皆川博子のレビュー一覧
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8篇から成る短篇集。それぞれに俳句、詩の引用が載せられている。
皆川博子さん初読。大満足。まず「空の色さえ」から、灰まみれになった他人の想い出でも覗いているかのような感覚を覚え、物語に引き込まれた。片目のない叔父、小間使いと戯れる奥様……。「妙に清らの」と「幻燈」には特に惹かれた。幻想的な世界に夢中になって読んだが、自分に詩句の知識がないことが悔やまれる。どういう意図があってこの詩や俳句が引用されているのか、というのを知りたい。
皆川さんのほかの作品も読みたいと思った。
空の色さえ/蝶/艀/想ひ出すなよ/妙に清らの/龍騎兵は近づけり/幻燈/遺し文 -
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初見の作家を装丁買い。一切悔いなし。
以前に短編集『影を買う店』をちらっと読んだときに、幻想小説かぁ…ちょっと違うかもなぁ…って思ってたけど、いや全然そんなことない
同じように短編読んで離れそうになった人はぜひ長編の皆川博子をこそ読んでほしい
ドイツの潜水艦Uボートと、underground(地下)の2つのUを巡って、少年たちが「時代」や「歴史」や「戦争」…どうしようもない世界の何かに翻弄され、時を超えなお生き続けてゆくお話
彼らの身のうちに湧き、淀み、沈んでは迸る感情は強烈で、しかも彼らはそれを互いに(一部は一方通行に)何世紀もの間行き来させるのだけれど、その姿を描き切ってしまう丹念なほどの執念深さ。背すじ凍る
それを経てエピローグまで読んだときの虚脱感にも似たあの感情。
たぶん他ではそうそう味わえない、初読1回きりのそれなので、ぜひネタバレ無しのまま読み切ってほしい -
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「歌う城壁」の童話を起点に、正統アーリア人の子を養育する施設・生命の泉、ナチスの地下壕、不死の人体実験、ボーイソプラノを生涯維持する去勢手術等々書き並べると不安になる題材を、元SSの科学者の家族を中心とした物語としてまとめ上げた一冊。
読んでいる間中、ずっと靄に包まれた感覚に陥っていた。何が謎で何が真実なのか、作中で一応明らかにされる。
がしかし、この作品自体が真実なのかをわからなくする仕掛けが冒頭からあとがきに至るまでを貫いている。
お伽噺のはずの歌う城壁の下で十数人の命が現実に消える。
読後残るのは恐怖……。
楽しい小説ではない。
面白いと言っていいのかもわからない。そう言えば不謹慎になってしまいそうな。
けれど、先を読まずにはいられなかった。
須賀しのぶ著『神の棘』の感想で、同時代のナチスを題材にしたものとしてこの本の名前を挙げているのが目に付いて手に取った。内容は全然違うものの、そちらを読んでいたおかげで時代背景がよくわかり、より深く作品に没入できた。
話の面白さでは『神の棘』の方が、一口に言えない「凄さ」ではこちらの方が断然上かと。
敢えて言えば、背徳の面白さがある。
うん、結局面白いのかも。しかも、とても。 -
購入済み
ごてごてと重なり合って
悪い意味ではなく ごてごてと何層にも重なり合ったエピソードが 混ざり合うことはなく進んでゆく話。並の作家が書いたら単なるもつれた話にしか過ぎないところを、魔術的な筆力でちゃんとした作品に仕上げている。
作者は90歳を越える現役最長老の小説家であるが毎年のように新作を発表されている。作者ご本人が魔女的な力を持っているのかもしれない。 -
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ネタバレ3,4年前に隙間時間に読もうと思って買っていたけど挫折してた本。
最近ドラマの仁を見直してて、澤村田之助…?どっかで聞いたぞ…?花闇じゃん!?となり、即再チャレンジすることに。
いやー面白かった〜!
挫折してたのが意味わからないくらい面白かった〜!
