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まぼろしの邪馬台国
「本書は考えようでは、妻とともに手さぐりで生き抜いた私の生活記録である」。失明した著者が本書の冒頭でこう書いていたように「邪馬台国はどこか」を探るため、妻・和子に古文書を読んでもらい、筆記してもらい、ともに研究に現地調査に赴いた。二人三脚の結晶が本書なのだ。〈第1回吉川英治文化賞受賞作〉 -
大岡越前
名奉行といえば、第一に名前をあげられる大岡越前。だが、彼の前半生は決して人に誇れるものではなかった。元禄の悪風に染まり、水茶屋の女お袖との間に一女までなしたが、一緒にはなれない。やがて、江戸町奉行へ抜擢された時、お袖の復讐が彼を待っていた。――みずから蒔いた種をみずから裁く人間大岡越前の苦悩。戦後の混乱した世相に、深い想いを託して描いた意欲作。 -
松のや露八
幇間・松のや露八として、反権力的姿勢を貫いた、彰義隊くずれの土肥庄次郎。一橋家近習番頭取の長男として生まれながら、鈍でひたむきすぎる性格のゆえに、数奇な人生を辿る。免許皆伝の祝い酒から、庄次郎の止めどない転落の道は始まった。だが武士を捨てるどころではない、徳川の屋台骨が潰れる時勢になったのだ。――負け犬のフツフツたる感情が全篇をつつむ意欲作! -
みたび! 女のはしょり道
ビューティ誌『VOCE』にて好評連載中、漫画家・伊藤理佐氏による『女のはしょり道』。はしょりながらも、キレイを目指すぐーたらビューティマンガも3巻め。「いつでも気合をいれてキレイにして……はいられない。ズルできるなら頑張ります!」を合言葉に、できる限りラクして、ちゃっかりキレイになる、を目論むスローでリアルな面白ビューティエッセイコミック。お世辞にも美容マニアとはいえない著者だからこそ、女性の共感が得られる“あるあるネタ”が詰まっています。さらに、連載中に妊娠→出産→新米ママとなり、3巻目の本巻では、子育てに奮闘し、子供からの指摘やママ界の環境におののきながらも、ますます美容をはしょるレベルもアップ中。 ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
色の階段
猟色のベテラン・小見山が、デパートに勤める紀子にウツツを抜かし、しかも、目的が果たせないという、珍しいことが起こった。彼が、紀子のことで、あの手この手の策を弄していると、かならず、見知らぬ女の声で、電話がかかってきた。しかも、それは、彼に欺された過去の女の亡霊のように、彼をおびやかしつづけた。やむなく、小見山は、かつてガール・ハントの手ほどきをしてやった宇津に、助けを求めたのだが……。 2人の男のあくなき女体探求を通じて、性の世界の百態を展開する長編小説。前作「色名帖」の続編として書かれた異色作。 -
幻の戦艦空母「信濃」沖縄突入
米軍が沖縄に大艦船を集結させ、上陸を開始。満身創痍の連合艦隊が乾坤一擲(けんこんいってき)の反攻を、戦艦大和を囮(おとり)として計画。主力は米潜水艦が撃沈したはずの超空母「信濃」。艦上にはミッドウェー以降の海戦で戦死者扱いのベテラン操縦士たちの護国軍神隊が搭乗する「紫電改」。手に汗握る感動のシミュレーション架空戦史。 -
小説東急王国
厳しい経済戦国時代を勝ち抜き、従業員9万人の東急グループを築き上げた、五島慶太・昇の父子2代にわたる、壮絶な人生と経営陣のドラマ。「失敗を恐れるな、向こう傷は問わない」という精神で経営に取り組み、最後までロマンを追い続けた五島昇。「覇道を排し、正道を歩む」事業家の生き方を描く、迫力の長編ノンフィクション小説。 -
かんかん虫は唄う
かんかん虫とは、ドック入りした船のサビ落としをする港の自由労働者。かんかん虫のトム公は、14歳ながら札つきの不良少年。しかし、曲がったことは大嫌い。彼が傲慢な金持ちを憎むのは、相応の理由があった。少年時代の横浜の見聞をもとにした「かんかん虫は唄う」は、自伝的要素に満ちた異色作。必死に生き抜くお島母子に、幼き日の著者のおもいがこめられた「色は匂えど」を併録。 -
