皆川博子のレビュー一覧

  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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     時は十八世紀のロンドン。雑多にまみれたイギリスの片隅で起こった殺人事件、その原因を突き詰めていく作品です。
     体の切り貼りだとか、心情だとか、登場人物たちには良い意味で感情移入できず(みな、たいへん、自分勝手)ゾワゾワしました。

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    2016年04月06日
  • 猫舌男爵

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    何処の世界の、何処の時代の物語か見当もつかない摩訶不思議な物語5篇と解説を含めた短編集。 表題作を除けば、真面目な物語な筈なんだけれどレトリックに翻弄させられながら「読まされた」感の読後の物語集。 猫舌男爵の本当にありそうで絶対なさそうな話は秀逸。

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    2016年01月11日
  • トマト・ゲーム

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    ネタバレ

    「トマト・ゲーム」
    真っ赤なトマトになっちゃいな式のバイク乗り。

    「アルカディアの夏」

    「獣舎のスキャット」
    姉が弟を見る眼の異様さを裏打ちするのは、何か。
    弟からの意趣返しが凄まじい。

    「蜜の犬」
    強者と弱者の関係が引っくり返る、しかも比較的ピュアな少年によって。

    「アイデースの館」
    アングラ演劇崩れの青年が作ったポルノムービーの、男たちが仮面をつけている。
    仮面の製作者は誰か。
    過去にぐいっとズームがずれる感覚。

    「遠い炎」
    家政婦が旧知の人物だったことで座が奪われていく。
    ちょっと似た話を映画で見たことがある。

    「花冠と氷の剣」
    これまたロマンチックな題名。
    贅指の青年に惹か

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    2015年08月20日
  • トマト・ゲーム

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    皆川博子の初期作品集、復刻発売。
    帯、あとがきの日下氏の「いかに初期から完成されていた作家かわかる」という表現が的を射ていると思う。
    比較的淡々とした書き口なのに、ことごとく狂気や不穏さを感じとれるほど、文章・表現力は高い。
    自分の好みより文学性が強めであるが、折に触れて他作も読んでいきたい。
    3+

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    2015年08月19日
  • トマト・ゲーム

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    ネタバレ

    短編8作。
    うっとりするくらいの狂気。
    恐ろしいほど美しいセンテンスに、じわじわと感覚が麻痺していく。

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    2015年07月22日
  • きっと、夢にみる 競作集 <怪談実話系>

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    10人による、怖い話。

    題名通り、夢で見たり、白昼夢だったり。
    うっかり思い出してしまわないためにも
    日が高いうちに読んだ方がいいかもしれません。
    いや、思い出すような読み方をしなければ大丈夫?

    ぎょっとする終わりなのは、そらみみ。
    これが現実なのか、あちらが現実なのか、と
    思わせるような最後の一言。
    非常に混乱させられます。

    目的だった、辻村さんは…子供のせいか
    やたら無邪気に怖い。
    世の中、知らない方が…気がつかない方が
    幸せ、という選択もあると思われます!

    言ったら相手に移る夢、かと思っていたのは、琥珀。
    さすがにそれはない内容でしたが
    とり憑かれたと表現するのがぴったりな感じで

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    2015年07月06日
  • 薔薇忌

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    舞台に携わる人々を描いた短編7編。どれも妖しくて美しい幻想的な話ばかり。現代の話なのに、芝居を扱っているせいか、どこか時代がかった雰囲気をもつ不思議な世界観。
    少し硬めの文体なので、慣れるまでは入り込みにくいとこもあるけれど、それが却って幻想的な雰囲気を際立たせている。
    皆川作品は『開かせていただき光栄です』とその続編しか読んでないけど、この作品といい、気になってる『少年十字軍』といい、ジャンルの幅広さに驚く。

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    2015年07月01日
  • 少年十字軍

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    史実に基づいた物語。

    信頼と疑心、純粋と不純、真実と嘘などたくさんの人と思惑が交錯しながらエルサレムに向かい最終的に子供たちが出した結論に、1つの人生の歩みを見たような気分になった。

    修道士や騎士、神や悪魔などが作中や文面に出てくるものの思っていたほど宗教色の強さもファンタジーも感じなかった。それだけリアリティーのある安定した文章で、とても読みやすかった。

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    2015年06月17日
  • 少年十字軍

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    ネタバレ

    特別な少年と、粗野な少年の対比がよかった。
    本書の、聖職者は、聖職者(笑)表記でいいと思う。暮らしが良くなればその分、怠けたり欲が出るんだなと実感した。それが人間なんだけどさ。もちろん、真面目な聖職者もいるんだろうけど。

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    2015年06月09日
  • 伯林蝋人形館

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    1920年代のドイツ、ベルリンが舞台。混沌とした時代を生きる男女6人。それぞれの目線からなる幻想的な短編と、付随する作者略歴で構成されている。幻想と現実を行ったり来たりしながら徐々に全体像が見えてくるのが絶妙。内容は少し複雑だったが相変わらずの美しい文章と世界観だった。

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    2015年05月09日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    *ロンドン好きに
    *一気読み向け
    *ただし必ず前作を読んでから!

