皆川博子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ一言で表すと、美しくて怖い物語でしょうか(ベタですいません)。
表題作の「たまご猫」が気に入りましたが、どの話も面白かったです。
「をぐり」や「厨子王」などは実在の古典がベースになっているのでしょうか。
この「厨子王」ですが、以前山椒太夫を読んだ時のことを思い返して、こんな描写あったかな?と感じたのですが、皆川さんがお考えになったのでしょうか。
それか、私が読んだものが読みやすいように(あるいは子ども向けに)変えられていたものかもしれませんが。
怖いと言っても、どのお話も震えあがるほどではないのですが、「骨董屋」はゾッとしました。
エツ子とリュウも怖いけど、麻子はてっきり小島との結婚を断る -
Posted by ブクログ
再読。
錯綜する時間と、人の心。
一章、二章と読み進めるうちに、得体の知れない沼の中に入り込んでしまう感覚。
どれが現実で、どれが夢なのか分からなくなるのだ。
それでいて、第一次世界大戦前後の生々しくも凄惨な戦争や、庶民の日々の暮らしの描写は的確。
読者は当時のベルリンの倦みを孕んだ熱気に身を浸しながら、出てくる人物たちの愛と絶望に寄り沿う。
ここまで緻密に物語を組み立てる、その手腕にただただ感服。
すべての話の細部が、食み合うように絡み合い、一篇の豪奢な織物のような物語を紡ぎ上げている。
時代背景描写の重厚さ、人物描写の深遠さ、さらにはすべてが幻想とも取れる人物たちの喜怒哀楽の耽美さ。
-
Posted by ブクログ
登録100アイテム目!
初めて読む作家さんだけど、あらすじと表紙が気になって買った本。「18世紀ロンドン」「ミステリー」のあたりとかね。
第一印象は翻訳を読んでるような文章だなーという感じ。レビュー見ると、他の作品とは文体をあえて変えてるみたい。後で知ったけど、80歳を越えてるとは!
めっちゃ面白かったよ!
過去と現在(?)の時系列に分けて書かれていて、それにちゃんと意味がある。物語の構成が素晴らしい!
色んな人が関わったちょっと複雑な事件なんだけど、2転3転するわ、伏線張りまくりだわでひとつの作品で何回騙すんだと。でも、この騙され方はむしろ気持ちいい。
最後はちょっと切なくて、余 -
Posted by ブクログ
果たしてこれはまったい幻想小説なのか、それとも小説の内なる史実を忠実に描写しているのか…?
特に読み始めの頃は、その構造の複雑さに多くの読者は戸惑うことだろうと思う。
別々のものにしか見えなかった物語たちがページを追うごとに徐々に繋がり、絡み合っていき、あたかも、観察者にいくつもの異なる顔を見せる多面体プリズムのような壮大な流れが誕生する。
そして、幻視描写であろうと思われていた荒唐無稽な出来事たちが、見事に理屈に適った事実として整合していく。
“雰囲気だけ”の幻想小説に決して収まることなく、隅々まで巧緻に計算しつくされた魅力あふれるストーリーにちゃんと仕立て上げる皆川博子氏の超絶技術