皆川博子のレビュー一覧
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終盤、かなり息切れしてしまった。
光の速さで畳まれまくる風呂敷に着いていくのに必死。
まあこれは私の頭が悪いってだけの話なのですが、登場人物が元々多い上、ビリー、ブルース、ブッチャーとBから始まる名前のやたらと多いこと(撹乱?)そして真実があーでこーだもんで脳内大混乱スマッシュバートンズ。
大きく3つ(4つか?)のクエスチョンを同時に追っていくのでそのあたり脳のリソースの配分を間違うと死ぬ。
そんなわけで話は複雑濃厚で脳の使い甲斐があり非常に読み応えがある。
ただ、ミステリーではあると思うけど推理小説ではない、かな。
終盤てんてこまいになったのは謎の解明場面が語りで終わってしまったからかも。
セリフの多さが功を奏して読みやすいし、前作に引き続きガイ・リッチーに監督して欲しいわあなんて思えるけど、
ちょっとスタート地点から哀しみが付きまとって、前作みたいにエキサイトできませんでした。。 -
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江戸文化史版水滸伝という感じでビッグネームたちが集まり散じてゆく様が大変楽しかった。そこにフォーカスした方がおもしろいさくひんになったのではないか。とんぼの挫折をだらだら書いたり蔦屋の投獄を丁寧に追っかけたりって、正直、要る?筆者自身も要らないと判断した部分はばさっと省略する人のようだし、もっとエンタメ度を高められたのではないかという気がする。
写楽の活躍した10ヶ月間が非常にあっさりと描写され、ほとんど劇的な場面を交えずに終わるのは、ドライで小気味良かった。
とんぼのほのかな恋が悪所における世俗の垢に汚染されて終わってゆく様なども苦くてよい。結局捨てた女のところに出戻るという、希望がなくはないけどとても小さな結末は、愛おしくも切ない。 -
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ツイッターでも、優れた日本人同士を結婚させることを国家事業とすべき、という意見を某氏が披露していて炎上していたときに、話題にした人がいましたが、ナチのレーベンスボルン(命の泉計画)がこの本の前半の背景。超人種アーリアというナチの妄想によるアーリア増産計画で、征服した各国から金髪碧眼の子供を略奪し施設に集められる。また、金髪碧眼の若い女性とSS兵士たちのあいだに子供をもうけさせ出産させるといった、ホロコーストの対称にある優生思想計画。ホロコーストに関しては周知だけれど、レーベンスボルンに関してわたしが知ったのはつい数年前、映画『誰でもない女』で、たぶんそれを知る日本人は少ないのでは。本国ドイツやヨーロッパではどうなんだろうか。ノルウェーではレーベンスボルン施設が10か所設置されてナチ党員とノルウェー女性とのあいだに生まれた子は12000人とwikiにはある。ホロコーストにくらべて大きな声で語られることが少ないとすれば、それは多く存在するであろう「当事者たち」つまり生存するその子どもたちに、配慮するためなのかなって思う。自分が、もしくは自分の親が、ほんとうの父親がナチだったということ以外誰だかわからないとか、母親がその計画に利用されナチ党員と性交渉をし自分が産まれたとか、そういう人がヨーロッパにたくさんいて、それを公表できずにいたり、自分でもそれを知らずにいたりするのかもしれないと、想像してみる。
で、レーベンスボルンのことをもう少し知りたくて、それを題材にした本書を読んでみた。レーベンスボルンは表向きは、子どもを安心して産み育てられる施設となっていて、そこで未婚のまま出産するマルガリーテが前半の主人公で、彼女の一人称で物語が進む。後半からは様相が変わり、語り手も変化していく。ジャンルとしてはミステリーになるんでしょうか。作者皆川博子さんは初読ですが、知識豊富でびっくり。まるでドイツ人が書いているみたい。っていうか、そういう手法が取られていてそれはそれであとがき含めて工夫が凝らしてあるのだけれど。ナチがおこなっていた人体実験などの科学の知識を戦後アメリカがソ連に奪われないように秘密裏にSSの科学者たちをアメリカに招聘していたとか、ドイツ、ポーランド、オーストリアに続く土地の地下に広大な岩塩屈が存在し、かつてそこで強制労働させられていた囚人たちが地上を懐かしんで地下都市を岩塩で彫刻した跡が今でも残っているとか、知らなかったことを知れてよかった。物語としては、ちょっと少女漫画チックというか、こういう題材をこういうエンタテイメントにしてしまっていいのか、という、読んでいて罪悪感が残るというか、微妙でした。お話しそのものも、あまり面白くなくて、さいごの方は「誰が誰でもあまり興味ない。早く終われ」となってしまった。ざんねん。 -
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写楽の正体は?という問いは、本能寺の黒幕は?に匹敵する歴史のミステリーになっています。
さて、本作品は前世紀に映画化された作品の小説に当たります。映画に関しては辛うじて記憶の向こう側に有る様な無いようなですが、解説を観ると出演が真田広之、片岡鶴太郎、佐野史郎や葉月里緒奈などで思わず観てみたくなるような俳優陣です。
さて、本作品は写楽の正体を巡るミステリーではありません。
主人公の翻弄される奇異な運命を本筋に江戸の名プロデューサー蔦谷重三郎とその仲間達の物語となっております。どの様に写楽は現れ消えていったのか?と当時の江戸の風俗と文化を楽むような作品となっております。
それにしても蔦屋重三郎の下に集まった面々は凄い!
