あらすじ
第12回本格ミステリ大賞受賞、そして本の雑誌増刊《おすすめ文庫王国2014》国内ミステリー部門第1位に輝いた『開かせていただき光栄です』の待望の続篇、ついに刊行! 前作のラストから5年後の1775年英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、オックスフォード郊外で天使のごとく美しい屍体が発見され、情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ〉と謎の暗号が。師匠を元気づけるには解剖が一番!と、アルたちはダニエルと共に現場に旅立つ。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。ユーモアとペーソスに満ちた絢爛な歴史ミステリ、オールスター・キャストで再度開幕!
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Posted by ブクログ
続編は肩透かしも多いけど、前作越え!
ナイジェルは死んだと見せかけて、本当は生きてるんじゃないかとおもったけど、そこは深読みしすぎた。が、出自を知るにつけ、彼には強かに生きてほしかった。ここでまたポーの一族に頭シフトさせると、アランポジションだから?!
事件のピースの繋がりかたが、現実はそんなにうまくいかないよね、とは思うけど、謎の開陳がスムーズで気持ちよくて、次をどんどん読みたくなる。
人物が生き生きとしていて、読んでいて物語にうんと惹き込まれる。
改めて、研究馬鹿のダニエル先生好きだな〜!
アルの大活躍も、ネイサンの成長もニマニマしながら読める!
Posted by ブクログ
最後のあの文章を読み終えたときのあの静かで哀しい、美しさすら思わせる脱力感。
エドと一緒に生きたくても、理解されたくてもそれは無理だと分かっていても最後の最後にそれを望まずにはいられなかったナイジェルが切ない。ナイジェルは…天使だよ……
『U(ウー)』文庫版の特典往復書簡にあった続篇のお話、期待してやみません。というかここまでの量のストーリーで、しかも続篇なのに更に面白いって一体どういうことなの
皆川先生、健康に、末永く執筆活動を(でも、無理なく)続けていってほしいものです
Posted by ブクログ
『開かせていただき光栄です』から5年後の物語。
ダニエル先生の解剖室は閉鎖し、エドとナイジェルが去った後、残された弟子たちは、盲目の判事ジョン・フィールディング氏の元で『ヒュー・アンド・クライ』という情報新聞の編集を任されていた。22歳になったネイサン・カレンや、アン・シャーリー・モアとの交流の中、それぞれが互いに負った心の傷をゆっくりと癒しながら生活していた。
そんな中に突然舞い込んだのは
「死体」と「謎」
・落下する天使を見た踏み車漕ぎの男。
・棺に入れられたナイジェル・ハートの遺体。
・胸に書かれた〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ!〉と
〈アルモニカ・ディアボリカ〉の文字。
・消えた恋人を探す女性と、洞窟の演奏会
・悪魔の楽器と言われた〈アルモニカ・ディアボリカ〉とは?
ナイジェル・ハートの死因を突き止めるべくして、サー・ジョン率いるアル、クラレンス、ベンの3人、アンやゴードン、ネイサンも加わって謎の究明に奔走する。
いくつもの謎を1つずつ紐解き、証言を繋ぎ合わせて辿っていくうちに色々な謎が、すべて大きな真相へと繋がっていた…!
読みながら、作中の人物の相関図や謎について、サー・ジョンが語った事件の考察や、その他色々な言葉や地名をメモしていたらA4コピー用紙4枚分にも及ぶ量になって自分でもびっくり…。もうすぐ1年が終わる年の瀬に、こんなにも濃密な作品を読み終えることができて良かった…。
*
事件を追う一方、各章の間に挟められるナイジェルが綴った、エドへの手記。ナイジェルが生まれ育った環境、そこで出会った人々、凄惨な事件、生まれた感情、過去を振り返ることで見えてくる“本当の”ナイジェルの素顔。後半は、エドに対して、懸命に問いかけるようにして書かれていく。
ラストの2行は、本作を通して何よりも彼が伝えたかった言葉。その言葉の重みや、感情、愛しさなどを含ませるための458ページだった。
死者として生きる。そう決心して解剖室を去り、次第にすれ違い、別れてしまった2人。だけれども2人とも懸命に生きて、過去を振り返りながら自分を変え、再び歩み寄ろうとしていた。
再会するための儀式、自分は“ここにいる”と伝えるためのメッセージが、永遠の別れになってしまったのが何とも悲しい。
Posted by ブクログ
いやぁ~面白かった!
