皆川博子のレビュー一覧

  • 少年十字軍

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    13世紀に実際にあった少年十字軍をテーマに描かれたお話。
    難解そうに見えて、意外にさらさらと読める。それは、登場人物は多いのに、それぞれが生き生きと魅力的に描かれているせいかも知れない。

    エティエンヌに心酔する子どもたち、信じてはいないけれど追随する者、利用しようとする者、そして訳も分からずただ参加する者。様々な思惑が絡み合いながら旅は続く。

    神の不在、死後の世界と無宗教の人間には正直理解できない部分はあるけれど、中世的なちょっと暗くて閉鎖的な雰囲気は伝わってくる。

    身勝手な大人たちに腹が立つと同時に、エティエンヌがいれば大丈夫と無邪気に繰り返す子どもたちの残酷さにも慄然とする。すべてを

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    2018年02月06日
  • 少年十字軍

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    ネタバレ

    世界史上、有名なエピソードに基づくお話。

    「少年十字軍」と言えばいい印象を持っておられる方は少なかろう。
    当時のヨーロッパや聖地をめぐる云々、縁のない日本で育ったものにはなかなか理解しがたいものがあるし、安穏と状況に納得いかぬことが多々ある。

    それはおそらく、当事者においても同じことであったろう。

    哀れな少年と彼をめぐる仲間たち、愚かな大人、誰一人幸せを享受できぬまま終わるストーリー。
    この先、彼らに平安が訪れるかどうか、かすかな希望すら打ち消される不安感。
    ヨーロッパや中東、アフリカ北部は歴史的にもこの先安定することはないことを知っている現代のわたしたち。

    悲哀のもとに終わってゆくで

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    2016年04月24日
  • 猫舌男爵

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    多彩で美しくて後味の良い短編集。扱うジャンル、文体、世界観、人物像なんかが見事に合致していて、ああ文で味わえてなんて嬉しい、とにやにやしてしまいました。

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    2016年03月25日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    18世紀ロンドンが舞台の殺人事件。その時代の色や香りまでが伝わってくる独特の世界観に浸りながら、どんどん惹きこまれていくストーリーです。魅力的な二人がどうか犯人でありませんように、と途中から祈りながら読みました。救いがあって良かった。続編も読みます。

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    2016年03月24日
  • 蝶

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    ネタバレ

    皆川博子の本を読むときは、自然に背筋が伸びるような感覚を味わう。
    自分の感受性やら、言語感覚やらを、試験されてるような感覚。
    圧倒的な美意識の高さは、難解で、曖昧で、いつも必死ですがりつくような思いで読んでいる。
    楽しいか、面白いか、と言われればなんと答えればいいだろう。
    素敵です、とでも応えようか。

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    2016年03月22日
  • 死の泉

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    ネタバレ

    『開かせていただき』から皆川文学にはまって第5弾目(笑)
    幻想的で美しい世界観に引きずり込まれ自分的には結構早いペースで読んでしまったかな。
    クラウス医師の美への執着、マルガレーテの狂った世界、兄弟の復讐劇に感情を翻弄されつつ読み終え、最後のあとがきで物語を覆す言葉が…。
    始めに本を開いたときに野上晶訳とあったので嫌な予感はしていたけどね。
    著者の語る「実在してる人物」「複数の特性をかねあわせて一人の人物」という言葉から、あの時あの人物は死んでしまったのではないか、あの二人は同一人物なのではないかと思考が完全に迷走してしまった。
    何度読んでも分からないままになるかもしれないけど時間を少しあけ

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    2016年05月23日
  • 双頭のバビロン 上

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    私的に、2015年に読んだ本ではナンバーワン。

    1920年代の物語。ウィーンに生まれた双生児、ゲオルクは貴族の跡取りとして育てられ、ユリアンは世間から隔絶された館で育てられる。

    これは、なんというジャンルに分類すればよいのでしょうね。幻想的であり、猥雑であり、醜くも美しくもある執着と呼べる感情が織り込まれ、耽美的であり、栄光と挫折が縒り合された、なんとも複雑な味わいの物語。

    運命、という言葉を強く印象付けられる一冊。読み始めると、この世界に引き込まれ、濃厚な空気に酔わされる。

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    2016年02月20日
  • たまご猫

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    ネタバレ

    かわいらしい書名とは裏腹に、おどろおどろしいお話ばかり。
    骨董屋の狂い具合が素敵。
    文庫のカバー絵は北見隆氏。赤川次郎の三毛猫シリーズの表紙なんかもこの方なので、子供の頃からなじみ深い感じです。

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    2016年02月18日
  • 猫舌男爵

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    相変わらず素晴らしい。
    『オムレツ少年の儀式』と『睡蓮』が特に好き。
    表題作は皆川さんの小説としてはなかなか珍しい感じでしたが、純粋に笑えて面白かったです。
    『太陽馬』はラストの情景を頭に浮かべるとなぜだか涙が出そうになりました…。

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    2016年01月20日
  • 少年十字軍

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    一点の染みもない潔癖な少年と無垢な子供たちが、乳と蜜の流れる聖地を目指す。罪に汚れた大人たちに利用されながらの旅の果て、新たな試練の始まりのラストに光明と切なさが入り交じる♪。

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    2015年10月30日
  • 伯林蝋人形館

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    ネタバレ

    「全ての物語を書き終えたものには、自殺の特権を与えよう」……なんて甘美な。

    皆川博子による「伯林蝋人形館」。
    その後、ふたたび現れる「伯林蝋人形館」のタイトル。
    本編。作者略歴。
    本編。作者略歴。
    本編。作者略歴。
    本編。作者略歴。
    本編。作者略歴。
    本編。作者略歴。
    書簡。