喜多川歌麿、山東京伝、十返舎一九、滝沢馬琴に葛飾北斎など教科書にも載るアーティスト達を発見し育て上げた実績は凄いの一言です。
現代で言うと少年ジャンプの編集者みたいなものかなぁと、ふと思いました。 -
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ネタバレ皆川博子さんの作品はおそらく初。あっさりめの文体で、18世紀ロンドンの政治腐敗、環境汚染、貧富の差などなどが、洗練された描写やエッジの効いた会話の応酬と共に効果的に描かれている。会話文の多さが目立つが、イギリスらしい皮肉の効いたやりとりが登場人物を魅力的にし、さらに必要最低限の描写を挟むことで、分厚い物語をテンポよく進行させている。現在と過去が交互に進行する仕掛けも、飽きさせず、読みやすくする仕掛けの一つかなと。ネイサンの行方が途切れてからは長かったけど。
日本人が、魔法とか魔術が下地にないリアルな18世紀ロンドンを舞台に小説を書く、というのは果たして大丈夫か?とドキドキしたけど、全く問題なし。街や人々の描写、暖炉の構造、当時の風俗や偏見、どれ一つとっても丁寧な取材に裏打ちされていて、立体的な当時のロンドンを感じることができた。ちょっと前に読み漁っていた「トム・ジョウンズ」辺りと比べて特に齟齬や違和感もなかったので、素直にすごいなと思う。
内容としては、、、うーん、なんというか、当時と今の価値観というか、裁判のやり方というか、社会の仕組みというか、色々と違いすぎてなんとも言い表しがたい。悪を葬る話ではあるんだけど、同時に悪に堕ちる話でもあるし、、、というか"悪"どうのこうのではなく、自分たちにとって一等憎くて邪魔なものをいかに効率的に振り払うか。愛憎、謀略、我欲に溢れた街で、いかに大切なものを守るか、必死に生きるか、という話なのかな、、、と思う。結末のどんでん返しには驚いたけど、良かった!これで死んだのは悪い奴だけだね!とはならない。切なさと、苦さと、微量な爽快さ、のミックス、不思議な読後感。
こんな街でよくもまあのうのうと生きてこられたなと思うほど、解剖一筋、不器用で実直なダニエル先生だけど、だからこそ弟子にあれだけ愛されたのだろうなと思う。エドの問いかけに、媚びることなく素直に答えた、答えてしまった先生こそが、彼らが愛した先生なのだから、きっと結末は変わらなかった。やっぱりちょっと切ないな。できれば、これからはちゃんと弟子を護れる先生になってほしい、護られるのではなく。
あと個人的には、エーテルで眠らせた女を犯して妊娠させるのはちょっと現実味がないのではと思いました。ナイジェルのことももうちょっと掘り下げてほしかったな、わざとだと思うけど。 -
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再読ですが面白かったです。
というかほぼ新しい気持ちで読みました。。
結合双生児だったゲオルクとユリアン、分離したからはゲオルクは一旦表舞台へ、ユリアンは無き者としてこっそり成長しました。
ゲオルク、ユリアン、そしてパウルの3人の章がそれぞれ進んでいくのですが、まだどのように絡み合ってくるのかわからずわくわくします。
ゲオルクは一時期映画監督の仕事をするのですが、その章で書かれた、
〈大衆の息抜きに役立つであろうものはまた、彼らの感覚を麻痺させ、思想的に白痴化させる。民主的であると謳われる文化のほとんどは、いい意味で大衆的なのではなく、悪い意味で通俗的である。〉…私も、同意しました。
ユリアンからの?精神感応でゲオルクが描く『双頭のバビロン』という物語…ゲオルクが作った映画の数々もとても面白そうで気になります。
下巻も楽しみです。 -
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ネタバレずっと読みたいと思っていた皆川作品をようやく初読みしました。
自分の読書力と日本語力の未熟さを痛感させられたというのが、最初の、そして正直な感想です。
いやぁ〜まいった。
深い、実に深い。
皆川文学を読むにあたって、手始めにと手にした理由は本書が短編集である事。
さらっと読み進められると思っていた自分が情けないやら、恥ずかしいやら(苦笑)
それぞれの物語に密接にかかわり、深みを増すのが添えられた俳句や詩。
叙事詩的な文体であるが、これぞ日本の純文学なのであろう。
現段階では最後に記された「遺し文」のみが、少し理解出来た気もするが、本作を読み取れる読書力を身につけ、再読した時にはきっと違った景色を想い描き、空気を感じ、涙することが出来るのだろう。
その日を楽しみにこれからも読書を続けていきたい。
説明
内容紹介
インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて……戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。
目次
空の色さえ/蝶/艀(はしけ)/想ひ出すなよ/妙に清らの/龍騎兵(ドラゴネール)は近づけり/幻燈/遺し文/解説・齋藤愼爾
『蝶』は、現代文学の砂漠の沖に光輝まれなる孤帆として、美の水脈を一筋曳いてきた皆川博子文学の一頂点といえる短篇集である。──解説より
内容(「BOOK」データベースより)
インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。