皆川博子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ戦中の2つの女学校という空間が出てくる。
片方はミッションスクール、もう一方は都立女子校。
ミッションスクールはどちらかというと日本になじまない宗教性からか夢見がちに浮いて見られることが多い。しかし、そこには司教の体罰や異質な性癖、入信はしていない多くの女学生、エスという関係。決して穏やかなものだけでは済まされない。まるでジャスミンに似ているのにそれとは違う黄色い花を咲かせ、猛毒を持つカロライナ・ジャスミンのように。
なにが美しいと言うよりも、読んでいてとても楽しい、小説だった。
女学院の纏う愛らしさと排外性、戦争中という享楽の飢餓、それらが相まって「倒立する塔の殺人」の謎、現実の謎に垂直にのめり込む。
物語の中の1つ1つの異様さ、怖さに捉えられ、謎を体感し、犯人の罪の独白でない形で晒される。
・・・皆川さん初めて読んだけど、また他のも読みたいと思った。
めも
ミッションスクールだというのに神が皮肉にしか用いられなかったところ。(小枝たちはミッションスクールではなかったからか)
しずくの自分の罪を試そうとする行動
実際家になる少女たち。→そこが書かれる理由 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初皆川作品。圧倒され、惑乱させられた。次々と語り手が交代していくことにより、たった今まで現実と思って読んでいた物語が虚構に切り替わり、そして次に読んだ物語も虚構へと……、現実との境界が分からなくなっていく。どれも完結しない物語。登場人物が感じる混乱が私にも伝播し、酔う。ミステリ作品として、最終的には現実が提示されるわけだが、それでも残されたひと筋の非現実-詳細は伏せる-により、この惑乱は解けずに終わる。
薔薇の僧院。薔薇と人間を合体させる狂気の研究。男娼と黴毒。姉の美しい恋人。美しき劣等体。ナチとSS。重厚な文体。出てくるモチーフは確かに倒錯、耽美なのだが、そこには頽廃のような爛れた空気よりも、「業」という名の毒と閉塞さを感じた。(それにしても、ドイツ語の響きの耽美に聞こえることよ。)
作中で繰り返し唱えられる「物語を必要とするのは、不幸な人間だ」という一文、これが本作品が投げかける「業」の主たる要素だと思う。舞台は第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけてのドイツとポーランド。ドイツ第三帝国というヒトラーの大きな物語、ここを舞台に更なる自分の物語を紡ごうとする登場人物。そして読み手たる私はこれを一つの物語に構築しようと試みる。つまるところ人間は皆不幸なんだな。
確かに見た目は"厚い"けれど、決して"長く"は感じない一冊。
(ちょと苦言、冒頭の小序、これは最後に持ってきて欲しかったなぁ。恐らく救いになっていると思われるが、ほとんど結末を提示しているに等しいので。結末ももうひとひねり欲しい気はした。) -
Posted by ブクログ
第1次世界大戦から第2次世界大戦にかけてドイツ・ポーランドの国境近くの修道院で行われた秘密の実験。
脱走兵に、ポーランドの少女、修道院の作男、と、語り手は変動していく。でもって、どれも<信用のならない語り手>なのだ。
なので、翻弄され困惑し、気がつくとがっつり世界に取り込まれている。
にしても、薔薇と人間を融合させるという実験が、あの病気の治療云々につながっていくとは…。
とはいえ、まぁ、どれもこれも共感できない人物のオンパレードで、ある意味、人間の基本的な嫌な部分、というか自分自身が嫌悪していることを凝視させられる気になる。
やっぱ、怖いです、皆川博子。
でも、癖になる面白さ。 -
Posted by ブクログ
「語り」自体に仕掛けがあるらしい……
という情報だけ仕入れて読んだ。
太平洋戦争末期の女学生たちの愛憎劇で、
複数の人物の手稿が連続するノートを読み進める、
という形で進行する物語。
誰が犯人で誰が被害者か、
そして、どこからどこまでが話中話なのか、
さして長くない小説だが、
気づかないうちに落とし穴に嵌まっているかもしれないと
疑心を抱きつつ、目を皿のようにして読み進めた。
結果……罠に掛からなかったのが嬉しいような、
逆にちょっと損したような、変な気分になった(笑)が、
文句なしに面白かった。
叙述ミステリ入門編として、
こういうジャンルに興味を持ち始めた方に、お薦めしたい。
騙されるのも一興です。 -
Posted by ブクログ
遺書さえも残さずに自殺してしまった姉が、いたずらに鉛筆で紙に書き散らしていた”クライン・キャット”という謎めいた文字。
この奇妙な言葉だけを頼りに、生前には知りえなかった姉の素顔を探ろうとした妹を待ちうける、不可解な恐怖の正体とは?
日常生活にぽっかりとひらいた陥穽を描いた表題作「たまご猫」をはじめとして、夢とうつつの狭間に生じる不条理を題材とした、妖しくも美しい、10篇の恐怖のかたち。
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「たまご猫」「をぐり」「厨子王」「春の滅び」「朱の檻」「おもいで・ララバイ」「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」「雪物語」「水の館」「骨董屋」の10篇からなる短編集。
個人的に「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」「骨董屋」あたりの書き方が好きだった。
煽ってあるような恐怖のかたち、というか、怖くはないのだけど、全編において流れる奇妙な匂いがちょっと癖になりそう。
何気なく手に取っただけなのだけど、いい作家さんに出会えた。