第2作は、前作を超えられないと思っていたけど、これはすごい。
そういう生い立ちだったのか……。
だとしたら、ほんとに幸せに暮らせていたのは、ダニエル先生の元にいて、エドと一緒にいられた間だけだったのかな。
切ない。
Posted by ブクログ
『開かせていただき光栄です』から5年経過後の続編。
あの事件後解剖教室は解散、エド、ナイジェルは行方不明のまま。
みんなの状況も少しずつ変わっている。
何とも切ない展開だった…
事件は一応の決着を見たけれど、失ったものは大きいし取り戻すことも出来ない。
願わくはダニエル先生の下、無事に戻ったエドとクラレンス含め、もう一度和気藹々と解剖にいそしむ姿が見られたらと思うけれど(何とかベイカーさんの幸せになった姿も)、そんな続編を望むのは贅沢なんでしょうねぇ…
アンを苦手にしていたネイサンが、話が進むにつれて何気に懐いて来てるのがちょっとホッとしたところ。
Posted by ブクログ
『開かせていただき光栄です』の続編なら
読まずにはおれない。
「ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ」と謎の文句
前作同様に序盤から引き込まれました。
終盤の謎解きがちょっとバタバタあわせにいったみたいに
感じたので残念、でも読み応え十分。
前作と合わせて★★★★★五つ星、楽しかった。
Posted by ブクログ
切なかった…
『開かせていただき光栄です』の続編。
前作でダニエル・バートンの元を去ったエドとナイジェルの顛末書。
ナイジェルの悲しい過去は途中読み進めるのが辛かった。
サー・ジョンが法と心の正義の狭間で苦しむのがおいたわしい。
登場人物が多くの意味で誰かに献身してるからか、身を切るように切なくも優しい物語という印象。
前作同様、切なくも希望はある終わり方。
けれど前作ほど晴ればれできないのは、時の流れによって少年たちはもう青年になってしまい、私もまた年を経たからかもしれない。
Posted by ブクログ
最後の二行のためにある長編小説。
最後の二行だけで、ミステリーが切ない愛の物語になる。
皆川先生天才か。
人物の多さに覚えるのが大変でしたが、「それより読み進めたい」と思わせる謎に次ぐ謎。
しょっぱなは「ラピュタ」を思わせるファンタジー性に満ち溢れ、けれど陰惨な事件、衝撃の事実になだれ込む怒涛の展開。
奇妙な楽器を巡る事件、ナイジェルの過去が絡み合う……
構成も無駄がなく(大変入り組んではいるが)、これだけの人数、伏線を一人一人に役割を持たせ、ちゃんと収めているところが本当にスゴイ。
傑作だと思う。「開かせていただき光栄です」よりずっと読み応えがあった。
「開かせて~」から出ている登場人物たちにはよりいっそうの愛しさを感じるし、悲しい恋人たち、患者たちの行く末にもそれぞれハラハラせずにはいられない。
そして何より、エドが出てくるボリュームの絶妙さ。
あれしか出ないから、読者は彼の悲しみ、嘆き、怒りを想像するしかない。
彼がナイジェルと過ごした時間、彼を愛した時間を想像するしかないのだ。
天・才・か(二度目)
しかもナイジェルは手紙でしか登場しない。
彼が残した痕跡でしか登場しない(エドの絵とか。グハッ萌える)。
そしてラスト二行である。
私はリアルに「ひゃあああああ」と声が出た。
あの二行。あんな切ない愛があろうか?????
