一穂ミチのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ドラマ化で興味を持ち拝読しました。
雨と絡めた心理描写や表現力は流石だし、文章は美しくて素敵だなあと素直に思います。
以前読んだ一穂さんの一般小説は、ストーリーがあまり好きになれなかったのですが、このお話は凄く良かった。
軽快な言葉のやり取りがテンポよく交わされ、主役の二人が少しずつ心を通わせて行く過程が、繊細に、丁寧に描かれています。
相手の何気ない言葉や行動によって、お互いの辛くて苦しい気持ちが救われていく様子が分かるので、多分客観的に見れば『浮気』なんだろうけど、嫌悪感はあまりなかったです。
特に整は、一顕と一緒にいるときの方が絶対自然体だよなあと感じました。
二人が初めてセックスす -
Posted by ブクログ
豪華ホラー作家による短編集。
一見「人間が怖い話」のように見せておいて、しっかり怪異でさらっていく。特に印象に残ったのは、やはり澤村伊智の「ココノエ南新町店の真実」である。
とあるドキュメンタリー作家の取材という名目で始まり、途中途中で、編集者と思われる人とのメールのやり取りが挟まれている。
なんの変哲もない街のスーパーで起こった「心霊騒動」にスポットを当て、怪異の正体について取材をしていた女性。平凡な日常を送る店内。ゆったりとしたイートインスペース。休憩中の買い物客。時折り見かける「おかしな」客。どこを切り取っても、当たり前が溢れていた。
徐々に滲み出す不穏。狂い出す文体。緊迫さを通り越 -
Posted by ブクログ
意外と(?)まだ読んでなかった…。
予約したんだか棚差しで目があったんだか(たぶん後者…)忘れたけど、オレンジ文庫でこの執筆陣で、おもしろくないわけがない!
(絶対的信頼)
とはいえ、初読の作家さんもいてはったし、読むのに多少難儀した作家さんもいてはった。悪口ではない。
椹野氏の「ハケン飯友」はすでに文庫を読んでたけど、そっか、こちらが先やったんやね。あらためて読んでも面白かった。
飯友になった猫に「マナー的に云々」と、いう坂井くんが、いい子やなあと思った。
一緒にすごすにあたり、こういうの大事よね。マナー云々以上に
「それはちょっと受け入れにくい」
と、いうことを最初にさらっと伝え -
Posted by ブクログ
油断してた~~~~!!
めちゃくちゃ面白かった!
前作を読んだ記憶はあるけど、わりとさーっと読んじゃったので、今回もまあ、軽い感じで楽しめたらいいなと思いつつ(棚に差してあったので)借りたんやけど、なんやろう、今回は食い入るようにむさぼり読んだ。
前作と同じくアルコールをテーマにしたアンソロジーなんやけど、ほろよいになるのはアルコールじゃなくて恋愛やった。
恋愛やった。(二度言う)
まさかこんな恋愛短編ばかりとは思わず、いやいや、案外アルコールと恋愛は近しいものなのかもしれない。
恋愛小説が好きというわけではないけど、そうと思って読んでいなかったので毎回この「甘酸っぱさ」に「ワーッ」 -
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(2023年12月21日の感想。帰りのバスで書く。)
アンソロジーっていいよね。宝箱みたい。いろんな作家さんたちが一度に会していて豪華。
この本を買った頃は丁度自分のなかで島本理生、窪美澄、一穂ミチのブームが来ていた。だからウッキウキで買って、そのあと暫く読めずにいたのを今になってようやっと読めた。
面白かったのは綿矢りさ「スパチェラ」
綿矢りさは、中学生の頃に『蹴りたい背中』、大学二年の秋に『勝手にふるえてろ』を読んだ。両方とも、それから今回の「スパチェラ」にも当てはまることだけど、今を生きる若い女の子を描くのが本当に上手。綿矢りささん自身は歳を重ねているのに、寧ろ作品のなかではより若く -
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読み終わってすぐ、読み返した。そんな本は久しぶりだ。
一穂さんが紡ぐ言葉が、私の中にたくさん降り積もった。そんな気がした。
共感したのは夏の話。心を揺さぶられたのは冬の話。
どの話も全然違う立場、性格の主人公たちなのに、どの話にも「わかる…!」という感情がある。
人間の少しの醜さ、愚かさ、後ろ暗さ。そして、それを自覚していて少し自己嫌悪になるところまで。
一つひとつは小さなフレーズなのに、胸に去来する感情が大きくて、それを感じたくて何度もページをめくった。
「驚異の解像度」と紹介されていたのを見て、納得。
素晴らしい群像劇、もっともっと世間に広まってほしい。 -
Posted by ブクログ
舞台は大阪のテレビ局。
春夏秋冬の短編オムニバス。
関西の方言なので、すんなりと飲み込みにくくて頭の中で再生するのにつっかえてしまった。
しかし一穂ミチのさらっと置いてある言葉たちの魅力は大きい。
解説でもあったが、『頑張ってもええんか』と前向きにさせてくれるのだ。
いちいち言葉にしないが、日頃ぶつけてやりたいことを言ってくれている。
だから元気になる。
ひとの気持ちに寄り添いたいけれど、やっぱり分からない、分からなくてもいいのかも。
それも思いやりかもしれない。
『知られたくない、分かってもらいたくない痛みだってある。』
『恥じるな、引け目を感じるなっていう圧も暴力』
『心のケアなん