皆川博子のレビュー一覧

  • アルモニカ・ディアボリカ

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    ネタバレ

    『開かせていただき光栄です』続編。前作のネタバレ要素を含むので、順番に読むことをお薦めする。
    前作から5年後、胸に奇妙な暗号が刻まれた屍体が発見され、盲目の判事サー・ジョンがその謎に挑む。サー・ジョンの捜査状況とナイジェルの手記が交互に語られ、徐々に真相が明らかになっていく。
    今回登場人物が多く、しかもナイジェルの手記に出てくる過去の話や、15年前の事件との関わりなど、時系列と人間関係の整理が難しかった。そして二転三転する事態に、またしてもやられてしまった。
    謎の多かったナイジェルの過去が明らかになり、エドも少しだけ登場。面白いんだけど、前作以上に哀しいお話だった。

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    2015年06月23日
  • 猫舌男爵

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    怪しい雰囲気漂う短編集。

    個人的に『水葬楽』『睡蓮』が好きでした。『水葬楽』は未来の死の概念のようなお話ですが、この先あり得るような怖さを感じました。どのお話にも時代が分からないところに感じる不安なような怖さを感じました。
    表題作『猫舌男爵』は想像してなかった内容で、純粋に面白かったです。

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    2015年03月09日
  • 倒立する塔の殺人

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    背景は戦中戦後。
    現在と過去を行ったり来たりして混乱しそうになるのは
    いつもの事だけれど、それが手書きの小説の少女達と
    重なって、更には、お嬢様学校とはいえ戦時中の過酷な労働と
    質素な食事、クラスメイト同士の友情や軋轢、
    女学校特有の密やかな交流や嫉妬や悪意等がリアルだったりする。
    それでも幻想的な部分は相変わらずステキだ。
    美しくて醜くて、優しくて残酷で、リアルでシュール。
    そして、見事に惑わされ、誘導されましたよ。
    書き回しの小説のラストで、これが真相だろうというのが
    書き足されるんだけど、本当の結末はその後にひっそりとやってくる。
    切ないくらいの執念を感じましたよ。

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    2015年02月28日
  • 蝶

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    背景に戦争があって、それに翻弄される人々が主役である。
    大人だったり、子供だったり、妾だったり、孤児だったり・・・
    幻想に惑わされるのか、知らずに狂気が育っていたのか
    気が付くと「死」が纏わりついていた。
    戦争がそうさせたのか、そうなる運命だったのか
    美しくて、なげやりで、悲しくて、空っぽで、
    そして残酷な物語。
    幻想世界は、実はすぐそばにあった・・・
    やはりたまりません!

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    2015年02月28日
  • 薔薇忌

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    初めましての作家さん。
    90年代に出版されたものの復刻版のようです。
    舞台に携わる者たちの妖しい短編集。
    ミステリというよりは、幻想譚といった感じです。
    でも短編集なのに、どれもこれもヤバイ。
    舞台に携わる者達の話だから、どうしても妖しくなる。
    だけど文章の持って行き方がヤバイ。
    起承転結を当てはめるとするなら

    起承~~~~転?結!!工エエェ(゚〇゚ ;)ェエエ工
    って感じかなぁ~
    最後の1ページで、一気に幻想に変化するというか・・・
    こういうのは初体験です。
    ヤバイです。面白かった。

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    2015年02月28日
  • 猫舌男爵

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    初読みの皆川博子作品。なんとも濃密な短編集だった。幻想的であったり笑いがあったり…。正直難解な部分が多いが、それでも魅せられてしまう。「睡蓮」「太陽馬」が特によかった。この作家さんの、ヨーロッパを舞台にした話をもっと読んでみたいと思って早速購入!楽しみだ。

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    2015年02月22日
  • 猫舌男爵

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    ネタバレ

    「水葬楽」
    「猫舌男爵」
    「オムレツ少年の儀式」
    「睡蓮」
    「太陽馬」

    皆川博子の幅の広さよ。
    「水葬楽」「太陽馬」はどちらもひと捻りした幻想文学の手本。

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    2014年11月30日
  • 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―

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    ネタバレ

    ずっと読みたかったのですが、なかなか気がのらず。
    肌寒くなってきたからか、気分が向いたので購入~。

    一番後ろのページに「本書は活字が大きく読みやすい<トールサイズ>です」と書いてありますが、字、大きくないし、字の線が細い上に印刷(インク?)が薄くて読みにくかったです。近眼も老眼も乱視もなくて視力も裸眼で1.0以上あるうちに読んでよかったな~。

    解剖医とその弟子の話です。
    舞台はイギリス。18世紀。
    多くの女子と同じように中世ヨーロッパに憧れを持っていますが、実情は貴族のドレスのようには美しくないのですよね。
    衛生環境や人権、教育など劣悪すぎる。
    少し前に「パヒューム」という映画を見ました。