たった二行でBLは完成するという見本でもある!!!
皆川先生天才!!(断言)
もう、読者は皆川マジックに翻弄されるしかないのだ……!
久々に「読みたいとにかく読みたい」と思わせる本だった。
ハ~。至福。先生ありがとう;;
Posted by ブクログ
またバートンズのみんなに会えて喜んでたらナイジェルとデニス・アボットが知らないうちに死んでてショック……
ナイジェルの生い立ちが壮絶。やっぱり環境が人間に与える影響は大きいのか……
患者を見世物にしてお金をとってたベツレヘム精神病院が本当にあると知り戦慄。
虐待、生き埋め、死体。全体的にどろどろしていてグロテスクなのにどこか美しい。
ミステリとしては前作よりも少し詰めが甘い印象。
最後の一文が切ない。
Posted by ブクログ
エドワード・ターナー三部作の二作目。
一作目の「開かせていただき光栄です」が衝撃的な面白さだったのでこちらも早速読んでみた。
感想(前作含むネタバレあり)
前作は2012年本格ミステリ大賞を受賞している。
前作含めネタバレなしで読むのを強く強くお勧めするので、未読の場合はここで止まって欲しい。
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エドとナイジェルが消え、解剖教室の初期メンバーが解散して数年後の世界。
その他メンバー(アル、クラレンス、ベン)はダニエル先生の解剖教室を辞め、治安判事サー・ジョンの元で働いている。
ある日、サー・ジョンの元にお客がやってきた。彼の依頼は、とある領地内で見つかった死体の情報を集めてほしいというものだった。死体の胸には謎の文言が刻まれていたが、皆目見当がつかないという。
死体の謎を探るため、アル達は問題の領地へ向かう。そしてそこでみたものは、かつての仲間であるナイジェル・ハートの死体だった…
前作にて影の支配者だったナイジェルがまさかの死亡。今回の事件を紐解くにつれ、ナイジェルの過去が浮かび上がってくるストーリー。
前回の事件の後、エドとナイジェルは別々に生きていたらしく、その後過去のしがらみによってナイジェルが死亡。
今回もまた、エドが全てを被って復讐者となってしまった。
ナイジェルの過去がかなり悲惨。精神病棟育ちで普通を知らない彼が、普通を擬態して生きてきたことが明らかになり、前作の振る舞いも相まってその強かさに脱帽。
一作目ではエドの方が変わり者っぽかったけど、ナイジェルの闇にエドを引き摺り込んだ形だったのね…
ナイジェルもその自覚があって、自分はエドと対極にいる人間だと思ってた模様。
エドとナイジェルの関係はとても歪。共犯であり仲間であり恋人であり主従であるような。
ダニエル先生に対してもナイジェルに対しても、エドはどこまでも献身的で愛情深い。
故に自分を犠牲にするのが当然かのように振る舞うのが悲しい。幸せになってほしい…
最終的にエドはイギリスから去って新大陸に向かうんだけど、クラレンスが一緒に居てくれてまだ良かった。
今作品はキャラクターの過去を中心に描いてるからか、一作品目のような衝撃的ミステリ感は薄い。
とは言っても世界観や展開含めて流石の完成度なのは間違いない。
今まではサー・ジョン目線で語られることが多かったけど、最終作はイギリスを離れてるしどうなるんだろう。何はともあれエドが幸せになることを願う、、、、次回作も楽しみ!!
Posted by ブクログ
大好きなシリーズです!
