皆川博子のレビュー一覧

  • アルモニカ・ディアボリカ

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    大好きなシリーズです!
    失踪したエドたちが絡む殺人事件。
    様々な人の思惑が重なり展開するストーリー。
    やや複雑で一気読みするには事件の真相は私には難解でしたが、時代背景が丁寧に描写され、引き込まれます。

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    2024年02月28日
  • 薔薇密室

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    ネタバレ

    ずいぶん前に読んだものの再読。
    前半部分しか憶えていなかった。
    それと、「物語を必要とするのは、不幸な人間である」という、ものすごく印象に残っている言葉を知ったのは、どうやらこの本だったらしい、ということがわかった。
    ミルカとユーリクは、最後に薔薇の僧院で再会するように記憶していたんだけど、ぜんぜん違った!それこそ私の脳が勝手につくった物語だ。
    前半をよく憶えているのは、私の好きな「物語」だからだろう。薔薇の咲き乱れる僧院という箱庭、アンネの日記のようなミルカの生活、いい人そうなホフマンさん。

    最終的に、ミルカとユーリクは「現実」へ戻っていく。
    ヨリンゲルたちは僧院に残るけれども、それは「物

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    2024年02月21日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    ネタバレ

    事件前と発見後が交互に進むことでどうなっていくのかが気になってページを捲る手が止まらなかった。
    作り込まれた物語は説得力があり、最後にネイサンが実は生きていたとひっくり返されるのも面白かった。
    時代背景も含めて、全てが最後に上手く繋がる完全犯罪だと思う。
    物語の終わり方が余韻を残し、すっきりとはせず心に靄がかかったまま終わる。
    エドとナイジェルの二人がこれからどう生きていくのかが気になる。

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    2024年02月19日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    前作以上に真実に行き着くまでの壁が幾重にも張り巡らされているように感じた。また、前作の登場人物プラスαになるのは仕方ないが、かつ外国の名前というのもあって、読み進めるのに頭が疲れました。
    ナイジェルの手記の最後の文を読んで、涙が出そうになりました。

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    2023年12月16日
  • トマト・ゲーム

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    個人的にかなりレベルの高い短編集。
    ジュブナイルの悪意・犯罪にフォーカスした不条理系短編集だが、舞台装置やオチまでのトリックが鮮やかで非常に楽しめる。
    『アルカディアの夏』と『獣舎のスキャット』は特に印象深く、作者の初期の良い所がギュッと詰まり、いいとこ取りな1冊では。

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    2023年11月16日
  • ゆめこ縮緬

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    ネタバレ

    なんとも言い表せない複雑な気持ちで読み終えた。理由の分からない妖しい夢を見たみたいな、ひとときの幻想に足を踏み入れたような短編集だった。
    聞き慣れない言い回しも出てくるし、生者と死者の境目が曖昧で、すぐあちら側の世界に連れて行かれそうになる。それなのにとても読みやすい点に驚く。
    幾人かの登場人物に業の深さを感じて、重さを静かに受け止めていく読書だった。八作品、読み進めるほどにハマっていく深みがあり、どれが良いというのが選べない。それぞれ主人公の見えている景色が違って、それぞれの地獄がある。
    いくつか同じ中洲を舞台にした話があるのが良かった。いろんなモノやヒトが集まってくるその土地を覗いてみたい

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    2023年09月26日
  • 風配図 WIND ROSE

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    十二世紀のバルト海の島に住んでいた姉妹が、決闘裁判を機に思いもよらない広い世界へと繰り出す。冒険譚であり姉妹の絆を描いたシスターフッド的な物語でもあり、酷薄な身分制度や欲得や打算まみれの人間模様を浮き彫りにした歴史小説の側面も持った小説です。

    それだけ中身が濃いながらも、合間に戯曲形式を挟み、きわめてさらりと短く的確に状況を描いていく文体で意外なほどするりと読み進められます。過去の長編大作での歴史と個人の運命をより合わせた重厚さとはまた違いますが、十二世紀という馴染みの薄い時代を的確に感じさせる細やかな小物や社会風俗の描写はさすがの一言でした。

    ただ主な視点となる二人の少女と一人の奴隷の物

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    2023年09月14日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    初めての作家さん、タイトル借り。口コミ評価が高いのも納得の面白さ…!
    18世紀のロンドンが舞台。行政や裁判所は買収が当たり前で治安は悪く、外科医の地位が低い・解剖学が厭われていた時代。私的解剖教室で外科医とその弟子たちがお墓から死体を掘り起こして解剖に励んでいたが、警察がきてとっさに秘密のスペースに隠す。隠した死体を取り出そうとしたら、なぜかそこには見知らぬ死体が2体。引き返してきた警察に合計3体の死体があるとばれたが、なぜだか誰もわからない…。というのがあらすじ。

    前半は説明が多くあんまり気分が乗らないけど、中盤からはぐいぐい引き込まれた。毎日家に帰って続きを読むのが楽しみな本だった。何と

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    2023年09月06日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    法律があってないようなもので、公の警察もいない…イギリスにもすごい時代があったんだと、当時の人達は怖かっただろうなと思った。前作からの登場人物に加え、今作での事件が合わさり謎が謎を呼ぶ内容だった。そんなところとそんなところであの人とその人が繋がっているのかい…と頭がこんがらがるし、完全にハッピーなエンドではなく何となくモヤッとする感じに、この本らしさが現れているなぁと思いました。

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    2023年08月30日
  • 死の泉

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    うわぁぁぁあ、やばい…600ページ超、ずっとゾクゾクしてた…最後の最後までどうなるのどうなるの?という感じで…

