皆川博子のレビュー一覧

  • 倒立する塔の殺人

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    戦争文学✕少女小説✕ミステリー
    空襲の脅威に怯えつつ、軍用機などの部品をつくる(特攻隊に死を与えている)という構造、少女たちの利発さの裏に隠された悪意が発露するとき、そして事件の真相…。とにかく美しさの中に潜む毒気にぞくっとさせられる名品。

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    2022年10月10日
  • 薔薇忌

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    初めて読みました皆川博子さん作品。
    舞台で働く人たちの会話をのぞき見しているような感覚になる7話の短編集。
    どれも妖しい魅力を放っていて、今の話と昔の話が境目なくスンナリとつながっていって、しまいには現実の話なのか幻想の話なのかわからなくなってくる。
    話の内容よりも話相手が気になる「祷鬼」、生首道具職人が出てくる「紅地獄」、ヒスイとカワセミはどちらも翡翠と書けるらしい「翡翠忌」など、面白話だらけ。

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    2022年10月08日
  • 猫舌男爵

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    ネタバレ

    短編集。表題作は、読めない日本の稀覯本『猫舌男爵』を巡る外国人翻訳家ヤンと関係者の話。ヤンの余計な気遣いで家庭崩壊しかけているコナルスキ氏が、最後に一応の平穏を取り戻してよかった。「睡蓮」手紙を遡るごとに女性画家の真実が見え、その生涯を噛みしめながら、彼女の美術展に赴いた気持ちになる。「太陽馬」ロシア内戦下で、少尉に随従するコサック兵の秘話。物語を託された側は生き抜いて欲しい。他二作品。

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    2022年07月27日
  • 薔薇密室

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    ネタバレ

    視点が変わるごとに、ああ、そうなのかと。世界と世界が繋がった瞬間にああ!あなたはそうなのか、と思った。はじめのコンラートの話がありえないほどに非現実的だったのも腑に落ちました。

    終わりはヨリンゲルの語りで締め括られるのだけど、敢えてミルカを止めなかったのは、どこかでその惨状を乗り越えられるだろうと思ってるのだろうか。ミルカとユーリクを再会させてあげたかったな。

    そして新たな創造世界を求めて狂気の支配者は南米へ。誰かに悪夢の種を植える所業は続けられるわけだね。

    身体は大人で心は子供のナタニエル、身体は子供で心は大人のユーリク。対照的な二人にそれぞれの形で愛されたミルカ。

    どっぷりと皆川博

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    2022年06月18日
  • 愛と髑髏と

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    毒杯とわかっているのに、呷りたくなるような。
    甘美で恐ろしい短編集でした。

    『人それぞれに噴火獣』が好き。
    世界に馴染めない「子供」であると同時に既に小さな「おんな」で、両者が共存する我儘が哀しく恐ろしい。

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    2022年04月09日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    ネタバレ

    『開かせていただき光栄です』の続編。またあのみんなに会えるという期待で読み始めた。その中身はあまりにも哀しくてつらい、ナイジェルの半生を辿る物語だった。
    知っているようで全然知らない。ベドラム出身であることが判明した瞬間は鳥肌が立った。その内外で起きた非人道的な仕打ちに言葉を失う。目を背けたくなる描写の一つ一つに息を止めて嘆く。
    美しいと感じたのはグラス・ハープ。この音色の表現が、私の記憶の中の音と符合して、耳に聞こえてくるようでうっとりとした。
    腐敗を少し正し、殺人の罪を自ら負い、カップルは再出発、ベドラムからの解放、判事も元の通り仕事をする。ハッピーエンドだけれど失ったものは大きい。純粋に

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    2022年03月07日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    開かせていただき光栄です。続編。
    生い立ちやら、どうにもできない流れやらにのまれた哀しさ、やりきれなさ。

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    2022年01月22日
  • 夜のアポロン

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    一つ一つ短い話だが、内容は重たく濃厚な余韻を残す。
    まさにこれが皆川博子の世界観。
    生々しくも残酷で、それでいて美しい旋律のよう。人によっては後味の悪さを感じるかもしれないが、これが人生というのも一つの真理なのかもしれない。

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    2022年01月19日
  • 妖櫻記 下

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    ネタバレ

    著者の皆川博子氏曰く、自発的に楽しんで書いた小説は「花闇」とこの作品だけ、という「妖櫻記」。
    歪んだ想いを御しきれず持て余す阿麻丸、幼い花の香りに容易く惑い堕ちてゆく高僧、まさしくサイコパスと称すべき純真無垢な狂気に満ちた清玄、人間の原罪と業を凝縮し体現したかのような異形かつ異能の存在である百合王…、迸る想いを負託されたかの如く、確かに登場人物たちは作者の創意の手が届く範囲を飛び出して自由自在に動き回り、作中世界に何とも名状し難い粘性を与えている。
    それがまた、戦国時代の幕開けたる応仁の乱に向かって混沌が深まりゆく当時の世相と良く合う。

    水も漏らさぬ緻密な構成で以て組み上げられた作品では決し

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    2021年11月29日
  • 妖櫻記 上

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    ネタバレ

    著者の皆川博子氏曰く、自発的に楽しんで書いた小説は「花闇」とこの作品だけ、という「妖櫻記」。
    歪んだ想いを御しきれず持て余す阿麻丸、幼い花の香りに容易く惑い堕ちてゆく高僧、まさしくサイコパスと称すべき純真無垢な狂気に満ちた清玄、人間の原罪と業を凝縮し体現したかのような異形かつ異能の存在である百合王…、迸る想いを負託されたかの如く、確かに登場人物たちは作者の創意の手が届く範囲を飛び出して自由自在に動き回り、作中世界に何とも名状し難い粘性を与えている。
    それがまた、戦国時代の幕開けたる応仁の乱に向かって混沌が深まりゆく当時の世相と良く合う。