ほんのこども
横溢する暴力と身体、無垢なる魂の軌跡。第44回野間文芸新人賞受賞作! 元同級生あべくんからのメールにあった文章から着想したシーンをつないで、 商業作家はあべくん自身の人生を小説にしようとする。 父による母殺傷事件、両親がころしころされていたあべくんはやさしく恋するみたいに他の人体を壊す。 殴られても反発するようによろこぶ身体。やさしさや暴力で愛撫し合い痛みをこらえるようによろこぶ身体。 物語にかえろうとするから人生はつらく、日常が重すぎてひとをころしたくなる。 恋人をころして自分も死んだところで折り返し、あべくんの物語は無限に再生を繰り返す。 小説家があべくんなのかあべくんがかれなのか、やがてふたりの境界は曖昧になり、問い自体が意味を失う。 言葉を与えられていない領域に光をあて小説は紡がれ、大量虐殺の記憶が時空を架橋しやがて物語は侵蝕される。 ーー世界文学に接続する芥川賞作家の真骨頂・新境地。ーー 小説で考え、小説が考える。作者には小説に対する圧倒的な信頼がある。ーー保坂和志(野間文芸新人賞選評より) 鴻巣友季子さん絶賛!読書量と強靭な知性に瞠目! “すべてのポートレイトは画家の自画像であり、すべての小説は自伝を目指すと言う。おそらくすべての小説はどこかしら、一人称の失恋なのだ。” “小説でなにかを「再現」することは、過去のよみがえりのように見えて、未然の予告なのだ。すべてのフィクションは自伝を目指し、すべての自画像は他人の顔をしている。” “かきあうこと、傷しあうこと、死にあうこと。「かれ」と「私」、その人称空間のよじれは経験と真実味との落差そのものだ。落差から、小説は来る。”――鴻巣友季子(翻訳家) -
私と弟のにじいろの幸せ
普通の幸せって、何? 小説現代長編新人賞『檸檬先生』で鮮烈デビュー! Z世代の新鋭が描く、切なさと温かさに満ちた青春&家族小説! 東京で大学生活を謳歌していた茂果は、友人の由紀からあるアニメを布教される。 柔らかな表情、手描き感のあるタッチ、自然な体重表現、甘い雰囲気の色使い、繊細な塗り。紹介された絵師のイラストは、弟の穂垂が描いたものだった。 Twitterの裏アカウントでBL作品を創作し、普段から異性との恋愛話をしない穂垂に対して、茂果は同性愛者なのではないかと考え、やがて過干渉してしまう。境界の曖昧さ、線引きの難しさを、姉弟の視点から見つめ直す。 小説現代長編新人賞受賞後第一作 -
ヒカリ文集
第75回野間文芸賞受賞作 「いつか冷めない恋をしてみたいと思う?」 学生劇団で男とも女とも恋を重ねたヒカリ。 六人の男女が彼女が残したものを語る。 『ヒカリ文集』の中核となるヒカリという女性も〈心を使わない人〉である。 無類に優しく人を傷つけることを小心なまでに恐れていて人の役に立ちたいと願っているのに、男性とも女性とも恋愛が長続きせず次々とつき合う相手を替える。(略) ヒカリという女性が伝統的な〈宿命の女〉像を少しでも塗り替えることができていれば幸いである。 ――松浦理英子(「群像」2022年3月号より) 無類に優しく、好意以上のものを語る笑顔で人に依存を惹き起こす。 小心なまでに人を傷つけるのを恐れ、身についた習慣のように人を喜ばせ力づける。 それなのに、親密な関係を結んでは自分から壊す。 学生劇団で男とも女とも恋を重ねたヒカリとは何者だったのか。 第75回野間文芸賞受賞の著者の新たな代表作。 -
鬼皇の秘め若
