皆川博子のレビュー一覧

  • 少女外道

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    苦しみや痛みに惹かれる傾向を「外道」というのが 迫力がある。出征する恋人のために手まりの中に自らの小指を入れる。後年それが 手まりの中で からころと音を立て・・・
    そんな 血の匂いを感じながらも美しい世界。
    古風な言い回しがとても美しい幻想的な小説でした

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    2018年08月27日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    名言をあげるスレ、みたいなのは割と好き。でもって本を読んでてそういうのがあると、まぁ気にするような、気にしないようなで、意外と忘れるんだよなぁ。でも今回はいろいろと名言が散りばめられていて、さりげなく名言を吐きたいというあなたにぴったり!なんである。
    「友情とは、誰かに小さい親切をしてやり、お返しに大きな親切を期待する契約である」と言ったのはモンテスキューだそうで。モンテスキューなんて20年くらいぶりで聞いたわ。何やったかは覚えてないけど。
    「自由を!と叫ぶ連中が僕の自由を阻害している」なんてなかなか良いね、好きよ。
    「風邪は、放っておけば一週間続くが、治療すれば七日間で治る」って、一休さんか

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    2018年07月03日
  • 少女外道

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    『少女』『外道』『敗戦』なんかが全体に共通して絡んでくる短編集。

    皆川さんの本はなんと感想を言っていいのか…言葉にするのが難しい。
    とにかくこの雰囲気と文章の美しさが好き。
    ラストのしめかたもいつもすごく素敵だと思う。

    今回特に好きだったのは、『少女外道』『有翼日輪』『標本箱』かな。

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    2018年06月05日
  • 死の泉

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    『「ドイツは豊かになった」ヴェッセルマンはつづけた。「だが、その代償に、内に向かう目をドイツ人は失った。人は、重く、下へと成長し、根を地底に広げ、大地の水を吸い、そして思考は鳥のようにはばたき光につつまれる。しかし、不安という糸が、鳥の脚を地上の風につなぐ。そのようにして、我々ドイツ人は思索のなかに生きてきた。」

    「思索の結果が、戦争でしたよ。」』

    ナチスドイツの思想とそれを体現したクラウスの狂気。妻となったマルガレーテの発狂。その狂気に育てられた子供たち、フランツ、エーリヒ、ミヒャエルそれぞれの悲劇。
    緊張感の途切れない気持ちの悪い恐ろしい作品。

    発狂したマルガレーテの手記がうまく使わ

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    2018年01月14日
  • みだら英泉

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    絵師として花開きたいともがく英泉の葛藤は乾いている。
    乾き過ぎて、ちょっとした摩擦で燃え上がりそうなほど。

    けれど、彼を取り巻く人の情や思惑はとにかく重く湿っている。
    そしてその情が英泉の筆に乗り移り、紙を湿らせ、絵を描かせる。

    春画にはあまり描かれないという吉原の遊女を好んで描いた渓斎英泉。
    彼が筆を執り、成功、そして没するまでを書いた「みだら英泉」。

    有名一門との確執、春画が弾圧される時勢、実在する絵師たちと英泉の交流……
    あたかも江戸の町並みを見てきたかのような、匂いすら立ち上る筆致は、確かに情緒あふれる時代小説のものだ。
    しかし、あくまでも話は英泉と妹たちを中心とした生臭くも艶っ

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    2017年12月01日
  • 妖恋

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    美・情・狂
    文章や人物の表に現れる美しさ
    その底や背後にある情念
    そして怪談的幻想的ともいえるが
    一線を踏み越えてしまった狂気の世界
    それに甘く妖しく浸る。
    現代から描くお江戸を舞台に大人の怪談とも。

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    2017年06月07日
  • 少年十字軍

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    青少年向けのため、いつもの皆川先生らしくないかもね(笑… 叙述トリックもない ドロドロな展開もない、芳醇な描写や余韻たっぷりのエンディングが相変わらずいつもの皆川先生です。昔十字軍東征の映画を観たが、今回小説のベースの少年十字軍のお話は知らなかった。今度古屋先生の漫画も読もうかな〜

