皆川博子のレビュー一覧

  • 双頭のバビロン 下

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    ネタバレ

    この作品大好き!文庫を発見したので購入再読♪
    前よりずっとゆっくりと噛み締めて読めて、まだまだずーっとこの作品に浸っていたい気持ちです。今度は手元にあるからいつでも読める!
    世紀末ウィーンと20年代のハリウッドと魔都上海。舞台も全体に映画の雰囲気まんてんの作品。私は映画は詳しくありませんが、映画がお好きな方はもっと違った楽しみ方も出来る作品なのでしょうね^_^

    ↓ここから先はちょっとネタバレご注意↓




    みんな好きなシーンばかりなんだけと、頭にすごく残ったところ…
    パウルとアデーラの出会いからの話とか、大好き♡ え?なにこれ映画?そのまんまだよ〜みたいに思いながら読んでました。
    あとは

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    2018年02月12日
  • 蝶

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     初めて読む皆川博子で、本書は8編からなる短編集。
     大半の作品は戦中・戦後が時代背景になっている。
     価値観が180度変わってしまった、いや180度変えなければならなかった時代に、上手く溶け込むことが出来なかった、あるいは迎合することが出来なかった人々の話が多い。
     著者の作品に対して、幻視、夢幻といった単語が散見できるが、確かにそう呼ぶ以外にない作品がある反面、現実そのものを描き上げたと思しき作品もある。
     ここに登場する、少年や少女、男や女たちは、きっとあの時代に実際に現実として存在していたのだろう、と思わせてくれるのだ。
     どの作品も壮絶であり、凄みがあり、妖しくも哀しい。

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    2018年01月07日
  • 倒立する塔の殺人

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    再読。まさに万華鏡。
    あらゆる要素がはらはらはらはらと振りまかれ、読者はくるくるくるくる回る。

    物語の構成が素晴らしいの一言に尽きる。
    突然託された一冊の本。中には告白と虚構入り混じる「物語」が描き連ねてある。
    それを見つけた少女たちが、順番に書き継いでいく……

    ミステリーという体裁を取らずとも、十分魅力的な話だ。
    作者の筆は、さすがの流麗さで、戦時中という舞台すらもどこか甘やかなものに変えてしまう。
    少女たちは、どこまでも凛と可憐で、残酷だ。

    けれどここに、上級生の少女の死や謎の死体、「本」というミステリーが絡む。読者は幻惑される。
    そしてミッションスクールでの過去がじわりじわりと開示

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    2017年12月01日
  • 少女外道

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    ネタバレ

    レールから外れた何かを抱える少女達の7つの物語。皆川先生が綴った美しい調べのような文章に酔いまくれますね!

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    2017年06月11日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    最初はキャラクターの名前や専門用語が多く入りづらいかもしれないが、斜め読みでさっさと進めてしまうことを勧める。
    ちゃんと読んでも読み進めているうちに何度もページを巻き戻すことになる。いい意味で。
    心理描写が雑なところが賛否両論なところがあるが、それがいい意味で続編に繋がっていると思う。
    主要登場人物がどこか空っぽに思えるが、続編できちんと掘り下げられているので、安心して読んでほしい。

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    2017年05月06日
  • 花闇

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    幕末から明治にかけての歌舞伎界.三代目澤村田之助の壮絶な演じることへの妄執を三すじの目をとうして物語る.愛憎半ばする気持ちを芳年に訴えるところが哀れでもあり,そこまで拘れる人に出会えたことは幸せでもあるのだろう.美しさとは何かという事をとことん突き詰めた芸,この何かに魅入られた世界,怖いようである.

