皆川博子のレビュー一覧

  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    18世紀ロンドン、外科医ダニエルの解剖学教室の暖炉からあるはずのない屍体が次々と発見され、盲目の治安判事ジョン・フィールディングが事件解決に乗り出す。
    二段、三段構えの展開にすっかり騙されたけれど、いっそ痛快なぐらいで文句なしに面白かった。ただ、その動機がちょっと哀しくほろ苦い。

    解剖が神への冒瀆とされ、さまざまな偏見にさらされていた時代に、医学の進歩のために力を尽くす彼らのおかげで、今の医学医療があるのかと頭が下がる思い。

    結局ナイジェルは謎が多いまま。続編も出てるみたいなので、そこで少しは分かるかな。続編も楽しみ。

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    2017年12月21日
  • 猫舌男爵

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    「猫舌男爵」三周目。文庫化をきっかけに久しぶりに読んだ。
    やっぱり「睡蓮」と「オムレツ少年の儀式」が好きすぎるんだけど、別のアンソロジーで読んだ「猫舌男爵」にどんどんはまってきた。ページが進むにつれてすべてが滑稽にとっ散らかるように感じて、けれど最後はみんな(たぶん)解放されて幸せ、みたいな。千街さんとか日下さんとか実在の人物が登場したり。あと解説ヤン・ジェロムスキって目次で見てすごくわくわくしてた。ヤン・ジェロムスキ文体そのままだった。ヤン・ジェロムスキ、架空の人物。

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    2015年01月21日
  • 猫舌男爵

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    5篇の短編集。

    読後に「ヤン・ジェロムスキ」の名前をググったのは私だけではないはず。
    それから「エーディット・ディートリヒ」と、「ジークムント・グリューンフォーゲル」の名前も。
    引用形式というスタイルで、史実や実在人物名もちょこちょこ出てくるもんだから、これははたして創作なのか? それとも史実なのか? と、訳が分からなくなってしまった人がいるに違いない。

    「オムレツ少年」と「太陽馬」は歴史ものに分類できると思うのだけれど、これらも「史実」と「創作」の境目が非常に曖昧だったように思う。
    特に後者の方では、ロシア・ソヴィエトの歴史を淡々と語る割と長いパートがあるのに、読後の印象としてはやっぱり

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    2014年12月12日
  • 薔薇忌

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    演劇をテーマにした短編集。
    演劇と皆川博子なんて、相性が良すぎる。
    この人の作品はいつも息が詰まる、いい意味で。

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    2014年07月22日
  • 蝶

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    なんて幻想世界…
    ずっと入り浸っていたい(それは、出来ないけれど)
    薄暗くて、ねっとり湿っていて、甘くてキツい香りー
    毒々しくも、魅力的な物語ばかり。

    例えば、こんなの。

    蝶の胴だけ食べる伯母
    二階に住む住人
    足の傷口に食いつく何か
    眼窩に挿す花々


    うん、いい。
    何か覗いちゃいけないものを好奇心で見てしまう、背筋がゾクっとする感じ。クラクラする。

    8篇あるうちの「妙に清らの」、「龍騎兵は近づけり」が特にお気に入り。

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    2014年05月08日
  • 少女外道

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    再読。数ある皆川作品の中でも特に好きな短編集。
    「少女外道」というタイトル通り、「少女」という存在が発見した(見る側にとっては発露というほうがしっくりくるような)「外道」についての作品ばかりが収められている。黒田夏子さんの解説を読んで気づいたけど収録作中で涙を流した少女は「祝祭」の少女だけ。涙を流すという行為が少女としては一等外道。

    何が外道だこれしきと感じる人もいるかもしれないけれど、客観的に見てどの程度外道であるかなんてどうでもよくて自分を外道だと思うその心が大事なのです。

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    2014年05月02日
  • 蝶

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    美しい。ほんとうに、美しい小説集だ。

    作者や作品についてなんの予備知識もなく読み始めて、ひといきでその匂いに引き込まれた。さまざまの美しい詩句が、解説にある通り一篇の中に「象嵌」されている。詩句の呼び起こす情景、それを借景として、あるいは幽霊のごと溶け込むように同化して、はるか過去にあったはずの場面をここに現存させる。
    それぞれの物語には歴史の翳さす暗い色調のものが多く、黴臭い死の匂いがまつわりついて、決して清潔ではないのに、この美しさはいったい、なんなのか。
    どの話もひとしい密度をもって訴えてきた。八篇、どれも好きであまり差がないというのもすごい。あえてあげるならやはり「龍騎兵」かしら。

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    2013年09月12日
  • 薔薇密室

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    ネタバレ

    「死の泉」では読後、というよりは最後の一文でぷんと濃いウイスキーのような悪の匂いが立ち上った。
    本作では中井英夫直系の人間=薔薇というオブセッションを受け継ぎながら、なおかつナチスを題材に取りながら、最後にはさわやかな柑橘の香りが。
    これはあくまでも良きにつけ悪しきにつけではあるが。

