無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
とても面白かったです。
戦争末期の女学校で、ある少女の死をきっかけに、密かに書かれていた「倒立する塔の殺人」という物語の謎解きが始まる…という要約も難しいお話です。
今回も戦争の残酷さとそれでも損なわれない美に惹き付けられました。
YAの作品なのですが、決して子どもっぽくないどころか、登場する絵画・音楽・小説についても知りたくなる知識欲にかられる作品でした。
「どういう小説が好きか、登場人物の誰に惹かれるか、それを明らかにするのは、自分自身の本質を曝すことでもある」という一文に、それではわたしはここでは自分自身の本質を曝してるのか…と思いました。確かに。
空想あるいは物語という水を養いにしなければ枯れ果ててしまう、しかもその水には毒が溶けていなくてはならない…「毒が、わたしたちの養分なのだ」というのもわたしの本質です。
「倒立する塔の殺人」で告発されたのは誰か…カロライナ・ジャスミンという花が気になりました。
Sまではいかなくとも、親密な女学生たちの様子も良かったです。皆川さんの作品の登場人物たちには逞しさも感じます。
三浦しをんさんの解説も良かったです。色々書いても、皆川さんの物語には結局「すごい」の一言を繰り返すのみです。
Posted by ブクログ
再読。まさに万華鏡。
あらゆる要素がはらはらはらはらと振りまかれ、読者はくるくるくるくる回る。
物語の構成が素晴らしいの一言に尽きる。
突然託された一冊の本。中には告白と虚構入り混じる「物語」が描き連ねてある。
それを見つけた少女たちが、順番に書き継いでいく……
ミステリーという体裁を取らずとも、十分魅力的な話だ。
作者の筆は、さすがの流麗さで、戦時中という舞台すらもどこか甘やかなものに変えてしまう。
少女たちは、どこまでも凛と可憐で、残酷だ。
けれどここに、上級生の少女の死や謎の死体、「本」というミステリーが絡む。読者は幻惑される。
そしてミッションスクールでの過去がじわりじわりと開示されていく。
読者は、この「本」を託された少女たちと同じく、息を詰めて読み進めるしかない。
完全に「皆川万華鏡」の中に入り込んでしまう。
「倒立」の業の深さと狂気!
謎がほどけた時の目が覚めるような感動。
すべてが乱反射した物語。素晴らしい。
時代の閉塞感と生きるためにギリギリの情勢を描きながら、ふわふわと、意地悪く、けれど逞しく生きる少女たち。
異国の男が持ち込んだ(考えてみれば、少女たちが読んでいるドストエフスキー作品の数々すらも「異国の男」という登場人物なのだ。小道具ではなく)虚無。
虚無と狂気と少女はなんと馴染むことか……
それでも、ベー様こと阿部欣子の生活感と頼もしさは嬉しくなる。
少女たちすべてに幸あれ。
Posted by ブクログ
皆川博子さん初読み。一癖も二癖もあるという噂を聞き、ついでにそんな癖の強い作品たちの中でもこの『倒立する塔の殺人』は比較的読みやすいということを聞いて手に取ってみた。確かに、読みづらくはなかったしストーリーの展開も面白かった。
終戦間際から終戦後にかけて、あるミッションスクールにおいて行われていた小説の回し書きが主題となる物語。物語は女学生の日常と、ノートに残された手記、そして『倒立する塔の殺人』の創作によって構成されていて、そのバランスが整っていて迷わずに読み進められた。そして戦時中やミッションスクールという設定が余計にこの話をミステリアスに仕立てている気がした。戦時中とはいえ、他所と隔離された少女たちの花園。小説内に登場する「S」や「お熱」などの用語がその特殊な環境の秘匿性を高めていて、その秘密を垣間見させてもらっているような心地で読み進めた。
特によかったと思うのは、物語の中に登場する他作品(ドストエフスキーとか)や絵画、音楽が豊富だったこと。巻末には物語に登場する絵画が絵付きで紹介されていて、随時参照しながら想像を膨らませることができた。そして解説で三浦しをん(大好きです)が書いている通り、ほかの作品への興味までかきたてられる。
Posted by ブクログ
背景は戦中戦後。
現在と過去を行ったり来たりして混乱しそうになるのは
いつもの事だけれど、それが手書きの小説の少女達と
重なって、更には、お嬢様学校とはいえ戦時中の過酷な労働と
質素な食事、クラスメイト同士の友情や軋轢、
女学校特有の密やかな交流や嫉妬や悪意等がリアルだったりする。
それでも幻想的な部分は相変わらずステキだ。
美しくて醜くて、優しくて残酷で、リアルでシュール。
そして、見事に惑わされ、誘導されましたよ。
書き回しの小説のラストで、これが真相だろうというのが
書き足されるんだけど、本当の結末はその後にひっそりとやってくる。
切ないくらいの執念を感じましたよ。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。