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    2017年04月05日
  • 花闇

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    澤村田之助、という名を、寡聞にしてこの作品ではじめて知った。歌舞伎も、日本文化のひとつとしての興味こそあれ、見に行ったことさえまだない。当然、世界として体験することもはじめてで、慣れない雰囲気にしばらくは戸惑った。
    しかし、物語を通して垣間見せてもらった世界には、見るものを引き摺り込む凄みがあり、また、巨大なエネルギーが渦を巻いていた。数々の御題目への自主的恭順を経て「きれい」になってしまった現代では感じにくくなっているものだと思う。ナマの感情、熱、冷徹、喧騒、におい……皆川作品ではそうした「生きている」人間が、完成された物語の奥でたしかに息づいている。右へ倣えに変化していくことのできる「社会

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    2017年03月12日
  • 少女外道

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    いつもながら、読む手が止まらなくなる本。
    どんな内容なのか、全然説明できないのに、面白い。
    登場人物に感情移入もできない。
    作家が高齢だからか、戦時中の話が多いが、祖父が帝国陸軍だったため理解できる。
    哀しいけど、仕方がない現実。
    そして、狂ってるのか正気なのか、その境にいるのかわからない、つかみ所のない女性がよく出てくる。
    その目を通じて描かれる世界の奇妙さ。
    やはり、好きだ。

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    2017年02月28日
  • 双頭のバビロン 下

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    めくるめく物語の奔流。
    結末に辿り着いた時、書かれた人物たちの生を想い、胸を熱くする。

    そうか、そう生きたのか。辿り着いたのか、と。

    皆川先生、物語を紡いでくれて、私たちに読ませてくれて、本当にありがとう。

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    2016年12月25日
  • 伯林蝋人形館

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    感想を書き忘れていたことに気が付いて驚いている。本書は現在わたしが皆川作品の中で最も愛読しているものであり、幻想に踏み出すわたしの危なっかしい一歩を、整然とした理論の上に支える一冊である。熟慮と練達の上に描かれる風景は生々しく、すべてが明かされるラストには思わずあっと言わされる。すべてが偽りである可能性を残しているのが、この作者の筆力の凄まじさを感じさせる。醜い場面をいくつも描きながら、しかし、硝子のように澄んだものを透かしてみせるのである。

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    2016年11月19日
  • 死の泉

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    第二次大戦下のドイツ

    マルガレーテ、 医師クラウス
    フランツ、エーリヒ、そしてミヒャエル

    難語チョコチョコ調べながら、皆川ワールドへ
    長かったけど厚みのある文章の読後感が心地いい。

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    2016年11月16日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    『開かせていただき光栄です』から5年経過後の続編。
    あの事件後解剖教室は解散、エド、ナイジェルは行方不明のまま。
    みんなの状況も少しずつ変わっている。

    何とも切ない展開だった…
    事件は一応の決着を見たけれど、失ったものは大きいし取り戻すことも出来ない。
    願わくはダニエル先生の下、無事に戻ったエドとクラレンス含め、もう一度和気藹々と解剖にいそしむ姿が見られたらと思うけれど(何とかベイカーさんの幸せになった姿も)、そんな続編を望むのは贅沢なんでしょうねぇ…

    アンを苦手にしていたネイサンが、話が進むにつれて何気に懐いて来てるのがちょっとホッとしたところ。

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    2018年11月08日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    『開かせていただき光栄です』の続編なら
    読まずにはおれない。

    「ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ」と謎の文句
    前作同様に序盤から引き込まれました。

    終盤の謎解きがちょっとバタバタあわせにいったみたいに
    感じたので残念、でも読み応え十分。
    前作と合わせて★★★★★五つ星、楽しかった。

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    2016年10月28日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    このミス3位、文春ミステリー3位、本格3位

    気になってた本ですが、海外小説でないのに
    登場人物が外人、カタカナ名かと躊躇してました。
    ずっと聞かせていただきと勘違い、告白展開ミステリー?
    と思ってたら開かせていただきなのですね。
    序盤、登場人物ページパラパラ見返し、難語もパラパラとスマホで検索しながら読み始めると、18世紀ロンドンと相まって、キャラ立ちも面白い。
    期待を上回る面白さ、ワクワク、ライトな重厚感?。
    最初から終わりまで、テンポよい、ずっと面白いからいいなぁ。

