米澤穂信のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
バブルがはじけて失意のうちに亡くなった父親と、立ち行かなくなった家業のために学費を払えず、大学を休学している芳光。
古書店を経営している伯父を手伝いながら居候している時に、ある女性から亡き父が書いた五つのリドルストーリーを探して欲しいと頼まれる。
金が欲しい芳光は、伯父に内緒で引き受けるのだが…。
ミステリの部分は、面白かった。
亡き父が関係した未解決事件の真相や、五つの作品に込められた想いを推理しながら読むのは楽しかった。
けれども、圧倒的に登場人物が、のっぺらぼうだ。
実家に母だけを残し、大学に戻れず田舎に帰る気にもならないという宙ぶらりんな状態の芳光が、依頼された物語を見つけることに -
Posted by ブクログ
この一冊にこの作者のこの作品。
どの作品も重厚でした。
贅沢な一冊です。
作家さんてすごいなぁ、と特に感じたのは
一話あたりのページ数です。
この短いページ数でこの内容を紡ぐことができて
さらには登場人物たちのキャラクターをたたせる。
どのお話も人物たちのキャラクターが現実にいるような
リアルさがある。
物語の構成もしっかりしていて、この頁数で
よく物語のまとめができるな。
と、そういう観点からもおすすめします。
一話がしっかりしているので、一話読み終わると
本を一冊読み切った感じがして、
次の話にすすんだとき前の話を思い出すのが
難しかったくらいです。
それぞれの作家さんの別の未読本に -
Posted by ブクログ
ネタバレ今年公開された映画から本作を知って、所謂爽快ミステリー!という感じではないものの物語終盤の場面に漂う寂寥感が心に残り、村重という人物にはかなり興味を引かれた。今回原作を一通り読んだことで、改めて映画を観に行きたくなった。というか、個人的に原作小説は絶対に併せて読むべきものだと思っている。その順番は人に寄りけりだろうけれど。
まず、わたしは映画鑑賞時に随分思い違いをしていた。村重はてっきり戦乱の世に疲れ果てて、武士というものの在り方に憂いを覚えていたのだと考えたけれど、小説を読むと異なる印象を受けた。業の深い生き様であると自覚しながらも、彼は己の選んだ道に悔いはなく、武士として、荒木としての誇り -
Posted by ブクログ
自分が生まれた世界と自分の代わりに誰かが生まれた世界を比べて後者の世界の方が良かった時、、私なら生き直すことができるか。
この物語は主人公リョウと何らかのきっかけで別次元に生きる姉サキと出会い、姉が生まれた世界を3日間体験する。
読み終わってターニングポイントとなった部分をいくつか読み直したら、作者が伝えたかったことがクリアになってきた。
リョウは何事も受け入れるが性格は卑屈。
対してサキはお節介で想像力が高い。
サキに関わる人達は本人の意思に関わらずサキから何らかの影響を受けてその後の人生が変わっていく。サキと3日間過ごしたリョウはサキから受け取った何かで人生を好転していくことができる -
Posted by ブクログ
ネタバレ桑港クッキーから倫敦スコーン→維納ザッハトルテの繋がりがよかった。脅迫状を送った犯人は甲村先生だとなんとなく思っていたが、そう過激に解釈してしまったこともまた、真犯人や小鳩くんと同じだった。
短編として好きなのは羅馬ジェラート。鈍い読者のわたしでもわかるような、小佐内さんがジェラートに満足していないことに気がつかないあたり、二人の関係がまだこれからというのが見えて初々しかった。小佐内さんの指摘を受けてからの小鳩くんの冴え具合はさすが。ジェラートが食べたくなるとともに、ラストの苦さが印象に残っている。
2年生の夏休みが近く、悪の組織に追われているとは…。ここからトロピカルパフェにつながるのか -
Posted by ブクログ
ネタバレ全ての短編が心にドロっと余韻が残る、好みの話ばかりで良かった。すべてのエピソードで各々が守りたい何かがあり、そのために人を殺したり嘘をついたりする切実さが印象に残った。
夜警
拳銃を使いたいから警官になったという動機と、都合が悪いことを隠したがる気の小さい性格が引き起こした事故が最悪の結末を引き起こすという出来事の流れがきれいで好き。
死人宿
ヒントが散りばめられており、推理小説として面白い。オチの救いのなさ、人の死は他人にはどうにもできないというどうしようもなさが虚しい。
柘榴
長女怖すぎ。男を自分のものにできる確信があるところが、母の血を引いてて怖かった。次女もいずれ同じ思想になるの -
Posted by ブクログ
米澤穂信の『満願』を読んで、短編集なのに一つひとつの物語がとても濃く、重厚な作品だと感じた。それぞれ内容や舞台は異なっているのに、登場人物の心情がしっかりと伝わってきて、どの作品にも強く引き込まれた。
この作品には全体的に、少しホラーのような不気味さがある。ただ、怖がらせるような「きゃー」という恐怖ではなく、読んでいるうちにじわじわと感じる「ゾクゾクする」怖さだった。その正体は、幽霊や怪物ではなく、人間そのものなのだと思う。
特に印象に残ったのは「関守」だった。物語が思いもよらない方向へ転換していくたびに、「ここでそうくるのか」と驚かされ、その展開の不気味さが強く残った。「柘榴」も、どんで -
Posted by ブクログ
ネタバレ私はアニメ化した小山内さんの像を追いかけるために、原作を追っているところがあるのだが、なんと「秋季」と「冬季」の間は、15年も!
そりゃ半生かけて追っている人も多いだろう。
筋はもうわかっているので、確かに叙述トリックなところがあるなとか、小鳩くんの内面とか、楽しみはいろいろ。
「おわあ、こんばんは」(萩原朔太郎「猫」)を引用しちゃう小山内さんとか。
個人的には、各章の題が、きっとミステリのパロディなんだろうな、でもロマンチックだな、と。
特に「黄金だと思っていた時代の終わり」の後に「報い」って、すごい。
今読む読者なので、すぐに「倫敦スコーンの謎」に手を伸ばせるのだ。
【目次】
序章 小市 -
Posted by ブクログ
伏線の張り方が秀逸で、ミステリーとしての巧妙さと、ジャーナリズムの倫理や責任を問う重層的なテーマが絶妙に融合した、読後に深い余韻が残る一冊。
些細な描写や何気ない会話の中に、さりげなく伏線が散りばめられており、気づきにくいのに、後になって回収された瞬間に「あぁ、なるほど」と納得する。
そんな心地よい驚きが何度も訪れる。
加えて、舞台となるネパールの情景描写が非常に緻密で、異国情緒が鮮やかに立ち上がってくる。
カトマンズの喧騒や、埃っぽい空気、独特の色彩までが目に浮かぶようで、そこにいるような没入感があった。
また、単なるミステリーとして完成度が高いだけでなく、深いテーマを内包しており、主 -
Posted by ブクログ
古本屋にて購入。米澤穂信を読むのは2冊目。淡々と話は進んでいき、いつの間にか話の渦に巻き込まれている。そんな印象。後半になり、前半の淡々とした情景の中に多くの伏線が散りばめられていたことに気付く。1文字たりとも流し読みできない。読み終えてしまってから「あっ」と思う。ネパールの国王一家殺害事件は史実なので、途中でその史実をWikipediaで調べた。調べてから再び本書に戻っても、やはり事件関係者の名前がこんがらがってイマイチ頭に入らない。しかしまぁ、それでも『王とサーカス』の面白さには影響しない。最後のどんでん返しも、どうだ!どんでん返しだ!と言った印象ではなく、これも淡々と明かされる。そう、こ