一穂ミチのレビュー一覧
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傑作。その切なさと痛さに胸が締め付けられた。
1995年の夏、火災から救い出された堂上今日子。
低体温治療で30年もの間眠らされてきた彼女を引き取る。
父親から突如そう告げられた二卵性双生児の高校生、明日子と弟の日々人は猛反発。
それでもやって来た今日子は儚げで、二人は段々と彼女を受け入れる。
やがて明らかになる今日子の秘密。
完全版と銘打っているだけあって、
本編の後に5つのエピローグ的な短編が収録されている。
このエピローグがまた良い。
本編の設定はだいぶ大胆で粗もあるのだが、
そんなことどうでもよくなる人物描写が本当に素晴らしい。
まさに人間の機微が丁寧に、そして深く描かれている。
30年の時を経て、目覚めた今日子が感じる2025年の違和感。
言葉遣いに関しては、まさにぐうの音も出ないほど共感した。
世代は違うのだが、近い時代を生きた者には必ず刺さる内容。
物語が後半に差し掛かるに連れ、急速に切なさが増して行く。
決して表には出さない今日子の苦しみ、
明日子の、そして日々人の不器用な優しさ、その全てが愛おしく感じた。 -
Posted by ブクログ
気になる作家さんが多く、うまくいかない恋アンソロジーにも惹かれ購入。
んんんー…
分かる…!!とても分かる!!なんだこれは!!
そうなんだよね… うまくいかない色んな恋の結末にそういうのも分かるわ…と思う事も多かったです。
気になっていた、一穂ミチさん、他の作品も読みたくなりました。言い表せない微妙で絶妙な感情を文字にされてて、すごいなぁと惹かれました。
30代の恋愛って事で本当に難しく、感情が動きそうになるもふと立ち止まって冷静に考えてしまったりという所であったり、周りの人間関係の環境がガラッと変わり、自分は自分と思いつつも、変なもやもやと焦りが入り交じったりと、複雑な心境だったり、共感の嵐でした。 -
購入済み
良かった
最初藤澤さんがめちゃくちゃ感じ悪かったのですが、後半は別人のようでした。でもそれが全然不自然ではなく、色々閉じ込めてしまっていただけで、本当は愛情深くて寂しがりやだったんだなということが分かるので素敵な結末でした。文章が本当に素晴らしいです。
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「青春って、すごく密なので」
新型コロナ禍で話題となった、仙台育英高校野球部の須江監督の言葉をふと思い出した。
30年の冷凍睡眠から目覚めた今日子と、17歳の双子明日子と日々人の、ひと夏のかけがけのない青春。
大人になっていく希望も子どもではなくなっていく悩みも全てを内包した青春、その大人と子どもの間の貴重な期間を友達や彼氏と過ごすことを今日子は奪われてしまった。大きく流れる時代に取り残された孤独を抱えながらも、明日子と日々人との出会いが、彼女の青春を取り戻していく。
明日子と日々人もまた、青春を生きる中で、今日子によって貴重な青春の日々に光がもたらされていく。
そんな青春の尊さを本書は教えてくれる。
新型コロナ、いじめ、病気など、あまりにも理不尽な事情で青春を奪われてしまう青少年は数多い。そんな子どもたちに大人は他人事ではなく、かつて自分たちも経験して来たはずの青春の尊さを取り戻してあげるためになにができるのか、もう一度見つめ直さないといけないのかもしれない。 -
ネタバレ 購入済み
人の感覚は不思議
ずっと目が見えなかった人が、なんらかの事情により見えるようになる。ただただ素晴らしい事だという認識だった。見えるというのはそれほど大切な感覚だと信じていた。それが、まさか苦痛を伴うとはつゆ程も思っていなかった。
先生の着眼点や五感の捉え方に改めて脱帽。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
昔好きだった男性の息子と、ふたり旅 「感情旅行」一穂ミチ
崇拝していたインフルエンサーが電撃結婚!「独身の女王」麻布競馬場
友人が付き合い始めたのは、元恋人だった「オレンジシャドウの憂鬱」砂村かいり
脛に傷持つふたりの行く末は――「さみしがりやの恐竜たち」こざわたまこ
