皆川博子のレビュー一覧

  • 夜のアポロン

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    一つ一つ短い話だが、内容は重たく濃厚な余韻を残す。
    まさにこれが皆川博子の世界観。
    生々しくも残酷で、それでいて美しい旋律のよう。人によっては後味の悪さを感じるかもしれないが、これが人生というのも一つの真理なのかもしれない。

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    2022年01月19日
  • 妖櫻記 下

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    ネタバレ

    著者の皆川博子氏曰く、自発的に楽しんで書いた小説は「花闇」とこの作品だけ、という「妖櫻記」。
    歪んだ想いを御しきれず持て余す阿麻丸、幼い花の香りに容易く惑い堕ちてゆく高僧、まさしくサイコパスと称すべき純真無垢な狂気に満ちた清玄、人間の原罪と業を凝縮し体現したかのような異形かつ異能の存在である百合王…、迸る想いを負託されたかの如く、確かに登場人物たちは作者の創意の手が届く範囲を飛び出して自由自在に動き回り、作中世界に何とも名状し難い粘性を与えている。
    それがまた、戦国時代の幕開けたる応仁の乱に向かって混沌が深まりゆく当時の世相と良く合う。

    水も漏らさぬ緻密な構成で以て組み上げられた作品では決し

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    2021年11月29日
  • 妖櫻記 上

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    ネタバレ

    著者の皆川博子氏曰く、自発的に楽しんで書いた小説は「花闇」とこの作品だけ、という「妖櫻記」。
    歪んだ想いを御しきれず持て余す阿麻丸、幼い花の香りに容易く惑い堕ちてゆく高僧、まさしくサイコパスと称すべき純真無垢な狂気に満ちた清玄、人間の原罪と業を凝縮し体現したかのような異形かつ異能の存在である百合王…、迸る想いを負託されたかの如く、確かに登場人物たちは作者の創意の手が届く範囲を飛び出して自由自在に動き回り、作中世界に何とも名状し難い粘性を与えている。
    それがまた、戦国時代の幕開けたる応仁の乱に向かって混沌が深まりゆく当時の世相と良く合う。

    水も漏らさぬ緻密な構成で以て組み上げられた作品では決し

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    2021年11月29日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    解剖についてのお話だったり凄く興味深いお話でいて皆川博子様の作品にはいつも驚かされ文章の力やストーリー等について脱帽の一言に尽きます(^。^)

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    2021年09月26日
  • 愛と髑髏と

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    皆川博子作品は数冊読みましたがこの短編作品も個性豊かで語彙がとても豊富でおられ、心地良いけどどこかお話はダークでありながら読み手のペースを崩さない感じの著者であると感じています。又改めて再読したいと思う作品でした。

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    2021年09月26日
  • 夜のリフレーン

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    幻想短編小説集。うっとり浸りました。
    皆川博子さん短編の方が難しい、って仰ってるけど短編も素敵です。ふと隣りにある闇にじわじわと、ある時はストンと引きずり込まれていきます。美しい闇。
    人と人が交わる時、愛憎は避けて通れないのかも。自分の闇を、見詰め過ぎて囚われないように。。

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    2021年09月25日
  • 夜のリフレーン

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    表題作「夜のリフレーン」が短いながらも、印象的。皆川博子の世界観の原液って感じ。
    どの短編も日常から幻想への境界が曖昧になるのが自然過ぎて幻想とは思えず、読後はより不思議な気持ちになる。

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    2021年09月25日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    ネタバレ

    物語的には伏線も全部綺麗に回収されて、すっきりさっぱりさすがの構成なんですが、登場人物たちはみんな翻弄されまくっていて辛い。
    判事と一緒にモヤっとしてしまう。
    法が弱者を守ってくれない中で、エドが出した最善の答えだったのだろうけど。