発売前コミカライズ決定! 「お前を愛するために、俺は千年生きてきた」 虐げられた陰陽師の娘×想いを隠す鬼の皇子 出会いが絶望の運命を変える 隠れ溺愛系和風ファンタジー ☆☆☆ 陰陽師一族の花柳院家で、彼方は存在しなくていい少女だった。 次期当主の忌み双子として、人生を諦めていた彼女は鬼の第六皇子・黒楼と出会う。 尊大だが優しい彼に憧れ、彼方は男装して彼が総長を務める百鬼夜廻組へ入隊する。 「お前に愛されたくて、俺は千年生きてきた」 伝えられない想いを抱える黒楼と、 一癖も二癖もある隊士たちと日々を送る、隠れ溺愛系和風ファンタジー! -
猫とわたしの東京物語
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 『猫のハローワーク』『世界のまどねこ』など、世界中を旅する犬猫写真家新美敬子の出発点。 上京したばかりで、何物でもなかったあの頃、よく散歩した都電荒川線沿線。家並みからひょっこり顔を出す猫たちと仲良くなった新美さん。人見知りの猫たちも、なぜか安心して寄ってくる。猫たちのしぐさを記録に残したくてカメラを向けてみた。もしかしたらそれが犬猫写真家の”原点”だったのかもしれない。 自由で時間だけはあって、どこか不安でなにかを探していたあのころ。 かわいいだけじゃない、しぜんな猫たちのしぐさを追いかける新見さんの”原点”を旅するような、すこし切なく心に響くフォトエッセイ。 ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
最終列車
平成(コロナ以前)の思考とは何か 鉄道の本質とは何か 鉄道を愛する政治学者による、思索の到達点/出発点 原武史さんは鉄道をひとつの場として考え、近代日本史のなかに置いてその歴史や現状をとらえてゆく。鉄道を通してその背後にある歴史を見てゆく。(略) 車両から一歩外に出て、鉄道を取り巻く場、環境をとらえてゆく。開かれた鉄道本である。(川本三郎「解説」より) 平成の時代から令和の現在に至り、鉄道という交通手段の本質はいかに変質したのか。 新幹線が増え、ローカル線が衰退する。 豪華列車が登場し、地方で廃線が増える。 そして、コロナ禍が人間どうしの距離を引き離し、鉄道の公共性は失われてゆく。 日本近現代史における「鉄道」の意味を問う愛惜の鉄道文化論。 -
レーテーの大河
運命の車輪は回り始める。日本を揺るがす“危険な積み荷”とともに。 江戸川乱歩賞作家が時代の闇に挑むノンストップ・サスペンス! 終戦時の満州、そして五輪開催直前の東京。二つの「昭和」を貫いて走り始めた機密列車の後ろ暗い任務とは。 楔になろうとした男たちの、捨て身の作戦とは。 終戦間際の混乱で親を失った三人の戦災孤児。関東軍の機密物資を日本に運んだ2人の陸軍中尉。 焼け野原から復興へーーオリンピックを目前に急ピッチで東京の整備が進む中、日銀の現金輸送担当者が線路に転落死を遂げた。 事故として処理されるはずだったその死を合図に、二度と交わるはずのない人生が再び交差する。 そして、運命の列車は走り始める。 俺たちは駒だ。だが、駒だって逆らう。 -
かなりあ堂迷鳥草子
あの鳥が、綺麗な声で鳴いてくれたら。 飼鳥屋で夢をもって働くお遥、十六歳。 江戸の「鳥」たちが謎をよぶ、書下ろし時代ミステリー! 講談社時代小説文庫 赤ん坊の幽霊が出る噂の真相、盗まれた八百屋の売り上げの行方、婚約者の父が犯した重罪の理由――、 小さな飼鳥屋「かなりあ堂」の周囲で起きる「謎」の数々を、兄想いのお遥が解き明かしていく。 メジロ、ホトトギス、カナリア…小鳥たちが鳥籠で羽ばたきをしている。 近頃江戸では小鳥を飼うのが大人気。 兄と二人で飼鳥屋「かなりあ堂」を営む十六歳のお遥は、お転婆などと言われても気にしない。 噂の幽霊の正体を知ろうと駆けだしていく。 江戸の「鳥」たちが謎をよぶ時代ミステリー。 〈文庫書下ろし〉 -
野球戯評
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 小さなボールに集まる数万の視線、球場の熱気、テレビ席の興奮。いま野球ほどたくさんの人が熱中しているものはない。異彩を放つ文化人3人が、この野球にウンチクをかたむけ、野球を種に楽しくも痛快に風俗を斬る。野球豆知識、現代野球年表と、情報も満載。読むべし! 野球ファン、野球狂、野球通、野球評論家。見る野球、する野球は沢山あるが、読む野球ならこの本! -
