皆川博子のレビュー一覧

  • 夜のアポロン

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    日下三蔵氏の執念が生んだ短編集、とでも言うべきか、版元を超えてタッグが組まれ、「夜のリフレーン」と対を成す一冊。
    いわゆる幻想小説にカテゴライズされる作品が主だった「夜のリフレーン」と異なり、少しヴォリュームがあるミステリーを中心に収められている。
    とは言いつつ幻想的なテイストが横溢するものがあったり、古典芸能の裏側を描いた作品があったりと、中世~近代欧州を舞台とする長編群とはまた趣を異にしながら、実に皆川博子氏らしい物語が並んでいる。
    個人的には、小粋なタッチで遊び心が満載の「ほたる式部秘抄」が秀逸で、強く印象に残った。

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    2019年06月17日
  • 夜のアポロン

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    短編集16編
    忘れられていた原稿がみごとに蘇って読むことができた幸い.どれも素晴らしく皆川ワールドである.特に表題作,兎狩り,死化粧が好きだった.ほたる式部秘抄は軽妙でシャレっ気があって結末が明るくこういうのもいい.

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    2019年06月17日
  • 夜のアポロン

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    主に1980代に書かれた短編を収めた短編集。

    「夜のリフレーン」と対になっているらしい。

    昭和の香り高く、近年の著者の作風とはやや違い濃厚で湿り気が強く、「性」と「死」がモチーフとなっている。

    最後に納められた一編は最近のもので、他の編との対比が面白い。

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    2019年05月18日
  • 夜のアポロン

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    ネタバレ

    初期作品群が中心の未単行本化の短編を集めた第二弾。こちらはより「こういうのも書いておられたんだ」というまっすぐなミステリや官能色強めなものもあり、やはり作者の懐の広さを感じるものばかりでした。
    表題作や「致死量の夢」、「魔笛」あたりが艶めいていて個人的にはとても好きです。幻想混じりというより、人間の業の深さをえぐった話が多いように思います。「死化粧」は謎解きとしての物語の面白さのほかに、飄々とした語り口が良い意味で「らしくなく」、凄く新鮮でした。
    近作の技巧と知識と幻惑さが極まった長編作品はもちろん大好きですが、こういった過去作品があってそれらがあるのだと思うと、大袈裟のようですが確かな「歴史

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    2019年05月09日
  • 少女外道

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    物語の時代背景は、戦前から戦後。軍国主義の風が吹き荒れる風潮の中で、おそらく女性はその地位を不当に貶められたであろう。「少女」ともなればなおさらのこと。虐げられる存在たる少女は、一方で「女」としての独特の厳格な道徳性をも求められる。時代の波の中で、何気ない日常を送りながら、要求される「道」を少しばかり「外」れてしまう少女たちの物語が、本書には七篇収められている。
    少女が日常生活の中で、おのれの心と周囲との小さな齟齬に気づいたとき、彼女の心は道を外れ始める。皆川博子はそんな少女の心情とそれとは無関係に流れてゆく日常生活を静謐に描く。文体のせいか、行間からはほのかな官能性が漂う。道を外れた少女の心

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    2019年05月08日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    死体の謎を解くお話。

    始めの方は屍者の帝国みたいな雰囲気でした。
    皆川さんの本、今まで読んだのは割と難しい言葉が出てくるのが多いイメージだったので、身構えていましたがこれはそんなことなかったです。
    ダニエル先生と5人の助手が和気藹々としていて、とても良いなーと思っていました。
    だからなーなんか最後そうなるのか〜
    からの…という感じでした。
    読み終わってみると、あれ伏線だったんだなというのがいくつも…全く気づきませんでした。

    ここで感想を書こうと探していたら、似たような装丁の本が…続編!?
    そちらも是非読みたいです。

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    2019年01月05日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    前作『開かせていただき光栄です』の続編。
    続編というよりも18世紀のイギリスを舞台にした
    上・下の作品といっても良いぐらい前作と今作の絡みはとても濃厚。
    こちらはホガースの「放蕩者一代記」の一枚
    「べトラム精神病院」で描かれた、
    実際に現存する王立ベスレム病院を軸に描いている。
    悲惨で残酷でもあり、しかしにウィットに富んだ会話も楽しく
    、皆川博子氏の文体にいつも惹き込まれてしまう。
    エドとアル、そして慈愛に満ちあふれている人たちに
    幸あれと願わずにはいられない。
    アルモニカ・アンジェリカ。