    視点の多様性、語ること書くことへの思索、幻想の混入、など真骨頂。

    いい気分で酔わせてもらった。

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    2013年03月22日
  • 薔薇密室

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    作中作と作中現実(?)が入り混じる物語。読み解こうと進めば進む程、こんがらがってくる。薔薇と人間の融合、等というモチーフを扱いながらもSFに走ること無くミステリーとして仕上がっていて、本当に素晴らしい小説だと思う。作中の言い回しを借りると、どんなに不幸な人間をも陶酔させる力を持った物語です。
    第一次世界大戦が舞台となっていて、最初は取っつきにくいかと思ったけれども、一度世界に引き込まれたらさくさく読めます。

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    2013年02月22日
  • 倒立する塔の殺人

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    少女たちの世界。複雑に絡み合う関係。
    戦争中という非常時にも少女は少女であることを忘れていないのがいい。
    物語はまるで入子になっているように感じ、前半は、今自分は何を読んでいるのか、なんの世界に入り込んでいるのかよくわからない。
    まるで、夢の中でまた夢を見ているような感じである。

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    2013年02月06日
  • 蝶

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    戦前〜戦後にかけての個人の喪失感を描いた作品群。ただひたすら文も話も美しいです。割とどの話も後味の悪い終わり方をするのですが、読後感はさらっとしてます。久しぶりに当たりを引いた気分で、他の作品も読んでみようかと思ってます。

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    2013年02月05日
  • 倒立する塔の殺人

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    ここ最近の私的ヒット本。
    純幻想文学というよりミステリー風味。
    一文一文に酔いしれた。数行しかないが、上級生と踊るシーンが特にお気に入り。
    もっとこの世界に浸っていたいと思えた一冊。

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    2013年02月05日
  • 蝶

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    乱歩の「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」がしっくりくる短編集。
    作品はすべて戦前から戦後を舞台に、戦前の生活は夜の夢のように追想される。

    各作品に引用された詩歌が印象に残って、1編は20分くらいで読めるみじかさでも読んだ後に想像が広がった。

    時代背景は共通しているが、連続性はないのでどこからでも読むことができるが、「艀」と「想い出すなよ」や、ラストの「遺し文」の並びも美しいと思う。

    特に気に入った「幻燈」は映像作品でも見てみたい。

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    2013年01月30日
  • 薔薇密室

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    幻かそれとも現実か
    美しさと醜さが入れ混じり
    官能的な物語に浸れる一冊
    個人的に好きでしたが好き嫌い分かれると思います

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    2012年12月14日
  • 蝶

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    あさましくも美しい人間の心の闇、そして狂気を、鉱物に喩えられるような硬質な文章で描いた短編集。
    なかでも個人的に大好きなのが『妙に清らの』。ため息が出るほど美しい。
    ゾクゾクするぜ!

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    2012年08月03日
  • 薔薇密室

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    ネタバレ

    ミルカ側の物語が好き。
    ユーリクの愛情がまっすぐ過ぎる。せめてミルカが生きてる事を知って欲しかった。

    読み終わってから冒頭部分を読み返してさらに切なくなった。

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    2012年06月06日
  • たまご猫

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    ネタバレ

    一言で表すと、美しくて怖い物語でしょうか(ベタですいません)。

    表題作の「たまご猫」が気に入りましたが、どの話も面白かったです。
    「をぐり」や「厨子王」などは実在の古典がベースになっているのでしょうか。
    この「厨子王」ですが、以前山椒太夫を読んだ時のことを思い返して、こんな描写あったかな?と感じたのですが、皆川さんがお考えになったのでしょうか。
    それか、私が読んだものが読みやすいように(あるいは子ども向けに)変えられていたものかもしれませんが。

    怖いと言っても、どのお話も震えあがるほどではないのですが、「骨董屋」はゾッとしました。
    エツ子とリュウも怖いけど、麻子はてっきり小島との結婚を断る

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    2016年08月16日
  • 薔薇密室

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    久しぶりに続きが気になって一気に読んでしまった。
    カテゴリー分けがこんなにも難しい作品は珍しい。
    ミステリーとして読むと正直言って結末は物足りないと思う。

    でも面白かった。
    美しくて哀しい。


    ミルカとユーリクの章が個人的にツボにはまってしまった。
    思わず久しぶりにきゅんとした。

    またじっくり読み返したい。

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    2012年04月13日
  • 蝶

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    短編が八篇収載されているが、どれも一本の映画になりそうなくらいにドラマティックだ。日本、近代の闇から生まれた人間像を、美しく哀しく垣間見せてくれる文章は、直裁でありながら鮮やか。各々の物語に散りばめられた、詩や短歌も美しい。

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    2012年02月07日
  • 伯林蝋人形館

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    複数の登場人物の視点による短編から成る一つの物語。
    解説の方が作ってくれた年表が、とても役立ちました。
    舞台は、第一次大戦後のドイツ。
    そんな混沌の時代に生きる、6人の男女。
    それぞれの思惑は当然違うから、読んでいて混乱する。
    久々に頭を使いました。
    皆川博子は、やっぱり凄い。

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    2011年11月06日