皆川博子のレビュー一覧

  • 花櫓

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    無償に時代物の小説が読みたくなって、積読の中から選び出して読んでみました。
    江戸時代の歌舞伎の世界を書いた小説です。
    面白かった~。
    2冊前に読んだ本は落語の世界を書いた話で、その奥深さに驚いたけど、この本はもっと奥深かった。
    成田屋団十郎や、中村屋勘三郎、高麗屋幸四郎などなど、いろいろ出てき、しかも三大櫓を狙う下っ端の見世物小屋の連中たちや、中村屋の腹違いの姉妹の恋の話などを織り込んで、歌舞伎の世界の裏も表も上手く書かれていたので、週末に一気読み。

    しかし、ホント火事が多くて建てても建てても燃えるから、ほんと可哀そうになるね。並大抵の精神力では、お金があっても這い上がれないと思う。

    たま

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    2013年09月16日
  • 妖恋

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    タイトル通り、妖しくも切ない、江戸時代だからこそのどうにもならない諦めにも似た絶望、闇のある様々な男女の恋の話。心中薄雪桜、螢沢、十六夜鏡、春禽譜、妖恋、夕紅葉、濡れ千鳥。幻想的な雰囲気。

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    2013年09月08日
  • 蝶

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    陰美さがほの暗く薫り立つような短編集。読む側の精神状態によってものすごく好き嫌いが分かれそう。嫌いではないけど今の私には読解力が足りず、この世界観に浸りきることが出来なかった。「蝶」「空の色さえ」「幻燈」「遺し文」が好き。「龍騎兵は近づけり」はよくわからなかった…。

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    2013年09月03日
  • 蝶

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    とても美しい短編集。
    そして、どれも、戦争の頃の話です。

    8月15日にこの本を読んだので、尚更、感慨深いです。

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    2013年08月15日
  • 倒立する塔の殺人

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    終戦間際の混沌とした時代に、凛として生きる女生徒達と女学院で起きた殺人ミステリー。秘められた物語は層を重ね、紐解かれるノート内の記述で進行。"倒立する搭の殺人"と、綴られた"手記"は不安や恐怖を忘れていられる瞬間にさえ悲愴が漂い、軍歌が流れる土壌に著書・絵画・ダンス・コーラスなど欧羅巴の色合いの調和は見事で美しい。そして繰返されるジャスミンティーでの報復の結末は、気品を強く漂わせて終る♪

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    2013年05月24日
  • 蝶

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    表題作のほか、7つの作品が収められた短編集です。舞台はいずれも第二次大戦前後の日本。退廃的で、死の匂いのするこのような作品を美しいと思うのは、生きることは罪深く、哀しいことだと、誰もが知っているからかもしれませんネ。詩のように紡がれた言葉が描く、密やかで耽美な幻想世界に、どっぷり浸ることのできる1冊でした。

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    2013年04月23日
  • 倒立する塔の殺人

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    ネタバレ

    戦中の2つの女学校という空間が出てくる。
    片方はミッションスクール、もう一方は都立女子校。
    ミッションスクールはどちらかというと日本になじまない宗教性からか夢見がちに浮いて見られることが多い。しかし、そこには司教の体罰や異質な性癖、入信はしていない多くの女学生、エスという関係。決して穏やかなものだけでは済まされない。まるでジャスミンに似ているのにそれとは違う黄色い花を咲かせ、猛毒を持つカロライナ・ジャスミンのように。

    なにが美しいと言うよりも、読んでいてとても楽しい、小説だった。
    女学院の纏う愛らしさと排外性、戦争中という享楽の飢餓、それらが相まって「倒立する塔の殺人」の謎、現実の謎に垂直に

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    2013年04月15日
  • 倒立する塔の殺人

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    ヤングアダルト(YA)向けだったらしく、皆川博子にしてはおそろしく読みやすい、ほのかに色っぽい戦争時の女学生もの。トリックを楽しむというよりも、叙述そのものを楽しみたいタイプのミステリ。
    ミステリ嫌いの私でも十分楽しめた。

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    2013年04月11日
  • たまご猫

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    いつの間にか狂気に足を踏み入れてしまっている。
    そんなストーリー展開がとても良かった。

    暴力的な表現やグロテスクな表現が無く、純粋な恐怖を感じられる物語としてとても良い作品だった。

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    2013年04月04日
  • 蝶

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    ネタバレ

    昭和初期が舞台の幻想的な短編集

    とにかく文章が綺麗で、グロい展開でも切ない展開でもとにかく綺麗なイメージは崩れない
    全体的に仄明るいような仄暗いようなイメージ

    私は表題作ももちろんですが、『妙に清らの』『龍騎兵は近づけり』『幻燈』が特に好きです

    「わたしはもう、何も怖くはない。」
    「いつまでもお若くておいであそばしますねえ。」
    という終わりかたも凄く好き

    幻想的で切なくてとにかく綺麗で…
    いい読書ができました

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    2014年02月21日
  • 薔薇密室

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    ネタバレ

    初皆川作品。圧倒され、惑乱させられた。次々と語り手が交代していくことにより、たった今まで現実と思って読んでいた物語が虚構に切り替わり、そして次に読んだ物語も虚構へと……、現実との境界が分からなくなっていく。どれも完結しない物語。登場人物が感じる混乱が私にも伝播し、酔う。ミステリ作品として、最終的には現実が提示されるわけだが、それでも残されたひと筋の非現実-詳細は伏せる-により、この惑乱は解けずに終わる。

