に分類すべきか迷うくらい、HowよりもWhyに振られている印象。「インシテミル」の頃から思っていることだが、こういう話とそれに対する向き合い方が書きたいのだろう多分。「氷菓」の例外さが際立つ。

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2025年07月17日

Posted by ブクログ

audibleにて。
以前から読んでみたかった作品

新聞社を辞めてフリーになったばかりの主人公・大刀洗万智は海外旅行特集の事前取材のためネパールに滞在していた。
そこでネパール皇太子による王族殺害事件に遭遇する。 
事件の取材をするために会った軍人も、その後すぐに殺されてしまった。
2つの事件の謎を追うとともに、報道のあり方の是非を問う物語。

王室事件の詳細を暴くミステリーなのかと思っていたけど、話の主軸は報道のあり方を問うというものだった。

「自分に振りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽」
この物語で言えば、王の死をサーカスの見せものみたいに扱う報道と、それをエンターテイメントの様に見る観客って感じかな?

娯楽って言うとちょっと違う気もするけど、言わんとする事は分からないでもない。
"報道"って難しいな。
事実は1つでも 書き手の主観や見せ方によって装飾された真実が生まれてしまう。
競争社会だし、何よりも刺激的な記事を求める側がいるのだから。
なかなか難しいけど、エスカレートしない様に報道する側、受け取る側、どちらにも倫理観や冷静な判断力が要るという事なんだろうな。

舞台が海外だったので、日本との治安の差を凄く感じた。日本人はちょっと平和ボケしてるとこがあるのかも知れないけど、やっぱり日本がいいなぁ。
物語の最後はちょっと衝撃でした。


audible始めました〜\( ᐛ )/
紙の本が好きだけど、これはこれでめっちゃ便利!ながら聴きが出来る!
そして、意外と作品数が多い〜◎
実は左手を負傷してしばらくギブスなので本が持てません( ߹꒳​߹ )
そんなこんなでaudibleで楽しんでます♪♪
のんびり行こ〜 ︎︎♪′


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2025年06月28日

Posted by ブクログ

読み応えありました。
中盤あたりでタイトルの意味がわかりそこから最後まではずっと考えさせられました。
主人公は記者という立場で何を書くべきか、伝える必要があるかを問われていましたが記者でないものからすると、情報には書き手の偏りがあり書かれていることが全てではないという認識を持つ必要があるなぁと改めて感じました。

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2025年05月29日

Posted by ブクログ

たまたま遭遇したネパール王族殺害事件の取材をするフリージャーナリスト。フィクションと実際の事件を織り交ぜながらの話はとても面白かった。
悲劇や人の悲しみを報道する事の意味、サガルたちのように犯罪に手を染めなければ生きていけないストリートチルドレンの事など、なかなか重いテーマだったが、やっぱり「知る」こと「考える」ことは大事なのだと思った。

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2025年05月24日

Posted by ブクログ

私にとっては、460ページと少し厚みのある本でした。
視点の違い、立場の違いってあるよね。
記者って、安全第一にしたほうが良いよね。ほどほどにしたほうが良いよね。

支援受ける側が、何も求めているのか、分かった上で支援したほうが良いよね。
国内の災害のときもそうかもね。

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2025年04月28日

Posted by ブクログ

題名の意味は割と早くから明かされてそれが物語のテーマになっている。報道の役割はなんなのか?万智の葛藤する姿とネパールの市中の様子がまざまざと浮かぶ。面白かった。このミス2016年の1位。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

米澤穂信さんの作品は「満願」に続き、2作目。もともとあまりミステリーを好まないので、自分から買ったり借りたりはしないのだけれど、今回も夫が買ってきたので。
「満願」の時に抱いた感想と変わらず、米澤さんの文章は本当に端整というか、スキがないというか。一文一文から、作者の思惑、登場人物の伝えたいことが存分に伝わってくる。どうしたらこうも無駄なく、言いたいことをきちんときれいな文章で伝えることができるのか。こんなふうに文章が書けたら、と思わざるを得ない。

で、肝心の内容・・・(ネタバレになります)。
2001年6月にネパールはカトマンズで実際に起こった国王殺害事件を主軸に、ジャーナリストはどうあるべきか、報道とは、といった作者の「知ること」への小さなひっかかりを、主人公を通して問題提起し、内省、そして主人公なりの答えを見出す物語。と、こんなに簡単にまとめていい作品ではないのだけれど。