いばらの冠 ブラス・セッション・ラヴァーズ
「涼代さん。俺たち、付き合いませんか?」 中郷壱伊は、超一流オーディオ機器メーカー「ナカザト音響」の御曹司。 名門男子校である祠堂学院に通う彼は、完璧ともいえる美貌と、 トロンボーン奏者としての才能を併せ持つ、稀有な人物だった。 一方、兄弟校の祠堂学園を卒業後、音大へ進学した涼代律は、 友人の野沢政貴の依頼で「院」の吹奏楽部の練習を手伝うことに‥‥‥。 ※特別書き下ろし「噂になりたい!」収録 ※本作は、2020年に講談社X文庫レーベルより発売された『いばらの冠 ブラス・セッション・ラヴァーズ』を、文庫化にあたり一部改稿したものです。 ※本作には、講談社X文庫版の電子書籍に含まれているカバー・本文イラストは収録されていません。 -
ヒトラーの陰謀 ドイツ国会放火事件
そのとき現場は巨大な密室だった――1933年2月、何ものかに放火され炎上したドイツ国会議事堂。政治警察は即日、犯人として共産党員を逮捕したが、奇怪な現場状況は20世紀最大の謎に……。成立後わずか1ヵ月のヒトラー内閣が秘密の目的のために仕組んだとされる事件の全貌を暴くノンフィクション。 -
女性を創造する ワコール物語
未来世紀に向かって伸びる会社とは? いたずらに企業規模や売上高を誇るのではなく、「女性を幸せにする」「美しい女性をつくる」そんなポリシーをもつ会社があった。女性相手のビジネスで世界制覇をめざすワコール、その創業から東南アジア進出、アメリカで成功するまでの苦闘のドラマを関係者の証言で構成。『ふたつの轍』を改題 -
歩いている女
信吾とみや子は、同人雑誌の仲間であり、恋人未満の煮え切らない仲であった。信吾はテレビドラマのプロデューサー、佐竹のもとへ脚本を持ち込んだが不採用。しかし、みや子を紹介してほしいと頼まれる。佐竹は今度のドラマの主演女優としてみや子に目をつけたのだ。一度は断ったみや子を説得し、女優の道に進ませた信吾だったが……。仕事に悩み、恋につまずき、新たな扉を開けながら歩いていく青春群像。 -
風変りな代償
美貌の女子大生・古園洋子が失踪した。彼女はホステス・アパートの一室を借りていたのだが、管理人・谷本恵吉の姿も見えない。ホステスたちは谷本の正体もアパートの所有者も知らないという。――数日後、洋子の死体が相模湖から見つかった。谷本の愛車ルノーに乗ったまま湖底に沈んでいたのだ。また意外にもアパートの持ち主が、T大で倫理学を教える清水助教授であることも明らかになった。《倫理学教師のホステス・アパート経営!?》。ナゾは深まるばかりだった――が、巧妙な偽装がはがれた時、白日にさらされたのは腐肉の如き性の悲劇だった。「風変りな代償」他5篇。 -
独裁者のラブレター
新興マルギダ国の独裁者アント・カーネの来日を絶好のチャンスとして、カーネ暗殺を計るマルギダの革命派。一方、日本の商社・富士物産と大協実業は、マルギダ進出を狙って激しいしのぎをけずっている。大協実業の秘密社員・島田は、会社のためばかりでなく、彼自身の意地と、マルギダ革命派の美しい女グローズへの恋を賭けて、どこまでもカーネ暗殺を追求しつづける。革命家の暗躍、企業間の葛藤、政治、死、恋。『私は貝になりたい』の筆者が、もっとも今日的な主題を乾いた男性的筆致で描く、スリルあふれる長編サスペンス小説。 -
徹夜対談・いつもロンリーだった
