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13世紀、フランス。 “天啓”を受けた羊飼いの少年・エティエンヌの下へ集った、アンヌ・ルー、ベッポら数多の少年少女たち。 彼らの目的は聖地エルサレムの奪還。 だが国家、宗教、大人たちの野心が行く手を次々と阻む――。 直木賞作家・皆川博子が作家生活40年余りを経て、ついに辿りついた最高傑作。
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Posted by ブクログ
何とも冷静であり、シニカルな小説だと思った。 そして最後まで、「神」と「奇跡」の正体についての謎が明かされていない。 結局、発端となる事件の真相については、それが人為的に仕組まれたことなのか、それとも本当に神による奇跡なのか、断定的には書かれていない(と私は読んだ)。 その正体が最後まで巧妙に隠さ...続きを読むれていて、まるでミステリー小説のようにスリリングですらある。 見ないで信じる者は幸いである。 それならば、見た上で、それでも信じ続ける者はどうだろう? 哀れだろうか? 不幸だろうか? 神はいるのか? 奇跡は誰が起こしたのか? 分からないけれど、少なくとも歴史を作り出したのは人間だ。
青少年向けのため、いつもの皆川先生らしくないかもね(笑… 叙述トリックもない ドロドロな展開もない、芳醇な描写や余韻たっぷりのエンディングが相変わらずいつもの皆川先生です。昔十字軍東征の映画を観たが、今回小説のベースの少年十字軍のお話は知らなかった。今度古屋先生の漫画も読もうかな〜
少年十字軍の悲劇を知っていれば この子達にどんな結末が待っているのか それを作者がどれだけ耽美、爛れた 退廃的な世界に描くのかと思いながら 読んでいったのだけど。。。 神への信仰を表面にあらわしながら 俗な人間の欲にまみれ浸りきった大人たちに (あぁ大人の世界を縮小版で濃縮している レイモンにもか)...続きを読む利用され、試され、裏切られ、 翻弄される子供たちが、ただ一心に信じている 苦難からの解放、自由な世界、導いてくれるはずの エティエンヌ。 染まって汚れたものも、純粋なものも、全て背負い その身を削りながらたどり着く先は。 ぜひ読んで、余韻に浸ってみてください。
13世紀に実際にあった少年十字軍をテーマに描かれたお話。 難解そうに見えて、意外にさらさらと読める。それは、登場人物は多いのに、それぞれが生き生きと魅力的に描かれているせいかも知れない。 エティエンヌに心酔する子どもたち、信じてはいないけれど追随する者、利用しようとする者、そして訳も分からずただ参...続きを読む加する者。様々な思惑が絡み合いながら旅は続く。 神の不在、死後の世界と無宗教の人間には正直理解できない部分はあるけれど、中世的なちょっと暗くて閉鎖的な雰囲気は伝わってくる。 身勝手な大人たちに腹が立つと同時に、エティエンヌがいれば大丈夫と無邪気に繰り返す子どもたちの残酷さにも慄然とする。すべてを背負い込もうとするエティエンヌが痛々しくて切ない。 でも、史実よりも少し希望の持てるラストに救われる。
一点の染みもない潔癖な少年と無垢な子供たちが、乳と蜜の流れる聖地を目指す。罪に汚れた大人たちに利用されながらの旅の果て、新たな試練の始まりのラストに光明と切なさが入り交じる♪。
児童書だけど、ちゃんと皆川博子の歴史ロマンものだし幻想小説だった。悪魔サルガタナスと青い蝶の描写のなんとも言えない美しさ、ジャコブとドミニクのやり取りなど大人サイドの話をもっと掘ったら完全にいつもの皆川博子になるんだろうな… 少年十字軍自体が史実とのことで驚いたけど、興味深い。
面白かったです。 13世紀のフランスで、神の御告げを受けたエティエンヌを中心とした子供たちがエルサレムを目指したという史実を元にしたお話でした。 児童書になるのか、皆川さんにしては毒や闇は少なめでしたが引き込まれました。 エティエンヌやルー、アンヌという初期の子供たちを取り巻いたり阻んだりする大人た...続きを読むちの思惑が醜く残酷なのですが、この混沌とした時代には仕方ない事だったのかもと思いました。歴然と身分の差があって重税に苦しんで。 記憶を無くしているガブリエルがとても好きな登場人物だったのですが、彼が到達する「神はおわさぬ。教会も聖職者も、巨大な嘘にほかならぬ」という「真実」が重く垂れ込めます。 死とは〈無〉。壮絶な虚無。でもそこには、命が満ちている。。 皆川さんはやっぱり、児童書でも容赦なくて良かったです。毒や闇は少なめでも、無くはないので。
奇跡を起こす羊飼いの少年エティエンヌと、そこに集う少年少女と狡猾な大人達がエルサレムへ向かう物語! 弩使いの少年ルーは誰よりも頼りになります。 フルク修道士はムカつきます。 レイモンにもムカつきます。 ピップの『エティエンヌが居るから大丈夫』にも段々ムカついてきます。 キリスト教の失敗は教会と...続きを読むいう組織を作った事かと思います。 それと金を払えば罪が赦されるというのも教会と罪人が得をして被害者は救われないよね!とも思えます。 何れにしても信仰というのは他人に迷惑を掛けず自分の為に心の中だけで祈っていれば良いのにと思います。
史実に基づいた物語。 信頼と疑心、純粋と不純、真実と嘘などたくさんの人と思惑が交錯しながらエルサレムに向かい最終的に子供たちが出した結論に、1つの人生の歩みを見たような気分になった。 修道士や騎士、神や悪魔などが作中や文面に出てくるものの思っていたほど宗教色の強さもファンタジーも感じなかった。そ...続きを読むれだけリアリティーのある安定した文章で、とても読みやすかった。
世界史上、有名なエピソードに基づくお話。 「少年十字軍」と言えばいい印象を持っておられる方は少なかろう。 当時のヨーロッパや聖地をめぐる云々、縁のない日本で育ったものにはなかなか理解しがたいものがあるし、安穏と状況に納得いかぬことが多々ある。 それはおそらく、当事者においても同じことであったろう...続きを読む。 哀れな少年と彼をめぐる仲間たち、愚かな大人、誰一人幸せを享受できぬまま終わるストーリー。 この先、彼らに平安が訪れるかどうか、かすかな希望すら打ち消される不安感。 ヨーロッパや中東、アフリカ北部は歴史的にもこの先安定することはないことを知っている現代のわたしたち。 悲哀のもとに終わってゆくであろう彼らに、つかの間の安息を願ってやまない。 著者は昭和5年生まれの方、ということだが、古さを感じさせないどころか、新人作家のようなみずみずしさを含んでいる。故に作品中の哀れな人々の描写を冷静に受け止めることができた。 前知識がなくとも楽しめる1冊なので、機会があれば是非読んでいただきたいお話である。
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