【感想・ネタバレ】水底の祭りのレビュー

あらすじ

M**湖の湖底は水死者の集う墓場。不意の嵐にくつがえった釣船から放り出された漁師。自殺者。数百年昔、合戦に敗れ、湖水に追い落とされた落武者……。そして湖の底から屍蝋と化した水死体があがった──疎開中、姉を不幸な惨劇に陥れた湖を訪れる、弟の過去への旅路を描く表題作はじめ、剥製師の世界をあつかった「牡鹿の首」、ショービジネスに背を向けた演劇に賭けながら揺れ動く繊細な感情のゆくえを描写した「赤い弔旗」ほか二篇をおさめた傑作短篇集。

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Posted by ブクログ

『水底の祭り』
M**湖より屍鑞があがった。
新宿のバーに勤めるわたしは、ママのミツエと常連客の森戸が奇妙な動揺を示すのを目の当たりにする。
森戸に好意を寄せる私は、二人の動揺を沈めようと思わぬ行動を取るのだが、二人の間に隠された昏い経験を垣間見ることになる……。

『牡鹿の首』
動物の剥製師である麻緒は、時々出会い専門のホテルで男性を買う。
そのホテルで出会った男娼の少年が訳ありの怪我をしているのをかばい、知り合いのハンターに助けを求める。
彼女に好意を持つその男は代償行為を要求、彼女は呑まざるを得ない。
そして少年との刹那的な暮らしが始まる。

『紅い弔旗』
六年間、小さなロック・ミュージカルを主催してきた三人、滝田、寒河江、そして奈々。
滝田の才能と奈々の切り回しによって維持してきた劇団が、寒河江の古びつつある感覚と滝田の静かな造反によって崩壊しつつあった。
劇団入りした弓雄という少年が更にそこに波紋を投げかける……。

『鏡の国への招待』
もうすぐ五十に手が届く私は、助教としてバレー研究所を主催する梓野明子に尽くしてきた。
その明子は三ヶ月前に世を去り、私は自分の人生を持て余す。
女としての魅力を失いつつある私は、人生にそして将来に焦りを覚え、もうすぐ取り壊しの決まっている研究所跡を夜中に訪れる。

『鎖と罠』
ロンドン。
地元民が集う歓楽街に姿を見せる日本人女性。
観光客相手に冴えないガイドを務める男。
エリート然とした現地駐在の商社マン。
夫婦、兄弟という見えない鎖で繋がった彼らが、ある晩アパートで見える時、
それまで維持してきた微妙な関係の内実が赤裸々に明かされる……。

とあるブログより。

博子さんの初期短編集とのことだが、その老成ぶりったらない。
共通するのは、戦争の傷跡と、女性の性欲。
女性の性については、彼女らのある種の寂しさが性欲を高めている。
寂しさを醸造する彼女らの境遇、性格、仕事も……。

テクニック的には、「鎖と罠」が際立つくらいだが、
それをものともしない、博子さんのもつパッションが溢れ溢れた短編集。

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2016年07月14日

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