本当私隙間時間に読むの向いてない。
没入しちゃうから一気見しかできない。
幕末〜明治に実在した歌舞伎役者で、女形だった3代目澤村田之助の生涯を描いた本。その影として、世話をこなす自身も女形の市川三すじが主人公。
舞台上の怪我が原因で四肢を失いながらも舞台に立ち続けた田之助の激動の人生が三すじ目線で描かれているのだけど、この三すじもなかなかに拗らせている。
そのこじらせ目線で感情剥き出しに描かれているので、生々しいにも程がある。
三すじは田之助を尊敬し、愛し(色んな意味で。)、彼のために尽くす一方、妬み、憎しみといった暗い感情も持つ。だから、ある場面では田之助を敬愛しながら、別の場面では田之助の不運に対し「ざまみろ」と思うこともある。
読者にとっての語り部たる三すじの田之助に抱く感情がこんな感じでユラユラしているのが面白くてたまらない。
登場人物に月岡芳年もいる。以前、友人から月岡芳年の描く赤色はすごい、と教わったことがあって、それ以来作者を知らない状態で作品を見ても、芳年の作品だとわかるようになった。
芳年の赤がなぜあんなに美しいのか、花闇で答え合わせをできた気がする。(たとえ創作であっても、花闇の芳年の描写と美しい赤の理由は私的にかなりふに落ちた)
皆川博子先生、美しい表現だけじゃなくて、歌舞伎を知らない私でもめちゃくちゃ楽しめたので、いろんな作品読んでいこうと思う! -
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「風」★
「悦楽園」
「猫の夜」★
「人それぞれに噴火獣」★
「舟唄」★
「丘の上の宴会」
「復讐」
「暁神」
解説 服部まゆみ
編者解題 日下三蔵
語り手あるいは視点人物が実は@@だった、という私好みの叙述でもあり。
皆川博子独特の、デストルドーというかタナトスというか、が、ひたひた。
中年女性(生活)の挫折=少女性(夢想)の勝利、というラインが、嗜虐被虐の一点に押し込められていくという……これはもう立派な文芸批評の対象になりうる作家性だ。
中年女性については「舟唄」、少女については「人それぞれに噴火獣」、そして少女性を離れた寓話としては「猫の夜」。
凄まじいの一言に尽きる。 -
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甘い毒を含んだ、絢爛な幻想短編集。どれをとっても酔いしれるような気分にさせられる作品ばかりです。作中に引用されている西城八十の詩などもまた雰囲気をより一層引き立てて、くらくらしそう。一気に読んでしまうのはもったいないし、毒が回りそうでもあります。少しずつ読むのがおすすめかも。
全部好きだけれど、強いてお気に入りを選ぶなら「青火童女」かなあ。玉緒の魅力にもやられてしまったのですが。過去と現在と未来が絡み合う物語の中、どこをとっても凄まじいばかりの情景。そこに居並ぶ人形たちが美しくも恐ろしく、ひどく魅せられました。なんだかもうここから抜け出せないような心境です。 -
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久し振りの皆川博子さん、さんといっていいのか今年で85歳になられた今まで10指に余る賞を受けて、文化功労者にも選ばれた。
多くの作品は、幻想的と冠がつく、長編小説、切れのいい短編(それでもなお妖しい)ゴシックロマンといってもいい、海外を舞台にした、不思議な出来事、怪しい雰囲気を纏った作品群。
人の暗い部分を見る目を持っている人は、何かの気配に敏感だったり、時々常にない心もちに陥ったりする。
見たり聴いたり感じたりする本来の器官の働きに、敏感な特殊な能力を持っている人なのかもしれない。
皆川さんは、そういう異界の、異形のものだったり、現実何気ない気配を、幻のように書き出してみせてくれる。