    こういうかたちで、同じ出来事を別の人物から描きなおし描きなおしていく。
    その後、本自体の仕掛けに気づかされる最終章「書簡」。
    おお。
    本書に関しては解説もありがたい。

    アルトゥール。
    ナターリャ。
    フーゴー。
    ヨハン。
    テオ。
    ハインリヒ。
    マティアス。
    ツェツィリエ。
    おお。

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    2015年10月17日
  • 少年十字軍

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    ネタバレ

    クライマックスの『試練』『選択』の残酷さよ……
    が、この二つこそが人間が一生負い続けるものなのかとぞっとした。
    なんといっても作者の筆力の素晴らしさ。手に汗握ってしまった……

    物語としても、これだけの人数が出てくるにも関わらず、一人一人が生き生きと活写されている。
    十三世紀という時代、どれだけ「神」という存在が人を救い、その何倍も人を苦悩させたのか。正直、何もかも「神」中心になる当時の人々の心情には寄り沿えないが、無垢な人々がいるのと同じくらい、狡猾に「神」を利用している人々の逞しさにも感心させられた。

    キャラクターがすべて素晴らしい。
    ラスト、「無」から生きる手ごたえを取り戻したいと思っ

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    2015年08月15日
  • 死の泉

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    ナチスドイツの時代を舞台に描かれる超大作。海外文学の体裁がとられているけど、実際、読み応えも海外文学のそれ。でも、海外文学より国内文学の方に魅力を感じてしまう自分としては、これも完全には入れ込めなかったってのが本音。自分なりに分析してみると、やっぱりカタカナの人名がネックなのではないか、と。あと、地名がピンと来ないのも大きい。もちろん、海外にはこんな人名があるんだとか、あの国にはそんな場所があるんだとか、そういう意味での興味はあるけど、それでもやっぱり、骨肉となっている和名には及ばず。といいながら、これからも海外文学とか、ずっと読んでいくんだけど、きっと。

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    2015年07月02日
  • 死の泉

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     ミステリだし、という油断を全く許さない正統派の物語。
     嘆美だし、幻想的なのに骨太。どうしたらこんな話が書けるんだってなる。

     そして最終行までたっぷりと楽しませて頂いた。
     ありがとうございます。
     最初から読み直したい……! うわぁぁぁぁってなる。

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    2015年06月11日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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     開かせていただき光栄ですの続編ということだが油断ならない。容赦ない。
     時代背景的にイギリスの全盛期だと思うのだが、何だろうこの闇の濃さは。
     面白い。

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    2015年06月11日
  • 倒立する塔の殺人

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     幻惑させられる。
     倒立する。
     この話はどこに行くの? そう思いながら、頁を繰る手はとまらない。

     空気を読まない異分子としての「イブ」。
     ミッション学校にどこか崩れた感じを残す「ジダラック」。

     なんという悪意に満ちた呼び名だろう。まさに女子。
     そして、戦争と、その中でただ生きる彼女らは……………もうね、なんというか、すごいわ。これ。
     再読したい。

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    2015年06月11日
  • トマト・ゲーム

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    この密やかな毒に、指先からそっと浸して、ずっと痺れていたい……
    そう思わせる皆川ワールド。
    なんでこんなに底意地が悪くて性格が悪くて後味も猛烈に悪いのに惹かれるのか。

    皆川先生の作品は、どれも幼女がそのまま大人になってしまったような儚さと残酷さがあって、どんな惨い内容にも、根底に無邪気さがあるように感じられる。

    その残酷さに、どうしようもなく惹かれるのかも。
    装丁の人形が皆川ワールドをあますことなく表現していて、美しい。

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    2015年06月11日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    登場人物が結構多くて、名前もごっちゃになって読むのが少し大変でした。

    前作の、ナイジェルがまさかの姿になって現れて、彼の悲惨な過去と別の事件が少しづつ明らかになっていきます。ちょっと想像を斜めいってる過去でした。

    今回はアルが結構重要な役割を務め、彼が一番正義をしっかり持っていて彼がでてくると結構安心しました。
    本当昔のイギリスは腐ってるな、と判事のもどかしさがよくわかる。

    もちろんエドもでてきます。
    彼も彼なりの正義を前回同様持っていて潔かったと思う。

    それにしても残酷だなぁ。
    新大陸に渡ったみんなは、そして最後の最後で助け出されたベイカーさんは幸せになれるのかなぁ?






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    2015年06月05日
  • 蝶

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    タイトルがなんだか耽美だなあと思って手に取ってみた作品。
    これは、筋肉少女帯とか江戸川乱歩とか京極夏彦が好きな人にはとってもはまる作家さんだと思います!あと若合春侑。

    退廃的でとても耽美。子供目線の、戦前〜戦後くらいの時期の短編集がいくつか収録されています。
    一番良かったのは、良縁を紹介してもらうために奉公しに行ったお宅の奥様と女性同士で恋仲になってしまった小間使いの話。奥様が防空壕で焼け死んでから最後までの幻想的なくだりが読んでいてドキドキした。

    戦時中〜戦後までのエログロというかなんというか、あの時代特有の暗いエネルギーに満ちています。ミステリーもたくさん書いているらしいので、読んでみ

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    2015年05月09日
  • 薔薇忌

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    演劇に携わる人々を描いた短編集。内容は「演劇の話」と聞いて想像するものの斜め上を行く、皆川博子テイストの効いた独特なものばかり。役者だけでなく、プロデューサーや小道具製作者などの裏方にもスポットを当てている。面白かった!

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    2015年04月30日