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Posted by ブクログ
絵師として花開きたいともがく英泉の葛藤は乾いている。
乾き過ぎて、ちょっとした摩擦で燃え上がりそうなほど。
けれど、彼を取り巻く人の情や思惑はとにかく重く湿っている。
そしてその情が英泉の筆に乗り移り、紙を湿らせ、絵を描かせる。
春画にはあまり描かれないという吉原の遊女を好んで描いた渓斎英泉。
彼が筆を執り、成功、そして没するまでを書いた「みだら英泉」。
有名一門との確執、春画が弾圧される時勢、実在する絵師たちと英泉の交流……
あたかも江戸の町並みを見てきたかのような、匂いすら立ち上る筆致は、確かに情緒あふれる時代小説のものだ。
しかし、あくまでも話は英泉と妹たちを中心とした生臭くも艶っぽい関係性。
英泉を巡る人々の情動が、この魅力ある男に「女」を描かせる原動力となっている。
その濃密な人間模様に、読者は「気を悪く」して、そしてそっとほくそ笑む。
皆川節に酔う。
生真面目さに、ぎりりとした癇性すら湛えるお津賀。
掴みどころなく、くたくたと男にまつわるおたま。
二人の姉の在りようの強さから弾かれ、儚さの漂うおりよ。
じわじわと、妹たちの精を吸い取って、英泉の絵が描かれていく。
とはいえ、兄の心身に絡み付き、異形の朝顔を咲かせているのはお津賀のように思えた。
自分ではまっとうと思い込んでいる女の、歪んだ翳り。
失笑を催すほど、哀れだ。一読者に過ぎない私によく似ている。
英泉は女の何を愛したのだろうなあ。
私は愛されないかもしれない。ふと思った。そこもお津賀に似ている。
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