皆川博子のレビュー一覧
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久し振りの皆川博子さん、さんといっていいのか今年で85歳になられた今まで10指に余る賞を受けて、文化功労者にも選ばれた。
多くの作品は、幻想的と冠がつく、長編小説、切れのいい短編(それでもなお妖しい)ゴシックロマンといってもいい、海外を舞台にした、不思議な出来事、怪しい雰囲気を纏った作品群。
人の暗い部分を見る目を持っている人は、何かの気配に敏感だったり、時々常にない心もちに陥ったりする。
見たり聴いたり感じたりする本来の器官の働きに、敏感な特殊な能力を持っている人なのかもしれない。
皆川さんは、そういう異界の、異形のものだったり、現実何気ない気配を、幻のように書き出してみせてくれる。
幻想作 -
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面白かったです。
SFとコメディと幻想と…いろいろな色のお話たちでした。
表題作は笑い過ぎました。皆川さんこういうのもお書きになるんだ。ハリガヴォ・ナミコが皆川博子のアナグラムって気付かなかったけど…そして皆川さんの初期?に針ヶ尾さんのお話あるのですね。
「私は猫です」の活用…確かに、これ読んでると日本語ってつくづく変わってるなと思います。
結局誰も「猫舌男爵」を読めていないし、話も噛み合わないのに、ラストは皆さん幸せになる。良いなぁ。
「水葬楽」がとても好きでした。
死が近付くと容器に入り、液体の中で暮らす人々。それを見詰める兄妹は結合児で…。選別された妹だけど、なかなか衰弱が始まらないのが -
購入済み
「創作する遺伝子」小島秀夫推薦
皆川さんを知ることができて良かったです。石炭の煙に曇ったロンドンの情景に馬車、死体、当時の医学、羊皮紙の書物、コーヒーショップや退廃的な文化を散りばめて、最後の最後までドキドキしながら読むことができました。
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ネタバレ幻想文学とはどんなかな、と気軽に手に取ったものの、最初の二行
「指は、あげましたよ」
背後に声がたゆたった。
からもうにおい立つ霧、湿気、妖しい気配に呑まれる。
大正~戦前くらいが時代設定らしいけれど、お金持ちのお話が多くてそのゆとりある暮らしと文化が、相応しい格式と美しさを持つ文体で丁寧に綴られている。お妾さんにお手伝い、乳母等が大勢という現代の私たちには馴染みのない暮らしがにおいや光を伴って目の前に易々と立ち上がってくるその力量、畏怖の念を抱くばかり。
しかしそんな確かな生活の描写がむしろ話の妖しさ、危うい官能(直接的な表現はないのに!)、夢とうつつ、死と生がぐるりぐるりと交じり合う恐ろし -
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幻想的な短編集。一応ミステリ、とされているので。ミステリとして読めるものが多いけれど。一概にくくれるものじゃないですね。しかし幻想にしろミステリにしろ、どの作品も素敵なのは確か。
お気に入りは「致死量の夢」「死化粧」。おそらく収録された作品の中でも一番ミステリとして読める作品かな。だけど物語を取り巻くあまりに危うい美しさに呑み込まれて、酔いしれたまま結末まで一気に運ばれた印象。
「はっぴい・えんど」もいいなあ。ある意味最高に素敵なハッピーエンド……?
そしてラストの「塩の娘」がなんともユーモラスで印象的でした。ちょっとした遊び心も見えて、これが最後というのはなんだかすっきりするかも。 -
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再読でも、ここに描かれる甘やかで残酷な世界にうっとりします。
どこから狂っていたのだろう、でもきっと最初から狂っていたのだと思います。
「心中薄雪桜」と「夕紅葉」が好きですが、「妖恋」の一文「おまえ、どうして、そう、化け物と人をわけるのだろう。どっちもたいして変わりはありゃあしないのだよ」にははっとします。
「夕紅葉」の、紅葉ケ原はどこ、に、ここじゃないか、とこころの中から声がするのもぞっとしました。そうか、あの時囚われたのだ、と。
絶望的な世界なら、彼方側に行ってしまった方が楽なのか…狂気を抱えて生きるのか。。
カバーの折り返しにも載っている、近藤史恵さんの解説もとても好きです。 -
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とても面白かったです。
戦争末期の女学校で、ある少女の死をきっかけに、密かに書かれていた「倒立する塔の殺人」という物語の謎解きが始まる…という要約も難しいお話です。
今回も戦争の残酷さとそれでも損なわれない美に惹き付けられました。
YAの作品なのですが、決して子どもっぽくないどころか、登場する絵画・音楽・小説についても知りたくなる知識欲にかられる作品でした。
「どういう小説が好きか、登場人物の誰に惹かれるか、それを明らかにするのは、自分自身の本質を曝すことでもある」という一文に、それではわたしはここでは自分自身の本質を曝してるのか…と思いました。確かに。
