皆川博子のレビュー一覧

  • 愛と髑髏と

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    「実際、毒のない文学、毒のない話が面白かろうはずがない」…解説の服部まゆみさんの言葉に深く頷きます。
    毒が満ち満ちていました。好きです。
    犯罪を犯すお話が多かったですが、それに至る心情が一筋縄ではいかず…人の心って割り切れないし、こう!と周りが表現できるものでもないけれど、皆川さんの描く人々は、心に溜まっていく澱がよくわかります。
    だんだん溜まっていって、もう無理…戻れない、となったところで、妹のお臀を押したり、近所の兄さんを灰皿で殴ったり、鈴蘭入りの水を飲んだりするんだ。。
    犯罪を描いても、どこか幻想的で良かったです。「猫の夜」は犬好きにはかなりキツイですが、これが1番残ります。壊れた秩序は

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    2020年10月20日
  • 双頭のバビロン 下

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    ネタバレ

    壮大であり切なかった…ゲオルク、ユリアン、パウル、どのストーリーもとてものめり込んでしまった。ゲオルクとユリアンにとって切り離せないツヴァンゲルという存在。
    徐々に三人の語る出来事が繋がりリンクしていくのが見事だった。

    ラスト、ゲオルクの書いた結末でも、ユリアンの語る結末でも、どちらか真実か分からないがどちらにしても切なくて胸に木枯が吹く。
    君に良き日々の続くことを。ユリアンからゲオルクへの、最後の一文がとても身に染みる。

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    2020年09月10日
  • 少女外道

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    著者の本は戦争を境にして仄暗い世界観で統一されている。文学的で好きな文面だけど、明るさや希望といった類のものは無い。
    マイノリティな部分を内に秘めた少女たちの物語。生は暗く死は松明の灯りのようにぼんやりとだけど淡々と描かれている。最後の話は作者の話なのかな、と思うほど、他の話よりリアルだった。
    短編で読みやすい。

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    2020年08月10日
  • 写楽

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    ネタバレ

    皆川さんの時代小説は「少年十字軍」以来で、日本、しかも謎の写楽が主人公。
    ですが、私は彼を見出した蔦屋重三郎に惹かれました。
    才能を見出す観る目、育てる力。
    彼が居たから、今があるものもあると思うと、読んでいて、実に魅力的でした。
    写楽もまた己の生き方に迷い、最後に選んだ道が切ない。
    そんな事を思う一冊でした。

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    2020年08月05日
  • みだら英泉

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    妹たちを踏みにじっても描く。芸術家の性というかもはや業である気がしました。
    渓斎英泉…不勉強なので、朝井まかてさんの「眩」で初めて知った絵師なのですが壮絶でした。
    そして彼の三人の妹たちそれぞれの葛藤もなかなか…特にお津賀とおたまの確執が。
    登場人物たちがとても生き生きしてて、悩み抜いているのが迫ってきました。お栄が出てくるのも好きです。時代小説でも皆川さんでした。
    英泉の絵を検索しました。眼差しは小さい画像ではよくわかりませんでしたが、藍の濃淡だけで描かれていてもとても鮮やかで綺麗でした。もっとちゃんと見てみたくなりました。

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    2020年05月30日
  • 双頭のバビロン 下

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    ネタバレ

    上下巻の感想。

    ゲオルグは名家の跡取りになるけれど、決して順風満帆な人生を歩んだわけではない。のだけれど、いまいち共感できない…
    ユリアンは自分が何者でもないことを悩み、結局は何者にもなれないまま…
    けれども、最後にはユリアンは救われたんだなあと思うのは、ツヴェンゲルがいたから。
    ユリアンにはツヴェンゲルがいたけれど、ゲオルグにはいなかった。最後にゲオルグが書いたものと、ユリアンが書いた手記の違いはそういうことなのかなあ、と。
    それにしてもツヴェンゲル有能すぎ…

