皆川博子のレビュー一覧

  • アルモニカ・ディアボリカ
    『開かせていただき光栄です』続編。

    外科医で解剖学の先駆者、ダニエル・バートンの解剖学教室を舞台に起きた連続殺人事件から5年。
    愛弟子のエドとナイジェルが出奔し、解剖学教室は閉鎖中。元弟子たちもそれぞれの生活を送りながらも、変わらず先生を敬愛している。
    ある日、盲目の治安判事として知られるジョン・...続きを読む
  • 双頭のバビロン 下
    皆川博子さんの、まるでその世界に入り込んでしまったような錯覚を覚えるほどの緻密な世界観は病みつきになってしまうけど、今回はお話があんまり好きになれなかったかなあ。上巻ののろのろ展開には辟易したし。あと、結末がハッピーエンドとは言えないのも読み手としてつらい。
  • 双頭のバビロン 上
    読み終わるのにものすごく時間がかかってしまった……登場人物もいまいち掴みどころがなく、これといった出来事があるわけではなく、ただ淡々と一人称で描かれるストーリーは緩慢に感じられてほとんど興味を持って読めず…….ようやく上巻最後で出来事が起きたのでここからの展開が早いことを祈ってます
  • 少年十字軍
    児童書だけど、ちゃんと皆川博子の歴史ロマンものだし幻想小説だった。悪魔サルガタナスと青い蝶の描写のなんとも言えない美しさ、ジャコブとドミニクのやり取りなど大人サイドの話をもっと掘ったら完全にいつもの皆川博子になるんだろうな…
    少年十字軍自体が史実とのことで驚いたけど、興味深い。
  • 蝶

    先の大戦前後の日本を舞台にした短編集。
    谷崎潤一郎のような悪魔主義的な背徳の美を綴る。
    筋書きや文章でなく、雰囲気を堪能する作品に思える。
    ひたすらに美しく、通州事件の生還者である令嬢が凄惨な最期を遂げる一篇「遺し文」にて、彼女の描写として選ばれる凄艶という語が、全作品の評価として最も相応しいのでは...続きを読む
  • 写楽
    江戸文化史版水滸伝という感じでビッグネームたちが集まり散じてゆく様が大変楽しかった。そこにフォーカスした方がおもしろいさくひんになったのではないか。とんぼの挫折をだらだら書いたり蔦屋の投獄を丁寧に追っかけたりって、正直、要る?筆者自身も要らないと判断した部分はばさっと省略する人のようだし、もっとエン...続きを読む
  • 愛と髑髏と
    初期の短編集、伝説のそれというだけあって、よみながらぞくりとする。
    甘さのある毒なぞ、考えたくもない、!
    という事で若い頃から敬遠気味だった怪奇小説・・とはいえ皆川さんモノは年に一回くらい読んできた・・麻薬の味。
    解説に有る通り「スズラン」のテイスト・・根に毒を持つ美しい花の装い。

    今90歳の筆者...続きを読む
  • ゆめこ縮緬
    美しかった。どこまでが現実でどこまでが幻想なのか分からない世界観。
    文月の使者、玉虫抄が好きだった。
  • 猫舌男爵
    皆川博子は過去の異国へ誘ってくれるから好きだけど、何かしらのトラウマを残していくので、もうちょっと当分はいいかな…という気持ちになった。『水葬楽』、『睡蓮』は良かった。
  • 薔薇忌
    どの話も、最後に突き放される哀しさがある。美しく残酷な秘密。決して癒されない哀しさ。
    薔薇忌と桔梗合戦が特に好きだった。
  • 死の泉
    ツイッターでも、優れた日本人同士を結婚させることを国家事業とすべき、という意見を某氏が披露していて炎上していたときに、話題にした人がいましたが、ナチのレーベンスボルン(命の泉計画)がこの本の前半の背景。超人種アーリアというナチの妄想によるアーリア増産計画で、征服した各国から金髪碧眼の子供を略奪し施設...続きを読む
  • 写楽
    写楽の正体は?という問いは、本能寺の黒幕は?に匹敵する歴史のミステリーになっています。

    さて、本作品は前世紀に映画化された作品の小説に当たります。映画に関しては辛うじて記憶の向こう側に有る様な無いようなですが、解説を観ると出演が真田広之、片岡鶴太郎、佐野史郎や葉月里緒奈などで思わず観てみたくなるよ...続きを読む
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    皆川博子さんの作品はおそらく初。あっさりめの文体で、18世紀ロンドンの政治腐敗、環境汚染、貧富の差などなどが、洗練された描写やエッジの効いた会話の応酬と共に効果的に描かれている。会話文の多さが目立つが、イギリスらしい皮肉の効いたやりとりが登場人物を魅力的にし、さらに必要最低限の描写を挟むことで、分厚...続きを読む
  • 双頭のバビロン 上
    再読ですが面白かったです。
    というかほぼ新しい気持ちで読みました。。
    結合双生児だったゲオルクとユリアン、分離したからはゲオルクは一旦表舞台へ、ユリアンは無き者としてこっそり成長しました。
    ゲオルク、ユリアン、そしてパウルの3人の章がそれぞれ進んでいくのですが、まだどのように絡み合ってくるのかわから...続きを読む
  • 妖恋
    江戸を舞台にした妖しく切ない短編集。

    現実と幻の境界が曖昧な感じで幻想的。
    時代背景故にすれ違ったり成就しなかったり…物悲しい空気が漂う。
  • 蝶

    ずっと読みたいと思っていた皆川作品をようやく初読みしました。

    自分の読書力と日本語力の未熟さを痛感させられたというのが、最初の、そして正直な感想です。

    いやぁ〜まいった。

    深い、実に深い。

    皆川文学を読むにあたって、手始めにと手にした理由は本書が短編集である事。

    さらっと読み進められると思...続きを読む
  • 少年十字軍
    面白かったです。
    13世紀のフランスで、神の御告げを受けたエティエンヌを中心とした子供たちがエルサレムを目指したという史実を元にしたお話でした。
    児童書になるのか、皆川さんにしては毒や闇は少なめでしたが引き込まれました。
    エティエンヌやルー、アンヌという初期の子供たちを取り巻いたり阻んだりする大人た...続きを読む
  • ゆめこ縮緬
    文月の使者/影つづれ/桔梗闇/花溶け/玉虫抄/胡蝶塚/青火童女/ゆめこ縮緬

    皆川博子は面白い。と聞いたばかりの時に見つけた文庫新刊。しばらく迷ったけど読んでみた。
    読み終わるのに思ったより時間がかかる。文章がスッと入ってこない?

    なぜだろう
  • 影を買う店
    1995年からの2013年に発表された、単行本未収録の21編の幻想小説をまとめた短編集。

    初出媒体も一編の長さも様々だが、どの作品も耽美、退廃、官能、死の色が濃厚でありながら品がある。
    皆川博子愛にあふれる編者の後書きによると、「幻想のための幻想」である「純粋幻想小説」だと言う。まさに、作者の作り...続きを読む
  • 夜のアポロン
    「沼」、「致死量の夢」、「雪の下の殺意」が心ひかれました。女、だけじゃないけど、人が隠してたのに、持て余して、どうにもならなくなった感情が染み出てくる瞬間とか、壊れてく瞬間ってこんなんかなと、一般論として怖くもあり、納得してしまう自分に怖くもあり。装幀と表題がロマンチックです。