皆川博子のレビュー一覧
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ネタバレ24編の幻想小説集。
特にのめり込んだのは『妖瞳』だった。東京で男色研究をしている主人公が、因果な運命を背負った青年を目の前に、心の内で言葉が止まらないシーン。「内心舌なめずりする」のが文章だけで手に取るように分かって身震いした。主人公との対話によって硬く閉ざされた扉が開かれ、覆い隠された青年の心が再びその柔らかさを取り戻すのが切なく美しかった。
纏足の少女をテーマにした『紅い鞋』や生きたくも死にたくもない女の話『青い扉』も印象的だった。淡々と身の上を語る主人公に共感した。静かだけれどたしかな意思が彼女たちの中に渦巻いている。 -
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終盤、かなり息切れしてしまった。
光の速さで畳まれまくる風呂敷に着いていくのに必死。
まあこれは私の頭が悪いってだけの話なのですが、登場人物が元々多い上、ビリー、ブルース、ブッチャーとBから始まる名前のやたらと多いこと(撹乱?)そして真実があーでこーだもんで脳内大混乱スマッシュバートンズ。
大きく3つ(4つか?)のクエスチョンを同時に追っていくのでそのあたり脳のリソースの配分を間違うと死ぬ。
そんなわけで話は複雑濃厚で脳の使い甲斐があり非常に読み応えがある。
ただ、ミステリーではあると思うけど推理小説ではない、かな。
終盤てんてこまいになったのは謎の解明場面が語りで終わってしまったからかも。
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ネタバレ『開かせていただき光栄です』続編。
外科医で解剖学の先駆者、ダニエル・バートンの解剖学教室を舞台に起きた連続殺人事件から5年。
愛弟子のエドとナイジェルが出奔し、解剖学教室は閉鎖中。元弟子たちもそれぞれの生活を送りながらも、変わらず先生を敬愛している。
ある日、盲目の治安判事として知られるジョン・フィールディング卿の元に、胸に暗号を刻まれた“天使の屍体”の情報が舞い込む。
調査のため、そしてバートン先生に屍体を提供すべく現地に向かった元弟子たちが発見したのは、消息不明になっていたナイジェルの屍体だった…
前作のラストのほろ苦さを思い出しながら読み始めたら、登場人物紹介リストの筆頭は「ジョ -
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江戸文化史版水滸伝という感じでビッグネームたちが集まり散じてゆく様が大変楽しかった。そこにフォーカスした方がおもしろいさくひんになったのではないか。とんぼの挫折をだらだら書いたり蔦屋の投獄を丁寧に追っかけたりって、正直、要る?筆者自身も要らないと判断した部分はばさっと省略する人のようだし、もっとエンタメ度を高められたのではないかという気がする。
写楽の活躍した10ヶ月間が非常にあっさりと描写され、ほとんど劇的な場面を交えずに終わるのは、ドライで小気味良かった。
とんぼのほのかな恋が悪所における世俗の垢に汚染されて終わってゆく様なども苦くてよい。結局捨てた女のところに出戻るという、希望がなくはな -
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写楽の正体は?という問いは、本能寺の黒幕は?に匹敵する歴史のミステリーになっています。
さて、本作品は前世紀に映画化された作品の小説に当たります。映画に関しては辛うじて記憶の向こう側に有る様な無いようなですが、解説を観ると出演が真田広之、片岡鶴太郎、佐野史郎や葉月里緒奈などで思わず観てみたくなるような俳優陣です。
さて、本作品は写楽の正体を巡るミステリーではありません。
主人公の翻弄される奇異な運命を本筋に江戸の名プロデューサー蔦谷重三郎とその仲間達の物語となっております。どの様に写楽は現れ消えていったのか?と当時の江戸の風俗と文化を楽むような作品となっております。
それにしても蔦屋重