皆川博子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
果たしてこれはまったい幻想小説なのか、それとも小説の内なる史実を忠実に描写しているのか…?
特に読み始めの頃は、その構造の複雑さに多くの読者は戸惑うことだろうと思う。
別々のものにしか見えなかった物語たちがページを追うごとに徐々に繋がり、絡み合っていき、あたかも、観察者にいくつもの異なる顔を見せる多面体プリズムのような壮大な流れが誕生する。
そして、幻視描写であろうと思われていた荒唐無稽な出来事たちが、見事に理屈に適った事実として整合していく。
“雰囲気だけ”の幻想小説に決して収まることなく、隅々まで巧緻に計算しつくされた魅力あふれるストーリーにちゃんと仕立て上げる皆川博子氏の超絶技術 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第二次大戦下のドイツ。ギュンター・フォン・フュルステンベルクの子を身ごもったマルガレーテは、ナチの施設“生命の泉《レーベンスボルン》”に身を置く。不老不死の研究を行い芸術を偏愛する医師クラウスに求婚され承諾したマルガレーテは、彼の養子であるフランツとエーリヒそして産み落とした我が子・ミヒャエルと共に戦中の最中、豊かな生活を送りつづけていた。
だが、家政婦であり、昔の看護婦仲間であるモニカ・シュネーは、執拗にマルガレーテを脅迫する。戦火を逃れオーバーザルツベルグへ移り住んだ1945年春、事件は起った。しかし英ランカスター機の投下された爆弾はオーバーザルツベルグの全ての建物を壊滅、それは闇の彼方へ -
Posted by ブクログ
積読チャンネルで紹介されていて手に取った一冊です。
ショートショート集なので、少しずつ細切れに読めるのがよかったです。どの作品もそれぞれ面白かったのですが、なかでも米澤穂信さんの「燃えろ恋心」が圧倒的に好きでした。
リズムもテンポもよく、一気に駆け抜けていくように読めて、最後のオチまできれいに決まっています。これはできれば、内容を何も知らずに読んでほしい作品です。
特によかったのが、青春時代の「大人は自分たちのことをわかってくれない」「なんとなくこちらの味方ではない」という感覚の描き方でした。
ラブレターを買ってから、実際に書くまでの過程もいいです。誰かに恋をしているというより、恋をし -
Posted by ブクログ
日本の歴史ミステリーは文体がとっつきにくいから俺には読めないんだが、この作品はロンドンが舞台なので逆に読みやすいのかも。冒頭からハードな解剖シーンが描かれるものの、『死の泉』ほど陰鬱な雰囲気はなく、五人の弟子や詩人の天才少年、盲目の判事がそれぞれ実に個性的で楽しい。冒頭から3人の死体(身元不明×2)が登場し、徐々に複雑な関係図が浮かび上がると、頭の収拾がつかなくなりそうなところで、適度に謎を明かしていくバランスがいい。ミステリーといえばの中性的な美少年2人が登場し、虚言・偽証で事件を引っ掻き回すが、これに関する動機がこの時代でしか成立しないもので、よく考えられている。小説としての面白さと立派な