中山七里のレビュー一覧

  • ドクター・デスの再臨

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    「刑事犬養隼人」シリーズというのがあって、続編的なものと知らずに読んだから、先の方を読んでおけばもっと理解が深まったのかなと思うけど、この一冊だけでも十分おもしろくてサクサク読めた

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    2025年03月12日
  • 秋山善吉工務店

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    昭和初期生まれの化石のようなお爺ちゃん。
    本当にこんな人ばっかりだったな~と思いながら読み進めました。

    今回の中山七里さんの小説は、いつもよりサラッと読める軽い感じ。

    ラストは予想通りでしたが、とても面白かったです。
    それにしても善吉爺ちゃん残念です。

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    2025年03月11日
  • 悪徳の輪舞曲

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    『悪徳の輪舞曲ロンド』
    「弁護士・御子柴礼司シリーズ」
    中山七里(著)

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    ### **あらすじ**
    報酬のためには手段を選ばない悪徳弁護士・御子柴礼司の前に、三十年ぶりに妹・梓が現れる。彼女の依頼は、夫殺しの容疑で逮捕された母・郁美の弁護だった。かつて“死体配達人”と呼ばれた御子柴が実母を弁護することに動揺する検察側。母子二代にわたる殺人の系譜は存在するのか――?

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    ### **感想**
    シリーズが進むにつれて、御子柴礼司という人物の核心にどんどん切り込んでいく展開が魅力的です。今回は、彼が母の弁護を引き受けるという、極めて難しい状況に直面します。

    「正義」とは、見る角度によって異なるものです。その客観的な指標として法律が存在し、私たちは法律の枠内で生きています。しかし、その境界線は決して明確ではなく、曖昧さを孕んでいるのが現実です。本作では、御子柴自身がその境界線のどちら側に立っているのかを問い直しながら、彼の眠っていた感情が少しずつ目覚めていく様子が描かれます。この内面的な変化こそが、本シリーズの大きな見どころの一つです。

    とはいえ、御子柴の過去の罪は決して許されるものではありません。その過去と向き合いながら、彼が社会とどのように折り合いをつけ、罪を犯した者と社会との関係をどのように描いていくのか。本作を読んで改めて、このシリーズの行方を最後まで追いかけたいと強く思いました。

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    2025年03月09日
  • おわかれはモーツァルト

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    岬 洋介シリーズ、最新作。
    友の窮地を救うため、あの男が帰ってきた。
    盲目ながらショパン国際ピアノコンクールで話題を独占した榊場 隆平。
    陰湿なフリーライターに絡まれていた彼の練習場で、ライターが死体で発見される。
    第一容疑者となった榊場のもとへ。
    伏線もいろいろあり、最後はお約束のどんでん返しがあります。
    やっぱり、岬シリーズは、面白いですね。

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    2025年03月09日
  • ワルツを踊ろう

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    ネタバレ

    中山七里のファンです。でも最近は人が◯ぬ系の話を読めなくなってしまったので彼の作品は久しぶりでした。

    自分で選んだ作品ではなく、もらった本だったので手に取るのには時間がかかりました。でも読んでよかったかも。 
    旅のお供に読んだのですが、そういう本じゃない笑
    どんでん返し等の情報を見ずに読みました。

    酷評をつけている方もいますが私は大満足でした!
    ただ、良いと思ったからこそショックではあったんですよね。人間のドロドロしたところを見て落ち込みましたし、引きずっています。

    限界集落に都会から来て町おこし。
    一見RPGゲームのような設定ですが、心情に関してはリアル。

    都会の人間として主人公の気持ちがよく分かるし、お金がなくて満たされなくなると余裕が無くなるのはリアリティがあります。地方(その中でも限界集落。観光地とかじゃないとこ)と都会(東京とか大阪とかその周り)ってこんなにも価値観が離れているんだなと思いました。
    そもそもこの本を手に入れている人に限界集落に住んでいる人はほぼいないのでリアリティがないと思うのは無理ないです。
    人ってやっぱり結果主義なんだな…。特に余裕がなくなるとそうなりがちだよなって改めて思う作品でした。

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    2025年03月04日
  • 秋山善吉工務店

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    タイトルと表紙のイラストを見て、まず思い出したのは、昔のテレビドラマ『寺内貫太郎一家』だ。小林亜星が演じた頑固で短気な『昭和じじい』である。

