朝井リョウのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ施設で暮らす子どもたちが、それぞれの家庭の事情やクラスでのいじめなど困難に直面しつつも、互いを思いやり、支えあう様子を描いたストーリー。
同じ施設のお姉さん的な存在、佐緒里は家庭の事情で、高校卒業後、進学を諦め地元に戻って働くことになる。その前に佐緒里の夢を叶えようと、子どもたちは、学校でランタンを飛ばす計画を立てる。
施設を離れる子どもに対し、佐緒里が、
"私たちはまた私たちみたいな人に出会える"、"いじめられたら逃げればいい。笑われたら笑わない人を探しに行けばいい。逃げた先にも、同じだけの希望があるはずだもん"と語るが、最後に"そう思ってないと負けそう"との本音を洩らすところは、泣けてきた。
-
Posted by ブクログ
朝井さんの経歴についてあまりよく知らないまま、「ずいぶん”若い”感じがするなー」と思って読んだら、なんとデビュー後1作目の作品だった。
ちょっといろいろできすぎてるかも、という感じはどうしても否めないが、この作品を書いたことでその後の朝井リョウが作られたのだ、という吉田伸子さんの解説には唸らされた。
自分は早稲田の「SHOCKERS」を知っていたので、男子だけのチームがどれほど珍しいのかあまり実感がなかったが、男子ならではの魅力(パワーで押していける)や難しさ(混合チームなら体重の軽い女子がトップを務めるが、それも男子がやらないといけない)など、なるほどなと思うところが多かった。そもそも大会では男子/女子/混合の区別がない(?)というのも初めて知った。
そして何より、ダブルダッチをしていた自分にとっては、大会当日の高揚感や体が疼く感じはとてもわかる〜〜となった。いくら取材を重ねたってこの感覚は書けないだろう?!と思ったら、朝井さんは学生時代にバレーボールや応援団やダンスをしていたとのこと。まったく作家さんらしくない作家さんだなと思うが、それが強みであるのは確かだろう。
各キャラクターの設定はちょっと盛り盛りすぎるかも。主要キャラの春希と一馬を中心にバランスを取っていたが、チーム全員に愛着が湧くようなところまではいかなかった。
そして余談だが、装丁の感じが単行本のそれは文庫らしく、文庫のそれは単行本らしいような気がした。人物が大きく、裏表紙にはスコーピオンも描かれている単行本版のほうが自分は好みかも。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ3.5
p80
あれは、面白かったというよりも、実はほんのちょっとだけ怖かったから、笑っていたんだと思う。
p238
性格とか価値観って、あとからでも変えられるじゃない。だから、まずはどうしたって変わらないところを許せるかどうかだなって思ったけどね。
p258
今までやってきた方法っていうのは、ただ今までそれでやってきたってだけなんだよ。別に、それが一番正しい方法なわけじゃない。
p264
意味とかがなくたって、単純に楽しい、楽しいだけ、それ以外何の意味もないみたいなことが、意味のあるすべてのものを一気に飛び越えていく瞬間ってあるんだよ。そういう瞬間こそが、どれだけ意味のあるものよりも気持ちを明るくしてくれたりするんだよ。 -
Posted by ブクログ
ここ数年、SNSでずっと見てきたことそのまんまが描かれていた感じ。私自身推しグループはいるものの、CDも積まないし、たまにライブに行けたらいいなというだけ。作中に出てきたようなオタクにはなりたくないという気持ちがどこかにある一方、溺れ切れない自分にもどかしくも感じる時がある。側から見るとオタクは幸せそうに見えるから。
本を読みながら、久しぶりに会ったママ友が自然派になってネットワークビジネスを始めていたことを思い出していた。彼女には彼女の心地よいコミュニティを見つけたのだろう。けどやっぱり私はそこには行きたくないと思う。
