皆川博子のレビュー一覧

  • 少女外道
    すごいインパクトのタイトルだなあと思って手に取ってみた。

    どのお話も、悲しみと寂しさがそっと横たわっていて、でもその奥に、恍惚とさせる美しい炎が、妖しく揺れているようなイメージ。
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
     時は十八世紀のロンドン。雑多にまみれたイギリスの片隅で起こった殺人事件、その原因を突き詰めていく作品です。
     体の切り貼りだとか、心情だとか、登場人物たちには良い意味で感情移入できず(みな、たいへん、自分勝手)ゾワゾワしました。
  • 猫舌男爵
    何処の世界の、何処の時代の物語か見当もつかない摩訶不思議な物語5篇と解説を含めた短編集。 表題作を除けば、真面目な物語な筈なんだけれどレトリックに翻弄させられながら「読まされた」感の読後の物語集。 猫舌男爵の本当にありそうで絶対なさそうな話は秀逸。
  • トマト・ゲーム
    「トマト・ゲーム」
    真っ赤なトマトになっちゃいな式のバイク乗り。

    「アルカディアの夏」

    「獣舎のスキャット」
    姉が弟を見る眼の異様さを裏打ちするのは、何か。
    弟からの意趣返しが凄まじい。

    「蜜の犬」
    強者と弱者の関係が引っくり返る、しかも比較的ピュアな少年によって。

    「アイデースの館」
    アン...続きを読む
  • トマト・ゲーム
    皆川博子の初期作品集、復刻発売。
    帯、あとがきの日下氏の「いかに初期から完成されていた作家かわかる」という表現が的を射ていると思う。
    比較的淡々とした書き口なのに、ことごとく狂気や不穏さを感じとれるほど、文章・表現力は高い。
    自分の好みより文学性が強めであるが、折に触れて他作も読んでいきたい。
    3+
  • トマト・ゲーム
    短編8作。
    うっとりするくらいの狂気。
    恐ろしいほど美しいセンテンスに、じわじわと感覚が麻痺していく。
  • きっと、夢にみる 競作集 <怪談実話系>
    10人による、怖い話。

    題名通り、夢で見たり、白昼夢だったり。
    うっかり思い出してしまわないためにも
    日が高いうちに読んだ方がいいかもしれません。
    いや、思い出すような読み方をしなければ大丈夫?

    ぎょっとする終わりなのは、そらみみ。
    これが現実なのか、あちらが現実なのか、と
    思わせるような最後の...続きを読む
  • 薔薇忌
    舞台に携わる人々を描いた短編7編。どれも妖しくて美しい幻想的な話ばかり。現代の話なのに、芝居を扱っているせいか、どこか時代がかった雰囲気をもつ不思議な世界観。
    少し硬めの文体なので、慣れるまでは入り込みにくいとこもあるけれど、それが却って幻想的な雰囲気を際立たせている。
    皆川作品は『開かせていただき...続きを読む
  • 少年十字軍
    史実に基づいた物語。

    信頼と疑心、純粋と不純、真実と嘘などたくさんの人と思惑が交錯しながらエルサレムに向かい最終的に子供たちが出した結論に、1つの人生の歩みを見たような気分になった。

    修道士や騎士、神や悪魔などが作中や文面に出てくるものの思っていたほど宗教色の強さもファンタジーも感じなかった。そ...続きを読む
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    登場人物の名前を覚えるのにちょっと苦労。でも18世紀ロンドンの薄暗い事情が丁寧に書かれていて、じんわり世界に引き込まれます。
    途中から死体ざくざく!犯人自殺!みたいな容赦ないBADENDを想像していたのですが、予想以上に救いがあってちょっとほっとしました。

    最後まで読んだらダニエル先生好きに。
  • 少年十字軍
    特別な少年と、粗野な少年の対比がよかった。
    本書の、聖職者は、聖職者(笑)表記でいいと思う。暮らしが良くなればその分、怠けたり欲が出るんだなと実感した。それが人間なんだけどさ。もちろん、真面目な聖職者もいるんだろうけど。
  • 伯林蝋人形館
    1920年代のドイツ、ベルリンが舞台。混沌とした時代を生きる男女6人。それぞれの目線からなる幻想的な短編と、付随する作者略歴で構成されている。幻想と現実を行ったり来たりしながら徐々に全体像が見えてくるのが絶妙。内容は少し複雑だったが相変わらずの美しい文章と世界観だった。
  • 影を買う店
    つまらない訳ではないが痺れるほど面白い短編があるわけでもなかった。
    合う、合わないでいえばやや合わなかった。ついていけない幻想だった。「魔王」とか、もう何やってんだかという感じ。

    好みだったのは「更紗眼鏡」「迷路」「柘榴」。比較的分かりやすい部類…か?自殺した弟を持つ姉の話のオムニバスとか読んでみ...続きを読む
  • アルモニカ・ディアボリカ
    *ロンドン好きに
    *一気読み向け
    *ただし必ず前作を読んでから!

    前作同様、18世紀英国のディテールが楽しい。捜査の主役が明確にサー・ジョンに置かれ、各種証言を信頼しきれない(全てが見えない)伏線まみれのどきどき感再び。ミステリとしてはサー・ジョンの勘と想像力にちょっと頼りすぎですが、読み物として...続きを読む
  • 光源氏殺人事件
    登場人物がなぁ…柏木と女三の宮だからああなのか、と分かるんだけどそれにしてもイラッとして仕方がないです(笑)
  • 倒立する塔の殺人
     終戦間際の時代、ミッションスクールの図書室に置かれていた『倒立する塔の殺人』と書かれたノート。そのノートには手記と終わりのない小説が書かれている。その手記とノートが書き継がれていくうちに徐々にそのノートに秘められた企みが明らかになっていく。

     濃い世界観の小説はいろいろありますが、この作品の世界...続きを読む
  • 少女外道
    「少女外道」というタイトルとあらすじに惹かれて読みました。7話からなる短編集です。
    順番に感想を書きます。

    「少女外道」
    表題作です。
    あらすじには『(割愛)久緒は、あるとき怪我を負って苦悶する植木職人・葉次の姿を見て、自分が苦しみや傷に惹かれる「外道」であることを知る―。』とあります。
    期待して...続きを読む
  • 影を買う店
    難しいところもありますが雰囲気が好きで苦無く読めました。

    『沈鐘』『柘榴』『墓標』が好きです。
  • 倒立する塔の殺人
    作中作が盛り込まれた作品構造が複雑で
    理解しきれないまま終わってしまった。

    ミッションスクールと女学校の独特の雰囲気と
    その中で繰り広げられる濃密な人間関係は
    味わえた気がする。
  • 伯林蝋人形館
    複数の視点が交錯しながら時が過ぎてゆく中に、退廃的というか耽美的というか、独特の世界が感じられた作品でした。