畠中恵のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ畠中恵作品12冊目
クローン問題という多くの人が言及を避ける重たい主題を扱った小説。しょっぱなから母親は過干渉だわ、火事に飛びこむ親友を助けられずに焼死と相成るわ、自殺にはちあうわ、自分の家も放火にあうわ、携帯電話に意識だけ残した親友が消えるわ、突然母親は再婚すると言い出すわ、かなりシリアス。そしてシリアス度を決定的にするのは主人公が父親のクローンだという新事実!
だけどそれを補って有り余る面白さがある。
主人公は過呼吸に陥りやすく、ちょっとパニックになるとすぐに気絶しかけるような子で、いろんなことを思い悩んですぐに思考の渦に嵌っていくし、死んだ親友の携帯に向かって語り続けたりする精神的もろさがあるけど、それが重たくなりすぎないストーリー展開がいい。
とにかくテンポよくストーリーが進み、謎が気になって気になって最後まで進む。ミステリー、というよりは多分家族とのかかわりとか人の考えとか倫理とかそんなものに主眼が置かれている。
そして準主人公ともいえる義理の父親となる「おっさん」の言うことがいちいち格好いい。もしかしたら理想論かもしれない、でも正論を言い切れる潔さがいい。こんな人が身近に居たら、耳に痛いことを言われる子も知れないけれど、それでも頼りになれていい人生を遅れそうな気がする。
「お前は一人の人間だ。それだけだ。一生懸命生きていればいいんだ。そうだろうが!」───まさに、そう。単純明快。だからいい。
いろんな人物が出てくる、スターのような扱いをされる腕のいい医者も、子どもを愛する母親も、未来を憂える大人も、たくさん出てくるのに、一番正論を吐くのが、真っ当とは言いがたいホストの職についている人物だなんて、皮肉で面白いなぁと思った。また彼自身が自分で「自分と折り合いをつけるために、人生の半分くらいの時間をかけちまった凡人だ。」と言うのがいい。正しいことを言うのが偉い人じゃなくて、普通の人だってことはありうることだ。
殆ど出てこなかった人物が犯人だったり、結構な重要人物なのに前半だけで登場が終わったりするのが難点といえば難点かも。
でも読みおわったあと、満足して「ああ面白かった!」といえる。
しゃばけシリーズとは一味も、ふた味も違う。ほのぼのとはいえない、どこか手に汗握り身につまされるところもある。だけど多分、そういう張り詰めた感が、思い悩みもがき苦しんで助けをかりながらも自分の手で光明を握り締める人間がすきだ。しゃばけシリーズも面白いけど、体が弱いという厳然たる物理的な理由ゆえにそこから抜け出そうと必死にもがこうとはしない若だんなとは、ちょいっと毛色が違うかな。
私の中では今まで読んだ畠中恵作品ベスト1。 -
Posted by ブクログ
【しゃばけシリーズ07】
しゃばけシリーズはとても好きで、数年に1度読み直している。
兄の松之助は長崎屋を出て、親友の栄吉は修行で出て、なんだか寂しそうな若だんなに訪れる短編集。
・いっちばん
いつものように日限の親分のために事件を解決しようとする若だんな。
寂しそうな若だんなに贈り物をしよう、と動き回る妖。結局全部つながって、妖のおかげで解決する。
妖のドタバタ感が読んでいていい。
・いっぷく
長崎屋が他の店との品比べをすることになる。
他の店の七之助がなんとも懐かしい。。。冬吉が登場だーって嬉しくなる。
商いとして、高級な品を出すのではなく、売れる品を出す、という藤兵衛のすごさにはまいった。
・天狗の使い魔
若だんなが天狗にさらわれる。
自分が大変な状況だから解決しよう、ではなく、このことを知った仁吉と佐助が怒って大変なことが起きるから、その前に解決したいというのが、なんとも面白い。
・餡子は甘いか
栄吉が修行に行っている「安野屋」に泥棒が入り、栄吉が巻き込まれていく。
若だんなにもらった砂糖を、栄吉がもうお菓子は作らないかもしれないと返すのは見ていて悲しくなった。
栄吉の視点で書かれていることが多いので、泥棒問題では、栄吉の状況をなぜか若だんなが知っているのが、家鳴たち妖が知らせているんんだろうなぁと見ていておかしくなった。
やり続けることができる才能がある、と言われて修行を続けることになった栄吉、結局お菓子を作るのが好きだという栄吉、なんだか頼もしい。
・ひなのちよがみ
薄化粧のお雛さん。前の話で、屛風のぞきが綺麗だって言ってたのは本当だった。
薄化粧になったお雛さんに、誰も気づけないのに、普通にわかって普通に接する若だんなとおたえが、おかしくてしょうがない。
若だんながいつもの悩み事とは違い、店を経営するうえでの解決策として考える姿に、感動すらした。 -
購入済み
いつもの長崎屋の若旦那と、あやかし達の、事件とも言えないような、ほのぼのとした出来事。何となく、ふふふふっと笑って、読み終える。そういう話に、心が和む。
-
Posted by ブクログ
今回もほぼ妖中心の話。短編5話のシリーズ第25弾。
相変わらず病後に頑張ってしまう、若だんな。
そして又寝つくの繰り返しだが、考察力は冴えている。
てあそび・・・江戸で続く不穏な怪異は化け狐の仕業なのか。
噂を流した者は誰?しかも刃傷事件まで発生してしまう。
みょうやく・・・自分が持ってる不老不死の薬を売って欲しい。
長崎屋は断ったが、その薬はあちこちで揉め事を起こす。
人にとっての不老不死という生き方を考えさせられる。
おにがわらう・・・宮地芝居で働く蒼鬼が江戸に住めるなら、
俺たちも暮らせるはず!鬼たちは人の地に乗り込もうと
攻める勢いだが・・・江戸に住み馴染む妖たちとの違いとは。
なんでどうして・・・神の庭から人の世に現れた薬の琥珀玉。
その薬効を妖たちが狙う戦いが勃発する。事の始まりは
若だんなが寝ついたから。何故どうしてこうなった?