大スター小林旭。人生の荒波をいくつも乗り越え、今もその存在感は薄れない。〈旭フリーク〉を自認する内館牧子が、今、生の「旭」に体当たり! 約8時間にわたる「徹夜対談」を決行した。女、男、映画、仕事、結婚、失敗、虚無感、これからのこと――縦横無尽に語り合った〈旭とその時代〉必携永久保存版! ◎…ある夜、小林さんはポツンとつぶやいた。「裕次郎もひばりも雷蔵も、みんないなくなっちゃったよ」…この時から、私はいつか小林さんと本気で対談してみたいと思い続けてきた。「状況」だけではなく、「心況」も聞きたいと思い続けてきた。… 内館牧子「あとがき」より -
青いサファイヤ
破天荒の「テレビ結婚」で一躍脚光をあびた井戸美子は、プロレスラーと蒲原財閥の当主を手玉に取って、ついに財閥夫人にのしあがり、プロレスラーに夫を殺害させて、莫大な遺産を継ぐ。熱海沖のH島を買占めて東洋のモナコにする野望に燃えた彼女は、政治の腐敗につけこんで政界の実力者・佐渡代議士を籠絡し、その準備を進める。だが、蒲原政之助の死因に疑惑を抱いた新聞記者・中川隆夫に、かつて彼女が地方実業家にニセ札づくりをもちかけて、類ない肉体を餌に500万円を詐取した旧悪を報道される。そして佐渡代議士との密会も暴かれて、ついに破局へ……。渾身の現代悪女物語。 -
詰め腹
動乱の中近東から安い石油を輸入する放れ業を演じて、業界をあっといわせ、「世界石油」を一流会社にのしあげた社長・葛原大三の満々たる自信が、今や揺らぎ始めた。腹心の橘専務が裏切ったのだ。しかし彼は、背後に迫るさらに巨大な陰謀の存在をいまだに知らない。経営危機を切り抜けようとアメリカに飛び、米資本の融資を取り決めて帰国したとき、彼を待っていたのは社長退陣の要求だった。湯水の如く政界に撒いた献金の効果も、今は空しい。――著者が足で取材した秘材をもとに、金融資本の悪魔にひとしい裏面を鋭く抉る「詰め腹」他5篇。 -
歪んだ栄光
T省の屋上から墜落する人影を「私」は窓ごしに見たのだ。前庭の花壇を鮮血にそめて惨死したのは「私」の上司・小田課長補佐だった。新聞は「自殺」の原因に汚職の翳があるという……。その3日後、こんどは若い雇員の本石幸一郎が走る列車から転落した。報せをうけて豊橋に急行した「私」を見て、本石は「殺しに来たな!」とわめく。その両眼は空虚に鈍く光っていた。《この2つの事故が、どう関連しているのか?》。「私」は戦慄すべき真実に直面した。それは官僚機構にひそむ抑圧された青春の狂気である。表題作他5篇を収録。 -
冷酷な報酬
名神高速道路の闇の中に死んだ雨宮義人。彼の自動車は、〈梶原トンネル〉の壁面に激突しての即死だった。太陽産業の気鋭の研究者として、カラーテレビ開発の第一線に立っていた雨宮の死には、不可解な謎が感じられた。 社名をうけて、この事故死に取組んだ野田誠司が、苦心の末に探りあてた死の真相は、激甚な産業の恥部を覗きみるような策謀と非情の世界だった。研究グループごと、ごっそりと競争会社のスカウトの手がのびていたのである。拒否した雨宮を襲った非業の死。――梶山文学の独壇場ともいうべき産業スパイ小説「冷酷な報酬」他5篇を収録。 -
涙は拭かずに
商店街のPR誌の編集者・相良道子は、雑誌のスポンサーである服部から、ブーツをプレゼントされた。はいてみせてくれ、という服部の注文に応じた道子は不自然な体勢のところを襲われ、あやうく犯されそうになる。道子はかねて編集長の伊賀に好意をよせていた。伊賀も同様らしい。しかし人生は皮肉だ。道子は姉の夫・前田英一に強姦同然で処女を奪われてしまう。ショックは道子を一時的に自暴自棄に追いこむ。さまよう彼女の明日は? 処女喪失が女性をどう変貌させるか、をテーマに描くロマン大作。 -
男の階段
秋晴れの鬼怒川渓谷に、堅田邦子の死体は浮いていた。乳房にはバラの花弁のようなキス・マークがついている。邦子には年下の恋人・所道雄があった。が、彼はその前日にゴルフ場で彼女と別れたばかりだという。確かなアリバイもあった。邦子の弟・浩一は葬式の夜、姉の日記をひらいて、彼女の心の奥にかくされた恋人の不信の事実を知る――証券会社のエリートコースを望む所道雄は、常務の娘との縁談を進めていたのだ――。年上の恋人を無情に捨て去って、出世の階段をのぼろうと焦る男の姿こそは、現代サラリーマンの心奥にひそむ妄執の汚点だ。「男の階段」他3篇。 -