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    2018年12月03日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    皆川博子氏2作品目。
    18世紀の画家ホガースの「ジン横丁」そのままの、
    ディケンズの「オリバー・ツイスト」を彷彿とさせる世界が広がっていく。
    素晴らしい。あの時代を目の当たりにしたのではと、
    まるで翻訳本の趣き。
    ミステリーとしても巧く絡めてあり、ワクワクして読んだ。
    死者として生きると決めた2人の少年のその後は、
    今読み始めた『アルモニカ・ディアボリカ』で語られる。
    この美しい文体を操られる皆川博子氏の世界観に魅力される。

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    2018年12月03日
  • トマト・ゲーム

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    壁に向かってオートバイで全力疾走する度胸試しのレース、トマト・ゲーム。22年ぶりに再会した男女は若者を唆してゲームに駆り立て、残酷な賭けを始める。背後には封印された過去の悲劇が……第70回直木賞候補作の表題作をはじめ、少年院帰りの弟の部屋を盗聴したことが姉を驚愕の犯罪に巻き込む「獣舎のスキャット」等、ヒリヒリするような青春の愛と狂気が交錯する全8篇収録。恐怖と奇想に彩られた、著者最初期の犯罪小説短篇集。(裏表紙)

    トマト・ゲーム
    アルカディアの夏
    獣舎のスキャット
    蜜の犬
    アイデースの館
    遠い炎
    花冠と氷の剣
    漕げよマイケル

    今まで皆川さんの初期の作品は幻想と狂気が薄めだと思っていたのです

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    2018年11月19日
  • 少女外道

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    苦しみや痛みに惹かれる傾向を「外道」というのが 迫力がある。出征する恋人のために手まりの中に自らの小指を入れる。後年それが 手まりの中で からころと音を立て・・・
    そんな 血の匂いを感じながらも美しい世界。
    古風な言い回しがとても美しい幻想的な小説でした

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    2018年08月27日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    名言をあげるスレ、みたいなのは割と好き。でもって本を読んでてそういうのがあると、まぁ気にするような、気にしないようなで、意外と忘れるんだよなぁ。でも今回はいろいろと名言が散りばめられていて、さりげなく名言を吐きたいというあなたにぴったり!なんである。
    「友情とは、誰かに小さい親切をしてやり、お返しに大きな親切を期待する契約である」と言ったのはモンテスキューだそうで。モンテスキューなんて20年くらいぶりで聞いたわ。何やったかは覚えてないけど。
    「自由を!と叫ぶ連中が僕の自由を阻害している」なんてなかなか良いね、好きよ。
    「風邪は、放っておけば一週間続くが、治療すれば七日間で治る」って、一休さんか

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    2018年07月03日
  • 少女外道

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    『少女』『外道』『敗戦』なんかが全体に共通して絡んでくる短編集。

    皆川さんの本はなんと感想を言っていいのか…言葉にするのが難しい。
    とにかくこの雰囲気と文章の美しさが好き。
    ラストのしめかたもいつもすごく素敵だと思う。

    今回特に好きだったのは、『少女外道』『有翼日輪』『標本箱』かな。

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    2018年06月05日
  • 死の泉

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    『「ドイツは豊かになった」ヴェッセルマンはつづけた。「だが、その代償に、内に向かう目をドイツ人は失った。人は、重く、下へと成長し、根を地底に広げ、大地の水を吸い、そして思考は鳥のようにはばたき光につつまれる。しかし、不安という糸が、鳥の脚を地上の風につなぐ。そのようにして、我々ドイツ人は思索のなかに生きてきた。」

