皆川博子のレビュー一覧

  • 夜のアポロン
    単行本未収録の短編集。
    溜め込んで持て余した感情はやはりどこかで使い果たせねばならないのだと感じる。それがどう言った結末になるかわかっていても。
    時代が古くあっても、その感覚は昔では、と思っても最後まで読み終えるとなんだか納得してしまってこの結末を迎えることに読者が諦めを感じてしまう。
    流れ着いたな...続きを読む
  • インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー
    3部作の最終作、シリーズを通して濃くて骨太だったなぁ、と。1作目から感じた読み物としての圧倒的質感を維持したままの完結は凄いと思いました。
  • 聖女の島
    とうとう、読みました。
    じわじわと、何かが進行していて、今にも爆発しそうな不穏な空気に惹き込まれて巻き込まれて流されていきました。
    マ・スールは、(ネタバレゆえ伏せます)でありながらも、主人公・藍子の姉に似ているのも含めて、藍子が「こうありたい」と望む姿なんだろうな。もしかしたら、梗子が「マ・スール...続きを読む
  • インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー
    皆川博子『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』(ハヤカワ文庫2023年11月印刷)を読んで――雑文。
    通常は作品の感想を書きますが、今回は、ミステリのシリーズ三作目である事もあり、前作をも含めてネタ割りをせずに感想を書くのも辛いので、取り留めのない雑文になります。まあ、ふだんから取り留めのない感想...続きを読む
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    初めて読む作者。18世紀のイギリスを舞台にしたミステリ。エンターテイメント。同時に当時の風俗も窺い知ることができる。また登場人物の性格やイマドキの若者のような軽妙な会話のやり取りに親しみやすさを感じ、そのギャップが面白い。
    事件前と後のエピソードが交互に語られるため、核心に迫りそうになるたび、話が切...続きを読む
  • インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー
    ・シリーズ3作目。
    ・「クロコダイル路地」で、バートンズの面々のその後がちょろっと描かれていたが、本作はそこでは描かれていなかったエドとクラレンスの、新大陸アメリカでの話。
    ・アメリカ独立戦争の直前。上に新大陸とつい書いてしまったが、それは英国側の論理。先住民族を搾取する植民の物語でもある。
    ・が、...続きを読む
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    はじめの方は、複雑な文章に慣れる事が大変だった。しかし、ダニエルと5人の弟子の解剖へ対する考え方や姿勢が素敵だった。

    18世紀のイギリスの最悪な裁判の仕組み、治安の悪さ、ダニエルと5人の弟子と治安判事の信頼性など、様々な人間模様が描写されていて引き込まれた。人を無条件に愛せるのか、塾考した。普段は...続きを読む
  • 死の泉
    読み手に委ねられる部分があるので好みが分かれそうだけど、個人的にはかなり好きだった。
    虚構が入り混じっておぞましくも美しい。
  • 死の泉
    恍惚とした読書体験でした。
    全編に漂う退廃的な雰囲気にうっとり。
    この雰囲気が、合う合わないがありそうですし、
    結末に解釈の余地が残るところも、好まない人はいるかと。
    私は「いやー日本に皆川博子がいてよかった」と感じ入りました。
    彼女の他の著作も、大切に読み進めたいです。
  • 愛と髑髏と
    読後静かな興奮に包まれる。この美しくて狂おしい小説世界は魅惑的で、私もここに加わりたいくらいだ。
    8作品、一つ一つが濃密。作り物ではなく、たしかにそこに生きている人々がいると感じられる。不幸で底知れぬ、匂い立つような情念が漂っている。

    特に好みだったのが「丘の上の宴会」。死んでいると明かされた時の...続きを読む
  • アルモニカ・ディアボリカ
    続編は肩透かしも多いけど、前作越え!
    ナイジェルは死んだと見せかけて、本当は生きてるんじゃないかとおもったけど、そこは深読みしすぎた。が、出自を知るにつけ、彼には強かに生きてほしかった。ここでまたポーの一族に頭シフトさせると、アランポジションだから?!
    事件のピースの繋がりかたが、現実はそんなにうま...続きを読む
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
    盲目の判事の存在が巧みだなと思った。犯人の表情で確認できないだけに、聴覚と触覚を駆使し言葉の裏を読むという経験を読み手もなぞっていく。そして助手の言葉による現場の説明を、私も一緒になって聞き頭の中で状況を整理していった。
    最後までどうなるか分からない展開に引き込まれ、すべてが怪しく見えてきて楽しみな...続きを読む
  • 死の泉
    悲劇にしかならないことは最初からわかっていたので、重い話を読める時で良かった。
    貫き通せる大人陣は本望だろう。巻き込まれた子どもたちがキツい。

    そして、それらを全部崩壊させるラストだった。
    これは、虚構の世界とラストのどちらにハマるかによって、読み方が変わる。前者ではフランツの愛憎、苦悩に揺さぶら...続きを読む
  • 倒立する塔の殺人
    戦時下のミッションスクールで流行した「小説の回し書き」から女生徒を巻き込んでいく美しいミステリー。
    戦中、戦後の世の中の変わりようが、今なら分かるような気がする。中身のない矛盾した物言いが蔓延っていて、それを受け入れなければならないのはさぞ辛いだろうと思う。
    文学・音楽・絵画。お腹は膨れないけれど、...続きを読む
  • 死の泉
    第一部はマルガレーテ視点で書かれているが、
    第二部は色んな人の視点が入り組んでて
    現実と妄想が入り乱れる文章に振り回される。
    ぜひ最後の『あとがきにかえて』まで読んでほしい
    絶対もう一度最初から読み返したくなるので
  • 死の泉
    最後の最後まで翻弄されてしまった、なんという体験だろう。解説で北村薫さんが「皆川作品は皆川博子のもの、そこにわれわれ読者の喜びがある」という旨のことを仰っていたが、正しくそのとおり。
    こんなに分厚いのに無駄な描写が何一つないのはもう、驚きを超えて恍惚のため息。
  • ゆめこ縮緬
    脳をフル稼働させて必死で読んだ…

    幻想小説と時代小説が融合した風のこの作品集、中々骨が折れました。

    暗喩がたくさんで理解するのに一苦労。この台詞は誰?と行きつ戻りつ。

    それぞれ独立した短編のはずだが、一部共通して登場する「中洲」という場所を通じて連作っぽい感じもある。

    川はあの世とこの世を分...続きを読む
  • 猫舌男爵
    タイトルからの直感のみで棚差しから購入。


    解説まで読んではじめて、この作品集の肝が理解出来た。

    一見すると全くバラバラに独立した五つの短編集のようで掴み所がないが、丁寧に読み込むことで物語同士が共鳴するとは驚き。読み手が気づく事で、各物語の’孤独’が救われる。

    第一印象では「オムレツ少年の儀...続きを読む
  • 夜のリフレーン
    短編小説には作家の技量が出る。

    まさにそれのお手本のような作品集でした。

    幻想的な作品は美しい。

    大好きです。皆川さん(//∇//)
  • 蝶

    詩句が引用され、そこから紡がれた物語はどれも暗い影が射し複雑な感情を引き出す。
    戦前から戦後と移ろう中で、人々の感情には容易に切り替えられない虚しさや悲哀が見て取れ、やり切れない。
    研ぎ澄まされた文章の裏を探りたくなる艶かしさがある。多くを語らない部分に奥深さを感じる。読後は悲しみに包まれ、今もふと...続きを読む