皆川博子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ続編は肩透かしも多いけど、前作越え!
ナイジェルは死んだと見せかけて、本当は生きてるんじゃないかとおもったけど、そこは深読みしすぎた。が、出自を知るにつけ、彼には強かに生きてほしかった。ここでまたポーの一族に頭シフトさせると、アランポジションだから?!
事件のピースの繋がりかたが、現実はそんなにうまくいかないよね、とは思うけど、謎の開陳がスムーズで気持ちよくて、次をどんどん読みたくなる。
人物が生き生きとしていて、読んでいて物語にうんと惹き込まれる。
改めて、研究馬鹿のダニエル先生好きだな〜!
アルの大活躍も、ネイサンの成長もニマニマしながら読める! -
Posted by ブクログ
ネタバレ悲劇にしかならないことは最初からわかっていたので、重い話を読める時で良かった。
貫き通せる大人陣は本望だろう。巻き込まれた子どもたちがキツい。
そして、それらを全部崩壊させるラストだった。
これは、虚構の世界とラストのどちらにハマるかによって、読み方が変わる。前者ではフランツの愛憎、苦悩に揺さぶられ、後者ではクラウスに振り回された。
どこからどこまで虚構なのか、事実か。
最終的にはクラウスがアメリカ(と大佐、これは偶然)を振り切り、城と2人のミヒャエルを手に入れるため、と解釈した。
この話はマルガレーテの手記(全て終わってから、錯乱してから書き直されているので、事実とは限らない)と夢想、 -
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脳をフル稼働させて必死で読んだ…
幻想小説と時代小説が融合した風のこの作品集、中々骨が折れました。
暗喩がたくさんで理解するのに一苦労。この台詞は誰?と行きつ戻りつ。
それぞれ独立した短編のはずだが、一部共通して登場する「中洲」という場所を通じて連作っぽい感じもある。
川はあの世とこの世を分かつ象徴だが、では中洲はどちらに属するのか?虚実あいまいでない混ぜになった異界めいた物語「文月の使者」に蛇の生臭さと不誠実さ漂う「ゆめこ縮緬」、中洲を通じ捩れた時空が繋がる「青火童女」。
シャガの根が湿気った家の畳の下に蔓延っている様子に寒気がする「胡蝶塚」、古代中国の妖狐伝説を題材に取った「影つ -
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8篇から成る短篇集。それぞれに俳句、詩の引用が載せられている。
皆川博子さん初読。大満足。まず「空の色さえ」から、灰まみれになった他人の想い出でも覗いているかのような感覚を覚え、物語に引き込まれた。片目のない叔父、小間使いと戯れる奥様……。「妙に清らの」と「幻燈」には特に惹かれた。幻想的な世界に夢中になって読んだが、自分に詩句の知識がないことが悔やまれる。どういう意図があってこの詩や俳句が引用されているのか、というのを知りたい。
皆川さんのほかの作品も読みたいと思った。
空の色さえ/蝶/艀/想ひ出すなよ/妙に清らの/龍騎兵は近づけり/幻燈/遺し文 -
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初見の作家を装丁買い。一切悔いなし。
以前に短編集『影を買う店』をちらっと読んだときに、幻想小説かぁ…ちょっと違うかもなぁ…って思ってたけど、いや全然そんなことない
同じように短編読んで離れそうになった人はぜひ長編の皆川博子をこそ読んでほしい
ドイツの潜水艦Uボートと、underground(地下)の2つのUを巡って、少年たちが「時代」や「歴史」や「戦争」…どうしようもない世界の何かに翻弄され、時を超えなお生き続けてゆくお話
彼らの身のうちに湧き、淀み、沈んでは迸る感情は強烈で、しかも彼らはそれを互いに(一部は一方通行に)何世紀もの間行き来させるのだけれど、その姿を描き切ってしまう丹念な -
Posted by ブクログ
「歌う城壁」の童話を起点に、正統アーリア人の子を養育する施設・生命の泉、ナチスの地下壕、不死の人体実験、ボーイソプラノを生涯維持する去勢手術等々書き並べると不安になる題材を、元SSの科学者の家族を中心とした物語としてまとめ上げた一冊。
読んでいる間中、ずっと靄に包まれた感覚に陥っていた。何が謎で何が真実なのか、作中で一応明らかにされる。
がしかし、この作品自体が真実なのかをわからなくする仕掛けが冒頭からあとがきに至るまでを貫いている。
お伽噺のはずの歌う城壁の下で十数人の命が現実に消える。
読後残るのは恐怖……。
楽しい小説ではない。
面白いと言っていいのかもわからない。そう言えば不謹慎になっ -
購入済み
ごてごてと重なり合って
悪い意味ではなく ごてごてと何層にも重なり合ったエピソードが 混ざり合うことはなく進んでゆく話。並の作家が書いたら単なるもつれた話にしか過ぎないところを、魔術的な筆力でちゃんとした作品に仕上げている。
作者は90歳を越える現役最長老の小説家であるが毎年のように新作を発表されている。作者ご本人が魔女的な力を持っているのかもしれない。