    前作同様、18世紀英国のディテールが楽しい。捜査の主役が明確にサー・ジョンに置かれ、各種証言を信頼しきれない(全てが見えない)伏線まみれのどきどき感再び。ミステリとしてはサー・ジョンの勘と想像力にちょっと頼りすぎですが、読み物として十分面白いです。ただ、関係者が多く少々複雑なので、ちょこちょこ読みしてると筋がわからなくなる危険あり。私としては、愛すべきダニエル先生にもっと登場してほしかった。

    以下ネタバレ気味

    サー・ジョンの法の執行者としての苦悩は、彼のキャラを成す重要な点ではあるが、作品の持つ、会話の軽妙さ、ストーリーの

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    2015年03月23日
  • 光源氏殺人事件

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    登場人物がなぁ…柏木と女三の宮だからああなのか、と分かるんだけどそれにしてもイラッとして仕方がないです(笑)

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    2015年03月17日
  • 倒立する塔の殺人

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     終戦間際の時代、ミッションスクールの図書室に置かれていた『倒立する塔の殺人』と書かれたノート。そのノートには手記と終わりのない小説が書かれている。その手記とノートが書き継がれていくうちに徐々にそのノートに秘められた企みが明らかになっていく。

     濃い世界観の小説はいろいろありますが、この作品の世界観はただ単に濃いだけでなく、甘く妖しい芳醇な他の作家さんではなかなか出せない独特の濃さがあるように思います。

     それは戦時下から終戦直後という時代設定や、キリスト教系で女子学生だけのミッションスクールという舞台設定に加えて、
    女子だけの世界だからこそ起こりうる愛憎を雰囲気たっぷりに描いているからだ

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    2014年12月29日
  • 少女外道

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    ネタバレ

    「少女外道」というタイトルとあらすじに惹かれて読みました。7話からなる短編集です。
    順番に感想を書きます。

    「少女外道」
    表題作です。
    あらすじには『(割愛)久緒は、あるとき怪我を負って苦悶する植木職人・葉次の姿を見て、自分が苦しみや傷に惹かれる「外道」であることを知る―。』とあります。
    期待して読んだのですが、わたしの想像していた「外道」とは少し違ったので、この本、ちょっとわたしの好みとずれてるんじゃないだろうか、大丈夫かなあと思いました。
    うまく言えませんが、本当に怪我をしてしまった人には不憫で惹かれないのです。
    そういう意味では主人公は本当に「外道」ですね(笑)

    「巻鶴トサカの一週間

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    2016年08月16日
  • 倒立する塔の殺人

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    作中作が盛り込まれた作品構造が複雑で
    理解しきれないまま終わってしまった。

    ミッションスクールと女学校の独特の雰囲気と
    その中で繰り広げられる濃密な人間関係は
    味わえた気がする。

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    2014年06月19日
  • 伯林蝋人形館

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    複数の視点が交錯しながら時が過ぎてゆく中に、退廃的というか耽美的というか、独特の世界が感じられた作品でした。

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    2014年05月13日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    ネタバレ

    プロットそのものがかなり入り組み、相当複雑な構造になっているのだが、それを齟齬なくまとめ上げているのはさすがだと思う。
    ただ、通読して感じるのが、なんだかこれまでの皆川作品とは少し違う、という漠とした心地。
    二昔前のロールプレイングゲームのように、極めて限定的な細い筋の上を、辻褄を合わせるために辿らされているかのような、とでも表現すればいいのだろうか。
    登場人物のことごとくがストーリーにバチッとリンクしていく様に、いつものような気持ちよさの代わりにちょっとした強引さというか、お仕着せのご都合主義に近いものを感じてしまった。

    「開かせていただき光栄です」の世界が再び展開されていることについては

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    2022年01月04日
  • 少女外道

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    現実と幻想と、夢と記憶と、彼岸と此岸と、それらのあわいをふわふわと漂っているみたいな感覚。
    そこに血の匂いが立ち込め、死の気配が漂い、すべてを見下ろしている「神」的なものの存在を感じさせる。
    やっぱり皆川博子さんの短編はすごい。

    「戦時中」の「少女」という視点が、すでに大きな仕掛けになっているのだと思う。
    慎ましく生きることを望まれ、純真無垢であることが当たり前だった少女の中に、芽生えてしまった「外道」性。それが少女たちの心の中に隠されて、沼の奥深くに沈められているうちに、ここまで大きな幻想に成長したのだろうか。
    それでいて語り手が、その「少女」自身ではなく、(神的な)第三者であったり、成長

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    2014年04月30日
  • 妖恋

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    1作約30頁という短篇でありながら、読者を世界観に浸らせさらに主人公の狂気的な恋情を恐怖や絶望だけでなく切なさと幸福に変える文章に感服。
    江戸なのに江戸ではない、江戸でないようで江戸の出来事。曖昧さ加減が絶妙で、そのなかで揺れ動く恋もまた絶妙で、この人にしか書けない文章だなと思った。
    挿絵がまたきれいで、作品の雰囲気にとてもあっている。

    濡れ千鳥が一番好き。

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    2014年04月20日
  • 恋紅

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    ずいぶん前の直木賞作品ですが読んでみました。
    江戸から明治にかけて吉原の遊郭の娘として生まれた主人公が役者にほれ、恋に身を投げこみ、不自由な暮らしながら旅役者の恋人として時を過ごしていく様があでやかに描かれていて十分に楽しめた。恋に一途になれるのって素晴らしいなあ。

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    2014年04月06日