皆川博子のレビュー一覧

  • アルモニカ・ディアボリカ
    プロットそのものがかなり入り組み、相当複雑な構造になっているのだが、それを齟齬なくまとめ上げているのはさすがだと思う。
    ただ、通読して感じるのが、なんだかこれまでの皆川作品とは少し違う、という漠とした心地。
    二昔前のロールプレイングゲームのように、極めて限定的な細い筋の上を、辻褄を合わせるために辿ら...続きを読む
  • 少女外道
    現実と幻想と、夢と記憶と、彼岸と此岸と、それらのあわいをふわふわと漂っているみたいな感覚。
    そこに血の匂いが立ち込め、死の気配が漂い、すべてを見下ろしている「神」的なものの存在を感じさせる。
    やっぱり皆川博子さんの短編はすごい。

    「戦時中」の「少女」という視点が、すでに大きな仕掛けになっているのだ...続きを読む
  • 妖恋
    1作約30頁という短篇でありながら、読者を世界観に浸らせさらに主人公の狂気的な恋情を恐怖や絶望だけでなく切なさと幸福に変える文章に感服。
    江戸なのに江戸ではない、江戸でないようで江戸の出来事。曖昧さ加減が絶妙で、そのなかで揺れ動く恋もまた絶妙で、この人にしか書けない文章だなと思った。
    挿絵がまたきれ...続きを読む
  • 恋紅
    ずいぶん前の直木賞作品ですが読んでみました。
    江戸から明治にかけて吉原の遊郭の娘として生まれた主人公が役者にほれ、恋に身を投げこみ、不自由な暮らしながら旅役者の恋人として時を過ごしていく様があでやかに描かれていて十分に楽しめた。恋に一途になれるのって素晴らしいなあ。
  • 妖恋
     ファンタジーだなぁと思ったら、解説で幻想小説とあって納得。
     1話1話の重みが軽いんだけれど、よくよく読むと、がっつりと重い。そして酷い。
     それなのにきれいなのか文体のせいなのか、書き手の心根ゆえなのか。
  • 倒立する塔の殺人
    戦時下のミッションスクールで女生徒が不可解な死を遂げます。彼女ら3人が書いたリレー小説「倒立する塔の殺人」を読んで死の真相を探るお話です。
    構造が複雑にも関わらず、作中作の使い方が絶妙ですし、そこに仕掛けられたトリックは圧巻でした。
    ただ、少女漫画チックな独特な表現方法が苦手だったのと、西洋絵画に関...続きを読む
  • 少女外道
    「蝶」よりアウトローな感じは薄いと感じたけど、相変わらずの薄暗さ。
    「標本箱」と「有翼日輪」が、よい倒錯でした。だけど前者はちょっとオカルト?なのが…不意打ちでなじまないけど、設定が好きなので
  • 影を買う店
    大学の書籍部で購入
    出だしの二編で少し好みと違うなと感じたが、
    その後の「猫座流星群」から「柘榴」までの一連の短編はわかりやすくかつ幻想的で好み
    その後は実験小説のようなものが多く、残念ながらいまいち理解できなかった
    「墓標」と「更紗眼鏡」は実験も少し入っているが読みやすく面白かった
    「魔王」「青髭...続きを読む
  • 影を買う店
    「死の泉」以来のファン。
    80歳を越えて、質量ともにこのレベルの創作活動を続けておられるのは素晴らしいの一言。
    短編集を読むのは初めてだが、一部耽溺できない作品があったため★×3
    とした。よりディープなファンの方々には垂涎なのだろうが。
  • 倒立する塔の殺人
    嫌いではないけど、あまりピンと来なかった。
    謎解きとしても、雰囲気としても、登場人物も。
    戦争中の女学生と学校、街…その時代の匂いみたいなのは興味深かったかな。
  • 影を買う店
    怪しく蠱惑的
    幻想小説、幻想怪奇小説、と言おうか。
    結末がはっきりしているわけではない。
    長く、ぼやけた余韻。
    エロティックであったり、グロテスクであったり。
    にじんだ漆黒のインクが途中で鮮やかな血の色に変わってゆくようなそんな印象を持った。

    『創世記』
    写真で綴られている。
    これも小説なのか。
    ...続きを読む
  • 妖恋
    タイトルからして美しい言葉が並ぶ。合わせて挿絵の妖しい美しさ。
    本篇を彩る言葉がまた贅を尽くした絢爛さだ・・・人物や風景、行事、召し物などの江戸模様がまた良い。
    今宵はどの篇で甘美な絶望の夢をみようか・・・蛍舞い飛ぶ沢か、菊の香漂う薄もやの早朝か・・・
  • 妖恋
    江戸時代を舞台にした幻想的な短編集。恋に縛られ身を滅ぼす男女の心の機微が、幽玄かつ繊細な筆致で描かれる。読んでいるうちに、夢と幻の境目が曖昧になっていくような不思議な感覚が味わえる。特に前半収録の何篇かは、語り口調が泉鏡花っぽいなと思った。
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    タイトルがコジャレている。
    作者は、様々なジャンルの作品を書いているが、古い時代のヨーロッパを舞台とした耽美的なミステリーがピカイチ。
    本作は、やや軽めだったが、80近いお年を考えると、なんと若々しいことか。まだまだ、たくさん書いていただきたい。
  • 倒立する塔の殺人
    雰囲気とか良かったし、伏線も全部回収されてて綺麗に終わってるけど、トリックとかちょっと残念な感じがする。
  • 倒立する塔の殺人
    戦時中の女学校を舞台に巡る秘密のノート。
    幾人もの手に渡り書き出され、明かされる真実。
    作中で流れる歌や語られる絵画と文学に読者までも引き寄せられる。
    物資が乏しい寒々しい時代の中で、知識と教養で色づく女学生たちが眩しかった。
    書き綴られた結末と最後の真相しばらく浸ってしまう作品。
    ジャスミンティー...続きを読む
  • 倒立する塔の殺人
    分かりずらいうえに時系列がややこしい。
    話の中で別の文章が出てくるのは
    何度読んでも苦手なんですが、
    そこがまたわかりずらい。

    ですが、文章的には
    面白かったので、ほかの作品も
    挑戦してみたいです。
  • 倒立する塔の殺人
    ミステリーとしては普通、というか物足りないくらい。でも百合的見地から言って、欣子が小枝に与える親切の美しさはすばらしい。
  • 倒立する塔の殺人
    皆川作品を何冊読んでも
    いつも、違和感が残る。
    言葉の選び方やシチュエーションの
    勿体なさを歯痒く思う。
    多分、ツボから微妙にずれてるんだな。
  • 倒立する塔の殺人
    皆川博子さんの作品を読むのは2作目。(1作目は随分前に薔薇密室を。)
    期待に違わず面白かったです。
    タイムリーと言うか、つい先日70歳とちょっとの女性と話す機会があって、その方のお友達の話も含めて、
    ・戦前はカタカナ教育だったとか、
    ・ひらがなは習わなかった、いや、戦後はひらがな教育だ、とか、
    ・敵...続きを読む