皆川博子のレビュー一覧

  • 花闇

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    幕末から明治にかけての歌舞伎界.三代目澤村田之助の壮絶な演じることへの妄執を三すじの目をとうして物語る.愛憎半ばする気持ちを芳年に訴えるところが哀れでもあり,そこまで拘れる人に出会えたことは幸せでもあるのだろう.美しさとは何かという事をとことん突き詰めた芸,この何かに魅入られた世界,怖いようである.

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    2017年04月05日
  • 花闇

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    澤村田之助、という名を、寡聞にしてこの作品ではじめて知った。歌舞伎も、日本文化のひとつとしての興味こそあれ、見に行ったことさえまだない。当然、世界として体験することもはじめてで、慣れない雰囲気にしばらくは戸惑った。
    しかし、物語を通して垣間見せてもらった世界には、見るものを引き摺り込む凄みがあり、また、巨大なエネルギーが渦を巻いていた。数々の御題目への自主的恭順を経て「きれい」になってしまった現代では感じにくくなっているものだと思う。ナマの感情、熱、冷徹、喧騒、におい……皆川作品ではそうした「生きている」人間が、完成された物語の奥でたしかに息づいている。右へ倣えに変化していくことのできる「社会

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    2017年03月12日
  • 少女外道

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    いつもながら、読む手が止まらなくなる本。
    どんな内容なのか、全然説明できないのに、面白い。
    登場人物に感情移入もできない。
    作家が高齢だからか、戦時中の話が多いが、祖父が帝国陸軍だったため理解できる。
    哀しいけど、仕方がない現実。
    そして、狂ってるのか正気なのか、その境にいるのかわからない、つかみ所のない女性がよく出てくる。
    その目を通じて描かれる世界の奇妙さ。
    やはり、好きだ。

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    2017年02月28日
  • 双頭のバビロン 下

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    めくるめく物語の奔流。
    結末に辿り着いた時、書かれた人物たちの生を想い、胸を熱くする。

    そうか、そう生きたのか。辿り着いたのか、と。

    皆川先生、物語を紡いでくれて、私たちに読ませてくれて、本当にありがとう。

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    2016年12月25日
  • 伯林蝋人形館

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    感想を書き忘れていたことに気が付いて驚いている。本書は現在わたしが皆川作品の中で最も愛読しているものであり、幻想に踏み出すわたしの危なっかしい一歩を、整然とした理論の上に支える一冊である。熟慮と練達の上に描かれる風景は生々しく、すべてが明かされるラストには思わずあっと言わされる。すべてが偽りである可能性を残しているのが、この作者の筆力の凄まじさを感じさせる。醜い場面をいくつも描きながら、しかし、硝子のように澄んだものを透かしてみせるのである。

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    2016年11月19日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    『開かせていただき光栄です』から5年経過後の続編。
    あの事件後解剖教室は解散、エド、ナイジェルは行方不明のまま。
    みんなの状況も少しずつ変わっている。

    何とも切ない展開だった…
    事件は一応の決着を見たけれど、失ったものは大きいし取り戻すことも出来ない。
    願わくはダニエル先生の下、無事に戻ったエドとクラレンス含め、もう一度和気藹々と解剖にいそしむ姿が見られたらと思うけれど(何とかベイカーさんの幸せになった姿も)、そんな続編を望むのは贅沢なんでしょうねぇ…

    アンを苦手にしていたネイサンが、話が進むにつれて何気に懐いて来てるのがちょっとホッとしたところ。

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    2018年11月08日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    『開かせていただき光栄です』の続編なら
    読まずにはおれない。

    「ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ」と謎の文句
    前作同様に序盤から引き込まれました。

    終盤の謎解きがちょっとバタバタあわせにいったみたいに
    感じたので残念、でも読み応え十分。
    前作と合わせて★★★★★五つ星、楽しかった。

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    2016年10月28日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    このミス3位、文春ミステリー3位、本格3位

    気になってた本ですが、海外小説でないのに
    登場人物が外人、カタカナ名かと躊躇してました。
    ずっと聞かせていただきと勘違い、告白展開ミステリー?
    と思ってたら開かせていただきなのですね。
    序盤、登場人物ページパラパラ見返し、難語もパラパラとスマホで検索しながら読み始めると、18世紀ロンドンと相まって、キャラ立ちも面白い。
    期待を上回る面白さ、ワクワク、ライトな重厚感?。
    最初から終わりまで、テンポよい、ずっと面白いからいいなぁ。

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    2017年04月28日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    切なかった…

    『開かせていただき光栄です』の続編。
    前作でダニエル・バートンの元を去ったエドとナイジェルの顛末書。

    ナイジェルの悲しい過去は途中読み進めるのが辛かった。
    サー・ジョンが法と心の正義の狭間で苦しむのがおいたわしい。

    登場人物が多くの意味で誰かに献身してるからか、身を切るように切なくも優しい物語という印象。

    前作同様、切なくも希望はある終わり方。
    けれど前作ほど晴ればれできないのは、時の流れによって少年たちはもう青年になってしまい、私もまた年を経たからかもしれない。

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    2016年07月24日
  • 蝶

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    この作者、どうしてこんな小説が書けるのだろう。
    子供のもつイノセンスと、愛欲と、さらに大人にも備わるイノセンスと、愛欲。
    「たまご猫」などと比べて、異様に密度が濃い。

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    2016年07月14日
  • たまご猫

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    初めて読む皆川作品集。
    『たまご猫』『をぐり』『厨子王』『春の滅び』『朱の檻』『おもいで・ララバイ』『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』『雪物語』『水の館』『骨董屋』の10篇。

