皆川博子のレビュー一覧
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ネタバレ『開かせていただき光栄です』続編。前作のネタバレ要素を含むので、順番に読むことをお薦めする。
前作から5年後、胸に奇妙な暗号が刻まれた屍体が発見され、盲目の判事サー・ジョンがその謎に挑む。サー・ジョンの捜査状況とナイジェルの手記が交互に語られ、徐々に真相が明らかになっていく。
今回登場人物が多く、しかもナイジェルの手記に出てくる過去の話や、15年前の事件との関わりなど、時系列と人間関係の整理が難しかった。そして二転三転する事態に、またしてもやられてしまった。
謎の多かったナイジェルの過去が明らかになり、エドも少しだけ登場。面白いんだけど、前作以上に哀しいお話だった。 -
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背景は戦中戦後。
現在と過去を行ったり来たりして混乱しそうになるのは
いつもの事だけれど、それが手書きの小説の少女達と
重なって、更には、お嬢様学校とはいえ戦時中の過酷な労働と
質素な食事、クラスメイト同士の友情や軋轢、
女学校特有の密やかな交流や嫉妬や悪意等がリアルだったりする。
それでも幻想的な部分は相変わらずステキだ。
美しくて醜くて、優しくて残酷で、リアルでシュール。
そして、見事に惑わされ、誘導されましたよ。
書き回しの小説のラストで、これが真相だろうというのが
書き足されるんだけど、本当の結末はその後にひっそりとやってくる。
切ないくらいの執念を感じましたよ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと読みたかったのですが、なかなか気がのらず。
肌寒くなってきたからか、気分が向いたので購入~。
一番後ろのページに「本書は活字が大きく読みやすい<トールサイズ>です」と書いてありますが、字、大きくないし、字の線が細い上に印刷(インク?)が薄くて読みにくかったです。近眼も老眼も乱視もなくて視力も裸眼で1.0以上あるうちに読んでよかったな~。
解剖医とその弟子の話です。
舞台はイギリス。18世紀。
多くの女子と同じように中世ヨーロッパに憧れを持っていますが、実情は貴族のドレスのようには美しくないのですよね。
衛生環境や人権、教育など劣悪すぎる。
少し前に「パヒューム」という映画を見ました。 -
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ネタバレ芝居をめぐる、惹かれ期待する関係の短篇集。いじらしくて、ねじまがって、フェティッシュで、古臭くて。
短編の寄せ集めではなく撚り集めで物語が出来る。
決して「恋愛」ではないし、情愛が支配するわけではない。
欲望と怠惰と執着と希求。
純粋さよりも湛える深淵を愛す。
各編ごとに見ても仕方ないって途中までやって分かった。
各々登場人物の設定とかかれる内容は少しずれている気がする。勿論意味はあって必要な設定なんだけど、〇〇→△△となる記号ではなくて、〇〇からその人の印象と人生を推測しないと読みにくい。AパートとBパートの距離が遠い。
登場人物は等しく大きい得体のしれない(歴史を持つ)ものへの畏れを持ち -
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ネタバレ少女外道
巻鶴トサカの一週間
隠り沼の
有翼日輪
標本箱
アンティゴネ
祝祭
ほぼ前作に共通している語りの特徴としては、
現在→振り返り→現在、か、現在と過去を交互に示すか。
大過去、近過去、現在、という構成もある。
共通した心情としては、死への憧れ、あるいは死への漸近。
29p 清浄と淫らって、一つのことだと思うわ。
45p 未だあらぬ池の面を、夕風が吹き過ぎた。→凄まじい幻視。
157p いきなり互いの魂の割れ目に嵌りこんでしまった。
187p あなた……わたしかしら。
254p 凄まじい落日の一刻に遇えた。生と死が水平線でせめぎ合っていた。横雲の間から最後の光芒を放ち、空の裾 -
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ネタバレ皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。
しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。
ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。
それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。
読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ -
Posted by ブクログ
ネタバレ皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。
しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。
ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。
それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。
読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