皆川博子のレビュー一覧
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ネタバレ過去のメモから。
寝食を忘れて、というけれど、こういう作品には滅多にお目にかからない。この本を忘れないために残しておかなくては。「蝶」を読む前に。
文章は耽美的、幻想的なのに読みやすく、舞台になった都市の描写も、物語にしっくり馴染んでいた。
題名のように、双頭は双子の意味で、脇腹で癒着した子供が4歳の時、手術で分離されて、お互いに数奇な運命を辿る。
オーストリアの貴族の家に生まれた子供は二人になり、ひとりは家の跡を継ぎ、一人は存在を消され「芸術家の家」と呼ばれる施設に入れられる。
そこは精神に異常がある人たちを収容した施設だった。
あとを継いだゲオルクは順調に教育を受け陸軍学校にすすむ。 -
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美しく恐ろしい、皆川博子の世界。8つの短編を読んだ。
※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。
今年の読み始めはこれだったがレビューが遅くなった。
皆川さんの世界は、新年の休日で、昼夜なく過ぎていった三が日の祝いの日に似ている。
どこか非現実で、非日常的な日に似ている。あわあわとした中に生きている実感が、幻想的につかず離れずそこにあるというような、短編集だった。
それぞれの話の中には象徴的な俳句や詩が挿入されている。
「風の色さえ」
風の色さえ陽気です
ときは楽しい五月です ポオル・フォル 堀口大学訳
足が不自由な私はよく祖 -
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タイトル『それはそれはよく燃えた』の1文から始まるショートショート集。
ネットの炎上、恋心、火事など、こんなものまで「燃える」のかと思える作家25人の25作を1冊の本で読めるのはとても贅沢。
でも後味は25作25様で、ほっこり甘いものもあれば苦々しいもの、ざらっと心地悪いものなど本当にさまざま。
クイズノックのファンなので河村拓哉さん目当てでこのシリーズを読み始めたが、矢樹純さん、三津田信三さんなど、このシリーズは毎回新しい作家さんと出会えて、読書の幅が広がって嬉しい
私は総じてホラーが好きなので、今回の『それはそれはよく燃えた』はぞくっとする話が多くて、とても好み。不穏で悲しくて残酷 -
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ネタバレエド、またやったのか…というところからの反転に驚いた。手記の矛盾を紐解いていくのがいい。
怪我人を看たり、死因が気になったりと、エドもクラレンスもダニエル先生の弟子なんだな、と感じるシーンが多かった。時おり解剖ソングが出てきて空気が和らぐのが嬉しくもあり、ロンドンで全員が揃っていたあの頃との距離も感じて切なくもあった。
エドがモーリスの前で仮面を脱ぎ、ナイジェルへの思いを自ら語るシーンが心に残っている。エドは三部作の主人公であり、わたしたちは彼が全てを背負ってしまう人物だと知っているけれど、彼が自ら吐露するシーンはそれほど多くなかった気がする。「愛という言葉には当てはまらないのに、愛と呼ぶ -
「花闇」について
闇というのは、やはり役者の世界のことなのでしょうね。煌びやかに、艶やかに舞台を演じながらも、役者たちは同時に色子として存在します。
それは家格の良い家に生まれても同じ。
田之助自身、10歳の頃から上野明王院の高僧に買われるようになります。
しかし、それもまた芸のこやし。田之助の女形としての色気に一役買うことになるんですね。
しかも、それらの贔屓筋が落としてくれる金がなければ、役者としての膨大な費用を賄えません。
そんな彼らの身分は卑しく、時には人間扱いもされないほど。しかし同時に、蔭の世界では役者は貴人。
芝居を観に来る人々は、役者に魅了され、夢中になるのです。何とも一筋縄ではいかない入り -
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昔読んですごく面白かった記憶があるけど全然覚えてないなーと思ってまた読んでみました!
やっぱりすごく面白かったです!
伏線も綺麗に回収されるし、最後の種明かしにはあっと驚きました。
エドとナイジェルがすごい艶っぽかった。
特にナイジェルのギャップがすごくて。アボットをどうやって骨抜きにしたのか気になる……
皆川博子さんの作品って耽美というか、色っぽいですよね。好き。
もう高齢と言っていいお年のはずなのにセンスに全然年齢を感じない。ほんとにすごい。
2作目までは読んだ記憶がありますが、3作目はまだだったはずなので、読みます!