王宮での事件の取材を依頼した軍人の言葉は、報道者側だけでなく、それを受け取る側にとってもハッとさせられるものだと思う。ネパールの王宮の事件を、日本人ライターの主人公・太刀洗が日本語で書いて、日本に向けて報じたところで何になるんだ、と。この事件がサーカスの見世物のようになるだけではないか、と。そしてその事件を報じようとする太刀洗をサーカスの団長と非難する軍人。
日々世界中から集まる悲劇の報道は、確かにそういった側面もある、いや、むしろほとんどが一時的に娯楽のように扱われ、すぐに次の悲劇へと人々の関心は移っていくのではないか。太刀洗はこの軍人の指摘に答えられなかった。その後、軍人の他殺体が発見され、ここから物語が大きく動き出す。

事件の真相に迫っていきながらも、常に太刀洗の頭にあるのは、あの軍人から突き付けられた言葉への自分なりの答えを探すこと。なんとか報道の意義、自分が書き、伝えることの意味にたどり着くのだけれど、終盤、サガルが太刀洗に突き付けた言葉は私にとってはとても衝撃的だった。
サガルの主張は、このようなもの。外国人記者の報道によって、ネパールの子供が働く劣悪な環境の工場が閉鎖された。するとその工場で働いていたサガルの兄は稼ぐ術を失い、がれき拾いのようなことをするしかなく、そのことで傷を負い、亡くなったと。それでサガルは記者やカメラマンを憎むようになり、太刀洗を貶めるつもりだったと。
サガルの考えは子供っぽく短絡的過ぎる、と切り捨てることは絶対にできないと思う。遠いところから来た者が正義のつもりで行ったことが、現地の人々にとって必ずしも良かったとはならないことは長い歴史の中で多々起きている。それでも、真実を書き、伝えていくことを決意する太刀洗・・・。
報道の在り方について改めて考えるきっかけとなると同時に、物事も人も多面的だと痛感した。誇り高き軍人が密売に手を出すこともあるし、穏やかに説教をする僧が人を殺めることもある。太刀洗が八津田に「冷たいものを抱えている」と言われた時には、うーんと唸ってしまった。

相変わらず、レビューとしてはまとまっていないけれど、特に中盤からは先が気になる読書となった。

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2025年12月11日

Posted by ブクログ

大刀洗は傷心を癒すためネパールに訪れていた。
記者仲間の同期が自殺した、会社の関係者は大刀洗が原因と噂を立てる。
そんな会社が嫌になり、ネパールへ逃げた。
そんなネパールで国王が暗殺され暗殺者は王子だとラジオからの緊急放送が流れる。
大スクープが目の前に、しかし、危険も伴う。
国王の死の真相はいかに、大刀洗はスクープを書けるのか?
謎解きが始まる。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

途中までミステリーとは思わず、読んでいるとネパールを旅した気分になれました。主人公の太刀洗さんは他の作品にも出ていると知り、時系列に彼女が出る作品を追ってみたくなりました
ちょっと切ない感じが好きです

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2025年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誇れることがあるとすれば、それは何かを報じたことではなく、この写真を報じなかったこと。それを思い出すことで、おそらくかろうじてではあるけれど、だれかのかなしみをサーカスにすることから逃れられる。


一番最後の文が印象に残った。
全てのジャーナリストが同じマインドでいるとは思わないが、あえて語るべきでないこと、語ることによって知られるべきでないことが世に出て生まれるべきでないかなしみを生むこと、それを避けることはできる。一方で、人の知的好奇心を他人が抑えることはできないし、その判断が結局は個人に委ねられるのであれば、一人一人のリテラシーがものをいうということなのだと思った。そしてそれは、ジャーナリストに限った話ではないということも感じた。

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私はネパール王家の事件を知らなかったので(2001年生まれ)、王族の殺人事件がキーになるスケールの大きな話かと思っていた。
また、米澤穂信作品は「儚い羊たちの祝宴」や「満願」しか読んでおらず、これらのように刺激的な話を期待していたので少し拍子抜けだった。

全体的に淡々としているので、正直なかなか読み進められない部分はあったが、異国の地で危険が伴う中活躍する主人公という流れは良かった。最後の方のヒヤヒヤする展開も面白かった。

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2025年04月20日

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