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    2017年05月19日
  • 猫舌男爵

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    表題作があって、解説がそうなら
    各作品のなかで現れる現実と幻想の境は
    この本を読みおわった時点で、さらにあいまいで
    ふとした瞬間にグニャリと歪んでしまいかねない。

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    2017年03月20日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    法のあり方、生まれながらに押し付けられる不条理、そしてその中でもがき続ける判事。
    大団円とならないラストが切ないが、それでも救われる人がいることを願いたい。

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    2017年02月10日
  • 花闇

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    絢爛と酸鼻。
    この両極端をここまで描出できる作家。見事としか言いようがない。
    豪華な錦糸を縦横に編み込んだような文章からは、腐臭すら漂う。

    実在した歌舞伎役者澤村田之助の存在感の、なんと艶やかで無残なこと。
    傲慢で鼻持ちならない言動ながら、まさに「役者」の業を煮出して全身に染め抜いた、天賦の才。
    田之助はその美貌すら、狂って感じられる。

    三すじの、淡々としながら、けれどほのかに覗く残酷がなんともリアル。
    全編に漂う淫猥さが、あまりに惨い田之助の悲劇すら彩ってしまう。

    この激しい生き様そのものが、豪華な芝居だったのではないか……
    夜明けに見た悪い夢のよう。美しい。

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    2017年01月20日
  • 少女外道

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    久々に“純文学”を読んだ、と思った。
    著者が70代の後半頃に書いたという作品集。エンターテインメント性は感じないけれど、そういう枠とは別の意味でとても面白いというか、興味深い。
    戦中、そして戦争の前後の昭和の時代の物語が多くを占めていて、そこはかとなくエロスとタナトスが漂っている。

    物語の中身や流れというよりは読んだときの感覚を大事にしたくなるような作品ばかりで、だから今回は敢えて詳しい中身には触れないでおく。
    時系列の飛び方に特徴がある物語もあって、きちんと読んでいないとその繋がりを見落としてしまう可能性もあるのだけど、分かるとその繋がり方に感心してしまう。

    死というものが常に漂うから、

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    2017年01月19日
  • 花闇

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    美貌、才能に溢れ天真爛漫、高慢で妖しげな
    天才女形が不幸な病により腐敗し堕ちていく様と
    華やかで耽美な一面と裏腹に蔑まれていた歌舞伎役者が
    時代の流れとともに芸術に高めていくハザマ
    現実と虚構、その虚構を現実に寄せていくハザマが
    冷めた目を持ち、愛と裏に隠れる憎しみとを抱いた
    三すじの眼から、淡々と、時に燃えるような感情で
    かたられる。
    美しいものの一歩先、その裏に潜む危うさや、
    醜さのきわどさ、はかなさと爛熟
    表にあらわす美とそれを形作る裏腹なもの
    形式・様式ではない美、人が知らず知らず
    ひきつけられてしまう美を感じる。

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    2017年01月11日
  • 少年十字軍

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    少年十字軍の悲劇を知っていれば
    この子達にどんな結末が待っているのか
    それを作者がどれだけ耽美、爛れた
    退廃的な世界に描くのかと思いながら
    読んでいったのだけど。。。
    神への信仰を表面にあらわしながら
    俗な人間の欲にまみれ浸りきった大人たちに
    (あぁ大人の世界を縮小版で濃縮している
    レイモンにもか)利用され、試され、裏切られ、
    翻弄される子供たちが、ただ一心に信じている
    苦難からの解放、自由な世界、導いてくれるはずの
    エティエンヌ。
    染まって汚れたものも、純粋なものも、全て背負い
    その身を削りながらたどり着く先は。
    ぜひ読んで、余韻に浸ってみてください。

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    2016年12月26日
  • 薔薇密室

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    とても面白かったです。仄暗い世界観にひきこまれ、くらくらしながら読みました。どこまでが幻覚なのか、正気の在り処を見つけられませんでした。戦時下の描写は胸に痛く、皆川さんにしか描けないだろうなと思ってしまいます。薔薇と若者や少年の融合も狂気的でしたが、綺麗だろうな。幻想的な物語でした。

