皆川博子のレビュー一覧

  • 夜のアポロン
    単行本未収録の16編の短編集で、『夜のリフレイン』と対をなす。
    なので初出は1976年〜1996年の「小説宝石」をはじめとする諸誌。

    年代順に並べられているが、嫉妬からサーカスのオートバイ乗りと一緒に事故死で心中しようとする表題作が一番鮮烈。前半は嫉妬がテーマになっている作品が多い。
    少女ための私...続きを読む
  • 薔薇忌
    舞台にまつわる人々の短編エピソード。死人が出てきて普通に会話していることが、舞台という特殊な空間とも相まって、現実離れした世界観の演出にもなっている。
    舞台に魅入られて、いつまでもそこに留まり続けている人々の魂を眺めているのは、演劇や映画を観終わった後もしばらくその場から離れたくないような感覚に似て...続きを読む
  • 花闇
    以前、恋紅を読んだ時に出てきた澤村田之助。「次はあれをやろうこれをやろう」と舞台について話す様子を読みながら、芝居馬鹿はいつの時代も変わらない馬鹿なのだなと思ったりした。全盛期の田之助は傲慢で、子供で、さっぱり惹かれないけれど、心まで腐らせてしまった、最期の田之助は何とも魅力的だと感じた。
  • みだら英泉
    浮世絵師、英泉と3人の妹たち。禁じられた絵と、人物全てが生々しい。なんて言うか肉感が凄いなと感じた。可愛らしい朝顔が時折、禍々しく変化するように乱れる。
  • 影を買う店
    前半は姉と弟、厳格な父親(そして弟が夭折する)という人間関係が多い。そういうテーマで編んだのかと思ったが、たまたまなよう。

    「影を買う店」
    弟の通夜の席で聞いた、彼が生前よく行っていたという喫茶店。
    「使者」
    詩人志望の青年からの手紙を受け取った出版人。普段ならば無視するであろう手紙に返信したのは...続きを読む
  • アルモニカ・ディアボリカ
     僕は、僕が望むように君を変えた。
     でも、エド、君と再会できたら、君が望むように、僕を変える。
    (P.458)
  • 少女外道
    久々に文学っぽいものを読んだ気にさせられた。
    とはいえ、少女小説っぽいのかな。

    人とは違う性的嗜好あるいは、そこに至りそうな何らかの感情を秘めた人物や各短編の主人公。不思議と湿っぽさがないファンタジー。
  • 薔薇忌
    舞台に秘められた男女の謎-妖しく華やかな幻想ミステリー。

    舞台に関わる人々を描いた7つの短編集です。

    ん・・・悪くないけど、良さもよくわからず。
    服部まゆみ先生の作品が好きで、その帯などでよく目にするので、似ている世界観を期待して読んでみたのですが、似ていなくもないんだけど、ん・・・。よくわから...続きを読む
  • 死の泉
    不思議な話。不気味で不穏な不協和音を聞いているような感じもするし、壮大な音楽を聴いてるような感じもする。狂った時代の犠牲になった人たちを想う。
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    十八世紀ロンドン。当時の先端科学で偏見にも晒された解剖学的見地から、外科医ダニエルと弟子たちが連続殺人と不可能犯罪の謎に挑む
  • トマト・ゲーム
    休みなく注がれる毒に感覚が麻痺していくのを感じた。より強い刺激を求めて、もっと、もっととページを繰ってしまう。
  • 花闇
    実在の人物、歌舞伎役者の澤村田之助を描いた作品。美貌の天才女形が壊疽により四肢を切断し尚、舞台に立ち続け、狂死する、という実話がベース。
    四肢を切断しても田之助の歌舞伎にかける情熱がいささかも衰えず、あらん限りの知恵と工夫を重ねて舞台に立ち続ける様子に驚愕した。これだけの才能がありながら、さぞ無念だ...続きを読む
  • 死の泉
    ナチスドイツというのはともかく小説の題材になるネタが豊富なのか、やたらと色んな人が話を作っていて、なんか良く分からんけどえらい耳年増になってる気がする。でもなんでナチスがあれだけ熱狂的に受け入れられたのか、ってのが、これだけ小説が書かれる、ってのにも繋がるんかな。ムッソリーニとかカストロじゃダメなん...続きを読む
  • 花闇
    歌舞伎というあんまり馴染みのないモチーフのせいか、ちょっと硬めの文章のせいかなかなか入ってこず……。
    読み終えるのに時間ばっかりかかってあんまり内容理解できんかったな。
    全体的に淡々としてるからか。うーむ。

    四肢を失ってもなお舞台に立つことをやめない田之助の執念が怖くもあり、変容していく芸の形が美...続きを読む
  • 倒立する塔の殺人
    戦時中に家族や大切な人を亡くしながらも、自分の好きなことや大事なものを見失うことなく、本に夢中になったり歌やダンスを踊ったり、悲しく辛い毎日の中でも、楽しむことを忘れずに必死に生きる少女達は本当に逞しかった。
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    このミスベスト10、2012年版3位。昔のイギリスが舞台で外人ばかり出てくる翻訳探偵もののような本格?ミステリー。この人の本、前に読んだのはかなり難解だったけど、これは文章的には楽。序盤はフロストシリーズのようにユーモアもあって面白いんだけど、ちょっとテンポがわるく途中から中だるみする。謎解きてきに...続きを読む
  • 花闇
    初読。読んだことのない作家さんの読んだことない本を買うこと自体が稀なのだが、澤村田之助を描いた本ということで買いたくなった。足を切る前まではまあまあありがちな役者のエゴというところだったが、足を切った後からは一気に凄みが増す。すさまじいまでの役者への執着が見苦しくなることなく、哀しいまでに美しい。華...続きを読む
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    このインパクトのある真っ赤な表紙絵。ずっと気になってた一冊です。
    舞台は18世紀ロンドン。絵画では知っていたジン横丁なんかも出てきたりして、当時のロンドンの猥雑な雰囲気に触れられたような気がした。また、解剖が死体を切り刻む邪悪な物と見られていた時代、偏見と闘いながらもこういう人たちが現代医学の礎を築...続きを読む
  • 少年十字軍
    奇跡を起こす羊飼いの少年エティエンヌと、そこに集う少年少女と狡猾な大人達がエルサレムへ向かう物語!

    弩使いの少年ルーは誰よりも頼りになります。
    フルク修道士はムカつきます。
    レイモンにもムカつきます。
    ピップの『エティエンヌが居るから大丈夫』にも段々ムカついてきます。


    キリスト教の失敗は教会と...続きを読む
  • アルモニカ・ディアボリカ
    本書は「開かせていただき光栄です」の続編だ。
    18世紀の英国の空気を写し取ったような、退廃的な空気と不思議にお茶目な空気が今回も満載である。

    解剖医ダニエルの弟子、ベンやクラレンス、ネイサンらは盲目の判事ジョン・フィールディングが出資する新聞を作成していた。そこに、身元不明の屍体の情報を求める広告...続きを読む