皆川博子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
背景は戦中戦後。
現在と過去を行ったり来たりして混乱しそうになるのは
いつもの事だけれど、それが手書きの小説の少女達と
重なって、更には、お嬢様学校とはいえ戦時中の過酷な労働と
質素な食事、クラスメイト同士の友情や軋轢、
女学校特有の密やかな交流や嫉妬や悪意等がリアルだったりする。
それでも幻想的な部分は相変わらずステキだ。
美しくて醜くて、優しくて残酷で、リアルでシュール。
そして、見事に惑わされ、誘導されましたよ。
書き回しの小説のラストで、これが真相だろうというのが
書き足されるんだけど、本当の結末はその後にひっそりとやってくる。
切ないくらいの執念を感じましたよ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ芝居をめぐる、惹かれ期待する関係の短篇集。いじらしくて、ねじまがって、フェティッシュで、古臭くて。
短編の寄せ集めではなく撚り集めで物語が出来る。
決して「恋愛」ではないし、情愛が支配するわけではない。
欲望と怠惰と執着と希求。
純粋さよりも湛える深淵を愛す。
各編ごとに見ても仕方ないって途中までやって分かった。
各々登場人物の設定とかかれる内容は少しずれている気がする。勿論意味はあって必要な設定なんだけど、〇〇→△△となる記号ではなくて、〇〇からその人の印象と人生を推測しないと読みにくい。AパートとBパートの距離が遠い。
登場人物は等しく大きい得体のしれない(歴史を持つ)ものへの畏れを持ち取り憑かれた人たち。変わらないそれらに寄り添う(反抗しながらも?)しかない。
「化鳥」の杏二を彼はそうしたかったのだろう。「女でありながら女を超えたもの。人でありながら人を超えたもの。存在することに拠って観客を異界にひきいれるもの。」人でもなく神に近く、周囲すら巻き込んでしまう。ここにいる動けない「私」をつれだしてくれる何者か。なにか。
それに魅せられ続けた。
「薔薇忌」
祈り。自分の思いを次こそは次こそは・・・・叶わないで欲しい、かなって欲しい。自分を捉えて話さないものから必死に逃げようとし、しかし捉えられ続けたい。そんな感じ。
それをたんたんと。ひょうひょうとした女性がそんな執着を語るからいじらしい。
「祷鬼」
薔薇忌につづいて祈りについて。この流れはずるいと思った。祈ることの矛盾や無意味さ、その意味がみえる。
「紅地獄」
幼い好きと女性としてみてしまった。この合致はほんとうに怖いし、あり得ることだなあと思った。芝居や(続いてきた伝統ある)道具への畏れが書かれる。
「桔梗合戦」
得体のしれない母とそれを超える私。
多分違いはなにを失おうとしたか。
「化粧坂」
なまめかしい。ここに女装、女形への幼い思い出が残される。この体験を持って次編も読んでしまう、と罠だなと思う。
子供らしさと大人の世界。どちらもの貌をもつ彼。
「化鳥」
これか「化粧坂」が一番好き。
鳥は鳥のままでは、人は人のままでは、ただの凡夫なのだ。
芝居や舞台、身体表現に拠る芸術のある種の完成への遠さが現れている。
人は、やはり人である、と思う。
「翡翠忌」
「化鳥」とは一転。化け物が出てくる。と言っても年齢の話だが。彼女はひとを超えたことがあるのではないだろうか。
皆川博子、何冊か挫折してるけど、これは大丈夫だった。現代モノを何個かあさってみようかな。
ある意味で酷く、読みやすかった。
悪く言えば芳醇さは低い気もする。
そうとも思った。
情愛ではないと前に書いたけど、執着と言った感じには思わなかったし、すごく感情的でない印象を受けた。
すごく俯瞰された主人公が多かった。 -
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ネタバレ少女外道
巻鶴トサカの一週間
隠り沼の
有翼日輪
標本箱
アンティゴネ
祝祭
ほぼ前作に共通している語りの特徴としては、
現在→振り返り→現在、か、現在と過去を交互に示すか。
大過去、近過去、現在、という構成もある。
共通した心情としては、死への憧れ、あるいは死への漸近。
29p 清浄と淫らって、一つのことだと思うわ。
45p 未だあらぬ池の面を、夕風が吹き過ぎた。→凄まじい幻視。
157p いきなり互いの魂の割れ目に嵌りこんでしまった。
187p あなた……わたしかしら。
254p 凄まじい落日の一刻に遇えた。生と死が水平線でせめぎ合っていた。横雲の間から最後の光芒を放ち、空の裾に金紅を孕ませ、陽は沈みつつあった。すべてが闇に浸されていく中で、海と空の境は金泥渦巻く戦場であった。→マルセル・シュウォブを思い出させる、これぞ文章の力! -
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ネタバレ皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。
しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。
ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。
それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。
読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ 座せる悪魔 を見た。荒々しさと粗野と憂愁と。ロシア人そのものじゃないか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。
しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。
ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。
それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。
読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ 座せる悪魔 を見た。荒々しさと粗野と憂愁と。ロシア人そのものじゃないか。 -
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無償に時代物の小説が読みたくなって、積読の中から選び出して読んでみました。
江戸時代の歌舞伎の世界を書いた小説です。
面白かった~。
2冊前に読んだ本は落語の世界を書いた話で、その奥深さに驚いたけど、この本はもっと奥深かった。
成田屋団十郎や、中村屋勘三郎、高麗屋幸四郎などなど、いろいろ出てき、しかも三大櫓を狙う下っ端の見世物小屋の連中たちや、中村屋の腹違いの姉妹の恋の話などを織り込んで、歌舞伎の世界の裏も表も上手く書かれていたので、週末に一気読み。
しかし、ホント火事が多くて建てても建てても燃えるから、ほんと可哀そうになるね。並大抵の精神力では、お金があっても這い上がれないと思う。
たまには、時代物も新鮮でいいな~。と思った一冊でした。
みんな、こうやって伝統を継承してくれているのね~。
ありがとうございます。