    どの短編も、短編の鏡というべき、構成のひねり、あっといわせる結末、虚実の反転、が描かれる。
    そして一文の無駄もない文章。
    茫洋と闇の中にゆっくりと沈み込んでいくような、えもいわれぬ恐さや不気味さを感じる。

    たまご猫、春の滅び(雛人形のライトモチーフ)、朱の檻(座敷牢への取材)、骨董屋(骨の笛)、が気に入った。

    解説の東雅夫も書いている通り、幽霊小説。
    幽霊、異世界、幻想によって現実の世界が一変する、小さい

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    2016年07月13日
  • 双頭のバビロン 下

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    文章から、声ばかりでなくにおいさえ感じられる。描写されるもののにおいではない。作品自体が放つ、腐爛直前の果実のようなにおいだ。陶酔と眩惑に包まれ、自分自身に内含されたり外部から刺激してきたりする登場人物たちの温度に親しみ、或いは鼓動を速めた。今は何を書いても、作品に魅せられた人間による下手な物真似になってしまう気がするが、それでもこの感動を残しておきたく思う。

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    2016年01月18日
  • 双頭のバビロン 上

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    圧倒的な、何が本当で何が嘘かもわからないまでに該博な知識と、人間としての魅力に富んだ登場人物たち。謎と、読み進めずにはいられない引力のようなものがそこへ塗り込められたように加わり、次から次へとページを捲らせる。気付かぬうちに、幻想と現実が絡み合う中へ誘われている。まだ上巻しか読み終えていないが、下巻が楽しみでもあり不安でもある。だが、きっと手に取ってページを、止まることなく捲り続けてしまうのだろう。また、文の端々に見られる批判的……批判的? な精神に、皆川博子氏は静かで恐ろしい作家だと、強く思った。

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    2016年01月17日
  • 蝶

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    短編集。人間の「生という凶暴性」が、終戦後の時期に「自由」や「民主主義」を掲げていて、そのことを忌んでいたという風にも読み取れる。しかし実はそれよりも、人間のある部分、狂奔するのとはまた違う、「生きている」ナマの部分を繊細かつ骨太な文章で描き出しているように感じた。やわらかい、あやうい美しさが頭を内から照らし出すようであった。

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    2015年12月19日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    すごく面白かった。
    死体の解剖教室の先生と弟子たちが重要な登場人物だけど、そんなにグロテスクな描写はない。
    最後まで、真相はつかめず。
    わたしは犯人の1人は本当は女の子なんじゃないかと推測したけど、見事に外れた。
    まだまだ背後に事情が隠れていそうな感じがする終わり方だった。

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    2018年03月20日
  • 双頭のバビロン 下

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    ネタバレ

    書く作品書く作品すべてが代表作といってもいい奇蹟の作家。
    作者の入れ込む結合双生児というモチーフを題材に落とし込みながら、往時の風俗、幻視の街、執着にも近い感情を、小説に織物していく。
    陶酔するしかない。

    ゲオルク―「きみ」(エーゴン・リーヴェン)
    ユリアン―ツヴェンゲル

    ぼくはきみを慰めたいのだ

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    2015年10月01日
  • 双頭のバビロン 上

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    ネタバレ

    書く作品書く作品すべてが代表作といってもいい奇蹟の作家。
    作者の入れ込む結合双生児というモチーフを題材に落とし込みながら、往時の風俗、幻視の街、執着にも近い感情を、小説に織物していく。
    陶酔するしかない。

    ゲオルク―「きみ」(エーゴン・リーヴェン)
    ユリアン―ツヴェンゲル

    ぼくはきみを慰めたいのだ

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    2015年10月10日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    最後の二行のためにある長編小説。
    最後の二行だけで、ミステリーが切ない愛の物語になる。

    皆川先生天才か。

    人物の多さに覚えるのが大変でしたが、「それより読み進めたい」と思わせる謎に次ぐ謎。
    しょっぱなは「ラピュタ」を思わせるファンタジー性に満ち溢れ、けれど陰惨な事件、衝撃の事実になだれ込む怒涛の展開。
    奇妙な楽器を巡る事件、ナイジェルの過去が絡み合う……

    構成も無駄がなく(大変入り組んではいるが)、これだけの人数、伏線を一人一人に役割を持たせ、ちゃんと収めているところが本当にスゴイ。
    傑作だと思う。「開かせていただき光栄です」よりずっと読み応えがあった。

    「開かせて~」から出ている登場

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    2015年07月01日
  • 少年十字軍

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    何とも冷静であり、シニカルな小説だと思った。

    そして最後まで、「神」と「奇跡」の正体についての謎が明かされていない。
    結局、発端となる事件の真相については、それが人為的に仕組まれたことなのか、それとも本当に神による奇跡なのか、断定的には書かれていない(と私は読んだ)。
    その正体が最後まで巧妙に隠されていて、まるでミステリー小説のようにスリリングですらある。

    見ないで信じる者は幸いである。

    それならば、見た上で、それでも信じ続ける者はどうだろう? 哀れだろうか? 不幸だろうか?

    神はいるのか?
    奇跡は誰が起こしたのか?
    分からないけれど、少なくとも歴史を作り出したのは人間だ。

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    2015年04月28日
  • 猫舌男爵

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    皆川博子は長編2冊読んでから本書を読んだけど、ほんとに巧いし面白い。重厚な背景が毎回素晴らしいから長編向きかと勝手に思っていたが、短編でもその世界観を作れ、そのうえ作風も変えられるとは。表題作はイロモノっぽいのでズルいが最高に面白いし、「水葬楽」は廃退的な空気感に埋没させるSFでいい。ほかの3篇も皆川カラーがしっかり出ている佳作だった。そして最後の解説にもひと仕掛けというニクさ。

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    2016年01月17日