    水も漏らさぬ緻密な構成で以て組み上げられた作品では決し

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    2021年11月29日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    解剖についてのお話だったり凄く興味深いお話でいて皆川博子様の作品にはいつも驚かされ文章の力やストーリー等について脱帽の一言に尽きます(^。^)

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    2021年09月26日
  • 愛と髑髏と

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    皆川博子作品は数冊読みましたがこの短編作品も個性豊かで語彙がとても豊富でおられ、心地良いけどどこかお話はダークでありながら読み手のペースを崩さない感じの著者であると感じています。又改めて再読したいと思う作品でした。

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    2021年09月26日
  • 夜のリフレーン

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    幻想短編小説集。うっとり浸りました。
    皆川博子さん短編の方が難しい、って仰ってるけど短編も素敵です。ふと隣りにある闇にじわじわと、ある時はストンと引きずり込まれていきます。美しい闇。
    人と人が交わる時、愛憎は避けて通れないのかも。自分の闇を、見詰め過ぎて囚われないように。。

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    2021年09月25日
  • 夜のリフレーン

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    表題作「夜のリフレーン」が短いながらも、印象的。皆川博子の世界観の原液って感じ。
    どの短編も日常から幻想への境界が曖昧になるのが自然過ぎて幻想とは思えず、読後はより不思議な気持ちになる。

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    2021年09月25日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    ネタバレ

    物語的には伏線も全部綺麗に回収されて、すっきりさっぱりさすがの構成なんですが、登場人物たちはみんな翻弄されまくっていて辛い。
    判事と一緒にモヤっとしてしまう。
    法が弱者を守ってくれない中で、エドが出した最善の答えだったのだろうけど。

    エドとナイジェルの間にあったこととか、お互いにどう思っていたのかとか、言葉にされない部分がもどかしい。エドはあの絵をどうしたんだろう…

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    2021年08月10日
  • トマト・ゲーム

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    す、すごい。去年は皆川さんにハマって色々読んだけれど、こんなに毒のある作品も書けるんだ…。皆川さんらしい華麗で耽美な世界観なんだけど、底知れない闇が広がっている。
    表題作のトマトゲームは、ラストにむけて物語が急降下していく様にゾッとした。
    登場人物たちがみんな狂っている。少年少女の若さゆえの狂気、過去の傷が膿み広がって産まれた狂気、さまざまな狂気がある。しかし獣舎のスキャットと蜜の犬はやばすぎでは…
    かなりグロテスクでショッキングな話もあるので、楽しく読める本ではない。だが、ここまでの狂気を読める本も中々ないのではないだろうか。

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    2021年07月31日
  • たまご猫

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    友人におすすめ頂いた作品。
    一番の感想は「この著者さん[結婚]に何か恨みでもあるんかな?」という事。

    短編集で読みやすい。作品の全貌がわかった時のゾワゾワ感が良かった。

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    2021年05月03日
  • U

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    ネタバレ

    「U」と書いて「ウー」と読ませるが、萩尾望都「ポーの一族」からの遠いこだまとも見做せる。

    1915年「U-Boot」(ウーボート)の章は、三人称。視点が寄り添う人物は、ティルピッツと、ミヒャエル。
    1613年「Untergrund」(ウンターグルンド)の章は、初めは三人称と見せておいて、すぐに手記という形式……一人称が潜んでいると判明する。
    また、手記は実は二人の合作であること、二つの時代の関係、書き手の熱意の不均衡、が比較的序盤で仄見えてくるが、この不均衡が中盤終盤でさらに揺らぐ。
    この「語りの形式」そのものがドラマチックだから、やはり皆川博子は信用できる。
    ある瞬間には「同じ獣の半身にな

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    2020年12月08日
  • 薔薇密室

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    死の泉という作品を読んだあとに、こちらの作品にあたりました。
    第二次世界大戦前後のドイツ、マッドサイエンティスト、政治や社会から隔絶された不気味な空間、登場人物たちそれぞれの運命の糸が絡み合うドラマチックな展開、などなど、死の泉と共通点がいくつもあるものの、ここでは全く異なる世界が繰り広げられ、新たな感動を得られました。こんな充実感に浸れる作品は中々出逢えません。

    長年にわたりソ連やドイツはじめ周辺国に翻弄され続けているポーランドのことも詳しく知ることが出来ます。なぜドイツとポーランドを舞台にしたのかは、最後まで読めば理解できるようになっています。勘のよい方は、もしかしたら結末を予想できるや

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    2020年12月02日
  • U

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    ネタバレ

    塩によって生かされて、最後は海水の中に沈む。潜水艇がふたりの棺となる。好き。

    ヤーノシュがオスマンの皇帝を守り支えたなら、彼は何かをなしとげられたのか。そういう展開にならないのがいいところなんですが…ヤーノシュの自己評価ちょっと低すぎるのでは…

    「双頭のバビロン」のふたりほどの絆が感じられなかったのも、ヤーノシュの自己評価のせいか。シュテファンはあんまり深く考えていなさそうな…
    シュテファンがどう思っていたのか、途中から記述がなくなるから分からないけれど。

    彼らの軌跡が文字として残ったのかは定かではないけれど、ミヒャエルたちの中に何かしらが受け継がれているのだろうなあ。

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    2020年11月19日