    物語の構成自体も、ドイツ語原作を訳した、という形で、その構成自体とあとがきにかえてで明かされる真相がもうこわすぎる…

    科学者が彼らの興味の赴くままに人の体を使って実験できる世界って怖いな。なに、2人の人間をくっつけるって…早熟させた女の子に子供産ませるって…ああこわい。

    皆川ワールドあっぱれ、すごく怖かったです。

    p.253 私のしたが、フランツの唇を割った。すぼめてら吸った。そのとき、わたしの舌が、フランツの唇を割った。舌の先が軽く触れ合った。口の中に、甘やかな感覚が広が

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    2023年02月26日
  • トマト・ゲーム

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    未熟であやうい少年少女のヒリツキ感や性の揺らぎが生々しい。「トマト・ゲーム」では、ゲームに挑む少年たちの目線ではなく、そのまわりにいるフラフラした大人たちの目線で描かれていて、その大人たちも未熟さや不完全さを宿しているのが印象的。

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    2023年02月18日
  • 死の泉

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    この長大な作品、最初何がテーマなのか分からなかった。ともかく作品全体に亘って薄気味悪いのだ。ナチスの断種政策、民族浄化が背景にあるからだろう。主人公の一人マルガレーテの視点で描かれた前半はわかり良かったが、彼女の元恋人ギュンターの視点で語られる後半となり、混乱気味となる。ミステリー色が次第に強くなってゆき、オーラスの謎解き部分では???の連続。これが皆川博子の真骨頂なのであろう。

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    2023年01月13日
  • 猫舌男爵

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    5編の短編のうち「睡蓮」「猫舌男爵」が特に面白かった。
    どちらも地の文がなく、手紙や日記をめくりながらストーリーを埋めていく文章で、その開き方が鮮やかで気持ちい。
    皆川さんの著作を読んでいく中で、鶴屋南北や鎌倉権五郎などのモチーフに複数回出会えるのが少し嬉しい。

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    2023年01月01日
  • 倒立する塔の殺人

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    戦争文学✕少女小説✕ミステリー
    空襲の脅威に怯えつつ、軍用機などの部品をつくる(特攻隊に死を与えている)という構造、少女たちの利発さの裏に隠された悪意が発露するとき、そして事件の真相…。とにかく美しさの中に潜む毒気にぞくっとさせられる名品。

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    2022年10月10日
  • 薔薇忌

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    初めて読みました皆川博子さん作品。
    舞台で働く人たちの会話をのぞき見しているような感覚になる7話の短編集。
    どれも妖しい魅力を放っていて、今の話と昔の話が境目なくスンナリとつながっていって、しまいには現実の話なのか幻想の話なのかわからなくなってくる。
    話の内容よりも話相手が気になる「祷鬼」、生首道具職人が出てくる「紅地獄」、ヒスイとカワセミはどちらも翡翠と書けるらしい「翡翠忌」など、面白話だらけ。

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    2022年10月08日
  • 猫舌男爵

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    ネタバレ

    短編集。表題作は、読めない日本の稀覯本『猫舌男爵』を巡る外国人翻訳家ヤンと関係者の話。ヤンの余計な気遣いで家庭崩壊しかけているコナルスキ氏が、最後に一応の平穏を取り戻してよかった。「睡蓮」手紙を遡るごとに女性画家の真実が見え、その生涯を噛みしめながら、彼女の美術展に赴いた気持ちになる。「太陽馬」ロシア内戦下で、少尉に随従するコサック兵の秘話。物語を託された側は生き抜いて欲しい。他二作品。

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    2022年07月27日
  • 薔薇密室

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    ネタバレ

    視点が変わるごとに、ああ、そうなのかと。世界と世界が繋がった瞬間にああ!あなたはそうなのか、と思った。はじめのコンラートの話がありえないほどに非現実的だったのも腑に落ちました。

    終わりはヨリンゲルの語りで締め括られるのだけど、敢えてミルカを止めなかったのは、どこかでその惨状を乗り越えられるだろうと思ってるのだろうか。ミルカとユーリクを再会させてあげたかったな。

    そして新たな創造世界を求めて狂気の支配者は南米へ。誰かに悪夢の種を植える所業は続けられるわけだね。

    身体は大人で心は子供のナタニエル、身体は子供で心は大人のユーリク。対照的な二人にそれぞれの形で愛されたミルカ。

    どっぷりと皆川博

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    2022年06月18日
  • 愛と髑髏と

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    毒杯とわかっているのに、呷りたくなるような。
    甘美で恐ろしい短編集でした。

    『人それぞれに噴火獣』が好き。
    世界に馴染めない「子供」であると同時に既に小さな「おんな」で、両者が共存する我儘が哀しく恐ろしい。

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    2022年04月09日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    ネタバレ

    『開かせていただき光栄です』の続編。またあのみんなに会えるという期待で読み始めた。その中身はあまりにも哀しくてつらい、ナイジェルの半生を辿る物語だった。
    知っているようで全然知らない。ベドラム出身であることが判明した瞬間は鳥肌が立った。その内外で起きた非人道的な仕打ちに言葉を失う。目を背けたくなる描写の一つ一つに息を止めて嘆く。
    美しいと感じたのはグラス・ハープ。この音色の表現が、私の記憶の中の音と符合して、耳に聞こえてくるようでうっとりとした。
    腐敗を少し正し、殺人の罪を自ら負い、カップルは再出発、ベドラムからの解放、判事も元の通り仕事をする。ハッピーエンドだけれど失ったものは大きい。純粋に

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    2022年03月07日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    開かせていただき光栄です。続編。
    生い立ちやら、どうにもできない流れやらにのまれた哀しさ、やりきれなさ。

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    2022年01月22日