幻想作家だと呼ばれたりするが、読み始めると日常を離れた感覚を纏った大舞台が待っていて、登場人物たちに導かれて不思議な体験をする。
脇腹で繋がったシャム双生児に生まれて、切り離された後世間体もあって日陰で育てられた。一人は名家を継ぎ一人は施設で医者の手伝いをして育つ、と言う生まれながら数奇な運命を予想させる、2人の子が世界を股にかけた雄大な物語「双頭のバビロン」
医学黎明期にイギリスの医学生たちが巻き込まれる殺人事件「開かせていただき光栄です」(本格ミステリ賞受賞)などいずれも大長編だったが、妖しく面白かった。
前置きはそこまでで今回の「薔薇忌」、短編なので物足りない感じもしたが、古典的な幻想小説だったり、自分の心の中に堕ちてしまう青年、何かに疲れて壊れてしまう人などそれぞれ面白かった。題名だけでも意味ありげでいい。
* 薔薇忌
劇団で雑務をしているえくぼの出来る後輩に気がついた。聴いてみると面白い話をする。
イタリアで、仕えていた公爵にゴマをするために本心(復讐心)を隠して仮面をかぶり続けたら仮面の下で腐ってしまった男がいたそうだ。
復讐の暗殺は成功したが彼は惨殺された。
腐っていく役っていいよね、
と言うので彼の書いた脚本を使うことにした。
刑罰には薔薇の花を降らせて窒息死させるっていいよね。
それ悪趣味だね。
そのうち姿が消えた、素封家の息子だったので人知れず家に帰り縊死していた。
* 禱鬼
波乱にとんだ宇宙で、束の間生きるということが彼には魅惑的だった。
彼が惹かれたのは化粧をし衣装をつけ、別の人格にのっとられる、舞台の面白さだった。
* 紅地獄
夢はみるという。夢を聴くとも、夢を嗅ぐともいわない。非現実的であるけれどある状況の中を生きるのである。
濃密な抱かれる夢を見続け、その正体に出会う。
* 桔梗合戦
嫌ってはいなかった人だが暴行され妊娠した、彼女は白い衣装に白い桔梗を持って身重を隠して桔梗合戦を踊る。
* 化粧坂
子どもたちは山の上と下に住んでいて、一緒に遊ぶことが少なかった、転校生が来て皆に蜘蛛合戦を教えたので、盛んになった。山の上に住む僕は、彼が仲間に入れてくれた。
来いと言われこっそりついていくと、芝居小屋に入っていった。やがて化粧をして女踊りを見せた。出送りの女たちに騒がれる人気者だった。目配せするので化粧坂の下の崖で蜘蛛を捕まえていたた。夢中になっていると肩越しに息がかかるほど彼が近づいてきたので、驚いて跳ね飛ばしたら尖った石に頭をぶつけて死んでしまった。誰も行かない淋しい場所なので恐ろしくてそのまま帰った。旅役者の子供が山から堕ちて死んだそうだ。と一時噂が立ってそれっきりになった。
* 化鳥
楽屋に見知らぬ男が落ち着いた様子で座っていた。昔この部屋にいたといった思い出話をする。役者になりたかったが怪我をして衣装係になった。衣装は命を持っている。
私は見つけた男の子をプロディュースしようとしていた。少しずつ売れ出し男は家庭も持ったが、私は女形でないと演じられない瀧夜叉を演じさせたかった、瀧夜叉を宙摺りで客の上で舞わせるのだ。しかし、もう遅かった。中年太りのおやじになった彼の扮したのは、いくら衣粧をつけても既に化け物にしか見えなかった。
* 翡翠忌
90に近い老大女優は不意に引越しをした、若い者をあごで使って落ち着いたのは公園が見えるマンションだった。
彼女は若者と知り合っていた。公園の篠流れの小川には翡翠が飛ぶという。それを見ながらそばのベンチで2人で座って話をした。散歩もした。
2人は小さな劇団員で江見、須藤というの。
老女はそう話して時々公演に行くと、新劇の大御所が着てくれたと喜んでくれるの。
長年の相手役をしてきた山岸にそう話した。
山岸は言った。
また苛めたんだろうね、あんたは惚れると苛め抜いた。その……須藤か、その男のアラを、徹底的にあげつらったんだろう。
まるで見ていたようね。自殺したわ。