本の最後に、久保田が視野を狭めて物語に呑まれて行動した先に悟って、願ったこと。正義も悪もないこの世の中で、何かを信じることで救われる人がいること。それは宗教でなくても、ある意味形を変えた宗教みたいなものかもしれない。何にも呑まれずにこの先人生で幸せを感じることができるかな。あれ、幸せって何だっけと時々問いながら日常に戻る。 -
Posted by ブクログ
ある家族の日常を、柔らかなタッチで描いていました。
朝井リョウさんはメディアでお見かけした事はありましたが、小説は初めて読みました。
朝井さんの優しそうなお人柄が感じられる一冊でした。
読み終わると、あったかい気持ちになって、大切な人に会いたくなるような本でした。
大切な人が亡くなった後も、日常は続いていきます。
様々な手続きはあるし、学校も仕事も待ってはくれません。
だけどいつもの日常に戻ったつもりでも、なにか違う気がするんですよね。
【いつもの日常】と【自分だけの日常】の2つができてしまったみたいな。
ふと、自分だけなんだか止まってるな、と思ったりします。
大切な人を失った悲しさや、恐怖など
ぽっかり空いてしまった心の穴。
普段は上手に隠せても、なくなるわけではありません。
このお話のように、辛いけれど、それぞれが自分と向き合い、少しずつでも前に進んで行くしかないのかなと思います。
誰かとぶつかったり、上手くいかない事もあります。
そんな時は、ゆっくり向き合って話してみるといいのかもしれません。
たとえ家族であっても、話さないと伝わらない事はたくさんある。あの時もっと話しておけば何か違ったのかもしれないと後悔しないようにしたいです。
明日からもなんとか頑張ろうと思える一冊でした。
また朝井さんの他の小説も読んでみたいと思います。 -
Posted by ブクログ
初めて文芸誌を買った!
このボリュームで510円はお得。
「特集:キトヴォラの今」朝井リョウ
キトヴォラって何?けみさゆろって何?って思って調べてしまった。きっとこれらに当てはまるのは読者それぞれの解釈なんだなぁと思った。すごく短いお話だったけど、朝井リョウ味があって考えさせられた。
「落ち着いて」小川哲
すごいリアルだと感じた。
『優しさは冷たさでもある。「君に文句を言わないよ」という温かいルールの裏には、「だから僕にも文句を言わないでね」という冷たいルールが存在する。誰かに対して怒ってしまうのは、誰かのことを期待して信じているからで、怒るのをやめるためには、他人に期待しないように生きなければならない。私にはそれができない。だから私は優しくなれない。』という文章が印象に残った。
「あの子にしか行けない天国」木爾チレン
寿命は短くなるけれど18歳の姿のまま生き続けられる選択があるという設定が面白くて、私だったらどうするかなぁと没入できた。外見至上主義な友達の気持ちもわからなくはない。おばあちゃんとの関係がホッとした。
「みんなのこうえん」カツセマサヒコ
排除ベンチと言われてしまうものが作られた理由も分かるから、折り合いをつけるのは難しいと思った。
「MARIA」モモコグミカンパニー
主人公の周りがとにかく最悪。過去のことだからと割り切れないくらい心に負った深い傷って救いようがないのかもしれないと思った。
「願えば叶う」染井為人
自分よりも絶対に友達を幸せにさせないという腹黒い気持ちは怖いし、そんなの友達じゃないけど結局ありがちだよねって思った。
「車止め」芦沢央
闇バイトって気づかずに闇バイトに加担しているとはよく聞くけど、こんなに巧妙に引っかかってしまうのかと怖くなった。人の役に立てていると思っていた主人公が不憫でちょっとトラウマもの。
「IN a FloP」市街地ギャオ
MBTIの中に主人公って項目があるのはどうなのっていう気持ちは少し共感。今まで何者にもなれなかったけど、地下では自分の存在が認められて、それを俯瞰している主人公。純文学って感じだった。