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    2017年04月28日
  • アルモニカ・ディアボリカ

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    切なかった…

    『開かせていただき光栄です』の続編。
    前作でダニエル・バートンの元を去ったエドとナイジェルの顛末書。

    ナイジェルの悲しい過去は途中読み進めるのが辛かった。
    サー・ジョンが法と心の正義の狭間で苦しむのがおいたわしい。

    登場人物が多くの意味で誰かに献身してるからか、身を切るように切なくも優しい物語という印象。

    前作同様、切なくも希望はある終わり方。
    けれど前作ほど晴ればれできないのは、時の流れによって少年たちはもう青年になってしまい、私もまた年を経たからかもしれない。

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    2016年07月24日
  • 蝶

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    この作者、どうしてこんな小説が書けるのだろう。
    子供のもつイノセンスと、愛欲と、さらに大人にも備わるイノセンスと、愛欲。
    「たまご猫」などと比べて、異様に密度が濃い。

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    2016年07月14日
  • 死の泉

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    ネタバレ

     ◆若干ネタバレあり◆

    文庫本にして650ページ近い大作。

    ナチス台頭するドイツにおけるマルガレーテの手記の部分と、それを受けた十五年後のドイツ。
    手記においては、マルガレーテの微妙な心理が描き出される。
    自分の産んだ子を守るために、医師クラウスと虚構に近い(マルガレーテは完璧な拒絶を持ち切れない)夫婦になる。
    カストラートの美に魅入られたせいで、SSでありながら「ポラッケ(ポーランド人)」のフランツとエーリヒを養子に入れる、なかば狂気に近いクラウスの情熱。
    去勢や人体改造(レナとアリツェの双子)への抵抗を感じる正義感をときどき発揮しながらも、クラウスの強大な力には逆らえないマ

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    2016年07月13日
  • たまご猫

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    初めて読む皆川作品集。
    『たまご猫』『をぐり』『厨子王』『春の滅び』『朱の檻』『おもいで・ララバイ』『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』『雪物語』『水の館』『骨董屋』の10篇。

    どの短編も、短編の鏡というべき、構成のひねり、あっといわせる結末、虚実の反転、が描かれる。
    そして一文の無駄もない文章。
    茫洋と闇の中にゆっくりと沈み込んでいくような、えもいわれぬ恐さや不気味さを感じる。

    たまご猫、春の滅び(雛人形のライトモチーフ)、朱の檻(座敷牢への取材)、骨董屋(骨の笛)、が気に入った。

    解説の東雅夫も書いている通り、幽霊小説。
    幽霊、異世界、幻想によって現実の世界が一変する、小さい

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    2016年07月13日
  • 双頭のバビロン 下

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    文章から、声ばかりでなくにおいさえ感じられる。描写されるもののにおいではない。作品自体が放つ、腐爛直前の果実のようなにおいだ。陶酔と眩惑に包まれ、自分自身に内含されたり外部から刺激してきたりする登場人物たちの温度に親しみ、或いは鼓動を速めた。今は何を書いても、作品に魅せられた人間による下手な物真似になってしまう気がするが、それでもこの感動を残しておきたく思う。

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    2016年01月18日
  • 双頭のバビロン 上

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    圧倒的な、何が本当で何が嘘かもわからないまでに該博な知識と、人間としての魅力に富んだ登場人物たち。謎と、読み進めずにはいられない引力のようなものがそこへ塗り込められたように加わり、次から次へとページを捲らせる。気付かぬうちに、幻想と現実が絡み合う中へ誘われている。まだ上巻しか読み終えていないが、下巻が楽しみでもあり不安でもある。だが、きっと手に取ってページを、止まることなく捲り続けてしまうのだろう。また、文の端々に見られる批判的……批判的? な精神に、皆川博子氏は静かで恐ろしい作家だと、強く思った。

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    2016年01月17日