皆川博子のレビュー一覧

  • 倒立する塔の殺人
    戦時中に~戦後の時代背景が独特な雰囲気です。

    ミステリーとしても面白かったですが
    少女の視点で語られる戦時中、戦後の生活が
    とても興味を持って読めました。

    物語を何人もが紡いで行くというトコロにも
    面白さがあって、最後まで飽きるコト無く読めました。
  • 影を買う店
    異形への偏愛、日常に潜む違和感、伝承への想い、いろいろ詰まった玉手箱のような一冊。『沈鐘』『魔王』が良かった。
  • 少女外道
    なんだかただならぬ雰囲気のタイトルですが、第二次大戦前後の、ごくありふれた人々の生活と心情を、ノスタルジックに綴った短編集です。皆川作品に惹かれるのは、ほのかに死と狂気の香りが漂う深刻な内容であるにもかかわらず、声高に何かを語るでもなく、かといって暗くなり過ぎることもなく、独特の文体でさらりと描いて...続きを読む
  • 少女外道
    表題作が特に気に入りました。
    人は誰でも己の中に"外道"な部分を持っていて、それを隠しながら生きそして老いていく。





    「倒立する塔の殺人」の次に好きです。
  • 少女外道
    少女外道
    巻鶴トサカの一週間
    隠り沼の
    有翼日輪
    標本箱
    アンティゴネ
    祝祭

    ほぼ前作に共通している語りの特徴としては、
    現在→振り返り→現在、か、現在と過去を交互に示すか。
    大過去、近過去、現在、という構成もある。
    共通した心情としては、死への憧れ、あるいは死への漸近。

    29p 清浄と淫らって...続きを読む
  • 死の泉
    ナチスドイツの時代。貧しさのためにナチス側のある博士の妻になった娘の物語。何不自由ない生活の中で娘はかすかな幸せを得たかに見えたが、彼女と博士の養子の少年たちは博士のおぞましい研究の犠牲になっていく。そしてヒトラーの死後、少年たちの復讐が始まる。
  • 冬の旅人(上)
    皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
    ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
    いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。

    しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
    特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。

    ...続きを読む
  • 冬の旅人(下)
    皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
    ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
    いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。

    しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
    特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。

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  • 蝶

    幻想的であり陰鬱であり濃厚である。
    一つ一つの作品が
    個々に世界観があり、
    でも一冊の本として
    しっかりまとまりもある。

    しっかりした描写なのに
    輪郭がぼやける。いい意味で。
    この作家さんの作品を
    今まで読んだ中で一番好き。
  • 花櫓
    無償に時代物の小説が読みたくなって、積読の中から選び出して読んでみました。
    江戸時代の歌舞伎の世界を書いた小説です。
    面白かった~。
    2冊前に読んだ本は落語の世界を書いた話で、その奥深さに驚いたけど、この本はもっと奥深かった。
    成田屋団十郎や、中村屋勘三郎、高麗屋幸四郎などなど、いろいろ出てき、しか...続きを読む
  • 妖恋
    タイトル通り、妖しくも切ない、江戸時代だからこそのどうにもならない諦めにも似た絶望、闇のある様々な男女の恋の話。心中薄雪桜、螢沢、十六夜鏡、春禽譜、妖恋、夕紅葉、濡れ千鳥。幻想的な雰囲気。
  • 蝶

    陰美さがほの暗く薫り立つような短編集。読む側の精神状態によってものすごく好き嫌いが分かれそう。嫌いではないけど今の私には読解力が足りず、この世界観に浸りきることが出来なかった。「蝶」「空の色さえ」「幻燈」「遺し文」が好き。「龍騎兵は近づけり」はよくわからなかった…。
  • 蝶

    とても美しい短編集。
    そして、どれも、戦争の頃の話です。

    8月15日にこの本を読んだので、尚更、感慨深いです。
  • 死の泉
    皆川博子が1997年に発表した小説。初めての皆川さんの本でした。今までに読もうと思った時期が何度かあったんですが、タイミングが合わず。しかし、今まで読んでいなかったのを後悔しました。第二次大戦下のナチスドイツで繰り広げられるミステリー…になるんだろうか。ナチス、人体実験、レーベンスボルン、カストラー...続きを読む
  • 死の泉
    久しぶりに大作を読みました!!
    途中途中意味不明なところもあったけど面白かったなぁ~

    最後のエーリヒとミヒャエルの正体にはびっくりしました!!
    フランツは結局、罪を自分の中に閉じ込めて許しを探していたんだね
    そ~いやゲルトはどうなったんだろう?
    萩尾望都先生に漫画化してもらいたい作品です
  • 倒立する塔の殺人
    終戦間際の混沌とした時代に、凛として生きる女生徒達と女学院で起きた殺人ミステリー。秘められた物語は層を重ね、紐解かれるノート内の記述で進行。"倒立する搭の殺人"と、綴られた"手記"は不安や恐怖を忘れていられる瞬間にさえ悲愴が漂い、軍歌が流れる土壌に著書・絵画・ダンス・コーラスなど欧羅巴の色合いの調和...続きを読む
  • 蝶

    表題作のほか、7つの作品が収められた短編集です。舞台はいずれも第二次大戦前後の日本。退廃的で、死の匂いのするこのような作品を美しいと思うのは、生きることは罪深く、哀しいことだと、誰もが知っているからかもしれませんネ。詩のように紡がれた言葉が描く、密やかで耽美な幻想世界に、どっぷり浸ることのできる1冊...続きを読む
  • 倒立する塔の殺人
    戦中の2つの女学校という空間が出てくる。
    片方はミッションスクール、もう一方は都立女子校。
    ミッションスクールはどちらかというと日本になじまない宗教性からか夢見がちに浮いて見られることが多い。しかし、そこには司教の体罰や異質な性癖、入信はしていない多くの女学生、エスという関係。決して穏やかなものだけ...続きを読む
  • 倒立する塔の殺人
    ヤングアダルト(YA)向けだったらしく、皆川博子にしてはおそろしく読みやすい、ほのかに色っぽい戦争時の女学生もの。トリックを楽しむというよりも、叙述そのものを楽しみたいタイプのミステリ。
    ミステリ嫌いの私でも十分楽しめた。
  • たまご猫
    いつの間にか狂気に足を踏み入れてしまっている。
    そんなストーリー展開がとても良かった。

    暴力的な表現やグロテスクな表現が無く、純粋な恐怖を感じられる物語としてとても良い作品だった。