畠中恵のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
しゃばけシリーズの第4巻。
今回もとても面白く、一話一話じっくり味わいながら読み進めました。
妖からも忌み嫌われる存在として描かれる「コワイ」の孤独には、思わず胸が締め付けられますし、厚塗りの化粧で心を守っていた娘のエピソードには、人が抱える弱さや切なさがにじんでいて印象に残りました。また、体が弱く碌に遊べもしなかった子供時代の若だんなが、「知恵」を使うことで自分にもできることがあると気づく場面は、このシリーズらしい温かさを感じさせてくれます。
表題作『おまけのこ』では、小さな妖が繰り広げる大冒険が描かれていて、どこか微笑ましく、そしてじんわりと心に沁みる物語でした。読み終えたあと、なぜだかほんの少し涙が滲むような、優しい余韻が残ります。
5つの短編が収録されているため、隙間時間にも読みやすく、それでいて妖たちの魅力的な世界観にしっかりと引き込まれる一冊。軽やかに読めるのに、読後には温かな感情が残る、そんなシリーズの魅力を改めて感じさせてくれる作品でした。 -
Posted by ブクログ
しゃばけシリーズの第3作目です。
今回も、とても読みやすく、面白かったです。
時代ものではありますが、ファンタジー小説でもあり、そして、人死にも出てしまう捕物帳でもあるのが、とても興味深い。
短編が5つ収められたこの本ですが、タイトルの『ねこのばば』よりも、『産土』の方が、心に残りました。
妖である犬神、佐助のお話。
これは、絵柄が無く、声も聞こえない、小説ならではの手法だなぁと、見事に騙され?ました。
読んでいる途中、ちょっとした違和感はあったのです。
あの人がこんな態度を取るかな?とか、なんで、もう一人の相棒とも言うべき妖、仁吉は出てこないのかな?とか。
最後まで読み進めて、そして、全てが解明するという、作者の思惑通りに小気味よく嵌められた読者の一人になりました。
切なくも心温まるお話でした。
他の物語に登場する貧乏神も愛すべき妖?神様?であるし、とても面白い本なので、オススメです。 -
Posted by ブクログ
人から聞いた話で判断すること、自分とは関係ないことに執着すること、正義をかざして誤魔化すこと、どれも今の時代を表してるなーと思いながら読みました。
長崎屋の話も長くなってきたけれど、はなれが妖にとって快適だという噂が津々浦々にまで広まっているとは。
妖たちは働いたり長崎屋や若だんなのためになってるということだけど、最初の方はもっとゆったりいるだけでいいという感じだったのにな、とは思いました。
生産性向上が求められるようになった時代の流れ?笑
(実際はのんぜんだらりとしてるだけではお話にならないからだろうとは思うけど)
それに家鳴も最初の頃は小さいけどそれは恐ろしい見た目だった覚えがある。
話を戻して、噂が広まったのは若だんなが大妖の孫というのが理由の一つらしいけど、そもそも大妖というのはどれぐらいいるんだろう?
今まで色んな妖怪、狐、狸、河童、天狗、鬼に神様、仏様も出てきたけど、大妖はおばあさんしか出てないような?
他の大妖のお話も読んでみたいと思ったのでした。 -
Posted by ブクログ
今回初めて文庫でなく単行本で読みました。まだ文庫になってないからね。いよいよ次で既刊は最後。さみしくなるなぁ。
さて、たいてい一番最後のお話が一番よかったと思ってる気がします。
連載→単行本化だからたまたま?あるいはここらで本になるなと見越して書いておられるのかな?
舞台は江戸時代だけど、現代劇のようなものだから当たり前かもしれないけど、今に通ずることが多い。
「里を捨てると自分を覚えていてくれる人がいなくなる」というセリフにはドキッとしました。
今は人と色んな繋がり方があるし、昔と比べたら毒親なんかと縁を切るのも容易になったように思うけど、それでもさみしい人、多いよね。
結局人心なんてものは数百年では変わらないのかなと思ったり。 -
Posted by ブクログ
ネタバレしゃばけシリーズに長編は少ない。第1作『しゃばけ』、第5作『うそうそ』、そして第22作である本作『いつまで』が、長編としては3作目である。今回は、一太郎が5年後の江戸にタイムスリップするというのだが…。
薬種問屋長崎屋で、人間に溶け込んで暮らす妖たち。そんな一太郎の仲間のうちの2人、噺家で獏の場久と、医師の火幻が姿を消した。彼らは悪夢の中にいるという。西国から来た「以津真天(いつまで)」という妖に原因があるらしい。
2人はシリーズのレギュラーの中では新参者であり、特に火幻の加入(?)はつい最近だが、そんなことで分け隔てする一太郎ではない。仲間思いの一太郎は、迷わず悪夢の中に飛び込む。そして気が付くと、そこは5年後の江戸だった。
そちらの江戸では一太郎がいないまま5年が経過しており、よくぞご無事でと喜ぶ長崎屋の面々。しかし、長崎屋は商売敵の前に危機に陥っていた。一太郎の失踪後、跡取りが戻ってくるまではと、必死に店を存続させてきた。
長崎屋の危機の原因は、失踪前の一太郎の行為にあった。体が弱い分、常に店の役に立ちたいと願う一太郎。そんな彼の気持ちが裏目に出るのは、シリーズのお約束ではあるのだが、ここまで酷な巡り合わせは過去になかっただろう。
5年後に飛んだ一太郎の目的は2つ。場久と火幻の捜索。そして長崎屋の危機をどうするか。さらに、一太郎は決断を迫られる。せっかく再会した5年後で、そのまま過ごすのか、それとも5年前に戻るか。というか、戻る手段があるのか?
シリーズの大ファンではない自分でも、しんどい設定だなと思ったし、商売敵は憎々しく感じたが、文庫版で300pほどであり、すいすいと読み進められた。いつの間か、どうにかなっているし。最後に災難が用意されていたが…。
作中でも触れられた、シリーズ中でも異色のエピソード。この経験のせいか、一太郎はやっぱりお人よしでした。だからこそ慕われるのだろう。