    物語は火事で夫と住む家を失くした家族が、昔気質の祖父の工務店に身を寄せる。この爺さんが主人公の『秋山善吉』である。
    善吉は『べらんめえ口調』で荒っぽく話すので、孫たちは最初はなつかない。
    しかし小学生の孫が新しい学校でイジメに会い、中学生の孫は不良につきまとわれ危うく反社の手先になりそうになるが、この爺さんの手腕で食い止められる。また母親が勤め先でモンスタークレーマーに困ると今度は婆ちゃんが登場し、揉め事を解決する。このあたりが気持ちよく、実に胸がスッとした。

    僕にはまだ孫はいないが、もしも目の前で何か困っていたらやはり全力で何とかしてやりたいと思うだろうなあ。

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    2025年03月04日
  • 人面瘡探偵

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    面白かった。話の先が見えやすかったって言ってる人もいるけど、私は全然犯人わからなくて読んでてすごく楽しかった

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    2025年03月03日
  • 秋山善吉工務店

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    少し甘めの星4つ。

    家と家主を失った妻と二人の息子が父方の祖父母の実家に世話になる事となり、新生活で起きる様々なトラブルを昭和感満載の祖父母が水戸黄門感覚で解決していく感じの短編集。どの物語もかなりのご都合主義で現実感のない解決策ばかりではありましたが、本筋のストーリーは様々な要素が散りばめられていて読みごたえはあり、娯楽小説としてはよく出来ていたと思います。個人的には、第1章と第2章が特に良かったかな☆

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    2025年03月02日
  • 闘う君の唄を

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    題名でピンときた方は『中島みゆき』通でしょうか。
    中島みゆきさんの名曲『ファイト!』をモチーフに描かれた中山七里さんの小説。
    埼玉県秩父の幼稚園の教諭として着任した主人公がモンスターペアレントやさまざまな問題にぶつかり、困難に立ち向かう姿に感情移入する。また、歌詞からとった各章のタイトルがいい!
    姉妹本として発刊されている『騒がしい楽園』は、本巻に登場する別の幼稚園教諭が主人公であり、サイドストーリーとしても面白い。

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    2025年03月01日
  • 超合理的! ミステリーの書き方

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    特に、小説家になりたい訳では無いのですが、ミステリーが好きで著者はどのようにして物語を組み立てているのか気になったため手に取りました。

    読んでみると『個性や才能は不要』とはあるものの、やはり、才能は必要に思いました。自分が小説家を目指していたら基礎的な守るべきことが詳しく書いてあり、役に立ったのかもしれませんが、読者視点で読むとやっぱり小説家になる人は違うなぁという感想です。著者は「インプットの量」や「ストックの量」に関してよく言及していて、そこが特に納得しました。

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    2025年03月01日
  • 魔女は甦る

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    ネタバレ

    中山七里のデビュー2年前にコンテストに落選した作品ながら、評価が高かったためにデビュー後出版されたものだそう。これがデビュー前の作品とは!ヒポクラテスシリーズ、御子柴礼司シリーズ、カエル男シリーズなどでおなじみの埼玉県警の渡瀬警部、配属間もない古手川刑事、解剖医の光崎教授(名前だけ)が登場するが、渡瀬警部は、今の濃いキャラクターを思えば非常にマイルドで、終始違和感。

    スタンバーグ社のやったことは悪魔の所業ともいうべきものだったけれど、戦時中人体実験を繰り返した七三一部隊などを思えば、俄かに現実めいたものになりゾッとする。それぞれに重い過去のトラウマを抱えた被害者の元研究員、主人公の刑事、そして捜査に参加する警視庁のエリート捜査官が、その所業に運命を狂わされることになり、なんとも陰鬱とした結末だった。続編的作品「ヒートアップ」ですっきりした結末が得られればいいのだけれど…。

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    2025年03月01日
  • もういちどベートーヴェン

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    ★3.9くらい
    前作と同じく岬の過去に関する作品だった。そして1作品目の時にも言ってた司法の界隈にいたことがある云々の話。前作を読んだ後だからもう本当にふぁ〜ってなった。最高でした。岬と同じ班の司法研修生全員幸せになってほしい。

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    2025年02月23日
  • ヒポクラテスの試練