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    2020年05月23日
  • 夜のアポロン

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    カテゴリはミステリなんだけど、実際に取っ組み合うお話はほとんどないんじゃなかろうか。『ほたる式部秘抄』くらい?
    ほぼほぼ全編、人、特に女性や少女の心の暗部が繰り返し語られていて、結構胸焼けしてしまった。加えて、権力に対する嫌悪感もひしひしと。
    その分、いつもとテイストの違う『ほたる式部秘抄』がやけに良かったのだけど、もっと読みたいのだけれど、残念ながら、やっぱり皆川さんの雰囲気じゃないよなぁ。

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    2020年05月14日
  • 愛と髑髏と

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    最近初期作品の復刊が多くて、いちファンとしてはうれしい限りです。この作品集は、1970年代からの幻想小説が収められたものですが、時代の違いを感じる単語はあろうとも、作品そのものに漂っている世界の描きかたには古さがありません。
    夢と現のあわいを漂わせる、艶めいた毒気漂う筆致で綴られる物語は、「お話」の魅力がけして起承転結だけにとどまらないことを改めて感じさせてくれます。ミステリ要素があろうと、恋愛を絡めた悲喜劇であろうと、作者の手わざにかかればそれは要素のひとつに過ぎない、と思うのです。あくまで、描く人々の愚かさ脆さ美しさ醜さや、世界の残酷さ哀れさ滑稽さ、その感触をつぶさに楽しむのが本質、などと

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    2020年04月25日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    19世期の退廃的な雰囲気に包まれたロンドンが舞台のミステリー。なんとなく続きが気になって、ページをめくる手が止まりませんでした。丁寧に張り巡らされた伏線が、最後に「あっ」と言わせる結末へと導いてくれます。400を超える厚みのある物語だったにも関わらず、長いと思う事なくすらすらと読み終えました!

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    2020年04月12日
  • 双頭のバビロン 下

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    下巻も面白かったです。壮大。
    人の汚いところも美しいところも、余すところなく描かれていました。
    最後までゲオルクとユリアンはちゃんと会うことはなかった。けれど、ユリアンとツヴェンゲルはお互いの間に誰も入り込ませたくなかったのだと思います。
    「私はハリウッドの安直なハッピーエンドには辟易している。けれど、現実の不幸はできるかぎり少ない方がいい。」

    最後のユリアンの章、そしてラスト10行、泣けてしまいます。精神感応は出来たのだろうか。

    「君によき日の続くことを。」

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    2020年04月10日
  • トマト・ゲーム

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    面白かったです。
    いつもより毒が濃かった気がします。
    「蜜の犬」「アイデースの館」が好きです。
    老若男女、闇に呑み込まれていく…いつから狂っているのか。
    皆川さんの幻は甘美なものも感じることも多かったのですが、この作品集ではゾッとするものもありました。
    「遠い炎」と「花冠と氷の剣」のラスト一行、冷水を浴びせられた感じがしました。怖い。
    でもやっぱり皆川さんの世界は辞められません…虜です。

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    2020年02月01日
  • ゆめこ縮緬

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    皆川博子二冊目。前回読んだ『倒立する塔の殺人』よりも幻想色が強くて読みづらかったけど、それに退屈さを感じることは全くなく、重厚感のある短編をそれぞれ深く味わうことができた。

    どのお話も戦前の近代日本を舞台にしたものだから現実味のない感じにはならない。むしろ現実の中に潜む異質がその幻想をより一層濃く仕立て上げている。とある中洲を舞台にした「文月の使者」から始まり、その後の数話は中州から離れるが、最後の二篇で戻ってくる。そして最後に収録されている表題の「ゆめこ縮緬」ではこの短編集がまさしく一つになるという仕掛けがあって思わずぞくりとしてしまう。
    物語自体は純粋な美しさはない。登場人物たちは己の欲

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    2020年01月28日
  • 恋紅

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    純粋でいいですね。
    難しい言い回しが多いのですが、そこから昔をとても感じます。きつの桜があとあと心に響きます。