    薔薇の僧院。薔薇と人間を合体させる狂気の研究。男娼と黴毒。姉の美しい恋人。美しき劣等体。ナチとSS。重厚な文体。出てくるモチーフは確かに倒錯、耽美なのだが、そこには頽廃のような爛れた空気より

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    2013年01月31日
  • 倒立する塔の殺人

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    少女時代と云うものは、実は何重ものベールに覆われていて、真の姿を簡単には見せないものだ、とこの作品を読んで思い出した。
    でも、そのベールは、ある日突然無くなってしまう。
    剥ぎ取られるのか、自ら脱ぎ捨てるのか。
    あるいは両方か。
    ベールに代わるものを必死に探しながら、余命を生きる。
    だけどもう真の姿を隠してくれるものは現れない。
    沢山の細かな傷を抱えながら、そうしてどんどん鈍感になりながら。

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    2013年01月14日
  • 倒立する塔の殺人

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    解説で三浦しをんさんが述べていた通り
    「すごい」
    の一言に尽きるだろう。
    倒立する塔の殺人をいう回し書きの小説
    を通してべー様と小枝は真実へと近づいていく。
    この際読者は登場人物から一歩離れた倒立の
    読者へと変わる。そうなることによって物語をより
    身近に感じられている気がした。

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    2013年01月12日
  • 薔薇密室

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    とても良い香りで、味も抜群の料理を食べていると、不意に奥歯で砂利を噛んでしまった。

    温かくて手触りの良いストールを巻くと、ちょうど首の後ろの部分にに何かの棘がついていた。

    靴に入り込んだ小石。

    わずかに漂ってくる悪臭。

    そんな決定的に不愉快だとは云えないまでも、落ち着かない気分になる物語。

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    2012年11月29日
  • 薔薇密室

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    なんて美しく、退廃的で、歪んだ世界!
    「死の泉」同様、どっぷりと皆川ワールドに浸ってしまいました。

    美青年を薔薇と結合させ、永遠の美しさを保つ。
    「死の泉」で、少年の美声に異常なまでに執着した医師を思い出します。

    夢と妄想と現実。読んでいるうちにその境目が曖昧になる。
    何冊か読んできましたが、皆川さんの真骨頂はそこなのかな、と。
    美しい悪夢のような物語に溺れてしまいそう…

    一読しただけでは、とても理解できたとは言えませんが、
    幻想的な世界観をたっぷりと堪能できました。

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    2012年10月14日
  • 薔薇密室

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     第1次世界大戦から第2次世界大戦にかけてドイツ・ポーランドの国境近くの修道院で行われた秘密の実験。
     
     脱走兵に、ポーランドの少女、修道院の作男、と、語り手は変動していく。でもって、どれも<信用のならない語り手>なのだ。
     なので、翻弄され困惑し、気がつくとがっつり世界に取り込まれている。

     にしても、薔薇と人間を融合させるという実験が、あの病気の治療云々につながっていくとは…。
     とはいえ、まぁ、どれもこれも共感できない人物のオンパレードで、ある意味、人間の基本的な嫌な部分、というか自分自身が嫌悪していることを凝視させられる気になる。
     やっぱ、怖いです、皆川博子。

     でも、癖になる

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    2012年06月10日
  • 薔薇密室

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    脱走兵コンラートが逃げ込んだ古い僧院では、ホフマン博士が人間と薔薇を融合させる実験を行なっており・・・
    いくつかの物語が交錯しながら、しだいに集約していき、思わず引き込まれる。理屈はともかく、この物語の世界にハマったもん勝ちって感じかな。

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    2012年05月28日
  • 薔薇密室

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    頑張って読み終えた。

    私の日常とかけ離れた、濃密で妖しい、美しくねじれた世界。

    触れようと手を伸ばせば、容赦なく鋭い棘で傷つけられ、こちら側に来る勇気はあるのか、と静かに詰問される。

    私は流れ落ちる血をも忘れ、汝に見とれるばかり。

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    2012年05月20日
  • 倒立する塔の殺人

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    「語り」自体に仕掛けがあるらしい……
    という情報だけ仕入れて読んだ。
    太平洋戦争末期の女学生たちの愛憎劇で、
    複数の人物の手稿が連続するノートを読み進める、
    という形で進行する物語。
    誰が犯人で誰が被害者か、
    そして、どこからどこまでが話中話なのか、
    さして長くない小説だが、
    気づかないうちに落とし穴に嵌まっているかもしれないと
    疑心を抱きつつ、目を皿のようにして読み進めた。
    結果……罠に掛からなかったのが嬉しいような、
    逆にちょっと損したような、変な気分になった(笑)が、
    文句なしに面白かった。
    叙述ミステリ入門編として、
    こういうジャンルに興味を持ち始めた方に、お薦めしたい。
    騙されるのも

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    2014年04月27日
  • 蝶

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    内容は
    詩片に沿って書かれた短篇集で
    いつもの皆川さんのごとく綺麗グロ怖い切ない
    けれども、今回のこの短篇集はホント絵になる。
    そしてそのえが美しすぎて、好みすぎて震えちまう。
    例えば、「妙に清らの」という話では
    義眼の夫が看護婦と浮気していて
    看護婦が眼窩に舌を突っ込み、義眼を舌で救い取る場面がある。
    嫁は、静かに涙流して歌を歌ったりしてるのだが
    ある日、死んだ夫の顔を膝に乗せ、眼窩に紫陽花の花の小さな花弁を
    1つずつ生けていくというような描写が
    あたしでは説明口調だが、誠に美しい表現で描かれている。

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    2011年05月07日