朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ朝井リョウさんの現実の切り取り方、理解の深さには毎回ハッとさせられる。
身近にいるけど何考えているのかわからない人って、実際は多分こんなこと考えているのかな。
と思わせてくる。
最後の、引き当てるというテーマが誰しも共感できるだろうし、私も刺さった。
なんで私がこんな目に、という不運を肯定的に捉えようという自己啓発本とかはたくさんあるけれど、この話は結論としては似たようなところに落ち着いているんだけど、そこまでのプロセスが人間味をすごく感じた。
下を見ることで世の中の理不尽さを肯定するような。
生きているなと突きつけてくる解像度の高さが朝井リョウ全開で読み応えがありました。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ悪くはないけど「何者」と比べると落ちるかなという評価。「何者」が良すぎてハードル上がっていたというのはある。
どの話の主人公もどこか捻くれていて作者らしさがあり、表題作でのミスリードの誘い方も流石に上手い。
……んだけれども登場人物の言動に対する説得性や女性の描き方の2点が少し弱いと感じた。
具体的にそれが顕著だったのが「ハートの2」
①登場人物の言動に対する説得性
むつ美は自身の過去を振り返るなかで、表題作ではむつ美に声をかけていた(はずの)美知代の名前すら出てこず、反対に小学校時代にむつ美に話かけている描写があまりなかった愛季の名前はしっかりと出てきている。
「何者」では二宮拓人が終盤 -
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Posted by ブクログ
他作品との競作作品で、海族と山族の争いというベースを置きながら、平成を生きる人間を描く物語。軸は雄介という何かへの争いを求め現場への反発を繰り返す人物と、その幼馴染で雄介を見守る智也という人物で、それらの周りの視点から物語が進む。(最終章は智也視点)
少し競作の軸である海族、山族との紐付けが朝井リョウらしくないファンタジーさを出していたが、その中でも現代のリアルを描く非常に面白い作品だった。
ナンバーワンからオンリーワンが重視されるようになり、競争から調和へと学校教育など社会が変わった。競争の時代では、他社から明確に優劣を定められることに苦しんだが、調和の時代は自らで自らの優劣を決める必要が -
Posted by ブクログ
★★★ 読めて良かった
両親を事故で失い、伯母夫婦に引き取られたものの虐待を受けるようになってしまった太輔は、児童養護施設で母のような佐緒里、同級生の淳也、その妹麻利、おしゃまな1つ下の美保子と出会い、数年の月日を過ごした。高校卒業を間近に控え、受験に向け準備を進めていた佐緒里だったが、彼女の進学の夢は親戚からの就職の指示により絶たれてしまう。そんな彼女の願いを少しだけでも叶えるべく、太輔たちは作戦を始める。
児童養護施設を舞台にしているだけあり、いじめや虐待など、それぞれの抱える問題は重い。その重さを、安易なハッピーエンドには落とし込まず、かといって希望のない終結ではないのが良かった。