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第一次大戦下のドイツ・ポーランド国境近く。脱走兵コンラートは古い僧院に身を寄せる。そこでは所有者のホフマン博士が、人間と薔薇を融合させる常軌を逸した実験を行なっていた。コンラートはある思惑のもと、博士に協力を申し出る……。そして十数年後、ナチス・ドイツの弾圧から逃れたポーランド人の少女ミルカが見た、僧院の恐るべき真実とは? 戦争と美への欲求という人間の深い業を流麗な筆致で描く歴史ミステリ。
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Posted by ブクログ
「薔薇密室」4文字が象徴するかのような格式張った美が称えられ、 理想とする美を追求する、理想とする物語を追求する悲しい人々。いや悲しいのか。 内容は知らないほうがいいので、とりあえず読んで 全文はブログで www.akapannotes.com
作中作と作中現実(?)が入り混じる物語。読み解こうと進めば進む程、こんがらがってくる。薔薇と人間の融合、等というモチーフを扱いながらもSFに走ること無くミステリーとして仕上がっていて、本当に素晴らしい小説だと思う。作中の言い回しを借りると、どんなに不幸な人間をも陶酔させる力を持った物語です。 第一次...続きを読む世界大戦が舞台となっていて、最初は取っつきにくいかと思ったけれども、一度世界に引き込まれたらさくさく読めます。
幻かそれとも現実か 美しさと醜さが入れ混じり 官能的な物語に浸れる一冊 個人的に好きでしたが好き嫌い分かれると思います
久しぶりに続きが気になって一気に読んでしまった。 カテゴリー分けがこんなにも難しい作品は珍しい。 ミステリーとして読むと正直言って結末は物足りないと思う。 でも面白かった。 美しくて哀しい。 ミルカとユーリクの章が個人的にツボにはまってしまった。 思わず久しぶりにきゅんとした。 またじっくり...続きを読む読み返したい。
死の泉という作品を読んだあとに、こちらの作品にあたりました。 第二次世界大戦前後のドイツ、マッドサイエンティスト、政治や社会から隔絶された不気味な空間、登場人物たちそれぞれの運命の糸が絡み合うドラマチックな展開、などなど、死の泉と共通点がいくつもあるものの、ここでは全く異なる世界が繰り広げられ、新た...続きを読むな感動を得られました。こんな充実感に浸れる作品は中々出逢えません。 長年にわたりソ連やドイツはじめ周辺国に翻弄され続けているポーランドのことも詳しく知ることが出来ます。なぜドイツとポーランドを舞台にしたのかは、最後まで読めば理解できるようになっています。勘のよい方は、もしかしたら結末を予想できるやもしれません。 一番素敵なポイントは、主人公のうちの一人(この作品は見方によって主人公が変化します、そこも見所です)である、ミルカという薄幸の少女の内面描写です。 彼女の持つコンプレックス、恋への憧れ、健気さ、打算、家族への愛と本心、、様々な場面でミルカ自身が語ります。女性の方なら特に、ミルカの、ユーリクに対する自然な愛情と、一瞥しかしていない端正なヨアヒムに対する盲目的な恋慕が共存する複雑な乙女心に、グッと来るかもしれません。 大抵の人が直視したくないような自分の弱さや醜さを、よくもまぁこんな自らえぐり出してくれるな笑、とツッコミも入れたくなるのですが、これだけ描写してくれるからこそ、最初から最後まで彼女のことを自然と応援したくなり、結果どんどん皆川さんワールドにはまりこんでいくことになります。 皆川さんは、極限状態にいる人間のなかの美徳&悪徳をほんとうに違和感なく表現してくれるので、どのキャラクターも厚みがあります。なぜこのキャラクターがここでこんな行動をとるのか、ちゃんと筋が通っています。万が一わからなくても、読み進めれば必ずや理解できるよう仕掛けています。そのため、 [なんだこのキャラ、ウザいな。このキャラは嫌い] と感じることは基本的にないと思います。 読み進めるほどに、何が真実で何が夢想なのか、今どこの視点にたってる描写なのか、徐々に倒錯していく耽美な混沌に、溺れること間違いなしです。 是非手に取ってみてください。
とても面白かったです。仄暗い世界観にひきこまれ、くらくらしながら読みました。どこまでが幻覚なのか、正気の在り処を見つけられませんでした。戦時下の描写は胸に痛く、皆川さんにしか描けないだろうなと思ってしまいます。薔薇と若者や少年の融合も狂気的でしたが、綺麗だろうな。幻想的な物語でした。
美しいバラの花と腐乱した死臭、 生きた精液がかおるような妖しい序盤の物語から一転、 謎の語り手の物語に。 そして、語り手は少女に移り。 物語は視点を変えながら、事実か創作か幻覚か夢想か あやふやになる記憶と現実が、ミステリーの騙しの ためではなく、この物語の世界として溶け合い 一気にラストまで読み手...続きを読むを導いていく。 そして、それまでの世界を一気に転換してしまう ような最後の最後。人が現実の中で 爽やかな愛を胸に力強く立ち上がる姿よ。
とても良い香りで、味も抜群の料理を食べていると、不意に奥歯で砂利を噛んでしまった。 温かくて手触りの良いストールを巻くと、ちょうど首の後ろの部分にに何かの棘がついていた。 靴に入り込んだ小石。 わずかに漂ってくる悪臭。 そんな決定的に不愉快だとは云えないまでも、落ち着かない気分になる物語。
なんて美しく、退廃的で、歪んだ世界! 「死の泉」同様、どっぷりと皆川ワールドに浸ってしまいました。 美青年を薔薇と結合させ、永遠の美しさを保つ。 「死の泉」で、少年の美声に異常なまでに執着した医師を思い出します。 夢と妄想と現実。読んでいるうちにその境目が曖昧になる。 何冊か読んできましたが、皆...続きを読む川さんの真骨頂はそこなのかな、と。 美しい悪夢のような物語に溺れてしまいそう… 一読しただけでは、とても理解できたとは言えませんが、 幻想的な世界観をたっぷりと堪能できました。
第1次世界大戦から第2次世界大戦にかけてドイツ・ポーランドの国境近くの修道院で行われた秘密の実験。 脱走兵に、ポーランドの少女、修道院の作男、と、語り手は変動していく。でもって、どれも<信用のならない語り手>なのだ。 なので、翻弄され困惑し、気がつくとがっつり世界に取り込まれている。 ...続きを読むにしても、薔薇と人間を融合させるという実験が、あの病気の治療云々につながっていくとは…。 とはいえ、まぁ、どれもこれも共感できない人物のオンパレードで、ある意味、人間の基本的な嫌な部分、というか自分自身が嫌悪していることを凝視させられる気になる。 やっぱ、怖いです、皆川博子。 でも、癖になる面白さ。
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