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    2019年03月09日
  • 双頭のバビロン 上

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    双子で二人の主人公の語る時間・観点が異なり
    振り返りと追いかけが平行して動く物語の中
    私が今年これまで読んでいた著者の作品に比べると
    美しくも濁ったような粘り気のある妖しさ、
    スピード感には多少欠ける気がするが、
    「あなた誰?」の章が、どうかかわるのか。
    また、あの人がこの人というのが明かされ、
    驚愕から、ではそれがどう結びつくのか
    最後まで読みたくなる。最終的な評価は下巻で。

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    2016年12月09日
  • 死の泉

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    この本自体、著者の内側があり、訳者の外側があり、
    その大きな外側で作者の枠組みがあり、
    全てが誰かの創作なのだから
    どんな仕掛けがあろうとも作者の用意した世界なのだけど
    最後の最後に、それもあのような場を使い、
    これまで読み進めて、没頭していた世界が
    一瞬にしてグニャリとゆがんでしまい、
    あらゆる人、モノが違った一面、解釈を見せ始め
    不確実で幻想的な世界に入ってしまう。
    何が、誰が、どの部分が物語上の真実で虚構なのか。
    確実なのは美へのあくなき追及。
    美のために差し出されるいけにえ、犠牲になるもの、
    純粋で醜くもある欲望。
    今まで見ていたはずの世界の真実とともに
    張り巡らされた技巧を解き明かす

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    2016年11月27日
  • 少女外道

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    皆川博子の短編集。

    頁数は文庫本で250強と少ないが、中身は圧倒的に濃い。

    どの編も戦時中の少女の体験が描かれるが、作者の経験が元になっているのだろうか。

    変幻自在の作者の、文学の香りが非常に強い作品。

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    2016年10月09日
  • 蝶

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    ネタバレ

    8作の短編集。太平洋戦争前から戦後直後くらいまでの時代の話です。
    子供の目から見た、大人の世界。
    変わってしまった世の中に復員してきた男。
    支配される女性。
    世の不条理さというものに押しつぶされそうな、いや、押しつぶされる人々の話なのかな。
    その不条理さを、それぞれ受け止められない者、受け流して行く者それぞれかもしれないけれど。


    好きとか嫌いとかそういう次元は超えてしまったと思われるような小説でした。
    言葉の強さというか、異次元の世界へ引きずりこまれたというか、何かの力に翻弄されて読み切ってしまいました。
    固い単語や文章で書かれていて、強烈な印象とともに、詩や歌が絡んでくるせいか、頭の中で

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    2016年08月23日
  • 水底の祭り

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    『水底の祭り』
    M**湖より屍鑞があがった。
    新宿のバーに勤めるわたしは、ママのミツエと常連客の森戸が奇妙な動揺を示すのを目の当たりにする。
    森戸に好意を寄せる私は、二人の動揺を沈めようと思わぬ行動を取るのだが、二人の間に隠された昏い経験を垣間見ることになる……。

    『牡鹿の首』
    動物の剥製師である麻緒は、時々出会い専門のホテルで男性を買う。
    そのホテルで出会った男娼の少年が訳ありの怪我をしているのをかばい、知り合いのハンターに助けを求める。
    彼女に好意を持つその男は代償行為を要求、彼女は呑まざるを得ない。
    そして少年との刹那的な暮らしが始まる。

    『紅い弔旗』
    六年間、小

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    2016年07月14日
  • 薔薇密室

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    美しいバラの花と腐乱した死臭、
    生きた精液がかおるような妖しい序盤の物語から一転、
    謎の語り手の物語に。
    そして、語り手は少女に移り。
    物語は視点を変えながら、事実か創作か幻覚か夢想か
    あやふやになる記憶と現実が、ミステリーの騙しの
    ためではなく、この物語の世界として溶け合い
    一気にラストまで読み手を導いていく。
    そして、それまでの世界を一気に転換してしまう
    ような最後の最後。人が現実の中で
    爽やかな愛を胸に力強く立ち上がる姿よ。

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    2016年06月13日