皆川博子のレビュー一覧
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終盤、かなり息切れしてしまった。
光の速さで畳まれまくる風呂敷に着いていくのに必死。
まあこれは私の頭が悪いってだけの話なのですが、登場人物が元々多い上、ビリー、ブルース、ブッチャーとBから始まる名前のやたらと多いこと(撹乱?)そして真実があーでこーだもんで脳内大混乱スマッシュバートンズ。
大きく3つ(4つか?)のクエスチョンを同時に追っていくのでそのあたり脳のリソースの配分を間違うと死ぬ。
そんなわけで話は複雑濃厚で脳の使い甲斐があり非常に読み応えがある。
ただ、ミステリーではあると思うけど推理小説ではない、かな。
終盤てんてこまいになったのは謎の解明場面が語りで終わってしまったからかも。
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ネタバレ『開かせていただき光栄です』続編。
外科医で解剖学の先駆者、ダニエル・バートンの解剖学教室を舞台に起きた連続殺人事件から5年。
愛弟子のエドとナイジェルが出奔し、解剖学教室は閉鎖中。元弟子たちもそれぞれの生活を送りながらも、変わらず先生を敬愛している。
ある日、盲目の治安判事として知られるジョン・フィールディング卿の元に、胸に暗号を刻まれた“天使の屍体”の情報が舞い込む。
調査のため、そしてバートン先生に屍体を提供すべく現地に向かった元弟子たちが発見したのは、消息不明になっていたナイジェルの屍体だった…
前作のラストのほろ苦さを思い出しながら読み始めたら、登場人物紹介リストの筆頭は「ジョ -
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江戸文化史版水滸伝という感じでビッグネームたちが集まり散じてゆく様が大変楽しかった。そこにフォーカスした方がおもしろいさくひんになったのではないか。とんぼの挫折をだらだら書いたり蔦屋の投獄を丁寧に追っかけたりって、正直、要る?筆者自身も要らないと判断した部分はばさっと省略する人のようだし、もっとエンタメ度を高められたのではないかという気がする。
写楽の活躍した10ヶ月間が非常にあっさりと描写され、ほとんど劇的な場面を交えずに終わるのは、ドライで小気味良かった。
とんぼのほのかな恋が悪所における世俗の垢に汚染されて終わってゆく様なども苦くてよい。結局捨てた女のところに出戻るという、希望がなくはな -
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初期の短編集、伝説のそれというだけあって、よみながらぞくりとする。
甘さのある毒なぞ、考えたくもない、!
という事で若い頃から敬遠気味だった怪奇小説・・とはいえ皆川さんモノは年に一回くらい読んできた・・麻薬の味。
解説に有る通り「スズラン」のテイスト・・根に毒を持つ美しい花の装い。
今90歳の筆者、200歳まで生きて欲しい・・文を読ませてほしい。
この作品は1985年物の復刊・・だけに皆川氏が怪奇小説のあるジャンルを確立するに至った助走の煌めきを感じる。
晄、色彩の表現が随処に有るせいか、読みつつも時に、眩暈を覚えたり、幻惑に誘い込まれる。「通常で無い」人・・女、娘が多い 文となると接写感 -
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ツイッターでも、優れた日本人同士を結婚させることを国家事業とすべき、という意見を某氏が披露していて炎上していたときに、話題にした人がいましたが、ナチのレーベンスボルン(命の泉計画)がこの本の前半の背景。超人種アーリアというナチの妄想によるアーリア増産計画で、征服した各国から金髪碧眼の子供を略奪し施設に集められる。また、金髪碧眼の若い女性とSS兵士たちのあいだに子供をもうけさせ出産させるといった、ホロコーストの対称にある優生思想計画。ホロコーストに関しては周知だけれど、レーベンスボルンに関してわたしが知ったのはつい数年前、映画『誰でもない女』で、たぶんそれを知る日本人は少ないのでは。本国ドイツや
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写楽の正体は?という問いは、本能寺の黒幕は?に匹敵する歴史のミステリーになっています。
さて、本作品は前世紀に映画化された作品の小説に当たります。映画に関しては辛うじて記憶の向こう側に有る様な無いようなですが、解説を観ると出演が真田広之、片岡鶴太郎、佐野史郎や葉月里緒奈などで思わず観てみたくなるような俳優陣です。
さて、本作品は写楽の正体を巡るミステリーではありません。
主人公の翻弄される奇異な運命を本筋に江戸の名プロデューサー蔦谷重三郎とその仲間達の物語となっております。どの様に写楽は現れ消えていったのか?と当時の江戸の風俗と文化を楽むような作品となっております。
それにしても蔦屋重 -
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ネタバレ皆川博子さんの作品はおそらく初。あっさりめの文体で、18世紀ロンドンの政治腐敗、環境汚染、貧富の差などなどが、洗練された描写やエッジの効いた会話の応酬と共に効果的に描かれている。会話文の多さが目立つが、イギリスらしい皮肉の効いたやりとりが登場人物を魅力的にし、さらに必要最低限の描写を挟むことで、分厚い物語をテンポよく進行させている。現在と過去が交互に進行する仕掛けも、飽きさせず、読みやすくする仕掛けの一つかなと。ネイサンの行方が途切れてからは長かったけど。
日本人が、魔法とか魔術が下地にないリアルな18世紀ロンドンを舞台に小説を書く、というのは果たして大丈夫か?とドキドキしたけど、全く問題な -
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再読ですが面白かったです。
というかほぼ新しい気持ちで読みました。。
結合双生児だったゲオルクとユリアン、分離したからはゲオルクは一旦表舞台へ、ユリアンは無き者としてこっそり成長しました。
ゲオルク、ユリアン、そしてパウルの3人の章がそれぞれ進んでいくのですが、まだどのように絡み合ってくるのかわからずわくわくします。
ゲオルクは一時期映画監督の仕事をするのですが、その章で書かれた、
〈大衆の息抜きに役立つであろうものはまた、彼らの感覚を麻痺させ、思想的に白痴化させる。民主的であると謳われる文化のほとんどは、いい意味で大衆的なのではなく、悪い意味で通俗的である。〉…私も、同意しました。
ユリアン -
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ネタバレずっと読みたいと思っていた皆川作品をようやく初読みしました。
自分の読書力と日本語力の未熟さを痛感させられたというのが、最初の、そして正直な感想です。
いやぁ〜まいった。
深い、実に深い。
皆川文学を読むにあたって、手始めにと手にした理由は本書が短編集である事。
さらっと読み進められると思っていた自分が情けないやら、恥ずかしいやら(苦笑)
それぞれの物語に密接にかかわり、深みを増すのが添えられた俳句や詩。
叙事詩的な文体であるが、これぞ日本の純文学なのであろう。
現段階では最後に記された「遺し文」のみが、少し理解出来た気もするが、本作を読み取れる読書力を身につけ、再読した時には -
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面白かったです。
13世紀のフランスで、神の御告げを受けたエティエンヌを中心とした子供たちがエルサレムを目指したという史実を元にしたお話でした。
児童書になるのか、皆川さんにしては毒や闇は少なめでしたが引き込まれました。
エティエンヌやルー、アンヌという初期の子供たちを取り巻いたり阻んだりする大人たちの思惑が醜く残酷なのですが、この混沌とした時代には仕方ない事だったのかもと思いました。歴然と身分の差があって重税に苦しんで。
記憶を無くしているガブリエルがとても好きな登場人物だったのですが、彼が到達する「神はおわさぬ。教会も聖職者も、巨大な嘘にほかならぬ」という「真実」が重く垂れ込めます。
死と