恋人へのひどい仕打ちを止められない「不機嫌依存症」田中兆子
名前も知らないカフェ店員への想い「出会い」朝比奈あすか
冒険しない三十三歳、それで正解?「振りかぶって、さよなら」千加野あい
友達がほしかったはずなのに――「となりの独り」カツセマサヒコ
とびきり不幸でもないけれど、完璧な幸せでもない。そんな「30代」を切り取った、人気作家たちによる恋愛アンソロジー。CLASSY.ONLINEに掲載した「うまくいかない恋」がテーマの連載を、文庫にまとめた短編小説集です。
【個人的な感想】
感情旅行
『この人は、自分が身体や心を損なって働けなくなる未来とか、マンションの審査がむずかしくなる状況とか、想像もしていない。健康で社会に通用している人間だから。その無邪気な無神経さと冷淡さを、烈しく憎んだ。』
独身の女王
→独身で生きると決め切れるわけじゃない、けど1人きりでの生活に魅力を感じていて、それを放り出すほどの魅力を、他の誰かとの新しい生活に見出すことができない苦しさがありありと描かれていた。
『誰かを「教祖様」にしたところで、その誰かが私の代わりに私の人生を生き、その苦しみを肩代わりしてくれるわけではない。悩みながら生きる中で刻まれる傷や痛みは、すべて私のものだ。』
さみしがりやの恐竜たち
『隕石だ、と思った。ああ、だめだ。この人を好きになったら、きっと後悔する。避けられないということ、逃れられないということ。誰かを好きになるということ。空から隕石が降ってくるみたいに。つまり、最初から絶滅する以外に道はない。』
振りかぶって、さよなら
→決断できない、冒険できない。置きに行ってしまう性格の主人公が自分と重なった。
恥をかかない、傷つかないための生き方ばかりが上手になって、そんな自分が嫌いだと思いながら生きているところまで同じだった。
となりの独り
『30代の恋愛なんて、ほとんど通過駅でしかないですよね。』
『30代って、純粋な気持ちで恋愛しようと思っても、すぐに結婚とか出産とかがチラついちゃって、結局、現実的なことばかり考えちゃうじゃないですか。お金とか生活とか。』
どの恋愛もうまくいかないけど、なんだか清々しい終わり方で久しぶりに好きな恋愛小説だった! -
Posted by ブクログ
芸人さんの話。なぜか「花火」の悲哀な感じが似通っている。芸人さんは確かに最終目的像のわかりにくい職業だ。テレビに出るより舞台で漫才やコントする方が好きな人もいるだろうし、番組持ちたいとか、俳優さんになりたいとかでもアリな気もする。
美雨は29歳で受付嬢。30歳になったら退職しなければならない職場で働いている。誕生日プレゼントにもらった音楽ライブ先で靴擦れになってめちゃめちゃ痛かったのだが、変な男についてくるように言われてついていってしまう。男は手当してくれて、チケットをくれた。お笑いライブだった。
お笑いライブの打ち上げに誘われて、ついて行ってみる。彼らはシェアハウスで住んでいるらしく、また遊びにおいでと誘われた。お邪魔することになる。シェアハウスは事故物件なのだった。入れる人と体調が悪くなってダメな人がいるらしい。
ネバーくんが芸人をやめた。故郷奈良に帰るという。美雨がシェアハウスに入ることが決まった。 -
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私のは『角川ホラー文庫30周年記念 最恐の書き下ろしアンソロジー 特装版BOXセット』で、その1冊。文庫サイズだけどハードカバーで、おどろおどろしい表紙が素敵。ボックスのにゃんこはかわいい。
『828-1』は文庫版『身から出た闇』で読んでいたので再読。「死神」の定義が妙に納得できて怖い。そういうものかもなと思うと、ふと頭に繰り返し浮かぶ言葉を訝しんでしまう。
一穂ミチさんは初めましてだったけど、その「体験描写」がとてもリアルで「視える人ってこうかも」と思えるほど。憑かれる理由も抗う様子も生々しくて読んでいて力が入った。
鈴木光司さんのお話はまるでドキュメンタリーを追っているかのよう。モキュメンタリー?違うな、「本物でしょ、これ」と思えてならず、あらためて『リング』を読みたくなった
あと2冊も並行読書中。ボックスセットなので楽しみが途切れず、楽しい