失踪したエドたちが絡む殺人事件。
様々な人の思惑が重なり展開するストーリー。
やや複雑で一気読みするには事件の真相は私には難解でしたが、時代背景が丁寧に描写され、引き込まれます。
Posted by ブクログ
前作以上に真実に行き着くまでの壁が幾重にも張り巡らされているように感じた。また、前作の登場人物プラスαになるのは仕方ないが、かつ外国の名前というのもあって、読み進めるのに頭が疲れました。
ナイジェルの手記の最後の文を読んで、涙が出そうになりました。
Posted by ブクログ
法律があってないようなもので、公の警察もいない…イギリスにもすごい時代があったんだと、当時の人達は怖かっただろうなと思った。前作からの登場人物に加え、今作での事件が合わさり謎が謎を呼ぶ内容だった。そんなところとそんなところであの人とその人が繋がっているのかい…と頭がこんがらがるし、完全にハッピーなエンドではなく何となくモヤッとする感じに、この本らしさが現れているなぁと思いました。
Posted by ブクログ
『開かせていただき光栄です』の続編。またあのみんなに会えるという期待で読み始めた。その中身はあまりにも哀しくてつらい、ナイジェルの半生を辿る物語だった。
知っているようで全然知らない。ベドラム出身であることが判明した瞬間は鳥肌が立った。その内外で起きた非人道的な仕打ちに言葉を失う。目を背けたくなる描写の一つ一つに息を止めて嘆く。
美しいと感じたのはグラス・ハープ。この音色の表現が、私の記憶の中の音と符合して、耳に聞こえてくるようでうっとりとした。
腐敗を少し正し、殺人の罪を自ら負い、カップルは再出発、ベドラムからの解放、判事も元の通り仕事をする。ハッピーエンドだけれど失ったものは大きい。純粋に弟子たちのやり取りを楽しむ日々がもう訪れないことは確かだ。
ナイジェルは死者の世界で満足を得ただろうか。
Posted by ブクログ
物語的には伏線も全部綺麗に回収されて、すっきりさっぱりさすがの構成なんですが、登場人物たちはみんな翻弄されまくっていて辛い。
判事と一緒にモヤっとしてしまう。
法が弱者を守ってくれない中で、エドが出した最善の答えだったのだろうけど。
エドとナイジェルの間にあったこととか、お互いにどう思っていたのかとか、言葉にされない部分がもどかしい。エドはあの絵をどうしたんだろう…
Posted by ブクログ
『開かせていただき光栄です』の続編。
今回も死体の謎だけど、解剖とかはあんまりなし。
ファンタジー的な、宗教色あるものかと思ったけどそうでもない。
サー・ジョンたちとバートンズがわちゃわちゃしてるのは本当に好き。
伏線は全く見破れず。切ないラストでした。
Posted by ブクログ
前作『開かせていただき光栄です』の続編。
続編というよりも18世紀のイギリスを舞台にした
上・下の作品といっても良いぐらい前作と今作の絡みはとても濃厚。
こちらはホガースの「放蕩者一代記」の一枚
「べトラム精神病院」で描かれた、
実際に現存する王立ベスレム病院を軸に描いている。
悲惨で残酷でもあり、しかしにウィットに富んだ会話も楽しく
、皆川博子氏の文体にいつも惹き込まれてしまう。
エドとアル、そして慈愛に満ちあふれている人たちに
幸あれと願わずにはいられない。
アルモニカ・アンジェリカ。
Posted by ブクログ
法のあり方、生まれながらに押し付けられる不条理、そしてその中でもがき続ける判事。
大団円とならないラストが切ないが、それでも救われる人がいることを願いたい。
Posted by ブクログ
開かせていただき光栄ですの続編ということだが油断ならない。容赦ない。
時代背景的にイギリスの全盛期だと思うのだが、何だろうこの闇の濃さは。
面白い。
Posted by ブクログ
登場人物が結構多くて、名前もごっちゃになって読むのが少し大変でした。
前作の、ナイジェルがまさかの姿になって現れて、彼の悲惨な過去と別の事件が少しづつ明らかになっていきます。ちょっと想像を斜めいってる過去でした。
今回はアルが結構重要な役割を務め、彼が一番正義をしっかり持っていて彼がでてくると結構安心しました。
本当昔のイギリスは腐ってるな、と判事のもどかしさがよくわかる。
もちろんエドもでてきます。
彼も彼なりの正義を前回同様持っていて潔かったと思う。
それにしても残酷だなぁ。
新大陸に渡ったみんなは、そして最後の最後で助け出されたベイカーさんは幸せになれるのかなぁ?
