畠中恵のレビュー一覧
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ネタバレ『まんまこと』シリーズ第4作。前作『こいしり』で、悲劇に見舞われた主人公の麻之助は、町名主・高橋家の跡取りとして、多忙な日々を過ごしていた。悲しみを引きずっているような描写は少なく、敢えて通常のフォーマットに徹しているように感じられる。
「朝を覚えず」。庶民はそうそう医者にもかかれないご時世に、格安の薬が流通しているという。簡単に訴えることはできない相手に、麻之助は…。似たような話は現代にも転がっていそうでこわいが、何より麻之助が危うい…。
「たからづくし」。見合いを命じられた、麻之助の盟友・清十郎が姿を消した。同心見習いの吉五郎は、盗人を追っていてそれどころではない…。2つの謎が絡み合い、最後に解ける展開は見事。さて、清十郎が身を固める日は来るのだろうか。
「きんこんかん」。両国橋界隈で商売を始めた3人娘。いずれも繁盛しており、対抗心が強い。そんな3人が、なぜか吉五郎に自慢の味を勧めてくる。吉五郎には災難だが、これまた現代にもありそうな話。しかし、最も存在感を示した娘は…。
「すこたん」。元々は仲がよかった商家が、近所同士になったおかげで、何かと張り合うようになる。父に厄介事を押しつけられた麻之助。一度は裁定したのだが…。少々、荒療治が過ぎる気もするが、結果的には一件落着か。
「ともすぎ」。またまた吉五郎にスキャンダルか?と思って調べていたら、賄賂の噂が飛び込んでくる。そして、顔見知りの高利貸しが姿を消した…。ある意味、事件解決後の方に意外性があると言える。人間、年齢を重ねると…ですかね。
最後の表題作「ときぐすり」。このタイトルは、本作全編を通じたテーマでもある。江戸に流れ着いた少年と、自らを重ね合せる麻之助。これ以上は書くまい。多忙な中で、麻之助は改めて友のありがたさを知った。全6編とも、時代ミステリーとしても人情物としても完成度が高く、個人的にはシリーズ最高傑作だ。 -
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ネタバレ現在、NHK木曜時代劇で放送中の、『まんまこと』シリーズの第3作である。しゃばけシリーズと違い、純然たる人情時代物であり、捕物帳的要素もある。最初に言っておきたい。一話完結ではあるが、『まんまこと』と『こいしり』は読んでおくべきである。
主人公は、町名主の跡取り息子・麻之助。幼なじみの悪友・清十郎、堅物の吉五郎というおなじみのトリオが今回も健在。なお、町名主とは、奉行所では裁き切れない町内の揉め事を裁定するのが役目。麻之助がどう裁くかが、読みどころの一つ。
「おさかなばなし」。主がいるという噂が立つ〝置いてけ堀〟に、清十郎が落っこちた。噂を探ってみると…悲しい裏側があった。魂が救われる日は来るか。「お江戸の一番」。一枚の番付が生んだ揉め事を、どうせならイベントにしてしまえという話。そもそもの対立理由というのが…。麻之助でなければ収まらなかっただろう。
「御身の名は」。極めて現代的で、やっかいなテーマ。誰にでもある心理だけに、誰にでも降りかかるのが怖い。同情する面もないことはないが…。「おとこだて」。これまた現代的な問題である。お武家といえども、そんな簡単にはいかないとは、知らなかった。もう少しうまい手はなかったのかね。現代なら専門のカウンセラーもいるが。
「鬼神のお告げ」。現代でいう宝くじを巡る、一騒動。麻之助も面倒に巻き込まれることに。本編のコミカルさの裏では、ある事態が進行していた…。こうなるのはちらっとは聞いていたけど、こうするしかなかったんですか畠中さん、と言いたくなる…。
最後の表題作「こいわすれ」。ショックから立ち直れない麻之助を気に掛ける、清十郎と吉五郎。そんな麻之助に持ち込まれたゴタゴタ。何だかにぎやかで、いつものこのシリーズらしい。それだけに、最後のシーンが…。思い切り泣け、麻之助。
この先、麻之助がどう生きていくのか、気になるではないか。既に続編『ときぐすり』が文庫化されているので、読まなければ。江戸時代だろうがネット時代だろうが、人の心は不変なのではないか。畠中作品は、過去と同時に今も描いているように思う。 -
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組織人特集の一冊として取り上げられていたので特に期待せずに読み始めたがかなりのめり込むこととなった。主人公は兄の死や好きな娘の失踪で落ち込む暇もなく大役を命ぜられ、更にお家のピンチをただ一人背負うことになる。諦めずに難題を大胆に解決する様を清々しく感じ、仲間たちのと結束や人脈作りに、出来過ぎと思いつつも関心する。終盤の老中との拳遊びを交えながらのやり取りは鳥肌ものですね。一歩間違えば切腹ものですし。我が藩や仲間たちのために身を投じた行動に、千穂が見抜いた主人公の打たれ強い性格が見える。
千穂がおっさんに娶られるのは残念だったが、千穂なりの献身的な行動であり隠れた功労者に違いない。
あとは、何と言っても主人公を食いかねない岩崎の存在感が大きい。
その他のキャラもとても味わい深く、映像化したら面白いだろうなぁと考える。 -
Posted by ブクログ
原作未読、萩尾望都・雲田はるこの作家二人に釣られて購入。根岸奉行もの読みだしてから江戸時代ものが凄く気になりだしたのとシンクロして非常に面白く読んだ。萩尾先生は萩尾先生タッチの異世界ものっぽさ、浮遊感をきちんと出されているし、くもはるさんのユーモアはここでも健在。くもはるさんには是非時代物BL描いて欲しいなぁ、って欲が出てしまった。表情の描き分けの凄さはべらんめえ調に凄く合っている気がする。
妖かしものに惹かれるのは日本人のDNAに組み込まれた何かがあるからかもしれない。祟り神などとは違い、人間を怖がらせはするが直接的に呪い殺したりはせず、「正体の分からないもの」として在るだけで人間の方が勝手に疑心暗鬼を募らせ、自滅するだけのこと、妖かしものは実は人間に何かしている訳ではないのかも。
主人公で「今日も元気に(?)寝込んでいます」と紹介される薬問屋の一粒種の坊ちゃんの、坊ちゃんらしさと言うのはつばな『動く影』が未読の私には一番入り易かった。