    「思索の結果が、戦争でしたよ。」』

    ナチスドイツの思想とそれを体現したクラウスの狂気。妻となったマルガレーテの発狂。その狂気に育てられた子供たち、フランツ、エーリヒ、ミヒャエルそれぞれの悲劇。
    緊張感の途切れない気持ちの悪い恐ろしい作品。

    発狂したマルガレーテの手記がうまく使わ

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    2018年01月14日
  • みだら英泉

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    絵師として花開きたいともがく英泉の葛藤は乾いている。
    乾き過ぎて、ちょっとした摩擦で燃え上がりそうなほど。

    けれど、彼を取り巻く人の情や思惑はとにかく重く湿っている。
    そしてその情が英泉の筆に乗り移り、紙を湿らせ、絵を描かせる。

    春画にはあまり描かれないという吉原の遊女を好んで描いた渓斎英泉。
    彼が筆を執り、成功、そして没するまでを書いた「みだら英泉」。

    有名一門との確執、春画が弾圧される時勢、実在する絵師たちと英泉の交流……
    あたかも江戸の町並みを見てきたかのような、匂いすら立ち上る筆致は、確かに情緒あふれる時代小説のものだ。
    しかし、あくまでも話は英泉と妹たちを中心とした生臭くも艶っ

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    2017年12月01日
  • 妖恋

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    美・情・狂
    文章や人物の表に現れる美しさ
    その底や背後にある情念
    そして怪談的幻想的ともいえるが
    一線を踏み越えてしまった狂気の世界
    それに甘く妖しく浸る。
    現代から描くお江戸を舞台に大人の怪談とも。

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    2017年06月07日
  • 少年十字軍

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    青少年向けのため、いつもの皆川先生らしくないかもね(笑… 叙述トリックもない ドロドロな展開もない、芳醇な描写や余韻たっぷりのエンディングが相変わらずいつもの皆川先生です。昔十字軍東征の映画を観たが、今回小説のベースの少年十字軍のお話は知らなかった。今度古屋先生の漫画も読もうかな〜

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    2017年05月19日
  • 猫舌男爵

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    表題作があって、解説がそうなら
    各作品のなかで現れる現実と幻想の境は
    この本を読みおわった時点で、さらにあいまいで
    ふとした瞬間にグニャリと歪んでしまいかねない。

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    2017年03月20日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    法のあり方、生まれながらに押し付けられる不条理、そしてその中でもがき続ける判事。
    大団円とならないラストが切ないが、それでも救われる人がいることを願いたい。

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    2017年02月10日
  • 花闇

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    絢爛と酸鼻。
    この両極端をここまで描出できる作家。見事としか言いようがない。
    豪華な錦糸を縦横に編み込んだような文章からは、腐臭すら漂う。

    実在した歌舞伎役者澤村田之助の存在感の、なんと艶やかで無残なこと。
    傲慢で鼻持ちならない言動ながら、まさに「役者」の業を煮出して全身に染め抜いた、天賦の才。
    田之助はその美貌すら、狂って感じられる。

    三すじの、淡々としながら、けれどほのかに覗く残酷がなんともリアル。
    全編に漂う淫猥さが、あまりに惨い田之助の悲劇すら彩ってしまう。

    この激しい生き様そのものが、豪華な芝居だったのではないか……
    夜明けに見た悪い夢のよう。美しい。

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    2017年01月20日
  • 少女外道

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    久々に“純文学”を読んだ、と思った。
    著者が70代の後半頃に書いたという作品集。エンターテインメント性は感じないけれど、そういう枠とは別の意味でとても面白いというか、興味深い。
    戦中、そして戦争の前後の昭和の時代の物語が多くを占めていて、そこはかとなくエロスとタナトスが漂っている。

    物語の中身や流れというよりは読んだときの感覚を大事にしたくなるような作品ばかりで、だから今回は敢えて詳しい中身には触れないでおく。
    時系列の飛び方に特徴がある物語もあって、きちんと読んでいないとその繋がりを見落としてしまう可能性もあるのだけど、分かるとその繋がり方に感心してしまう。

    死というものが常に漂うから、

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    2017年01月19日