だれが
あの子よ。
心配なんです。
先生は一人であの公園に出かけられるので心配でお供しようとしたらお叱りを受けました。東屋のベンチで、お一人で何かブツブツと……それが一度や二度ではないんです。
2人がいま出ている新宿の小さい劇場に千鶴を連れて行ったら迷妄から醒めるだろうか。
このごろ千鶴先生は見えませんね、とふたりは言った。 -
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面白かったです。
SFとコメディと幻想と…いろいろな色のお話たちでした。
表題作は笑い過ぎました。皆川さんこういうのもお書きになるんだ。ハリガヴォ・ナミコが皆川博子のアナグラムって気付かなかったけど…そして皆川さんの初期?に針ヶ尾さんのお話あるのですね。
「私は猫です」の活用…確かに、これ読んでると日本語ってつくづく変わってるなと思います。
結局誰も「猫舌男爵」を読めていないし、話も噛み合わないのに、ラストは皆さん幸せになる。良いなぁ。
「水葬楽」がとても好きでした。
死が近付くと容器に入り、液体の中で暮らす人々。それを見詰める兄妹は結合児で…。選別された妹だけど、なかなか衰弱が始まらないのがゾッとします。Back Ground Poemがとてもいい雰囲気です。
「オムレツ少年の儀式」もラストの鮮やかさ!と思います。
「睡蓮」も良かった…書簡を時系列の逆から描いていく。これは狂う、と思いました。エーディトの絵、見てみたいです。
「太陽馬」の作中作が好きです。ナチュラルに、内戦中のロシアの描写と繋がるのにおおっとなりました。
解説がヤン・ジェロムスキくんだ!熱い文章で笑ってしまいました。訳者の垂野さんは実在するようなのでこの方の文章なのかな?面白いです。 -
購入済み
「創作する遺伝子」小島秀夫推薦
皆川さんを知ることができて良かったです。石炭の煙に曇ったロンドンの情景に馬車、死体、当時の医学、羊皮紙の書物、コーヒーショップや退廃的な文化を散りばめて、最後の最後までドキドキしながら読むことができました。
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ネタバレ幻想文学とはどんなかな、と気軽に手に取ったものの、最初の二行
「指は、あげましたよ」
背後に声がたゆたった。
からもうにおい立つ霧、湿気、妖しい気配に呑まれる。
大正~戦前くらいが時代設定らしいけれど、お金持ちのお話が多くてそのゆとりある暮らしと文化が、相応しい格式と美しさを持つ文体で丁寧に綴られている。お妾さんにお手伝い、乳母等が大勢という現代の私たちには馴染みのない暮らしがにおいや光を伴って目の前に易々と立ち上がってくるその力量、畏怖の念を抱くばかり。
しかしそんな確かな生活の描写がむしろ話の妖しさ、危うい官能(直接的な表現はないのに!)、夢とうつつ、死と生がぐるりぐるりと交じり合う恐ろしくも心地よい感じを演出しているのが本当にすごいところなのだろう。
私は「花溶け」がロマンティックで特に好きだけど、どのお話も美しく気がくるっていて素敵。 -
Posted by ブクログ
幻想的な短編集。一応ミステリ、とされているので。ミステリとして読めるものが多いけれど。一概にくくれるものじゃないですね。しかし幻想にしろミステリにしろ、どの作品も素敵なのは確か。
お気に入りは「致死量の夢」「死化粧」。おそらく収録された作品の中でも一番ミステリとして読める作品かな。だけど物語を取り巻くあまりに危うい美しさに呑み込まれて、酔いしれたまま結末まで一気に運ばれた印象。
「はっぴい・えんど」もいいなあ。ある意味最高に素敵なハッピーエンド……?
そしてラストの「塩の娘」がなんともユーモラスで印象的でした。ちょっとした遊び心も見えて、これが最後というのはなんだかすっきりするかも。