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    2016年08月16日
  • 薔薇忌

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    ネタバレ

    芝居をめぐる、惹かれ期待する関係の短篇集。いじらしくて、ねじまがって、フェティッシュで、古臭くて。
    短編の寄せ集めではなく撚り集めで物語が出来る。
    決して「恋愛」ではないし、情愛が支配するわけではない。
    欲望と怠惰と執着と希求。
    純粋さよりも湛える深淵を愛す。

    各編ごとに見ても仕方ないって途中までやって分かった。
    各々登場人物の設定とかかれる内容は少しずれている気がする。勿論意味はあって必要な設定なんだけど、〇〇→△△となる記号ではなくて、〇〇からその人の印象と人生を推測しないと読みにくい。AパートとBパートの距離が遠い。
    登場人物は等しく大きい得体のしれない(歴史を持つ)ものへの畏れを持ち

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    2014年08月13日
  • 少女外道

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    どれも少しずつ人の道から外れた話だが、そういうものを扱う作品に強く心惹かれたことはない。それは、自分が正常であることの証明となんとなく思っていたが、この本を読んでみて、自分の中にも「外道」の部分が潜んでいると気づく。
    人の心の闇を、おどろおどろしいだけではなく、美しく鮮やかに見せてくれ、自分ひとりではたどり着けないところへ連れて行ってくれる。80歳を超えている筆者の作品を、これからも1篇でも多く手に取っていけるよう願っている。

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    2014年06月23日
  • 蝶

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    ホラーっぽいけど幻想世界。

    戦前から戦後にかけての独特な社会の雰囲気が描かれています。ゾクっとするトコロも多々ありますが、怖くはなくあくまでも神秘的な文章が素敵です。

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    2014年05月22日
  • 妖恋

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    江戸時代を背景とした短編集。
    どのお話も、タイトルが艶めかしくも美しい。
    この時代だからこその切なさが胸に迫る。
    これを今の時代の言葉で言うならば、
    大人のファンタジーか。

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    2014年05月20日
  • 倒立する塔の殺人

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    戦時中に~戦後の時代背景が独特な雰囲気です。

    ミステリーとしても面白かったですが
    少女の視点で語られる戦時中、戦後の生活が
    とても興味を持って読めました。

    物語を何人もが紡いで行くというトコロにも
    面白さがあって、最後まで飽きるコト無く読めました。

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    2014年05月19日
  • 少女外道

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    なんだかただならぬ雰囲気のタイトルですが、第二次大戦前後の、ごくありふれた人々の生活と心情を、ノスタルジックに綴った短編集です。皆川作品に惹かれるのは、ほのかに死と狂気の香りが漂う深刻な内容であるにもかかわらず、声高に何かを語るでもなく、かといって暗くなり過ぎることもなく、独特の文体でさらりと描いているところにあるような気がします。生は残酷で美しく、あまりに儚いものです。だからこそ、人のいとなみが健気に映るのかもしれませんネ。どの作品も実に味わい深い、魅力的なものでした。

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    2014年03月13日
  • 少女外道

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    表題作が特に気に入りました。
    人は誰でも己の中に"外道"な部分を持っていて、それを隠しながら生きそして老いていく。





    「倒立する塔の殺人」の次に好きです。

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    2014年02月19日
  • 少女外道

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    ネタバレ

    少女外道
    巻鶴トサカの一週間
    隠り沼の
    有翼日輪
    標本箱
    アンティゴネ
    祝祭

    ほぼ前作に共通している語りの特徴としては、
    現在→振り返り→現在、か、現在と過去を交互に示すか。
    大過去、近過去、現在、という構成もある。
    共通した心情としては、死への憧れ、あるいは死への漸近。

    29p 清浄と淫らって、一つのことだと思うわ。

    45p 未だあらぬ池の面を、夕風が吹き過ぎた。→凄まじい幻視。

    157p いきなり互いの魂の割れ目に嵌りこんでしまった。

    187p あなた……わたしかしら。

    254p 凄まじい落日の一刻に遇えた。生と死が水平線でせめぎ合っていた。横雲の間から最後の光芒を放ち、空の裾

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    2014年01月18日
  • 死の泉

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    ナチスドイツの時代。貧しさのためにナチス側のある博士の妻になった娘の物語。何不自由ない生活の中で娘はかすかな幸せを得たかに見えたが、彼女と博士の養子の少年たちは博士のおぞましい研究の犠牲になっていく。そしてヒトラーの死後、少年たちの復讐が始まる。

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    2014年01月06日
  • 冬の旅人(下)

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    ネタバレ

    皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
    ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
    いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。

    しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
    特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。

    ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
    一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。

    それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。

    読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ

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    2013年12月23日
  • 冬の旅人(上)

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    ネタバレ

    皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
    ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
    いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。

    しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
    特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。

    ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
    一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。

    それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。

    読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ

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    2013年12月23日
  • 蝶

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    幻想的であり陰鬱であり濃厚である。
    一つ一つの作品が
    個々に世界観があり、
    でも一冊の本として
    しっかりまとまりもある。

    しっかりした描写なのに
    輪郭がぼやける。いい意味で。
    この作家さんの作品を
    今まで読んだ中で一番好き。

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    2013年12月12日