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    2020年01月23日
  • 薔薇忌

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    面白かったです。
    きらびやかですがその分影も多い、舞台芸能の世界。暗く、愛憎入り交じる濃密なお話たちでした。
    特に「桔梗合戦」「化鳥」が好きでした。
    「化鳥」はバンギャ心が疼きます…この気持ち、わかる。。嘗て心酔していた人の凋落を目の当たりにしたら……。
    裏方さんに光が当たっている作品が多いのも面白かったです。こんなお仕事があったのだな。
    舞台と幻想。堪能しました。

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    2019年12月03日
  • 少女外道

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    面白かったです。
    日常を超えた世界に憧れ、まわりの決める結婚をしないだけで「少女」たちが「外道」とされる…黒田夏子さんの解説で、惹かれる書名の意味がやっと解りました。
    それならわたしも「外道」なので、久緒や苗子や倫に近しいものを勝手に感じてしまいます。でもこんなに凛と立ててない。。
    「隠り沼の」と「標本箱」がとても好きです。囚われ、壊れたり逝ってしまったり。
    戦争の影響も色濃く漂うお話たちでした。

    「そのあとにつづく躰が生きている私の時間を、私は思った。空無の中で、空無を包み隠す肉体は、しぶとく生きている。」

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    2019年11月13日
  • 倒立する塔の殺人

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    皆川博子さん初読み。一癖も二癖もあるという噂を聞き、ついでにそんな癖の強い作品たちの中でもこの『倒立する塔の殺人』は比較的読みやすいということを聞いて手に取ってみた。確かに、読みづらくはなかったしストーリーの展開も面白かった。
    終戦間際から終戦後にかけて、あるミッションスクールにおいて行われていた小説の回し書きが主題となる物語。物語は女学生の日常と、ノートに残された手記、そして『倒立する塔の殺人』の創作によって構成されていて、そのバランスが整っていて迷わずに読み進められた。そして戦時中やミッションスクールという設定が余計にこの話をミステリアスに仕立てている気がした。戦時中とはいえ、他所と隔離さ

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    2019年08月21日
  • 夜のアポロン

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    「夜のリフレーン」と対を成す単行本未収録短篇集。76年から96年の16作。
    改めて言うが単行本未収録でここまでのクオリティ。全然書き散らしていないのだ。
    「小説の女王」と呼ばれる所以もここで、小説への愛が小説を書かせているのだ。
    一作ごとに語りの形式を工夫し、作者の好みや興味を突き詰めることで熟成される、短編小説の粋、まさにここにあり。
    ある時代のある女性が感じていた感情のフレイバーが、数十年後のおっさんに、ここまでびんびん響くとは。
    少女的な厭世観に浸されたいという願望が、あるんだ。それを皆川博子が、満たしてくれるんだ。
    しかし皆川博子は甘美な少女時代に読者を封じ込めない。「かつて少女だった

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    2019年08月12日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    『開かせていただき光栄です』の続編。
    今回も死体の謎だけど、解剖とかはあんまりなし。
    ファンタジー的な、宗教色あるものかと思ったけどそうでもない。
    サー・ジョンたちとバートンズがわちゃわちゃしてるのは本当に好き。
    伏線は全く見破れず。切ないラストでした。

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    2019年06月19日
  • 夜のアポロン

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    日下三蔵氏の執念が生んだ短編集、とでも言うべきか、版元を超えてタッグが組まれ、「夜のリフレーン」と対を成す一冊。
    いわゆる幻想小説にカテゴライズされる作品が主だった「夜のリフレーン」と異なり、少しヴォリュームがあるミステリーを中心に収められている。
    とは言いつつ幻想的なテイストが横溢するものがあったり、古典芸能の裏側を描いた作品があったりと、中世~近代欧州を舞台とする長編群とはまた趣を異にしながら、実に皆川博子氏らしい物語が並んでいる。
    個人的には、小粋なタッチで遊び心が満載の「ほたる式部秘抄」が秀逸で、強く印象に残った。

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    2019年06月17日
  • 夜のアポロン

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    短編集16編
    忘れられていた原稿がみごとに蘇って読むことができた幸い.どれも素晴らしく皆川ワールドである.特に表題作,兎狩り,死化粧が好きだった.ほたる式部秘抄は軽妙でシャレっ気があって結末が明るくこういうのもいい.

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    2019年06月17日