皆川博子のレビュー一覧
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ネタバレ3,4年前に隙間時間に読もうと思って買っていたけど挫折してた本。
最近ドラマの仁を見直してて、澤村田之助…?どっかで聞いたぞ…?花闇じゃん!?となり、即再チャレンジすることに。
いやー面白かった〜!
挫折してたのが意味わからないくらい面白かった〜!
本当私隙間時間に読むの向いてない。
没入しちゃうから一気見しかできない。
幕末〜明治に実在した歌舞伎役者で、女形だった3代目澤村田之助の生涯を描いた本。その影として、世話をこなす自身も女形の市川三すじが主人公。
舞台上の怪我が原因で四肢を失いながらも舞台に立ち続けた田之助の激動の人生が三すじ目線で描かれているのだけど、この三すじもなかなかに拗らせ -
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「風」★
「悦楽園」
「猫の夜」★
「人それぞれに噴火獣」★
「舟唄」★
「丘の上の宴会」
「復讐」
「暁神」
解説 服部まゆみ
編者解題 日下三蔵
語り手あるいは視点人物が実は@@だった、という私好みの叙述でもあり。
皆川博子独特の、デストルドーというかタナトスというか、が、ひたひた。
中年女性(生活)の挫折=少女性(夢想)の勝利、というラインが、嗜虐被虐の一点に押し込められていくという……これはもう立派な文芸批評の対象になりうる作家性だ。
中年女性については「舟唄」、少女については「人それぞれに噴火獣」、そして少女性を離れた寓話としては「猫の夜」。
凄まじいの一言に尽きる。 -
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甘い毒を含んだ、絢爛な幻想短編集。どれをとっても酔いしれるような気分にさせられる作品ばかりです。作中に引用されている西城八十の詩などもまた雰囲気をより一層引き立てて、くらくらしそう。一気に読んでしまうのはもったいないし、毒が回りそうでもあります。少しずつ読むのがおすすめかも。
全部好きだけれど、強いてお気に入りを選ぶなら「青火童女」かなあ。玉緒の魅力にもやられてしまったのですが。過去と現在と未来が絡み合う物語の中、どこをとっても凄まじいばかりの情景。そこに居並ぶ人形たちが美しくも恐ろしく、ひどく魅せられました。なんだかもうここから抜け出せないような心境です。 -
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久し振りの皆川博子さん、さんといっていいのか今年で85歳になられた今まで10指に余る賞を受けて、文化功労者にも選ばれた。
多くの作品は、幻想的と冠がつく、長編小説、切れのいい短編(それでもなお妖しい)ゴシックロマンといってもいい、海外を舞台にした、不思議な出来事、怪しい雰囲気を纏った作品群。
人の暗い部分を見る目を持っている人は、何かの気配に敏感だったり、時々常にない心もちに陥ったりする。
見たり聴いたり感じたりする本来の器官の働きに、敏感な特殊な能力を持っている人なのかもしれない。
皆川さんは、そういう異界の、異形のものだったり、現実何気ない気配を、幻のように書き出してみせてくれる。
幻想作 -
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面白かったです。
SFとコメディと幻想と…いろいろな色のお話たちでした。
表題作は笑い過ぎました。皆川さんこういうのもお書きになるんだ。ハリガヴォ・ナミコが皆川博子のアナグラムって気付かなかったけど…そして皆川さんの初期?に針ヶ尾さんのお話あるのですね。
「私は猫です」の活用…確かに、これ読んでると日本語ってつくづく変わってるなと思います。
結局誰も「猫舌男爵」を読めていないし、話も噛み合わないのに、ラストは皆さん幸せになる。良いなぁ。
「水葬楽」がとても好きでした。
死が近付くと容器に入り、液体の中で暮らす人々。それを見詰める兄妹は結合児で…。選別された妹だけど、なかなか衰弱が始まらないのが -
購入済み
「創作する遺伝子」小島秀夫推薦
皆川さんを知ることができて良かったです。石炭の煙に曇ったロンドンの情景に馬車、死体、当時の医学、羊皮紙の書物、コーヒーショップや退廃的な文化を散りばめて、最後の最後までドキドキしながら読むことができました。
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ネタバレ幻想文学とはどんなかな、と気軽に手に取ったものの、最初の二行
「指は、あげましたよ」
背後に声がたゆたった。
からもうにおい立つ霧、湿気、妖しい気配に呑まれる。
大正~戦前くらいが時代設定らしいけれど、お金持ちのお話が多くてそのゆとりある暮らしと文化が、相応しい格式と美しさを持つ文体で丁寧に綴られている。お妾さんにお手伝い、乳母等が大勢という現代の私たちには馴染みのない暮らしがにおいや光を伴って目の前に易々と立ち上がってくるその力量、畏怖の念を抱くばかり。
しかしそんな確かな生活の描写がむしろ話の妖しさ、危うい官能(直接的な表現はないのに!)、夢とうつつ、死と生がぐるりぐるりと交じり合う恐ろし -
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幻想的な短編集。一応ミステリ、とされているので。ミステリとして読めるものが多いけれど。一概にくくれるものじゃないですね。しかし幻想にしろミステリにしろ、どの作品も素敵なのは確か。
お気に入りは「致死量の夢」「死化粧」。おそらく収録された作品の中でも一番ミステリとして読める作品かな。だけど物語を取り巻くあまりに危うい美しさに呑み込まれて、酔いしれたまま結末まで一気に運ばれた印象。
「はっぴい・えんど」もいいなあ。ある意味最高に素敵なハッピーエンド……?
