皆川博子のレビュー一覧

  • 死の泉

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    「歌う城壁」の童話を起点に、正統アーリア人の子を養育する施設・生命の泉、ナチスの地下壕、不死の人体実験、ボーイソプラノを生涯維持する去勢手術等々書き並べると不安になる題材を、元SSの科学者の家族を中心とした物語としてまとめ上げた一冊。
    読んでいる間中、ずっと靄に包まれた感覚に陥っていた。何が謎で何が真実なのか、作中で一応明らかにされる。
    がしかし、この作品自体が真実なのかをわからなくする仕掛けが冒頭からあとがきに至るまでを貫いている。
    お伽噺のはずの歌う城壁の下で十数人の命が現実に消える。
    読後残るのは恐怖……。
    楽しい小説ではない。
    面白いと言っていいのかもわからない。そう言えば不謹慎になっ

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    2020年12月15日
  • 双頭のバビロン 上

    購入済み

    ごてごてと重なり合って

    悪い意味ではなく ごてごてと何層にも重なり合ったエピソードが 混ざり合うことはなく進んでゆく話。並の作家が書いたら単なるもつれた話にしか過ぎないところを、魔術的な筆力でちゃんとした作品に仕上げている。
    作者は90歳を越える現役最長老の小説家であるが毎年のように新作を発表されている。作者ご本人が魔女的な力を持っているのかもしれない。

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    2020年09月10日
  • ゆめこ縮緬

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    魅了される色濃く美しい文章で、昏く深いところから浮かび上がってきた見たくない気持ちをまざまざと見せつけられた気がしました。
    厭ではなく、深淵を覗いているように。
    じわじわと染み込んでくるものから、ラストでくるっと世界が変わるものまで様々。
    皆川さんの世界は、今より前の時代を舞台にしていても普遍的な感情の気がします。でもそれがこんなにも美しい物語に昇華されているので読みたくなります。身体的にも精神的にも、残酷だけど。

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    2020年08月26日
  • 愛と髑髏と

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    久しぶりに皆川さんの短編を読んだが、その絶妙な毒にクラクラした。
    すべて人間の醜いともいえるエゴが剥き出しなのに、繊細なレース編みみたいな幻想的な美しさをもつ短編。解説の服部まゆみさんが言いたいことを全て言ってくれている。
    特に「舟唄」の愛の形が好き。

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    2020年07月24日
  • 花闇

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    ネタバレ

    3,4年前に隙間時間に読もうと思って買っていたけど挫折してた本。
    最近ドラマの仁を見直してて、澤村田之助…?どっかで聞いたぞ…?花闇じゃん!?となり、即再チャレンジすることに。
    いやー面白かった〜!
    挫折してたのが意味わからないくらい面白かった〜!
    本当私隙間時間に読むの向いてない。
    没入しちゃうから一気見しかできない。

    幕末〜明治に実在した歌舞伎役者で、女形だった3代目澤村田之助の生涯を描いた本。その影として、世話をこなす自身も女形の市川三すじが主人公。
    舞台上の怪我が原因で四肢を失いながらも舞台に立ち続けた田之助の激動の人生が三すじ目線で描かれているのだけど、この三すじもなかなかに拗らせ

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    2020年07月05日
  • 愛と髑髏と

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    「風」★
    「悦楽園」
    「猫の夜」★
    「人それぞれに噴火獣」★
    「舟唄」★
    「丘の上の宴会」
    「復讐」
    「暁神」
    解説 服部まゆみ
    編者解題 日下三蔵

    語り手あるいは視点人物が実は@@だった、という私好みの叙述でもあり。
    皆川博子独特の、デストルドーというかタナトスというか、が、ひたひた。
    中年女性(生活)の挫折=少女性(夢想)の勝利、というラインが、嗜虐被虐の一点に押し込められていくという……これはもう立派な文芸批評の対象になりうる作家性だ。
    中年女性については「舟唄」、少女については「人それぞれに噴火獣」、そして少女性を離れた寓話としては「猫の夜」。
    凄まじいの一言に尽きる。