呼ぶにはなんかつぎはぎな感じがするけど、
Posted by ブクログ
『開かせていただき光栄です』続編。前作のネタバレ要素を含むので、順番に読むことをお薦めする。
前作から5年後、胸に奇妙な暗号が刻まれた屍体が発見され、盲目の判事サー・ジョンがその謎に挑む。サー・ジョンの捜査状況とナイジェルの手記が交互に語られ、徐々に真相が明らかになっていく。
今回登場人物が多く、しかもナイジェルの手記に出てくる過去の話や、15年前の事件との関わりなど、時系列と人間関係の整理が難しかった。そして二転三転する事態に、またしてもやられてしまった。
謎の多かったナイジェルの過去が明らかになり、エドも少しだけ登場。面白いんだけど、前作以上に哀しいお話だった。
Posted by ブクログ
陰鬱な展開が18世紀ロンドンの雰囲気と絶妙なアルモニカ。大作すぎて登場人物が覚えきれなかったのと、前作『開かせて〜』がネタバレで2作目から読んでしまって勿体なかったのが心残り。他も探してみようかな。
Posted by ブクログ
続編ということだが、登場人物は重なるものの連続性はあまり感じられない。今作は非常に辛い展開であり、ラストも希望というよりさらなる悲劇への序章に感じられてしまう。
Posted by ブクログ
終盤、かなり息切れしてしまった。
光の速さで畳まれまくる風呂敷に着いていくのに必死。
まあこれは私の頭が悪いってだけの話なのですが、登場人物が元々多い上、ビリー、ブルース、ブッチャーとBから始まる名前のやたらと多いこと(撹乱?)そして真実があーでこーだもんで脳内大混乱スマッシュバートンズ。
大きく3つ(4つか?)のクエスチョンを同時に追っていくのでそのあたり脳のリソースの配分を間違うと死ぬ。
そんなわけで話は複雑濃厚で脳の使い甲斐があり非常に読み応えがある。
ただ、ミステリーではあると思うけど推理小説ではない、かな。
終盤てんてこまいになったのは謎の解明場面が語りで終わってしまったからかも。
セリフの多さが功を奏して読みやすいし、前作に引き続きガイ・リッチーに監督して欲しいわあなんて思えるけど、
ちょっとスタート地点から哀しみが付きまとって、前作みたいにエキサイトできませんでした。。
Posted by ブクログ
『開かせていただき光栄です』続編。
外科医で解剖学の先駆者、ダニエル・バートンの解剖学教室を舞台に起きた連続殺人事件から5年。
愛弟子のエドとナイジェルが出奔し、解剖学教室は閉鎖中。元弟子たちもそれぞれの生活を送りながらも、変わらず先生を敬愛している。
ある日、盲目の治安判事として知られるジョン・フィールディング卿の元に、胸に暗号を刻まれた“天使の屍体”の情報が舞い込む。
調査のため、そしてバートン先生に屍体を提供すべく現地に向かった元弟子たちが発見したのは、消息不明になっていたナイジェルの屍体だった…
前作のラストのほろ苦さを思い出しながら読み始めたら、登場人物紹介リストの筆頭は「ジョン・フィールディング」となっていて、軽くびっくり。
「バートン先生と愛すべき弟子たち」のシリーズとばかり思っていたんだけど、実は「盲目の判事ジョンと男装の令嬢アン」シリーズだったのかぁ。
またまた屍体が増えたり消えたり、暗号に導かれてナイジェルの過去や、幻の楽器にまつわる悲劇、過去のスキャンダル…と、複雑に物語は交錯。
登場人物が多すぎる…!