「クレジット」丸山春乃
退屈で真面目な日々に少しのスリリングを求めて、やってやったぞっていう気持ちになるのわかるなぁと思った。
「サンクトペテルブルクの鍋」坂崎かおる
面白かったんだけど途中から難しくなって辞めちゃった。いつか読み直す。
「夜の底」夏夜米子
「世の中の大半がきっと同じように、自分の欲求を満たす為だけに他人の人生を侵害している。」という文章が心に残った。 -
Posted by ブクログ
色気ってのは腹が据わった覚悟の有る人間が醸し出すもんだ 知る事の、大切さも無意味さも素晴らしさも恐ろしさも全てこの作品が描いています。 娘ヨレンタがノヴァクの感情の部分に触れる唯一の存在であるのにも関わらず 以降は信念というよりは最早執着 それこそ「アポリア」(相反する二つの見解が等しく成立する場合、解決の糸口を見出せない難問)だと思うんですけど。 ある意味、完全オリジナルを作るという欲望は幻想だったり。もう流石にこの世界には蓄積が有り過ぎるから、どういう組み合わせで更に新しい事があるかなって事を皆探求していると思います。 文化は大きな川の流れであるという事を良く言っているんですけど、文章、文節ってその流れの一部でしかないですよね。 何かにグッと偏ってる 僕には山口さんの世代が、個人と世界を接続する「社会」という中間項を成立させていたように見えるんですよ。 社会性を持つには自分自身のオリジナルな状態を維持しないといけないっていう 人間は結局、回顧主義だから未来のものを懐かしく感じて、過去のものを新しく感じるようなサイクルがずっと続いていく気がする。 地動説への強い憎悪を露わにするノヴァク 自分が『チ。』の物語の悪役だったと気付くところもメタフィクション(フィクションの中のフィクション)的で面白いですよね 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』という曲を作った時は、サブカルチャーとハイカルチャーを融合させて、日本の詩吟とダンスミュージックとクラシックの三角関係を曲にしようと考えたんだけど、純粋にメロディを作ったり歌詞を書いてる時は、ほぼ「無」でやっていたかも。 尖っている個性の手前にある普遍性をどれだけ腑に落とせているかで その行為を「考古学のようで楽しい」と表現していました 僕の二十代の屈辱が疼くのを感じた 感動させる作品には個々の挫折や劣等感と繋がる瞬間がある気がする 今後の僕等には『チ。』が有る。彼等は僕等が前進する意志と共に戦ってくれる。 今でも多くの国が、天体を国旗のシンボルとして採用し続けているのは、その名残だ。 宗教が信徒に求めるのは教義への「信」だが、科学に必要なのは「信」では無い。寧ろ逆である。科学が求めるのは「疑い」だ。だから『チ。』は「信念」の物語であると同時に、いや、寧ろそれ以上に、「疑念」の大切さについての物語でもある。 叶う方法を探せば道筋は立てられる 昨日礼賛されていた言葉が今日は禁句になっているような毎日なのに 私が変化したという事実からあなたは今何かを受け取ったんです γはその紙資料を所定の位置に戻すと 教会が説く善に従う事は、私達自身の生を断念し、道徳的命令に従う「畜群」として生きる事を暗に意味するからである。 重罰になる可能性をも考慮にいれて 「何故人を殺してはいけないのか」という問いに対して、それを予め封印するような動きを見せる「僧侶」達が私達の周りには今も尚存在しているからである。『チ。』は、フィクションの形をとりながら、現代人がどのような〈嘘〉に隷従を強いられているかを私達に改めて問いただすのだ。 時には手厳しい論駁等も珍しく無かった 〈真理〉は、誤りを無慈悲に宣告する。〈真理〉の正しさは、思いや努力等の人間的な事情とは関係ないところにあるからだ。 朽ちる事の無い静かな衝動を指す事を暗示している 迷いは、変化の兆しがそこにある事を意味している。