    エドとナイジェルの間にあったこととか、お互いにどう思っていたのかとか、言葉にされない部分がもどかしい。エドはあの絵をどうしたんだろう…

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    2021年08月10日
  • トマト・ゲーム

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    す、すごい。去年は皆川さんにハマって色々読んだけれど、こんなに毒のある作品も書けるんだ…。皆川さんらしい華麗で耽美な世界観なんだけど、底知れない闇が広がっている。
    表題作のトマトゲームは、ラストにむけて物語が急降下していく様にゾッとした。
    登場人物たちがみんな狂っている。少年少女の若さゆえの狂気、過去の傷が膿み広がって産まれた狂気、さまざまな狂気がある。しかし獣舎のスキャットと蜜の犬はやばすぎでは…
    かなりグロテスクでショッキングな話もあるので、楽しく読める本ではない。だが、ここまでの狂気を読める本も中々ないのではないだろうか。

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    2021年07月31日
  • たまご猫

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    友人におすすめ頂いた作品。
    一番の感想は「この著者さん[結婚]に何か恨みでもあるんかな?」という事。

    短編集で読みやすい。作品の全貌がわかった時のゾワゾワ感が良かった。

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    2021年05月03日
  • U

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    ネタバレ

    「U」と書いて「ウー」と読ませるが、萩尾望都「ポーの一族」からの遠いこだまとも見做せる。

    1915年「U-Boot」(ウーボート)の章は、三人称。視点が寄り添う人物は、ティルピッツと、ミヒャエル。
    1613年「Untergrund」(ウンターグルンド)の章は、初めは三人称と見せておいて、すぐに手記という形式……一人称が潜んでいると判明する。
    また、手記は実は二人の合作であること、二つの時代の関係、書き手の熱意の不均衡、が比較的序盤で仄見えてくるが、この不均衡が中盤終盤でさらに揺らぐ。
    この「語りの形式」そのものがドラマチックだから、やはり皆川博子は信用できる。
    ある瞬間には「同じ獣の半身にな

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    2020年12月08日
  • 薔薇密室

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    死の泉という作品を読んだあとに、こちらの作品にあたりました。
    第二次世界大戦前後のドイツ、マッドサイエンティスト、政治や社会から隔絶された不気味な空間、登場人物たちそれぞれの運命の糸が絡み合うドラマチックな展開、などなど、死の泉と共通点がいくつもあるものの、ここでは全く異なる世界が繰り広げられ、新たな感動を得られました。こんな充実感に浸れる作品は中々出逢えません。

    長年にわたりソ連やドイツはじめ周辺国に翻弄され続けているポーランドのことも詳しく知ることが出来ます。なぜドイツとポーランドを舞台にしたのかは、最後まで読めば理解できるようになっています。勘のよい方は、もしかしたら結末を予想できるや

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    2020年12月02日
  • U

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    ネタバレ

    塩によって生かされて、最後は海水の中に沈む。潜水艇がふたりの棺となる。好き。

    ヤーノシュがオスマンの皇帝を守り支えたなら、彼は何かをなしとげられたのか。そういう展開にならないのがいいところなんですが…ヤーノシュの自己評価ちょっと低すぎるのでは…

    「双頭のバビロン」のふたりほどの絆が感じられなかったのも、ヤーノシュの自己評価のせいか。シュテファンはあんまり深く考えていなさそうな…
    シュテファンがどう思っていたのか、途中から記述がなくなるから分からないけれど。

    彼らの軌跡が文字として残ったのかは定かではないけれど、ミヒャエルたちの中に何かしらが受け継がれているのだろうなあ。

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    2020年11月19日
  • 愛と髑髏と

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    「実際、毒のない文学、毒のない話が面白かろうはずがない」…解説の服部まゆみさんの言葉に深く頷きます。
    毒が満ち満ちていました。好きです。
    犯罪を犯すお話が多かったですが、それに至る心情が一筋縄ではいかず…人の心って割り切れないし、こう!と周りが表現できるものでもないけれど、皆川さんの描く人々は、心に溜まっていく澱がよくわかります。
    だんだん溜まっていって、もう無理…戻れない、となったところで、妹のお臀を押したり、近所の兄さんを灰皿で殴ったり、鈴蘭入りの水を飲んだりするんだ。。
    犯罪を描いても、どこか幻想的で良かったです。「猫の夜」は犬好きにはかなりキツイですが、これが1番残ります。壊れた秩序は