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    シリーズ3作目で、これまでの作品が連作短編の形式で会ったのとは異なり、一冊を通して一つの大きな事件を扱っています。
    普段は死者の解剖から真実を明らかにしてゆく光崎教授ですが、こんかいはエキノコックスという寄生虫の変種が感染を広げているかもしれないというパンデミックの危機に立ち向かうことになり、生者を相手にすることになります。
    いつものメンバー以外にも傲岸不遜な態度は変わらず、同じような友人・南条も登場人物に加わっての会話劇は秀逸です。

    古手川刑事と離れて、キャシー先生と共にアメリカで捜査に当たる真琴たちの前で明かされていく真実には思わず目をそむけたくなる部分もありますが、読後感は悪くなく、新たに結ばれた縁が次回作以降でどのように広がってゆくのかも楽しみです。

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    2025年02月22日
  • ヒポクラテスの悔恨

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    前作がサスペンスなら今回は本格ミステリだ!
    過去の因縁と現在のリンクが見えてくる展開はさすがの一言だし、社会に対して毒を盛り込むメッセージも上手く機能していて巧みである。中山七里の作品はエンターテインメントに徹しながらも社会の問題点を噛み砕いて分かりやすく見せつけてくるところでもある。それでも重くなりすぎず、かと言って軽すぎず。面白かった。

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    2025年02月20日
  • 静おばあちゃんと要介護探偵

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    さてさて、残り少ない中山七里さんの文庫補充してきた〜もうあと一冊しかない!
    それも購入したしな。

    あとは、単行本をフリマアプリで安く買おう!
    (もう既に、一冊キープ(^^;; )

    で、元判事の静おばあちゃんと、さよならドビュッシーでお馴染みの車椅子の玄太郎おじいちゃんの老人コンビシリーズ!
    年寄りだからって、安楽椅子探偵やなく、動きまくります!

    全く違うタイプの2人が事件を解決する!
    共通点は、正義感ある高齢者って事。
    短編5つやけど、その中でも、高齢者の問題は、取り上げてる。
    痴呆老人、すぐキレる老人など。
    最近は、若者の犯罪自体は横這いやけど、高齢者の犯罪は増えてるみたい。
    特に万引きとかは、多いよう。
    それも、生活苦ならまだ分かるけど、そういう動機以外もあるよう。
    核家族化が進み、隣は何する人ぞモードが拍車をかけてんのかな。
    まだ、うちの辺は、近所の人に挨拶ぐらいはするけど。

    そういう問題も取り上げてるけど、解決方法は豪快!
    当たって砕けろ!みたいな。まぁ、砕けんし、賢い人らなんやけど。
    2人ともお年寄りやけど、玄太郎さんの方の精神年齢は、結構若いというか子供並み?それを静さんに怒られながら…って感じ。
    魅力あるご両人やけど、もう少しごゆるりと!

    こんなに、良い歳の取り方したい!!!

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    2025年02月19日
  • 翼がなくても

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    複数の題材を一つの作品に収めるのが本当に巧い。
    物語の軸は一人の女性の絶望と再生。
    そこにアスリートの現実や障がい者の実情、不可解な殺人事件も加わり、ミステリーだけでは括れない作品に仕上がっている。
    しかも犬養と御子柴まで登場するので、著者の作品が好きな人は嬉しいと思う。
    正直「こういう真相だろうな」と、ある程度の予想はできていた。
    それでも、やっぱり泣くんだよね。
    爽快感はあるのに切なかった。

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    2025年02月19日
  • もういちどベートーヴェン

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    主人公岬洋介が司法試験をトップ合格し、司法研修生として活躍している。
    音楽シーンは乏しいが、司法情勢の細やかな描写は司法音痴な私でもその道に通じたように錯覚させる中山七里マジックはさすが!
    最後はきちんとどんでん返し付きなのもうれしかったけど、少し犯人がわかってしまったかな?

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    2025年02月18日
  • 毒島刑事最後の事件

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    今までいろんな本を通じて
    アクの強い個性的な主人公を見てきたから
    この刑事が上司に疎んじられるほど
    変わったように思えなかったな。
    まぁ言えばうっとおしい感じ?