そしてラストの「塩の娘」がなんともユーモラスで印象的でした。ちょっとした遊び心も見えて、これが最後というのはなんだかすっきりするかも。 -
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再読でも、ここに描かれる甘やかで残酷な世界にうっとりします。
どこから狂っていたのだろう、でもきっと最初から狂っていたのだと思います。
「心中薄雪桜」と「夕紅葉」が好きですが、「妖恋」の一文「おまえ、どうして、そう、化け物と人をわけるのだろう。どっちもたいして変わりはありゃあしないのだよ」にははっとします。
「夕紅葉」の、紅葉ケ原はどこ、に、ここじゃないか、とこころの中から声がするのもぞっとしました。そうか、あの時囚われたのだ、と。
絶望的な世界なら、彼方側に行ってしまった方が楽なのか…狂気を抱えて生きるのか。。
カバーの折り返しにも載っている、近藤史恵さんの解説もとても好きです。 -
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とても面白かったです。
戦争末期の女学校で、ある少女の死をきっかけに、密かに書かれていた「倒立する塔の殺人」という物語の謎解きが始まる…という要約も難しいお話です。
今回も戦争の残酷さとそれでも損なわれない美に惹き付けられました。
YAの作品なのですが、決して子どもっぽくないどころか、登場する絵画・音楽・小説についても知りたくなる知識欲にかられる作品でした。
「どういう小説が好きか、登場人物の誰に惹かれるか、それを明らかにするのは、自分自身の本質を曝すことでもある」という一文に、それではわたしはここでは自分自身の本質を曝してるのか…と思いました。確かに。
空想あるいは物語という水を養いにしなけ -
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『開かせていただき光栄です』から5年後の物語。
ダニエル先生の解剖室は閉鎖し、エドとナイジェルが去った後、残された弟子たちは、盲目の判事ジョン・フィールディング氏の元で『ヒュー・アンド・クライ』という情報新聞の編集を任されていた。22歳になったネイサン・カレンや、アン・シャーリー・モアとの交流の中、それぞれが互いに負った心の傷をゆっくりと癒しながら生活していた。
そんな中に突然舞い込んだのは
「死体」と「謎」
・落下する天使を見た踏み車漕ぎの男。
・棺に入れられたナイジェル・ハートの遺体。
・胸に書かれた〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ!〉と
〈アルモニカ・ディアボリカ〉の文字。
・消えた -
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単行本版、文庫版を統合した完全版。「華麗なる狂気」という言葉がこれほど似合う短編集はなかなかありません。背徳的でありながら、どうしようもなくうっとりさせられてしまう作品ばかりです。なかなかにえげつない物語が多くって、「美しい」という表現はなんとなくそぐわない気もするのだけれど。受ける印象はやはり美しいんだなあ。
お気に入りは「遠い炎」。一番素朴な印象を受けたのだけれど、結末がなんとも恐ろしくって。読むほうも震えが止まらなくなりそうです。
「獣舎のスキャット」も凄いなあ。もうあまりに邪悪でどうにもこうにも、酷いとしか言いようがありません。なんて凄いものを書かれたんだ皆川さん! これを好きとは言い -
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四肢を失いながらも舞台に立ち続けたという、三代目澤村田之助。
幕末から明治にかけて生きたその俳優の存在を、不勉強ながら初めて知った。
実在の人物でありながら、その生き様があまりにドラマティック過ぎて、ともすれば描写が陳腐になりがちな題材だと思うが、皆川博子氏の筆さばきにそのような心配は無用で、本当に田之助や三すじ、権之助たちが自分の身近にいるかのように、この上なくリアルに感じられる。
幼少時より妖しさを以て放たれる艶やかな美貌、傑出した芸を持ちながらもどこか一部が欠落し傲岸不遜な人格、病を患い周囲の空気が徐々に変貌していくにつれて崩れ始める心身の均衡…。
それを傍で冷徹とも言える眼差しで見つめ