葉室麟のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
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話題となった時代小説を次々と発表していた小説家、葉室麟。
残念ながら60代の若さで、2017年に亡くなってしまいました。
いくつかの作品は読んだことがあったのですが、他にも未読の小説があるだろうと探したところ、この長編小説に出会いました。
「黒田家に関係する話だろう」という程度の、わずかな事前知識で、読み始めました。
舞台は徳川第三代将軍、家光の時代。
杖術の修行を積んでいた深草卓馬と舞の兄妹は、豊後府内藩主の竹中采女正に召し出され、密命を言い渡されます。
その密命とは、筑前黒田家の重臣、栗山大膳のもとに間者として入り、黒田家の内情を探れというもの。
あわせて、黒田家には二つの問題があることが、兄妹に知らされます。
・藩主である黒田忠之と、家老である栗山大膳とが不仲であること
・黒田忠之が、幕府に対して謀反を起こそうとしているとの情報が、竹中家に入ったこと
大膳のもとへ行った二人は、部下として取り立てられ、間者としての活動を始めます。
しかしこの大膳という人物は、得体の知れないところがあって・・・という始まり。
大膳が何をしようとしているのか、それは黒田家にとってどのような結果を招くのか。
徳川の治世が始まって30年あまりの、まだ不安定な部分が残る江戸初期の九州の情勢が、描かれていきます。
上記の黒田家の問題以外にも、以下のようなことが、物語の大きな要素になっています。
・黒田家、加藤家、細川家、竹中家など、力を持ちながら弱みも持つ家々が、自家の存続をかけて他家の領地を狙っていること
・江戸幕府が、勲功ありとして取り立てた九州の諸大名についても、取り潰したり改易しようと考えていること
・九州にはかつてキリシタン大名だった家が残っており、かつ、幕府がこの時期、キリスト教の弾圧を強めていること
家同士の関係が複雑で、また登場人物も多いので、「この人は何家の関係者だっただろう」「誰が仲間で、誰が敵だったのだろう」と、読んでいて混乱する部分がありました。
とはいえ、随所にアクションシーンが挟まれ、宮本武蔵や天草四郎など”有名人”も登場するなど、エンターテイメント性も高い作品になっています。
黒田家の騒動、黒田家を含めた九州の争乱ともども二転三転あり、その行く末を追っていくのが、この作品の読みどころかと思います。
それとあわせて、徳川家と大名(特に外様大名)との関係や、幕府のキリスト教施策など、江戸初期の様子を興味深く読ませていただきました。
葉室麟についてはこれ以外にもまだ、未読の作品があるので、楽しみながら読んでいきたいと思います。
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Posted by ブクログ
ネタバレ下士から執政になった桐谷主水は、親友の綱四郎を藩主に対する不平落書の罪で告発する。死罪となった、綱四郎は、介錯人に主水を指名する。
罪人になった綱四郎のために、娘由布は嫁ぎ先もなかった。主水は、17も年若い由布と結婚する。
一方、綱四郎の息子、喬四郎は、仇討ちをするため師匠と兄弟子と共に、主水に迫りくる。
しかし、その落書の件には、まだ若かりし頃に、主水と綱四郎が喧嘩仲裁に入った、後世河原事件が関わっていた。
現藩主興与が、世子の頃、後世河原で打ちのめされた者たちを、押さえつけ木刀で嬲る残忍な事件を起こしていた。死者まで出るほどの事件であった。
周りの者たちは、藩主世子のため、誰も諫言できなかったが、綱四郎は、興与に対しても意見していた。
それを、根に持ち落書を綱四郎の文字に似せ、書いたのであった。
その事実を知った、主水は、藩主である興与を討つことを誓う。
ミステリーのような感じで、どんな展開になるんだろうと楽しみながら読めました。 -
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武士の友情とはかくあるべし。
武士の友情が描かれているが、実際にはあまりこのような清々しいものはなかったのかもしれない。でもこんな武士がいればよかったなぁと思う。
玲瓏にして、清冽なる時代小説 見参!
寛政期、西国の小藩である月ヶ瀬藩の郡方・日下部源五と、名家老と謳われ、幕閣にまで名声が届いている松浦将監。
幼なじみで、同じ剣術道場に通っていた二人は、ある出来事を境に、進む道が分かれ、絶縁状態となっていた。
二人の路が再び交差する時、運命が激しく動き出す。
第十四回松本清張賞受賞作。
解説・島内景二(国文学者・文芸評論家)
「葉室麟の時代小説は、現代日本の暗雲を吹き飛ばす一陣の涼風である。作者のメッセージを心の音で聞き取り、魂全体で感じ取った読者は、現代社会と現代文明に対する葉室麟の辛辣な批評精神が、熾烈に、しかも美しく燃えさかっていることに気づくだろう。ここから、新しい日本文学の領域が切り拓かれる。」(解説より) -
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綱吉時代に敷かれた悪政を、徳川家宣と弟越智右近は儒教を中心とした教えによる、貨幣改鋳の改善、長崎貿易の制限などを目指す正徳の治を行おうとしていた。表舞台は、家宣。裏舞台を右近が担うことになっている。右近は、隠密を使い意に反する勢力や秘密を知り過ぎた者たちを粛清していこうとしていた。その対象に、雨宮蔵人や冬木清四郎も入っている。
結局、綱吉時代の側用人柳沢吉保と家宣側の新井白石や間部詮房などの政争に巻き込まれる形である。さらには、勘定奉行の荻原重秀までが登場してくる。
最終決戦の地として選ばれたのが、楠木正成が落命した湊川であった。
越智右近は、雨宮蔵人と一騎打ちをするが、互角の戦いの中、隠密磯貝藤左衛門の銃撃により雨宮蔵人は瀕死の状態になる。
右近は、留めを刺すに及ばずと言い渡し。蔵人側の仲間にも危害を加えずに、撤退する。
蔵人は鍋島藩から駆けつけた、咲弥の介抱により回復する。
そして、以前蔵人にもらった和歌の返歌をする。
実に美しい話だと思いました。歴史背景が勉強不足でまだまだ追いついて行けなかったですが、家宣と右近が目指した正徳の治の話なども詳しくはしらなかったので、勉強になりました。
右近が蔵人の留めを刺さなかったこと、磯貝藤左衛門を放逐したことで忍の望月千代と暮らせるようにしたこと、都で蔵人ですれ違った時に付き人に、懐かしき友であると答えたところなどカッチョ良かったです。
なお、家宣は3年、家継は4年しか在位はなく
家継の母、天英院に右近(松平清武)に将軍職を継ぐよう勧めていたのも知らなかったです。8代将軍になっていたらどんな世になっていたかなと興味がわきました。