皆川博子のレビュー一覧
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ネタバレ初期作品群が中心の未単行本化の短編を集めた第二弾。こちらはより「こういうのも書いておられたんだ」というまっすぐなミステリや官能色強めなものもあり、やはり作者の懐の広さを感じるものばかりでした。
表題作や「致死量の夢」、「魔笛」あたりが艶めいていて個人的にはとても好きです。幻想混じりというより、人間の業の深さをえぐった話が多いように思います。「死化粧」は謎解きとしての物語の面白さのほかに、飄々とした語り口が良い意味で「らしくなく」、凄く新鮮でした。
近作の技巧と知識と幻惑さが極まった長編作品はもちろん大好きですが、こういった過去作品があってそれらがあるのだと思うと、大袈裟のようですが確かな「歴史 -
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物語の時代背景は、戦前から戦後。軍国主義の風が吹き荒れる風潮の中で、おそらく女性はその地位を不当に貶められたであろう。「少女」ともなればなおさらのこと。虐げられる存在たる少女は、一方で「女」としての独特の厳格な道徳性をも求められる。時代の波の中で、何気ない日常を送りながら、要求される「道」を少しばかり「外」れてしまう少女たちの物語が、本書には七篇収められている。
少女が日常生活の中で、おのれの心と周囲との小さな齟齬に気づいたとき、彼女の心は道を外れ始める。皆川博子はそんな少女の心情とそれとは無関係に流れてゆく日常生活を静謐に描く。文体のせいか、行間からはほのかな官能性が漂う。道を外れた少女の心 -
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壁に向かってオートバイで全力疾走する度胸試しのレース、トマト・ゲーム。22年ぶりに再会した男女は若者を唆してゲームに駆り立て、残酷な賭けを始める。背後には封印された過去の悲劇が……第70回直木賞候補作の表題作をはじめ、少年院帰りの弟の部屋を盗聴したことが姉を驚愕の犯罪に巻き込む「獣舎のスキャット」等、ヒリヒリするような青春の愛と狂気が交錯する全8篇収録。恐怖と奇想に彩られた、著者最初期の犯罪小説短篇集。(裏表紙)
トマト・ゲーム
アルカディアの夏
獣舎のスキャット
蜜の犬
アイデースの館
遠い炎
花冠と氷の剣
漕げよマイケル
今まで皆川さんの初期の作品は幻想と狂気が薄めだと思っていたのです -
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名言をあげるスレ、みたいなのは割と好き。でもって本を読んでてそういうのがあると、まぁ気にするような、気にしないようなで、意外と忘れるんだよなぁ。でも今回はいろいろと名言が散りばめられていて、さりげなく名言を吐きたいというあなたにぴったり!なんである。
「友情とは、誰かに小さい親切をしてやり、お返しに大きな親切を期待する契約である」と言ったのはモンテスキューだそうで。モンテスキューなんて20年くらいぶりで聞いたわ。何やったかは覚えてないけど。
「自由を!と叫ぶ連中が僕の自由を阻害している」なんてなかなか良いね、好きよ。
「風邪は、放っておけば一週間続くが、治療すれば七日間で治る」って、一休さんか -
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絵師として花開きたいともがく英泉の葛藤は乾いている。
乾き過ぎて、ちょっとした摩擦で燃え上がりそうなほど。
けれど、彼を取り巻く人の情や思惑はとにかく重く湿っている。
そしてその情が英泉の筆に乗り移り、紙を湿らせ、絵を描かせる。
春画にはあまり描かれないという吉原の遊女を好んで描いた渓斎英泉。
彼が筆を執り、成功、そして没するまでを書いた「みだら英泉」。
有名一門との確執、春画が弾圧される時勢、実在する絵師たちと英泉の交流……
あたかも江戸の町並みを見てきたかのような、匂いすら立ち上る筆致は、確かに情緒あふれる時代小説のものだ。
しかし、あくまでも話は英泉と妹たちを中心とした生臭くも艶っ -
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絢爛と酸鼻。
この両極端をここまで描出できる作家。見事としか言いようがない。
豪華な錦糸を縦横に編み込んだような文章からは、腐臭すら漂う。
実在した歌舞伎役者澤村田之助の存在感の、なんと艶やかで無残なこと。
傲慢で鼻持ちならない言動ながら、まさに「役者」の業を煮出して全身に染め抜いた、天賦の才。
田之助はその美貌すら、狂って感じられる。
三すじの、淡々としながら、けれどほのかに覗く残酷がなんともリアル。
全編に漂う淫猥さが、あまりに惨い田之助の悲劇すら彩ってしまう。
この激しい生き様そのものが、豪華な芝居だったのではないか……
夜明けに見た悪い夢のよう。美しい。 -
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久々に“純文学”を読んだ、と思った。
著者が70代の後半頃に書いたという作品集。エンターテインメント性は感じないけれど、そういう枠とは別の意味でとても面白いというか、興味深い。
戦中、そして戦争の前後の昭和の時代の物語が多くを占めていて、そこはかとなくエロスとタナトスが漂っている。
物語の中身や流れというよりは読んだときの感覚を大事にしたくなるような作品ばかりで、だから今回は敢えて詳しい中身には触れないでおく。
時系列の飛び方に特徴がある物語もあって、きちんと読んでいないとその繋がりを見落としてしまう可能性もあるのだけど、分かるとその繋がり方に感心してしまう。
死というものが常に漂うから、 -
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少年十字軍の悲劇を知っていれば
この子達にどんな結末が待っているのか
それを作者がどれだけ耽美、爛れた
退廃的な世界に描くのかと思いながら
読んでいったのだけど。。。
神への信仰を表面にあらわしながら
俗な人間の欲にまみれ浸りきった大人たちに
(あぁ大人の世界を縮小版で濃縮している
レイモンにもか)利用され、試され、裏切られ、
翻弄される子供たちが、ただ一心に信じている
苦難からの解放、自由な世界、導いてくれるはずの
エティエンヌ。
染まって汚れたものも、純粋なものも、全て背負い
その身を削りながらたどり着く先は。
ぜひ読んで、余韻に浸ってみてください。