そして、前作のようにクスッと笑える場面がほとんどなく、腐敗しきった権力者たちがさらにおぞましく、何人もの悲劇がただ重く、やるせない。
もうさすがに続編はない…んでしょうね。
バートン先生、さびしいねぇ。
Posted by ブクログ
本書は「開かせていただき光栄です」の続編だ。
18世紀の英国の空気を写し取ったような、退廃的な空気と不思議にお茶目な空気が今回も満載である。
解剖医ダニエルの弟子、ベンやクラレンス、ネイサンらは盲目の判事ジョン・フィールディングが出資する新聞を作成していた。そこに、身元不明の屍体の情報を求める広告を掲載したいという依頼が舞い込む。屍体にはあるメッセージが書かれており、判事の捜査のためにその謎を追い求めていくうち、前作で行方が分からなくなったダニエルの弟子エドとナイジェルの謎につながって行く…。
前回に引き続きのぐいぐい持っていかれる内容はさすが。
時代背景を綿密に調べ上げて書かれているので、世界観にどっぷりつかるのが楽しい作品です。出てくるジョークも、まさに「あ、イギリスっぽい!」と思う。(知り合いいませんが…)
でも正直最終盤では「いつのまに?」という急展開に正直少し置いていかれた感じがある。描写も凄惨なものが多く、(前作で大丈夫ならおそらく平気でしょうが)苦手な方は想像するのが恐ろしいと思います。
やはり前作と比べてしまうので、星は3つです。
おまけの付録は今回も面白いです。
Posted by ブクログ
*ロンドン好きに
*一気読み向け
*ただし必ず前作を読んでから!
前作同様、18世紀英国のディテールが楽しい。捜査の主役が明確にサー・ジョンに置かれ、各種証言を信頼しきれない(全てが見えない)伏線まみれのどきどき感再び。ミステリとしてはサー・ジョンの勘と想像力にちょっと頼りすぎですが、読み物として十分面白いです。ただ、関係者が多く少々複雑なので、ちょこちょこ読みしてると筋がわからなくなる危険あり。私としては、愛すべきダニエル先生にもっと登場してほしかった。
以下ネタバレ気味
サー・ジョンの法の執行者としての苦悩は、彼のキャラを成す重要な点ではあるが、作品の持つ、会話の軽妙さ、ストーリーの痛快さを湿っぽくしてしまっている。作中でもチラリと触れられているが、舞台がもし江戸時代の日本だったら、ストーリーはそのままにもっとカラリとした仕上がりになっただろう。でも、作者は捜査組織や鑑識、検死技術の草創期という舞台背景を大事にしているのだろうから、やむを得ないのかな。
Posted by ブクログ
プロットそのものがかなり入り組み、相当複雑な構造になっているのだが、それを齟齬なくまとめ上げているのはさすがだと思う。
ただ、通読して感じるのが、なんだかこれまでの皆川作品とは少し違う、という漠とした心地。
二昔前のロールプレイングゲームのように、極めて限定的な細い筋の上を、辻褄を合わせるために辿らされているかのような、とでも表現すればいいのだろうか。
登場人物のことごとくがストーリーにバチッとリンクしていく様に、いつものような気持ちよさの代わりにちょっとした強引さというか、お仕着せのご都合主義に近いものを感じてしまった。
「開かせていただき光栄です」の世界が再び展開されていることについては素直にワクワクするし、何より前作で感じた"ナイジェルのバックグラウンドが結局明かされなかったな…"という私の疑問を氷解させてくれ、おそらくは「開かせて…」を書く時に既に続編の構想も存在していたであろうことが窺える。
年月を経て、バートン先生の弟子たちがそれぞれ進むべき道に分かれていくことには、一抹の寂しさを覚える。
いずれにせよ、もう少し紙幅を費やせばさらに収まりのよい作品になったのではないだろうか。
若干収斂を急いでいるように感じられたのも、雑な印象を受けた一因だと思う。
これまで皆川博子氏の作品にはおしなべて高評価の私だが、泣いて馬謖を斬る心境で、星3つ。