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    2020年10月20日
  • 双頭のバビロン 下

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    ネタバレ

    壮大であり切なかった…ゲオルク、ユリアン、パウル、どのストーリーもとてものめり込んでしまった。ゲオルクとユリアンにとって切り離せないツヴァンゲルという存在。
    徐々に三人の語る出来事が繋がりリンクしていくのが見事だった。

    ラスト、ゲオルクの書いた結末でも、ユリアンの語る結末でも、どちらか真実か分からないがどちらにしても切なくて胸に木枯が吹く。
    君に良き日々の続くことを。ユリアンからゲオルクへの、最後の一文がとても身に染みる。

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    2020年09月10日
  • 少女外道

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    著者の本は戦争を境にして仄暗い世界観で統一されている。文学的で好きな文面だけど、明るさや希望といった類のものは無い。
    マイノリティな部分を内に秘めた少女たちの物語。生は暗く死は松明の灯りのようにぼんやりとだけど淡々と描かれている。最後の話は作者の話なのかな、と思うほど、他の話よりリアルだった。
    短編で読みやすい。

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    2020年08月10日
  • 写楽

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    ネタバレ

    皆川さんの時代小説は「少年十字軍」以来で、日本、しかも謎の写楽が主人公。
    ですが、私は彼を見出した蔦屋重三郎に惹かれました。
    才能を見出す観る目、育てる力。
    彼が居たから、今があるものもあると思うと、読んでいて、実に魅力的でした。
    写楽もまた己の生き方に迷い、最後に選んだ道が切ない。
    そんな事を思う一冊でした。

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    2020年08月05日
  • みだら英泉

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    妹たちを踏みにじっても描く。芸術家の性というかもはや業である気がしました。
    渓斎英泉…不勉強なので、朝井まかてさんの「眩」で初めて知った絵師なのですが壮絶でした。
    そして彼の三人の妹たちそれぞれの葛藤もなかなか…特にお津賀とおたまの確執が。
    登場人物たちがとても生き生きしてて、悩み抜いているのが迫ってきました。お栄が出てくるのも好きです。時代小説でも皆川さんでした。
    英泉の絵を検索しました。眼差しは小さい画像ではよくわかりませんでしたが、藍の濃淡だけで描かれていてもとても鮮やかで綺麗でした。もっとちゃんと見てみたくなりました。

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    2020年05月30日
  • 双頭のバビロン 下

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    ネタバレ

    上下巻の感想。

    ゲオルグは名家の跡取りになるけれど、決して順風満帆な人生を歩んだわけではない。のだけれど、いまいち共感できない…
    ユリアンは自分が何者でもないことを悩み、結局は何者にもなれないまま…
    けれども、最後にはユリアンは救われたんだなあと思うのは、ツヴェンゲルがいたから。
    ユリアンにはツヴェンゲルがいたけれど、ゲオルグにはいなかった。最後にゲオルグが書いたものと、ユリアンが書いた手記の違いはそういうことなのかなあ、と。
    それにしてもツヴェンゲル有能すぎ…

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    2020年05月23日
  • 夜のアポロン

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    カテゴリはミステリなんだけど、実際に取っ組み合うお話はほとんどないんじゃなかろうか。『ほたる式部秘抄』くらい?
    ほぼほぼ全編、人、特に女性や少女の心の暗部が繰り返し語られていて、結構胸焼けしてしまった。加えて、権力に対する嫌悪感もひしひしと。
    その分、いつもとテイストの違う『ほたる式部秘抄』がやけに良かったのだけど、もっと読みたいのだけれど、残念ながら、やっぱり皆川さんの雰囲気じゃないよなぁ。

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    2020年05月14日