前半は姉と弟、厳格な父親(そして弟が夭折する)という人間関係が多い。そういうテーマで編んだのかと思ったが、たまたまなよう。
「影を買う店」
弟の通夜の席で聞いた、彼が生前よく行っていたという喫茶店。
「使者」
詩人志望の青年からの手紙を受け取った出版人。普段ならば無視するであろう手紙に返信したのは
...続きを読むその署名が維持ドールであったからだ。彼にはかつて、同じ名のイジドール・デュカスの詩を誰よりも早く知りながらその価値を見いだせなかった失意があった。
「猫座流星群」
姉弟の遊び相手として、少し年上の使用人の息子である勝男がやってきた。彼は手作りプラネタリウムで流星群を見せ、いらないおもちゃで戦車を作り、小さな断頭台を作った。
「陽はまた昇る」
アンソロジー『黄昏ホテル』収録。少女と<風>の沈むホテルに関する会話。
「迷路」
方向音痴である私は銀座のとある画廊へとたどり着けずに迷っていた。
「釘屋敷/水屋敷」
釘のびっしりと刺さった柱のある釘屋敷、座敷に井戸のある水屋敷。
「沈鐘」
蔵の中のその井戸は、女が身を投げたとき、千切れた振袖が残ったために振袖井戸というのだ、と彼は言った。そうして、西洋の山の姫と鐘造りの伝説を語った。
「柘榴」
アンソロジー『エロチカ』収録。N先輩がきっと好きなやつ。
「真珠」
口づけする口の内から真珠が次々にあふれるという夢。
「断章」
水の話。
「こま」
今、昔、映画。
「創世記(写真:谷敦志)」
「蜜猫」
部屋が増殖する家と猫と私。
「月蝕領彷徨」
視覚的な詩。
「穴」
視覚的な詩というか絵というか。ルイス・キャロルみたい。
「夕日が沈む」
『命を大切に』が浸透した結果、切断された指さえ死んではならぬと生き延びるようになり、それは熱帯魚のように愛好されるようになった。
「墓標」
視覚的な詩と小説。母の店にやってきた東京からの子連れの客。彼はブラック・アートというマジックを見せる。
「更科眼鏡」
視覚的な詩と小説。川に笹舟を流す子供。
「魔王 遠い日の童話劇風に」
「青髭」
「連禱 清水邦夫&アントワーヌ・ヴォロディーヌへのトリビュート」