寝業師
二流商社の平社員・村中陽吉は、会社の将来に対して痛烈なレポートを書いたがために、単身ニューヨークへ飛ぶ破目になった。支店を開設しろ、というのである。英語もろくにできない村中はセントラル・パークで途方にくれた。英語の勉強でも、と思って大衆小説をひろげていると、思いがけず隣りにすわった白人女性が声をかけた。50がらみのその女性は「うちへいらっしゃい、本が沢山あるわ」と誘った。村中はその誘いに応じたのだが、縁は異なもの、そこから彼は大変な見つけものをする。快人物の一代を描く標題作のほか4篇を集めた、さわやかな作品集。 -
ある復讐
佐伯隆二は、今も7年前のあの日の憤懣と屈辱が忘れられない。一流大学を卒業した彼が、大東映画の採用試験に落ちた日のことだ。合格、と信じていたのに、身上調査でふり落されるとは。 己の才能が信じられなくなり、いつかエリートコースを踏みはずし、妻に養われる怠惰な男になってしまったのも、すべては屈辱の思いに耐えられなかったからだ。その佐伯が新聞広告につられて応募した興信所に勤めた時、初めて知る身上調査の実態――それは巨大な社会組織の翳りのような虚偽の世界ではないか――に佐伯は唸った。俺は嘘のために一生を失った!「ある復讐」他5編を収録。 -
浪士組始末
出羽の浪士・清河八郎は一介の剣客ではなく、政治的野心の熾烈な機略家であった。安政6年、江戸は神田お玉ヶ池に堂々と「文武指南所」の大看板を掲げたほどの豪の者だったが、郷里で17歳のおり隣家に娼婦を招くなど、34年の生涯は不羈(ふき)奔放なところがあった。――文久2年11月、幕府の政事総裁・松平春嶽に当今急務三策を上書して、浪士組成立の端緒をつくった清河八郎が、京師にのぼって攘夷を画策、江戸帰還後も浪士組の隠然たる黒幕として、向背つねなく、攘夷の勅諚を奪還せんとして、幕府の浪士抑圧の策におちいり、仆(たお)れるまでを描いた「浪士組始末」他8編。 -
忍法相伝73
安サラリーマン伊賀大馬が、トランクの中より探し出せし一巻の巻物、これぞ伊賀忍者の太祖、風忍斎が遺したる忍法相伝書である。大馬が早速、忍法「墨消し」を実験すれば、おお魔天の感応か、その鼻息を受け、あらゆる活字が消失するではないか! かくて、伊賀大馬は現代の忍者と化した。老残の硯学、松中半兵衛先生と肉体美女、鳥羽壺子嬢に支援されて忍法を発動すれば、「鳥の死声」は実力政治家をして「民衆から収奪する喜び」を天下に告白せしめ、「諸行無常」は男女の交りを索漠たる灰色の世界に墜し、セックス万能の時流を排す。辛辣にして軽妙、世人の意表を衝く珍騒動! まさに風太郎ワールド全開! -
素浪人梅津長門
『江戸群盗伝』の続編。将軍家斉の御落胤雪姫と所帯をもった梅津長門は、読本の人気作家となっていたが、ある日、北町奉行の遠山左衛門尉に見込まれ、因縁の相手が絡む事件に巻き込まれる。隠された財宝、引き起こされた殺人、雪姫とよく似た娘……謎は深まってゆく。『眠狂四郎』に先立ち書かれた美貌の剣士、梅津長門の剣が冴える痛快時代小説。 -
女の踏絵
東洋映画を背負って立つ、一枚看板の大女優・草壁三樹子は日本でも指折りの大富豪、一井男爵を父に、新劇女優・水田三重子を母にして生まれた。彼女は生まれつき淫奔で、志村プロデューサーと関係し、カメラ助手・白石次郎の子を生み、多くの男と浮名を流すのだった。しかし、二枚目スター・林光哉を知るや、三樹子は全身全霊で彼を愛し、同棲するようになった。そんな三樹子を、彼女の幼時からの忠実な下僕――「カシモド」は嫉妬の炎を燃やし、冷たく見つめるのだった。……。強烈な欲望に生きる奔放な女性を描いた問題作「白い炎の女」他3編を収録。
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