空想あるいは物語という水を養いにしなけ -
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『開かせていただき光栄です』から5年後の物語。
ダニエル先生の解剖室は閉鎖し、エドとナイジェルが去った後、残された弟子たちは、盲目の判事ジョン・フィールディング氏の元で『ヒュー・アンド・クライ』という情報新聞の編集を任されていた。22歳になったネイサン・カレンや、アン・シャーリー・モアとの交流の中、それぞれが互いに負った心の傷をゆっくりと癒しながら生活していた。
そんな中に突然舞い込んだのは
「死体」と「謎」
・落下する天使を見た踏み車漕ぎの男。
・棺に入れられたナイジェル・ハートの遺体。
・胸に書かれた〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ!〉と
〈アルモニカ・ディアボリカ〉の文字。
・消えた -
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単行本版、文庫版を統合した完全版。「華麗なる狂気」という言葉がこれほど似合う短編集はなかなかありません。背徳的でありながら、どうしようもなくうっとりさせられてしまう作品ばかりです。なかなかにえげつない物語が多くって、「美しい」という表現はなんとなくそぐわない気もするのだけれど。受ける印象はやはり美しいんだなあ。
お気に入りは「遠い炎」。一番素朴な印象を受けたのだけれど、結末がなんとも恐ろしくって。読むほうも震えが止まらなくなりそうです。
「獣舎のスキャット」も凄いなあ。もうあまりに邪悪でどうにもこうにも、酷いとしか言いようがありません。なんて凄いものを書かれたんだ皆川さん! これを好きとは言い -
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四肢を失いながらも舞台に立ち続けたという、三代目澤村田之助。
幕末から明治にかけて生きたその俳優の存在を、不勉強ながら初めて知った。
実在の人物でありながら、その生き様があまりにドラマティック過ぎて、ともすれば描写が陳腐になりがちな題材だと思うが、皆川博子氏の筆さばきにそのような心配は無用で、本当に田之助や三すじ、権之助たちが自分の身近にいるかのように、この上なくリアルに感じられる。
幼少時より妖しさを以て放たれる艶やかな美貌、傑出した芸を持ちながらもどこか一部が欠落し傲岸不遜な人格、病を患い周囲の空気が徐々に変貌していくにつれて崩れ始める心身の均衡…。
それを傍で冷徹とも言える眼差しで見つめ -
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ネタバレこの作品大好き!文庫を発見したので購入再読♪
前よりずっとゆっくりと噛み締めて読めて、まだまだずーっとこの作品に浸っていたい気持ちです。今度は手元にあるからいつでも読める!
世紀末ウィーンと20年代のハリウッドと魔都上海。舞台も全体に映画の雰囲気まんてんの作品。私は映画は詳しくありませんが、映画がお好きな方はもっと違った楽しみ方も出来る作品なのでしょうね^_^
↓ここから先はちょっとネタバレご注意↓
みんな好きなシーンばかりなんだけと、頭にすごく残ったところ…
パウルとアデーラの出会いからの話とか、大好き♡ え?なにこれ映画?そのまんまだよ〜みたいに思いながら読んでました。
あとは -
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初めて読む皆川博子で、本書は8編からなる短編集。
大半の作品は戦中・戦後が時代背景になっている。
価値観が180度変わってしまった、いや180度変えなければならなかった時代に、上手く溶け込むことが出来なかった、あるいは迎合することが出来なかった人々の話が多い。
著者の作品に対して、幻視、夢幻といった単語が散見できるが、確かにそう呼ぶ以外にない作品がある反面、現実そのものを描き上げたと思しき作品もある。
ここに登場する、少年や少女、男や女たちは、きっとあの時代に実際に現実として存在していたのだろう、と思わせてくれるのだ。
どの作品も壮絶であり、凄みがあり、妖しくも哀しい。
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再読。まさに万華鏡。
あらゆる要素がはらはらはらはらと振りまかれ、読者はくるくるくるくる回る。
物語の構成が素晴らしいの一言に尽きる。
突然託された一冊の本。中には告白と虚構入り混じる「物語」が描き連ねてある。
それを見つけた少女たちが、順番に書き継いでいく……
ミステリーという体裁を取らずとも、十分魅力的な話だ。
作者の筆は、さすがの流麗さで、戦時中という舞台すらもどこか甘やかなものに変えてしまう。
少女たちは、どこまでも凛と可憐で、残酷だ。
けれどここに、上級生の少女の死や謎の死体、「本」というミステリーが絡む。読者は幻惑される。
そしてミッションスクールでの過去がじわりじわりと開示