    話は奥の奥があって面白かったけど
    この本はストーリーより主人公感を重視してる感じだから
    もっと面白おかしく変態チックに壊した方がもっと面白かったのでは?と思った。

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    2025年02月18日
  • 毒島刑事最後の事件

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    毒島節が今回も小気味よく響き渡る。
    文庫本の表紙には、多少髪は乱れているがスマートな見た目の刑事のイラストが描かれている。
    だけど、実際の文中では温和なとか柔和な顔とか書かれていて、少し印象が違う。
    さらには毒島刑事のセリフ回しからは、どうしても中山七里さん本人の顔がチラチラする。
    しかしまぁ、そんなことはどうでも良い。
    文庫本中、1話ごとの仕切りの黒紙、表紙イラストの凝り様など、この本に対する力の入れ方がすごい。中身も負けてない。犯人を捕まえただけで終わらない。その次、さらにその次、と話の階層が深まって行く。
    やはり推理小説って好きだー、と再確認した。

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    2025年02月16日
  • 秋山善吉工務店

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     秋山善吉。昭和ひとケタ生まれで80歳になるが、まだまだ現役の大工の棟梁だ。
     義理人情に厚く曲がったことが大嫌い。頑固一徹で余計な口は聞かないが、頭の回転は速いし腕っぷしも強い。おまけに顔も広いときた。怒らすと厄介な頑固じじいである。

     そんな善吉のもとに身を寄せてきたのが、息子の嫁と孫2人。先日起きた火災で息子の史親が焼死し、自宅も全焼したからだ。
     優しいことばをかけてやるなどしない善吉だが、嫁や孫たちの抱える悩みはお見通しであった。
     
     秋山善吉の快刀乱麻の活躍を描く、ヒューマンドラマ。
              ◇
     木造瓦葺き2階建ての古い日本家屋が見えてきたとき、「馬鹿野郎!」という怒鳴り声がした。
     「仮釘にこんなぶっとい釘使いやがって。手前はど素人かあっ」
     まだ数十メートルの距離があるが、声はその古い日本家屋から聞こえてくる。

     「早速だよ。早速、恐怖の大王だよ」
    と、うんざりしたように言う雅彦に対し、弟の太一は「とっても元気なんだ」と妙な感心の仕方をしている。
     まだまだ聞こえてくる怒鳴り声に、母親の景子は出鼻をくじかれた顔をしていたが、気を取り直すように息子たちを促して、目指す工務店に足を向けた。

     景子が引き戸を開け工務店の中に入ると、おが屑の匂いの中で4人の男たちが働いているのが見える。
     「ごめんください」と遠慮がちに発した景子の声に真っ先に反応したのは、いちばん奥で鉋の刃を睨んでいた老人である。

     「おう、景子さんか。よく来たな」
     刈り上げた白髪に肉の削げた頬、への字に曲がった口。孫を見てもニコリともしないこの男こそ、雅彦と太一の祖父、秋山善吉だった。( 第1話「太一、奮闘する」)※全5話。

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     タイトルにもある秋山善吉は物語のキーパーソンとなる人物で、視点人物である主人公は各話によって異なります。
     また、物語は前半と後半でテイストが違っています。

     前半は、太一 ( 第1話 ) ・雅彦 ( 第2話 )・景子 ( 第3話 ) が見舞われたトラブルを善吉が鮮やかに解決し、それぞれを救い出していくという1話完結ストーリーです。特に第3話はミステリー仕立てで展開し、善吉だけでなく妻の春江も大活躍するので、なかなか楽しめます。

     後半は、物語全体を貫く謎が解明されていく完全なミステリーで、警視庁捜1の宮藤刑事を中心に描かれます。
     宮藤は秋山史親の焼死を放火殺人と見ており、有力な容疑者として景子に目星をつけて接触してきます。それを知った善吉が対峙するように割って入り、宮藤の目を自分に向けさせていくところは読み応えがありました。

     そして、事件の真相が明かされるのはラストシーンを迎えてから。ミステリー作家・中山七里さんらしい展開になっているので、ファンの方にはオススメです。


     最後に、表紙絵 ( 文庫本より単行本のイラストの方が私のイメージに合っていました ) にも登場する秋山善吉について。

     高齢者とは思えない頭の回転の速さと腕っぷしの強さの他、なかなか広い人脈も持っていて、『東京バンドワゴン』の堀田勘一に似た、魅力の塊のような人物です。
     そう言えば、1流の大工ともなると常人離れした能力 ( 例えば抜群の計算能力、全体像を正確にイメージできる想像力、職人たちの信頼を集める求心力や統率力など ) が必要だと聞いたことがあります。善吉はまさしくそんな人物として描かれていました。

     残念ながら最終話で亡くなってしまうのですが、番外編でもいいので、若い頃の逸話を読んでみたいと思いました。

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    2025年02月17日