ばけねこ・・・化け猫の白丸は大名家の猫様。長崎屋に来た事情と
抱える難題のため、おしろは白丸と共に動く。
そして真実とは?
今回は、金次とおしろ、寛朝様と寿真様の活躍が目立つ。
あと、白丸の予見が今後に繋がってゆくかにも、期待。
若だんなは、妖から人の集う中へ歩み、
学んでいくのだろうか。幸せな未来を望む。
それ故、最近登場していない栄吉や於りんちゃんの姿を
描いて欲しいなぁと思ってしまいます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいつの時代も、妖怪ものはある。
私が小さい頃は『ゲゲゲの鬼太郎』や『地獄先生ぬ〜べ〜』があったし、それからも『夏目友人帳』『妖怪ウォッチ』や『ダンダダン』など、ずっと妖怪コンテンツはあった。
子どもの頃に想像する、「オバケや妖怪がいるかもしれない」という世界。
思えばこうしたコンテンツは色んな描き方がある。
ホラーもあれば、バトルものもあれば、学園ものまで。
今回読んだ『しゃばけ』は、時代劇。
舞台は江戸。主人公は豪商の跡取り息子、一太郎。
一太郎の周りには普通に妖怪が出てくるし、普通に喋って働いていたり(素性を隠して)する。
こういう、「自分にだけ変なものが見える」とか「人に化けて身の回りにめっちゃ強い妖怪がいる」とか、私は子どもの頃に妄想していたもので、なんだか懐かしい。
妖怪絡みの事件を扱うミステリー的な物語ではありつつ、江戸の暮らしぶりが垣間見えるのも面白いポイント。
今回の物語の鍵は、『付喪神(つくもがみ)』という妖怪だ。
長く使われた道具には魂が宿るというもの。
日本では古くから、道具はもちろん、木や山、岩、川など、自然に対しても神を見出してきた。
私自身、神様や妖怪などの類は信じているし、私はその日本人的感覚が、とても素敵な考え方に思える。
ドライに現実だけを見るのではなくて、「もしかしたらあの脇道に妖怪がいるのかも」と思えるだけで、何が大きく変わるでもないが、ちょっとだけ日々が楽しくなりそうだと思う。
浮世絵が流行して今も生き続けているのも、そんな風に「もしかしたら」と思えるワクワクがあるからかもしれない。
今では身の回りはほとんど安価な大量生産の人工物に囲まれているし、100年使い続けられそうなものは少ない。
付喪神には、なれそうもないものばかりだ。
人が長く使って愛を注いで、怨念が宿ってしまいそうなほどのもの。
そんなものを作りたいと思う。 -
Posted by ブクログ
寝込まなくなった・という事は丈夫になった・という事だろうか?キャラが崩れる~あの佐吉が全身に熊にでも引っ掻かれたような傷ができたのか?料理屋同士の縁組みが壊れたのは嫁を迎える姑が妬いたから!白黒毛むくじゃらの子犬は油問屋の奉公人によって盗みの手助けをするように仕込まれていた!神田の武家が悪夢に悩まされ、長崎屋の離れに女のお化けが現れ、食べようとした天麩羅に足が生えて逃げ出すのはどうして?長崎屋を辞めていこうとする番頭二人と小僧はそれぞれ悩みを抱えている~なぜ、佐吉は願興寺を庇った?どうやって子犬に鍵への執着を持たせられる?古着屋から紐が盗まれ、漬け物屋から樽が盗まれた訳は?武家が書いた本からどうして怪しが現れる?謎が解けるどころか深まった!願興寺(がごぜ)とは、その名の寺の下働きが妖怪になったものだった