皆川博子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ第二次大戦下のドイツ。ギュンター・フォン・フュルステンベルクの子を身ごもったマルガレーテは、ナチの施設“生命の泉《レーベンスボルン》”に身を置く。不老不死の研究を行い芸術を偏愛する医師クラウスに求婚され承諾したマルガレーテは、彼の養子であるフランツとエーリヒそして産み落とした我が子・ミヒャエルと共に戦中の最中、豊かな生活を送りつづけていた。
だが、家政婦であり、昔の看護婦仲間であるモニカ・シュネーは、執拗にマルガレーテを脅迫する。戦火を逃れオーバーザルツベルグへ移り住んだ1945年春、事件は起った。しかし英ランカスター機の投下された爆弾はオーバーザルツベルグの全ての建物を壊滅、それは闇の彼方へ……。そして、15年の歳月が流れた――――――――。
最初、この本を手にして扉を開けた瞬間、確かに「おや?」と思った。その疑問を持ちつづけたまま、読み進めて行くこととなったが、それが後に、あんなトラップの布石だとは思いも寄らなかった……。
確かに、この本は“どんでん返し”があると聞いていた。従って、淡々と進む話をその最後の瞬間の数ページの為だけに読み進めていたと言っても過言ではない。
しかし、思いも寄らない趣向で「やられました」の一言に尽きる。今まで色々本を読んだが、こういう趣向ははじめての経験だ。以前読んだものの中で、宮部みゆき著の「火車」という作品があるが、これは読んでいて作者の意向が伝わったし、あえてこういう手段をとっているという事が読めた、だがこの作品に関しては全くそこまで読めなかった。完敗である。
物語は本当に淡々と進む。三部構成になっていて、“? 生命の泉”だけでは一体何を語ろうとするのかが読みきれない。“? ミュンヘン”で繋がりが明確になり、最終の“? 城”で一気に佳境へ突き進む。ただ悔やまれるのが狂気の医師であるクラウスの狂気さがあまり出ていない部分と、執拗に殺意を抱くフランツとエーリヒの動機面が弱く感じる。そしてミヒャエル。
特にミヒャエルに関しては意外とあっさりだったのが悔やまれる。あそこまで書ききってるのだから、読者としてはもう一捻りを求めてしまう。それは読み手側のエゴというものなのだろうか。
多分、これは読む人によって賛否両論あるだろう。そういう作品だ。だが、二重三重に絡めた謎、そして、650頁近くに及ぶこの大作が、最後のたった数行で読者を驚かす手腕は見事だ。と思わずにはいられない。
マルガレーテと一緒に並ぶあの足は一体誰のものなんでしょうねぇ……。うふv -
Posted by ブクログ
ネタバレショート・ショートなので、一編が8ページくらい。その短い中で背景をぼかしつつも確信に迫る書き方してたりするものもあり、うまく咀嚼できないまま終わったものもあり、でも面白い短編集だった。
始まりが不穏なので、大体不穏な話が多い中、最初から最後までハッピーに終わる「切れたミサンガ」が好き。
人でも殺したんかと思いつつ、同じ格好ときたのでSFかと思ったら 笑
安定のホラーの「こわくてキモくてかわいい、それ」も好き。
それが不気味だけど、主人公が見下されてることに気付きながらも知らないふりして難を逃れてて、性格悪い私はざまみろと思ってしまった。
「久闊を叙す」も良い。
こんな形で、我が友李徴子を読むとは。新鮮な感覚だった。 -
Posted by ブクログ
積読チャンネルで紹介されていて手に取った一冊です。
ショートショート集なので、少しずつ細切れに読めるのがよかったです。どの作品もそれぞれ面白かったのですが、なかでも米澤穂信さんの「燃えろ恋心」が圧倒的に好きでした。
リズムもテンポもよく、一気に駆け抜けていくように読めて、最後のオチまできれいに決まっています。これはできれば、内容を何も知らずに読んでほしい作品です。
特によかったのが、青春時代の「大人は自分たちのことをわかってくれない」「なんとなくこちらの味方ではない」という感覚の描き方でした。
ラブレターを買ってから、実際に書くまでの過程もいいです。誰かに恋をしているというより、恋をしている自分ごと、恋そのものに精一杯恋をしているような書きぶりがとても素敵な文章でした。 -
Posted by ブクログ
日本の歴史ミステリーは文体がとっつきにくいから俺には読めないんだが、この作品はロンドンが舞台なので逆に読みやすいのかも。冒頭からハードな解剖シーンが描かれるものの、『死の泉』ほど陰鬱な雰囲気はなく、五人の弟子や詩人の天才少年、盲目の判事がそれぞれ実に個性的で楽しい。冒頭から3人の死体(身元不明×2)が登場し、徐々に複雑な関係図が浮かび上がると、頭の収拾がつかなくなりそうなところで、適度に謎を明かしていくバランスがいい。ミステリーといえばの中性的な美少年2人が登場し、虚言・偽証で事件を引っ掻き回すが、これに関する動機がこの時代でしか成立しないもので、よく考えられている。小説としての面白さと立派な本格の"技"を兼ね備えた稀有な作品。