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    2020年05月05日
  • ゆめこ縮緬

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    甘い毒を含んだ、絢爛な幻想短編集。どれをとっても酔いしれるような気分にさせられる作品ばかりです。作中に引用されている西城八十の詩などもまた雰囲気をより一層引き立てて、くらくらしそう。一気に読んでしまうのはもったいないし、毒が回りそうでもあります。少しずつ読むのがおすすめかも。
    全部好きだけれど、強いてお気に入りを選ぶなら「青火童女」かなあ。玉緒の魅力にもやられてしまったのですが。過去と現在と未来が絡み合う物語の中、どこをとっても凄まじいばかりの情景。そこに居並ぶ人形たちが美しくも恐ろしく、ひどく魅せられました。なんだかもうここから抜け出せないような心境です。

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    2020年04月22日
  • 死の泉

    購入済み

    凄かった

    虚構と現実の境い目が危うくなる。最後の最後で味わう幻想的な読了感。

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    2020年02月15日
  • 薔薇忌

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    久し振りの皆川博子さん、さんといっていいのか今年で85歳になられた今まで10指に余る賞を受けて、文化功労者にも選ばれた。
    多くの作品は、幻想的と冠がつく、長編小説、切れのいい短編(それでもなお妖しい)ゴシックロマンといってもいい、海外を舞台にした、不思議な出来事、怪しい雰囲気を纏った作品群。
    人の暗い部分を見る目を持っている人は、何かの気配に敏感だったり、時々常にない心もちに陥ったりする。
    見たり聴いたり感じたりする本来の器官の働きに、敏感な特殊な能力を持っている人なのかもしれない。
    皆川さんは、そういう異界の、異形のものだったり、現実何気ない気配を、幻のように書き出してみせてくれる。
    幻想作

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    2020年01月05日
  • 猫舌男爵

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    面白かったです。
    SFとコメディと幻想と…いろいろな色のお話たちでした。
    表題作は笑い過ぎました。皆川さんこういうのもお書きになるんだ。ハリガヴォ・ナミコが皆川博子のアナグラムって気付かなかったけど…そして皆川さんの初期?に針ヶ尾さんのお話あるのですね。
    「私は猫です」の活用…確かに、これ読んでると日本語ってつくづく変わってるなと思います。
    結局誰も「猫舌男爵」を読めていないし、話も噛み合わないのに、ラストは皆さん幸せになる。良いなぁ。
    「水葬楽」がとても好きでした。
    死が近付くと容器に入り、液体の中で暮らす人々。それを見詰める兄妹は結合児で…。選別された妹だけど、なかなか衰弱が始まらないのが

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    2019年12月21日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

    購入済み

    「創作する遺伝子」小島秀夫推薦

    皆川さんを知ることができて良かったです。石炭の煙に曇ったロンドンの情景に馬車、死体、当時の医学、羊皮紙の書物、コーヒーショップや退廃的な文化を散りばめて、最後の最後までドキドキしながら読むことができました。

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    2019年12月21日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    ネタバレ

    海外小説の翻訳ものを読んでいるような感じでした。個人的には読むのに骨が折れた。。。
    最後、どんでん返しもあります。

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    2019年12月08日
  • 薔薇忌

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    初めて読んだ皆川作品。衝撃を受けたが、著者の他作品を読んでいくうち、かなりライトなほうだと知った。皆川博子入門にいいかも。過激さは抑え目でただただ美しく、幻想的。

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    2019年11月17日
  • ゆめこ縮緬

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    ネタバレ

    幻想文学とはどんなかな、と気軽に手に取ったものの、最初の二行
    「指は、あげましたよ」
    背後に声がたゆたった。
    からもうにおい立つ霧、湿気、妖しい気配に呑まれる。
    大正~戦前くらいが時代設定らしいけれど、お金持ちのお話が多くてそのゆとりある暮らしと文化が、相応しい格式と美しさを持つ文体で丁寧に綴られている。お妾さんにお手伝い、乳母等が大勢という現代の私たちには馴染みのない暮らしがにおいや光を伴って目の前に易々と立ち上がってくるその力量、畏怖の念を抱くばかり。
    しかしそんな確かな生活の描写がむしろ話の妖しさ、危うい官能(直接的な表現はないのに!)、夢とうつつ、死と生がぐるりぐるりと交じり合う恐ろし