ハードカバーだと辞典みたいに分厚いけどすぐ読んでしまうに違いない -
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三代目澤村田之助を描く本はいくつかあるが、この皆川博子が描く本書が逸品だと思う。
吉田修一が書いた、小説でも映画でも今話題
の"国宝"。
俊介のモデルはこの田之助なんだろうな。
本書で登場する浮世絵師の月岡芳年が言い放つ、
「あれは、がらんどうだ。長年のは空の、透明なびーどろの壺だ」
映画国宝の中で半二郎が喜久雄についての感想、「あれは、からっぽだ」
なんかリンクしていて、本小説も映画もちょっとニヤっと。笑
余談だか、テレビドラマのJIN-仁、で澤村田之助役の吉沢悠と、映画国宝の吉沢亮、同じ吉沢性で顔も似てる…一瞬兄弟か?!と思ってしまう、実際血の繋がりはないらしいが -
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25編のショートショート集で、ちょっとした時間にも読み進める事ができて楽しかったです。
全て『だから捨ててと言ったのに』の一言から始まり、そのあとは作者さんによって推理物になったり、ホラーになったり、感動物になったりと、ショートショート集なのにとても読みごたえがありました。
知っている作家さんの作品には作家さんらしさが出ていて楽しめました。初めての作家さんの作品もあったので好みの作風の作家さんの他の話も読んでみたくなりました。
このショートショート集をきっかけに読書の幅が広がりそうです。
今回は第四弾目とのことで、前作も読んでみたくなりました。 -
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皆川博子の初期の短編作品集。
本作に収録されている短編作品は犯罪をテーマにした作品で、皆川博子の耽美で幻想や伝奇、ミステリーなどのイメージとは違うのだが、だが確かに皆川博子らしい作品ばかりが集められている。
個人的には『獣舎のスキャット』がやはり印象的である。
『獣舎のスキャット』は自分は『悦楽園』という別の短編集で触れたが、とても黒々しい情欲が顔を出すような作品で、人には薦めないが大好きな作品である。
他にも『密の犬』『アルカディアの夏』『花冠と氷の剣』が好み。
また中川多理による球体関節人形の表紙が皆川博子の作品世界と合っていてとても良い。 -
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ネタバレ1775年、英兵として新大陸に渡ったエドとクラレンス。独立戦争のさなか、モホークとの交流や、戦地で起こった事件を巧みな叙述トリックで展開していく。
視点はモホーク族とコロニスト大地主のハーフとして生まれた庶子アシュリーと、我らがクラレンス。
アシュリーの視点では、支配される側と支配する側両方の血を持つがゆえの葛藤と成長、モホーク族との心温まる交流が描かれる。
クラレンスの視点では、モホークと徐々に打ち解け、理解し合い、互いを尊重し合う様子や、エドに対する思い、懐かしいアルやベン、ダニエル先生への追憶。このパートは、前作から読んでいて思い入れのあるわたしには、胸が苦しくなる。
最後は涙で文字 -
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「開かせていただき光栄です」から始まるエドを主人公としたシリーズの三作目。これで完結と銘打たれている。
今作は安楽椅子探偵ならぬ獄中探偵となったエドの語りと回想シーンがそれぞれ交互に展開され、しっかりと追いかけないと話に着いていくのも難しい。けれどその構成がまた上手く、内容に惹き込まれる。
本編も大変面白かったのだがネタバレを避けると物語るのが難しい。ただ、巻末の解説が非常に良かった。解説の中で話の内容に触れるものは少ない印象だが、一般的な読者では気付くことが難しいところに専門家の観点から解説が加えられていて、またその内容が非常に興味深く、この三部作への畏敬の念を強くした。(「思えばこの三部作 -
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とうとう、読みました。
じわじわと、何かが進行していて、今にも爆発しそうな不穏な空気に惹き込まれて巻き込まれて流されていきました。
マ・スールは、(ネタバレゆえ伏せます)でありながらも、主人公・藍子の姉に似ているのも含めて、藍子が「こうありたい」と望む姿なんだろうな。もしかしたら、梗子が「マ・スールが好き」と言うのも(この梗子はあれだし…)。
願いが、届いてしまった。
淡江色の封書が届いたなら未来永劫マ・スールは、愚かさと狂気への蔑みと憐れみと慈しみと諦念を密かに抱えて、軍艦のような聖女の島を訪ね続けるのでしょう。
それにしても素敵な装丁。物語にぴったり。