皆川博子のレビュー一覧

  • 倒立する塔の殺人
    戦時中のミッションスクールを舞台としたミステリ。

    文章や小物が古いわけではないのに

    表紙や設定からマリ見て的な世界観かと思いきや、耽美的な要素は薄い、いたってまっとうなミステリだった。

    『倒立する塔の殺人』とタイトルだけ記されたノートに記されるリレー小説の秘密と、少女の死の謎をめぐる作品。
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  • 聖女の島
    『恐るべき子供たち』の物語かと思いきや...

    長崎の軍艦島を想わせる孤島。そこにはさまざまな背徳行為によって矯正を余儀なくされた少女たちが集められている。そして施設の秩序が崩壊しつつある今、ひとりの修道女(マ・スール)が召喚された。

    妖しい香りが匂っています。しかし幻想的という訳ではなく、妙に生...続きを読む
  • 冬の旅人(下)
    ■あらすじ
    時は19世紀末。一枚の絵に見入られ、芸術の悪魔に身も心も奪われた環は、露西亜の大地を彷徨い続ける。高名な美術収集家トレチャコフ、怪僧ラスプーチンとも出会い、宮廷へと招かれるが、やがて抗いがたい革命の炎と欲望、過酷な運命の渦に巻き込まれていく……。実在の人物に想を得た壮大な歴史フィクション...続きを読む
  • 冬の旅人(上)
    ■あらすじ
    裕福な骨董商の家に育った少女・環は、幼いころに見た一枚の西洋画に心を奪われる。その運命の導くまま、聖像画を学ぶために、17歳で革命前夜の帝政露西亜へと留学するが、尼僧たちのいる窮屈な名門女学院を脱走、市中の貧民窟、そしてシベリアへと北の大地を彷徨い、絵筆をとり続ける。大河歴史ロマン。
  • 蝶

    すべてにおいて幻想かと思うような話だったけど、そのなかでも「妙に清らの」がいちばんよかった。
    まさに「痙攣的な美を感じ、金縛りになる」珠玉です。

    ■概略
    インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海にほど近い「司祭館」に住みつく。
    ある日、そこに映画のロ...続きを読む
  • 伯林蝋人形館
    正直外国を舞台にした話は苦手(というかカタカナが多用されるのが苦手w)なのでどうしようかな、とも思ったが、前に読んだこの方の短編集の面白さを覚えていたので。

    第二次大戦後のドイツが舞台となっていたせいで時代背景がわからず、カタカナも多く、第一章でまず一度読むのをやめようとして、でも読み続けて見れば...続きを読む
  • 死の泉
     次第に崩壊していくナチスドイツと、それに歩調を合わせるように次第に退廃的になっていく登場人物たちの人間模様が、ある種の陶酔感を残す魅力的な作品でした。
     
     ただラストに近づくにつれて、ストーリーが一気に進むが、スピード感が増すというより、文章が粗くなった。

     非常に惜しい気がする。

  • 死の泉
    コワイ話を書く作家だと思って読み始めたのに、なんだ〜、ナチスの時代を書いた時代小説だと思ったら、じわじわと怖さが増してきた。
    ナチスに限らず、軍部は存在自体でホラーなのかもしれない。
  • 恋紅
    花魁や遊女の話は切なくて好きなので、
    裏表紙に「吉原」とか「遊女」の文字を見つけると、
    つい読みたくなる。
    しかし、このお話の主人公は、遊女屋の1人娘でお嬢様。
    本来なら黙っていても、将来は遊女屋の女将になれたはずなのに、
    すべてを捨て、好いた役者の元に行く。
    結婚というカタチにとらわれないままの夫...続きを読む
  • 恋紅
    第95回直木賞。
    江戸末期から明治にかけての、遊郭と芝居の世界を描いた時代小説。
    主人公は遊女屋の娘・ゆう。たまたま見かけた三流役者による芝居に魅せられ、遊女屋のおかみとして生きる道を捨てて、旅芸人と結ばれる。
    本筋は、ゆうの恋愛、成長の記録であるが、他に裏テーマというか、さまざまな対立の構図が描か...続きを読む
  • 伯林蝋人形館
    退廃的で良かった。

    ナターリャにはアメリカで幸せになって頂きたい。
    蝋人形師、てめーは許さねえ。
  • たまご猫
    短編集。怖い。ぞくぞくする、とか、血の気が引く、とかじゃなくて。なんでだろう。すごく怖いお話だった・・・。でも癖になりそう。
  • 聖女の島
    しかし、何も変わったようには思えなかった。良心の痛みが訪れぬことに、私は絶望的な苦痛を覚えるのみであった。
    (P.165)
  • たまご猫
    タイトルに惹かれて読んだ一冊。たまご猫と書くとかわいいイメージですが、作品自体は怖いです。(2003.2.14)