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    2019年09月27日
  • 夜のアポロン

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    いつ読んでも新しく思えるのだけど、かなり前に書かれたものなのかな。
    世界観に浸れる貴重な作家さん。
    まだまだ作品を送り出して欲しい。

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    2019年08月29日
  • 夜のアポロン

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    幻想的な短編集。一応ミステリ、とされているので。ミステリとして読めるものが多いけれど。一概にくくれるものじゃないですね。しかし幻想にしろミステリにしろ、どの作品も素敵なのは確か。
    お気に入りは「致死量の夢」「死化粧」。おそらく収録された作品の中でも一番ミステリとして読める作品かな。だけど物語を取り巻くあまりに危うい美しさに呑み込まれて、酔いしれたまま結末まで一気に運ばれた印象。
    「はっぴい・えんど」もいいなあ。ある意味最高に素敵なハッピーエンド……?
    そしてラストの「塩の娘」がなんともユーモラスで印象的でした。ちょっとした遊び心も見えて、これが最後というのはなんだかすっきりするかも。

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    2019年07月19日
  • 妖恋

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    再読でも、ここに描かれる甘やかで残酷な世界にうっとりします。
    どこから狂っていたのだろう、でもきっと最初から狂っていたのだと思います。
    「心中薄雪桜」と「夕紅葉」が好きですが、「妖恋」の一文「おまえ、どうして、そう、化け物と人をわけるのだろう。どっちもたいして変わりはありゃあしないのだよ」にははっとします。
    「夕紅葉」の、紅葉ケ原はどこ、に、ここじゃないか、とこころの中から声がするのもぞっとしました。そうか、あの時囚われたのだ、と。
    絶望的な世界なら、彼方側に行ってしまった方が楽なのか…狂気を抱えて生きるのか。。
    カバーの折り返しにも載っている、近藤史恵さんの解説もとても好きです。

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    2019年06月25日
  • 倒立する塔の殺人

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    とても面白かったです。
    戦争末期の女学校で、ある少女の死をきっかけに、密かに書かれていた「倒立する塔の殺人」という物語の謎解きが始まる…という要約も難しいお話です。
    今回も戦争の残酷さとそれでも損なわれない美に惹き付けられました。
    YAの作品なのですが、決して子どもっぽくないどころか、登場する絵画・音楽・小説についても知りたくなる知識欲にかられる作品でした。
    「どういう小説が好きか、登場人物の誰に惹かれるか、それを明らかにするのは、自分自身の本質を曝すことでもある」という一文に、それではわたしはここでは自分自身の本質を曝してるのか…と思いました。確かに。
    空想あるいは物語という水を養いにしなけ

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    2019年03月16日
  • 蝶

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    戦前戦中戦後の混沌とした空気と、残酷な昏さと静かな狂気に絡めとられる短編集でした。
    大好きな空気です。
    作中で使用される詩や句も素敵です。
    「想ひ出すなよ」の少女たちの残酷さ、「妙に清らの」の凄絶に美しい綾子叔母と叔父のラスト、「龍騎兵は近づけり」の勝男のバグパイプ、「遺し文」もその後が切なくて切なくて…皆川ワールドを堪能しました。
    皆川さんは幻想小説も美しくてとても良いです。
    もう逃れられません。

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    2019年02月20日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    『開かせていただき光栄です』から5年後の物語。
    ダニエル先生の解剖室は閉鎖し、エドとナイジェルが去った後、残された弟子たちは、盲目の判事ジョン・フィールディング氏の元で『ヒュー・アンド・クライ』という情報新聞の編集を任されていた。22歳になったネイサン・カレンや、アン・シャーリー・モアとの交流の中、それぞれが互いに負った心の傷をゆっくりと癒しながら生活していた。


    そんな中に突然舞い込んだのは
    「死体」と「謎」

    ・落下する天使を見た踏み車漕ぎの男。
    ・棺に入れられたナイジェル・ハートの遺体。
    ・胸に書かれた〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ!〉と
    〈アルモニカ・ディアボリカ〉の文字。
    ・消えた

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    2018年12月26日